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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1138689
審判番号 不服2004-20835  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-07 
確定日 2006-06-22 
事件の表示 平成 9年特許願第 4967号「直進動作ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月31日出願公開、特開平10-199959〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成9年1月14日の出願であって、同15年12月5日付で拒絶の理由が通知され、同16年2月4日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同16年9月2日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同16年10月7日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同16年11月4日に明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を示すと以下のとおりである。

1-1 補正前の請求項1
「 【請求項1】 上方が開放された横転コの字形断面の長方体状のフレーム基台内に搬送台が直進移動可能に設けられ、前記フレーム基台内に前記搬送台の直進移動の駆動機構を有し、フレーム基台の上方開放部が搬送台の直進移動方向に長いスリット状空隙を有するカバープレートにより閉じられ、前記搬送台のスリット状空隙を前記搬送台の頂部が貫通して外部に露呈し、フレーム基台内が外部への塵埃放出防止のために負圧状態に保たれる直進動作ロボットにおいて、
スリット状空隙の外側に、当該スリット状空隙に連続するラビリンス流路が設けられていることを特徴とする直進動作ロボット。」

1-2 補正後の請求項1
「 【請求項1】 上方に開口部を有するコの字形断面に形成され、吸引口ポートを介して吸気されることにより内部空間が負圧状態に保たれる直方体状のフレーム基台と、
前記フレーム基台の上方の中央部分が開口するよう前記上方開口部の左右の側部を閉じる平板状の一対の側部カバープレートと、
前記一対の側部カバープレート間に配置され該一対の側部カバープレートとの間にスリット状空隙をそれぞれ形成する中央水平板部と、該中央水平板部の左右の縁部から上方へ立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の上縁部から外側に折曲するとともに前記一対の側部カバープレートの上方に配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記側部カバープレートとの間で前記スリット状空隙の外側に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置される中央カバープレートと、
前記スリット状空隙及びラビリンス流路を貫通して外部に露呈する頂部と、前記フレーム基台の内部空間に配置される本体部とを有し、前記フレーム基台内に設けられる駆動機構により前記本体部及び頂部がフレーム基台に対し移動可能に設けられ、前記頂部および本体部が一体形成された搬送台と、
を備えたことを特徴とする直進動作ロボット。」

2.補正の適否
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるラビリンス流路を形成するためのカバープレートについて「フレーム基台の上方の中央部分が開口するよう前記上方開口部の左右の側部を閉じる平板状の一対の側部カバープレートと、
前記一対の側部カバープレート間に配置され該一対の側部カバープレートとの間にスリット状空隙をそれぞれ形成する中央水平板部と、該中央水平板部の左右の縁部から上方へ立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の上縁部から外側に折曲するとともに前記一対の側部カバープレートの上方に配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記側部カバープレートとの間で前記スリット状空隙の外側に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置される中央カバープレートと、」との、また、フレーム基台内が負圧状態に保つために「吸引口ポートを介して吸気されることにより」との、さらに、搬送台について「頂部および本体部が一体形成された」との、それぞれ、限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1-2に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「直進動作ロボット」であると認められる。

