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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1138605 |
審判番号 | 不服2003-15825 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-14 |
確定日 | 2006-06-22 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 51099号「表示板およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月27日出願公開、特開平 8-248891号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成7年3月10日の出願であって、平成15年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月14日に拒絶査定に対する審判の請求がなされたものである。 II.本願発明の認定 本願の請求項1〜3に係る発明は、平成15年4月2日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 断面がほぼ等脚台形状であって表面側の寸法より底面側の寸法が大きくなるように、表示すべき文字等の形状に形成された溝を有する母材と、前記溝に充填され、前記母材の表面側から見たとき表示すべき文字等を形成する充填材からなる表示板。 【請求項2】 母材の表面に、溝を形成しない部分にレジスト膜を貼り付けたものを、このレジスト膜を下側に向けて配置し、この下方にエッチング加工機の溶解液吹付けノズルを対向配置させ、この吹付けノズルから溶解液を前記母材の表面に吹付けることにより、前記母材に表示すべき文字等の形状の溝を形成する第1の工程と、 この第1の工程で得られた溝に、前記母材の表面側から見たとき表示すべき文字等が形成される、溶融した充填材を注入硬化させる第2の工程を含む表示板の製造方法。 【請求項3】 母材の表面に、表示すべき文字等の形状の溝を形成すべき部分を加工用としたレジスト膜を取り付けたものを、このレジスト膜を下側に向けて配置し、前記母材を第1の所定方向に小刻みに往復運動させながら、前記第1の所定方向に対して直交する第2の方向に進行させ、前記レジスト膜を下側に向けて配置し、この下方に複数の溶解液吹付けノズルを一列に配置したエッチング加工機を対向配置させ、前記各吹付けノズルを左右に振るように溶解液を前記母材の表面に吹付けることにより、前記母材に表示すべき文字等の形状の溝を形成する第1の工程と、 この第1の工程で得られた溝に、前記母材の表面側から見たとき表示すべき文字等が形成される、溶融した充填材を注入硬化させる第2の工程を含む表示板の製造方法。」 III.引用文献に記載される発明 原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-34937号(実開平6-23074号)のCD-ROM(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 [記載事項1](段落【0006】) 「・・・溝の形成されていない表面から文字等を観察すると、溝の深さによる立体感に優れ、光線の乱反射による色彩変化から得られるラメ糸状の輝きがある文字等が顕出されるようになる。」 [記載事項2](段落【0007】) 「 【実施例1】 図1の正面図及び図1のA-A線における拡大断面図である図2に示す表示板は、アクリル等の透明合成樹脂基板1の片面に文字、記号、模様等を形成する溝2を形成し、該溝底に透明樹脂からなる下地層3を、また、薄い二枚の透明フィルムの間に着色したアルミ箔を挟んで細断し0.4 メッシュ程度とした光輝微細片4と透明樹脂とを1:1の割合で混合してなる中間層5を下地層3の表面に、さらに該中間層5の表面に透明樹脂からなる押圧層6を、それぞれ半乾き状態で順次積層して固化させた構成となっている。」 [記載事項3](図面【図2】) 【図2】には、溝2の断面がほぼ長方形状であることが記載されている。 記載事項1〜3によれば、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「断面がほぼ長方形状であって、表示すべき文字等を形成する溝2を有する透明合成樹脂基板1と、前記溝2に順次積層して固化され、表示すべき文字等を形成する下地層、中間層、及び押圧層からなる表示板。」 また、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭49-139673号(実開昭51-65696号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 [記載事項4](第2頁第6〜15行) 「陶器或は磁器製又は木製よりなる所要の厚みを備えた標札主体1の裏面に護附3を装入し得る適宜大きさの凹窪部2を切欠等所要方法により形成し、前記凹窪部2内に護附3を接着剤を介し又は介することなく載置収納すると共に、無色或は所要顔料を混入して着色したる例えばポリエステル系の透明合成樹脂溶液4を該凹窪部2全面に注入充填し、必要により適宜の触媒と促進剤を用いて常温により該溶液4を固化して護附と標札とを一体ならしめたる標札である。」 [記載事項5](第3頁第8〜11行) 「また凹窪部の夫々の外周壁を外方に向つて斜状に切欠き形成することで、充填された透明樹脂が前記凹窪部より脱落する等の憂いを強靱に防止し得ることも可能である。」 [記載事項6](図面第2図) 図面第2図には、凹窪部の断面がほぼ等脚台形状であって表面側の寸法より底面側の寸法が大きいことが記載されている。 IV.対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と、引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明の「透明合成樹脂基板1」、「順次積層して固化」、「下地層、中間層及び押圧層」はそれぞれ、本願発明の「母材」、「充填」、「充填材」に相当する。 してみれば、両発明は、 「表示すべき文字等の形状に形成された溝を有する母材と、前記溝に充填され、表示すべき文字等を形成する充填材からなる表示板。」 である点で一致し、次の2点で相違する。 [相違点1] 溝の断面形状について、本願発明では、ほぼ等脚台形状であって表面側の寸法より底面側の寸法が大きいのに対して、引用文献1記載の発明では、ほぼ長方形状である点。 [相違点2] 本願発明では、充填材は母材の表面側から見たとき表示すべき文字等を形成するのに対して、引用文献1記載の発明では、充填材は母材の裏面側から見たときに表示すべき文字等を形成する場合については記載されているものの、表面側から見た場合については言及されていない点。 まず、上記相違点1について検討する。 上記記載事項4〜6によれば、引用文献2には、凹窪部に充填した充填材の脱落を防止するために、凹窪部の断面形状を、ほぼ等脚台形状であって表面側の寸法より底面側の寸法を大きくすることが記載されている。そして、引用文献1記載の発明においても、充填材は単に溝に充填しただけの構成であり、溝からの脱落が課題となり得ることは十分に想定され、かつまた、引用文献1記載の発明の溝に上記引用文献2記載の事項を適用することに、技術的な阻害要因は認められない。してみれば、引用文献1記載の発明に上記引用文献2記載の技術的事項を適用し、相違点1に係る本願発明の構成を得ることが、当業者にとって格別困難であったとは認められない。 次に、上記相違点2について検討する。 母材上に形成した溝に充填材を充填して文字等を形成してなる表示板において、母材の表面側から見たとき表示すべき文字等を形成するように充填材を設けるようなことは、例えば、本願発明の従来技術(明細書段落【0008】及び【図12】)や、実願昭63-110896号(実開平2-33080号)のマイクロフィルム(第2図)に開示されるように普通に行われることである。ゆえに、引用文献1記載の発明において、充填材を母材の表面側から見たとき表示すべき文字等を形成するように設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項にすぎないものと認められる。 また、本願発明の作用効果も、引用文献1、2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものにすぎない。 よって、本願発明は、引用文献1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 V.むすび 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-19 |
結審通知日 | 2006-04-25 |
審決日 | 2006-05-09 |
出願番号 | 特願平7-51099 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁木 浩 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
柳 五三 中村 則夫 |
発明の名称 | 表示板およびその製造方法 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 橋本 良郎 |