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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D
管理番号 1138680
審判番号 不服2004-13628  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-01 
確定日 2006-06-22 
事件の表示 特願2001- 93991「盗難防止タグ付き書籍の製本方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月13日出願公開、特開2001-315464〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明の認定

本願は、平成4年3月30日に出願した特願平4-74465号(以下「原出願」という。)の一部を平成13年3月28日に新たな特許出願としたものであって、平成16年5月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年3月27日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有してなる製本方法において、
前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に、電磁場あるいは交番磁界の場に影響を与えることのできる磁性体からなるシート状タグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けして、前記タグを製本時に書籍に組み込んだ事を特徴とする製本方法。」


2.当審の拒絶理由

一方、当審において平成18年1月19日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1及び2に係る発明は、原出願の請求項1に係る発明と実質的に同一であるから、本願の出願日は遡及しないと認定し、これを前提に、本願の請求項1及び2に係る発明は、下記の刊行物1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、下記の刊行物2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。

刊行物1:特開平5-270170号公報(以下「引用例1」という。)
刊行物2:特公昭58-57797号公報(以下「引用例2」という。)
刊行物3:特表平1-501104号公報(以下「引用例3」という。)


3.本願の出願日について

まず、本願の出願日について、本願が適正な分割出願として、原出願の出願日に遡及するものか否かを検討する。

(1)原出願に係る発明

原出願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「原出願発明」という。)は、平成18年3月27日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、次のとおりものである。

「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けする本であって、前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に、電磁場等所定の場に影響を与えることのできる磁性体であるシート状タグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に前記糊と同一の糊で糊付けしてなることを特徴とする盗難防止機能付き本。」

(2)本願発明と原出願発明との対比

ア. 原出願発明の「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けする」と、本願発明の「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程」とが、同一であることは明らかである。

イ. 原出願発明の「電磁場等所定の場」と、本願発明の「電磁場あるいは交番磁界の場」において「電磁場」を選択した場合の「電磁場」とが同一であることは明らかである。

ウ. 原出願発明及び本願発明いずれにも、「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けする」及び「前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に、・・・シート状タグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき」という記載(特に下線部参照。)があることから、いずれの発明においても、表紙材料と本文中身を糊付けする糊とシート状タグを仮付けする糊とは同一であることが把握できる。
そうすると、原出願発明の「然る後前記本文中身を前記表紙材料に前記糊と同一の糊で糊付けして」と、本願発明の「然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けして」とは、原出願発明が、もともと自明である「前記糊と同一の糊で」という事項を単に確認的においただけのものと認められるから、両者は何も相違しない。

エ. 原出願発明と本願発明はいずれも、「前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に、・・・シート状タグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けしてなる」ものであるから、両発明はともに、シート状タグを製本時に書籍に組み込んだものということができ、「前記タグを製本時に書籍に組み込んだ」との事項の存否によって、両発明に相違があるということはできない。

以上の点を踏まえて、本願発明と原出願発明とを対比すると、両発明は、いずれの発明を先願としてみても、本願発明が「製本方法」という「方法」の発明に属するものであるのに対し、原出願発明が「本」という「物」の発明に属するという、単なるカテゴリー表現上の差異しかないことになる。
よって、本願発明と原出願発明とは実質的に同一である。

(3)まとめ

したがって、本願は適法な分割出願とは認められず、特許法第44条第1項の規定に適合しない。
以上のことより、本願の出願日は、原出願の出願日に遡及せず、本願の現実の出願日である平成13年3月28日と認める。


4.引用例記載の発明

(1) 当審における拒絶の理由で引用し、本願の出願日前に頒布された引用例1には、以下の事項が図示とともに記載されている。

ア. 「【請求項5】 書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有してなる製本方法において、前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に、電磁場等所定の場に影響を与えることのできるシート状のタグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けすることを特徴とする製本方法。」(2頁1欄12〜18行)

イ. 「このタグ6は、例えば極めて薄く形成された金属等の磁性材より形成されている。」(3頁3欄3〜4行)

ウ. 「【0024】 また、前記タグ6を書籍本体2に付設するにおいては、書籍本体2の製本工程において完了することができる。・・・。これにより、該書籍1Aは、従来の製本工程にあって単に前記タグ6を従来の接着剤7を用いて表紙材料3’に仮付けするといった極めて簡単な工程を付加するのみで容易に作製することができる。」(3頁3欄45行〜同頁4欄5行)

したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有してなる製本方法において、
前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に、電磁場等所定の場に影響を与えることのできる磁性体からなるシート状のタグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けして、前記タグを製本工程において書籍に付設した製本方法。」


(2) また、当審における拒絶の理由で引用し、本願の出願日前に頒布された引用例2には、以下の事項が図示とともに記載されている。

ア. 「本発明にしたがって、無線周波数の電磁命令(radio frequency electromagnetic instruction)を発するゲートにおいて用いられる共振回路を包含しており、且つコイルとコンデンサを備える偏平な共振回路(flat resonant circuit)を使用するラベルによって盗難から物を保護する方法は、物それ自身及び/又はその包装(packaging)に少なくとも一つの共振回路を組込む(integrating)ことにあることを特徴とする。
回路は物に直接に組込まれ、物を破壊することによって物から除くことができるのみである。結果として、保護回路は、目に見えず、それによって最良の保護(first line of protection)を与えるのみならず、接近し難く、したがってそれを無能力にする企てを妨げる。該回路は、成形又は熱成形中に、或は積層商品の二層間への挿入によって商品が製造される間に、商品に組込まれる方が好ましい。」(2頁右上欄24行〜同頁左下欄13行)