2-2 刊行物記載の発明(事項)
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭61-206714号公報(以下、「刊行物1」という。)及び特開平6-244265号公報(以下、「刊行物2」という。)、また、本件出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭63-312091号公報 (以下、「刊行物3」という。))には、以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1
(1-ア)特許請求の範囲
「被送り部材を支持する可動部を回転直進機構により一方向送りして被送り部材を送る送り装置であって、
該回転直進機構及び該可動部を該回転直進機構の回転により生ずる飛散物が外部へ飛散しないように覆うカバー部と、
該カバー部内を排気する排気手段とを設けたことを特徴とする送り装置。」
(1-イ)第2頁左上欄第1〜18行
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、例えばボールネジ送り機構等の回転直進機構を用いた送り装置において、回転部の回転により生ずるゴミ、グリス等が外部へ飛散することを防止することのできる送り装置に関し、特にクリーンルーム内の作業に用いて好適な送り装置に関する。
一般に送り装置としては、動作が安定で且つ位置決め精度の高いボールネジ送り機構が広く用いられている。
このようなボールネジ送り機構は、ボールネジと、ボールネジを回転する駆動源と、ボールネジと係合するナツトを有する可動部とを備えており、ボールネジの回転により可動部をボールネジに沿って直進送りするものである。
この可動部には被送り部材が支持され、例えばロボットにおいては、ハンドの送りや、作業される部品等の送りに利用される。」
(1-ウ)第2頁左下欄第9行〜第3頁左上欄第10行
「〔問題点を解決するための手段〕
第1図は本発明の原理説明図である。
図中、1はボールネジ送り機構であり、10はその可動部であり、ボールネジと係合するナツトを有するもの、11はボールネジであり、図示しない駆動源により回転され、可動部10をボールネジ11に沿って直進送りするもの、12、13はガイドであり、可動部10の下部両端をガイドするもの、4は被送り部材であり、可動部10に支持され、例えば物品搭載台で構成され、物品が搭載されるもの、2a、2b、2cはカバーであり、可動部10及びボールネジ11を覆うもの、3は排気管であり、真空ポンプ等の排気手段に接続されカバー2a、2b、2C内を排気するものである。
このカバー2a、2b、2Cは、ボールネジ11の回転によって生ずる飛散物(例えばグリス)が外部へ飛散しないように構成されている。
尚、上述の例では、ボールネジ11を回転する場合で説明しているが、ナンド側を回転するようにしてもよい。
〔作用〕
本発明では、カバー2a、2b、2cがボールネジ11の回転により生ずる飛散物が外部へ飛散しないように構成し、飛散を防止するとともに、内部のゴミやグリスを排気管3によって強制排気して、内部からゴミ、グリス等が外部へ流出しないようにしている。
一般に、ボールネジ11やベアリングの回転による遠心力でグリス等が回転の接線方向へ飛び出すことから、第1図(B)の如く、ボールネジ11やベアリングの回転の接線方向の延長線は必ずカバー内面に到るようにカバー2a、2b、2Cを構成することによって、回転の遠心力による飛散物の外部への直接飛散を防止できる。又、強制排気によって図の矢印a、b、c、dの如くカバーの間から空気がカバー内部に流入し排気管3より排気されるから、外部から内部への気流を生ぜしめ、内部のゴミ、グリス等は排気管3により外部へ流出しないで回収される。」
(1-エ)第3頁左上欄第11行〜同頁右下欄第11行
「〔実施例〕
(a)実施例構成の説明。
第2図は本発明の一実施例全体構成図、第3図は第2図構成の内部構成図である。
図中、第1図で示したものと同一のものは同一の記号で示してあり、14は駆動モータであり、ボールネジ11を回転させるもの、15aはモータ支持板であり、駆動モータが取付けられるもの、15b、15cはベアリングハウジングであり、ボールネジ11の両端をベアリングで支えるもの、16はベアリングカバーであり、ベアリンクハウジング15cのベアリングを覆うもの、17はカップリングであり、モータ14の軸とボールネジ11とを結合するもの、18はフラットケーブルであり、可動部10と図示しない制御回路とを電気的に接続するもの、2d、2eは側板であり、L字形のカバー2a、2cが取付けられるもの、20、21、22、23、24、25、26はチューブ継手であり、所定の間隔を置いて側板2eに設けられ、カバー内と連通するもの、30、31、32、33、34、35、36は排気チューブであり、各々一端がチューブ継手20〜26に接続され、他端は真空ポンプに接続されるものである。
50は搬送ベルトであり、後述する物品搭載台(パレット)を搬送するための歯溝が形成されているもの、51、52はレールであり、搬送ベルト50によって搬送されるパレットのためのレールである。
第3図に示す如く、ボールネジ11は一対のベアリングハウジング15b、15C間にベアリングで支持されて設けられ、且つカップリング17を介しモータ14の軸に連結されている。従って、モータ14の駆動によってボールネジ11が回転し、可動部10がガイド12、13にガイドされて、一対のベアリングハウジング15b、15C間を移動する。
このボールネジ11及び可動部10は側板2d、2eに設けられたカバー2a、2C及びハウジング15b、15C間に設けられたセンターカバー2bで覆われており、両端はベアリングハウジング15b、15cで閉鎖されている。
従って、これらカバー2a、2b、2C、側板2d、2e、ベアリングハウジング15b、15Cによってボールネジ11及び可動部10は四方及び上部が覆われ、下方はフロア(床)であるから、ボールネジ11及びガイド12、13上のグリス及び内部のホコリが外部へ飛散せず、又、第1図(B)で説明した如くボールネジ11の回転に対する接線方向の延長は全てカバー2a、2b、2C及び側板2d、2eに行きつき、回転による飛散物の外部への直接飛散も防止できる。
一方、係る内部は側板2eに設けられたチューブ継手20〜26を介し排気チューブ30〜36により真空ポンプに連通しており、常時真空ポンプによって内部排気が行われ、外部から内部への気流をつくり、発生したホコリ、グリス、金属粉等の外部への流出を防ぐ。即ち、排気によって内部圧力を下げ、ゴミ、グリス等の流出を防ぐことができる。」
(1-オ)第4頁右下欄第7〜18行
「第5図は、係るパレット4の詳細構成図である。
図中、第4図で示したものと同一のものは同一の記号で示されており、40はパレットフレームであり、後述するパレット板を支持するためのもの、41a〜41dはテーパ穴であり、パレットフレーム40の四隅に設けられ、ピン111〜114と係合するテーパを持つ穴で構成されるもの、42a〜42dはパレット固定用アングルであり、パレットフレーム40の四隅に設けられ、パレット4が可動部10にとらえられた時に可動部10の走行レール117、118と係合してパレット4を可動部10上で固定するためのもの、」
(1-カ)第6頁右上欄第17行〜同頁左下欄第3行
「この実施例の外に、搬送ベルト50、レール51、52を設けず、ボールネジ送り機構1のみを用いて、人手により可動部10にパレット4をセットしてボールネジ送りによる位置決めを行ってもよく、・・・これらの場合ピンの上下動機構は設けなくてもよい。」
(1-キ)第7頁右下欄第12行〜第8頁左上欄第4行
「〔発明の効果〕
以上説明した様に、本発明によれば、送り機構内部の回転、移動によるボールネジやリニアベアリング等から生ずるグリス、金属粉等が直接外部へ飛散することが防止できるという効果を奏し、更に排気によって外部からの気流を生ぜしめ、グリス、金属粉等が内部圧力の変化で外部へ流出することも防止できるという効果を奏し、外部へ内部から飛散物が流出することを完全に防止でき、特にクリーンルーム内の作業に係る安価で動作の安定しているボールネジ送り機構の使用を可能とし、作業自動化に寄与するところが大きい。」
(1-ク)第1図(A),(B)、2、3図
一対のL字形のカバー2a、2cの水平部間にセンターカバー2bが配置され、該一対のL字形のカバープレート2a,2cの水平部とセンターカバー2bとの間がスリット状空隙となっており、
該センターカバー2bは、その左右縁部から下方へ立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の下縁部から外側に折曲するとともに前記一対のL字形のカバー2a、2cの水平部の下方に配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記一対のL字形のカバープレート2a、2cの水平部との間で前記スリット状空隙の内側に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置されていること、及び回転直進機構が側板2d、2e内に設けられていることが看取される。

上記摘記事項(1-イ)において、送り装置としてのボールネジ送り機構はボールネジに沿って直進送りされる可動部を備え、この可動部には被送り部材が支持され、ロボットにおいては、ハンドの送りや、作業される部品等の送りに利用されることから、「送り装置」は、「直進動作ロボット」と表現することができる。
また、上記摘記事項(1-カ)から、可動部10と被送り部材であるパレット4とが別体であって、該被送り部材であるパレット4を支持するパレットフレーム40が可動部10に固定されていることは明らかであり、可動部10とパレットフレーム40とを合わせたものを搬送台ということができる。
そうすると、上記記載事項及び第1図(A),1図(B)、2、3図の記載からみて、本願補正発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「上方に開口部を有する、チューブ継ぎ手20、21、22、23、24、25、26を介して吸気されることにより下方を床面で閉鎖された内部空間が負圧状態に保たれる直方体状の側板2d、2eと、
前記側板2d、2eの上方の中央部分が開口するよう前記上方開口部の左右の側部を閉じる一対のL字形のカバー2a、2cと、
前記一対のL字形のカバー2a、2cの水平部間に配置され該一対のL字形のカバー2a、2cの水平部との間にスリット状空隙をそれぞれ形成する中央水平板部と、該中央水平板部の左右の縁部から下方へ立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の下縁部から外側に折曲するとともに前記一対のL字形のカバー2a、2cの水平部の下方に配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記一対のL字形のカバー2a、2cの水平部との間で前記スリット状空隙の内側に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置されるセンターカバー2bと、
前記スリット状空隙及びラビリンス流路を貫通して外部に露呈するパレットフレーム40と、前記床面で閉鎖された側板2d、2e及び前記一対のL字形のカバー2a、2cにより形成される内部空間に配置される可動部10とを有し、前記側板2d、2e内に設けられる回転直進機構により前記可動部10及びパレットフレーム40が側板2d、2eに対し移動可能に設けられ、前記パレットフレーム40および可動部10が固定された搬送台と、
を備えた直進動作ロボット。」