イ. 「本発明は、特に、ビデオカセット、レーザーコンパクトディスク及びオーディオカセット等の高い付加価値を有する商品を保護することを求めるものである。しかし、本発明が“ブラック(black)”ディスク、靴、本及び帽子等のすべての種類のその他の物に適用し得ることは明白である。」(2頁右下欄6-10行)

引用例2の記載事項アには、共振回路を使用するラベルを、「成形中又は熱成形中に、或は積層商品の二層間への挿入によって商品が製造される間に、商品に組込」むことが記載されているから、「商品の製造方法」が記載されていると解され、また、該商品として、記載事項イには「本」が明記されているのであるから、結局のところ、引用例2には「製本方法」の発明が開示されているものと認められる。
それ故、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

「無線周波数の電磁命令を発するゲートにおいて用いられる共振回路を包含しており、且つコイルとコンデンサを備える共振回路を使用するラベルを、成形中又は積層商品の二層間への挿入によって本が製造される間に本に組込む製本方法。」


5.本願発明と引用発明1との対比判断

本願発明と引用発明1とを対比すると、本願発明の「前記タグを製本時に書籍に組み込んだ」と引用発明1の「前記タグを製本工程において書籍に付設した」とが同一の意味であり、また、本願発明の「電磁場あるいは交番磁界の場」において「電磁場」を選択した場合の「電磁場」と、引用発明1の「電磁場等所定の場」とが同一であることは明らかであるから、本願発明と引用発明1とはまったく相違しない。
よって、本願発明は、引用例1に記載された発明に該当するから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。


6.本願発明と引用発明2との対比判断

6-1 本願発明と引用発明2との対比

引用発明2の「無線周波数の電磁命令を発するゲートにおいて用いられる共振回路を包含しており、且つコイルとコンデンサを備える共振回路を使用するラベル」が、本願発明の「電磁場あるいは交番磁界の場」において「電磁場」を選択した場合の「電磁場に影響を与えることのできるシート状タグ」に相当する。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「製本方法において、電磁場あるいは交番磁界の場に影響を与えることのできるシート状タグを製本時に書籍に組み込んだ製本方法。」

[相違点1]
製本方法が、本願発明では、「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有してなる」ものであって、「前記表紙材料における前記本文中身が糊付けされる部分に」、シート状タグを「予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けして」いるのに対して、引用発明2ではそのような点について定かではない点。

[相違点2]
電磁場等所定の場に影響を与えることのできるシート状タグが、本願発明では「磁性体」であるのに対し、引用発明2では「共振回路」とされている点。

6-2 相違点の判断

(1)相違点1について

書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有してなる製本方法は、本願出願前にごく普通に知られている(例えば、特開昭54-111922号公報参照。)。
そして、引用発明2は、シート状タグを、成形中又は積層商品の二層間への挿入によって本が製造される間に組み込んだものであるから、引用発明2の「製本方法」として前記周知の書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有する製本方法を採用した場合には、シート状タグを前記くるみ工程において表紙材料と本文中身との間に組み込むことは何の困難もないことである。そして、シート状タグを取り付けるときに、その取付位置がずれないようにすることは当然の要求であるから、シート状タグをずれないよう仮付けしようとすることは自然な発想であり、その方法として、表紙材料における本文中身が糊付けされる部分に、表紙材料と本文中身との糊付けに使用する糊により仮付けすることは、当業者が容易に為し得る程度のことである。
してみれば、引用発明2において、本願出願前周知の「書籍本体の表紙となる表紙材料に書籍本体の本文中身を糊付けするくるみ工程を有してなる製本方法」を採用し、表紙材料における本文中身が糊付けされる部分に、シート状タグを予め前記糊付けに使用する糊により仮付けしておき、然る後前記本文中身を前記表紙材料に糊付けすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
よって、相違点1は格別のものではない。

(2)相違点2について

当審における拒絶の理由で引用し、本願の出願日前に頒布された引用例3には、「第1図に示される物品探知装置は、例えば、図書館から書籍・記録等が許可なく持ち去られることを防止するため図書館内に設置することができる。この様な場合は探知さるべき物品にはパーマロイの様な容易に飽和可能の磁性物質の薄い條片を有するターゲット又は印を付す。」(4欄27〜32行)、「アンテナ群18及び20の間の区域は質問区域24を構成し、該装置により、該装置上に生ずる電磁効果は後述する通り、最初に質問区域に起る。印10をつけた本12が人22によって質問区域24を通って運ばれた場合、印10は電磁的に探知装置と反応し、警報を生ずる」(5欄6〜11行)と記載されており、電磁場に影響の与えることのできる磁性体であるシート状タグを用いて、本の盗難防止を図ることが記載されている。
よって、引用発明2において、前記引用例3記載の事項を採用し、相違点2に係る本願発明の構成を想到することに格別の困難性はない。

そして、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成を採用することによって格別の作用効果が奏されるとも認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6-3 まとめ

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


7.むすび
本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定及び特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-24 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-10 
出願番号 特願2001-93991(P2001-93991)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (B42D)
P 1 8・ 121- WZ (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 國田 正久
長島 和子
発明の名称 盗難防止タグ付き書籍の製本方法  

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