(2)刊行物2
(2-ア)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、主として半導体製造ライン等の空気中に浮遊する微粒子が規定数以下に制御された所謂クリーンルームにおいて、物品の直線的送り駆動系に用いる搬送ロボット(スライダーとも称される。)に関するものである。」
(2-イ)段落【0010】,【0011】
「図4は上記従来の搬送ロボット(スライダー)の進退動領域での搬送方向に対して直角な断面における構造を示す横断面図である。
図においてスライダー1は一方(上方)が開放された箱形フレーム基台2と、該フレーム基台内部に配設された駆動モータ(図示略)によるボールネジ5と、ボールネジのネジ軸6と平行に敷設された二本の支持レール7、8と、前記支持レール7、8に支持されるとともにネジ軸6によって進退動するボールネジのナット9に載置された搬送台10と、前記搬送台10の頂部11のみが突出するようにフレーム基台2の開放面とこれに隣接する側面を覆設するカバー14、15、16と、を有する構成である。」

(3)刊行物3
(3-ア)第1頁右下欄第4〜7行
「【産業上の利用分野】
この発明は、クリーンルームのようなクリーン環境で被加工物の受け渡しなどに用いるロボットに関するものである。」
(3-イ)第2頁左上欄第6〜11行
「前後軸ガイド9が結合部材11の下面に固定され、結合部材11はガイドレール8と前後軸ガイド9との摺動部上を覆うカバー10に設けた1対のスリット10aにそれぞれ挿通されて上方に延び、上下軸部5の上下軸ケース12下面に固定されている。」
(3-ウ)第2頁右下欄第12行〜第3頁左上欄第8行
「第2図はこの発明の他の実施例の要部を示す。
この実施例では、カバー10を前後軸ケース5の上端部に上,下2段に固定し、下段のカバー10のスリット10aを前後軸ガイド9とガイドレール8との摺動部から左右方向に離すと共に、上,下段のカバー10のスリット10aを左右方向に互いに離して配設し、上,下段のカバー10間には上下方向に間隔を設け、さらに結合部材11の上部を屈曲させて、上,下段のカバー10のスリット10aに挿通させたものである。なお、第2図において、第4図と同一符号は相当部分を示し、上述した以外の構成は第3図、第4図に示す従来のロボット同様である。
そして、第2図に示す実施例のロボットは、第1図に示すものと同様な作用を上,下2段に繰り返し行うことでダストのクリーン環境への放出を第1図に示すものより確実に防止できる。」

2-3 対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「チューブ継ぎ手20、21、22、23、24、25、26」は前者の「吸引口ポート」に、以下同様に、「側板2d、2e」は「フレーム基台」に、「可動部10」は「搬送台の本体部」に、「パレットフレーム40」は「搬送台の頂部」に、「回転直進機構」は「駆動機構」に、それぞれ相当することは明らかである。
また、後者の「一対のL字形のカバー2a、2c」は、「一対の側部カバー部材」である限りにおいて前者の「一対の側部カバープレート」と共通し、更に、後者の「センターカバー2b」と前者の「中央カバープレート」とは、「一対の側部カバー部材間に配置され該一対の側部カバー部材との間にスリット状空隙をそれぞれ形成する中央水平板部と、該中央水平板部の左右の縁部から立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の縁部から折曲するとともに前記一対の側部カバー部材と離れて配置される左右の水平板部とを有し、前記側部カバー部材との間で前記スリット状空隙に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置され中央カバープレート」である限りにおいて共通している。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「上方に開口部を有する、吸引口ポートを介して吸気されることにより内部空間が負圧状態に保たれる直方体状のフレーム基台と、
前記フレーム基台の上方の中央部分が開口するよう前記上方開口部の左右の側部を閉じる一対の側部カバー部材と、
前記一対の側部カバー部材間に配置され該一対の側部カバー部材との間にスリット状空隙をそれぞれ形成する中央水平板部と、該中央水平板部の左右の縁部から立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の縁部から折曲するとともに前記一対の側部カバープレートと離れて配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記側部カバー部材との間で前記スリット状空隙に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置される中央カバープレートと、
前記スリット状空隙及びラビリンス流路を貫通して外部に露呈する頂部と、前記フレーム基台の内部空間に少なくとも一部を配置される本体部とを有し、前記フレーム基台内に設けられる駆動機構により前記本体部及び頂部がフレーム基台に対し移動可能に設けられ、前記頂部および本体部が一体となった搬送台と、
を備えた直進動作ロボット。」

[相違点1]
本願補正発明では、一対の側部カバー部材が平板状であって、搬送台の本体部がフレーム基台の内部空間に配置されるのに対して
刊行物1記載の発明では、一対の側部カバー部材がL字形であって、搬送台の本体部が前記一対のL字形の側部カバー部材及びフレーム基台により形成される内部空間に配置される点。

[相違点2]
本願補正発明では、中央カバープレートが中央水平板部の左右の縁部から上方へ立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の上縁部から外側に折曲するとともに前記一対の側部カバー部材の上方に配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記側部カバー部材との間で前記スリット状空隙の外側に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置されるのに対して、
刊行物1記載の発明では、中央カバープレートが中央水平板部の左右の縁部から下方へ立設される左右の垂直板部と、該垂直板部の下縁部から外側に折曲するとともに前記一対の側部カバー部材の下方に配置される左右の水平板部とを有し、前記左右の垂直板部及び左右の水平板部と、前記側部カバー部材との間で前記スリット状空隙の内側に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を形成するように配置される点。

[相違点3]
本願補正発明では、スリット状空隙及びラビリンス流路を貫通して外部に露呈する搬送台の頂部と本体部とが一体形成されたものであるのに対して、
刊行物1記載の発明では、前記頂部と本体部とが固定されている点

2-4 相違点についての判断
[相違点1について]
刊行物1記載の発明において、一対の側部カバー部材をL字形として搬送台の本体部を前記L字形の一対の側部カバー部材及びフレーム基台により形成される内部空間に配置することに代えて、本願補正発明のように搬送台の本体部をフレーム空間に配置して側部カバー部材を平板状とすることは、搬送台の本体部の大きさと、該本体部が配置される内部空間との大きさに応じて当業者が適宜なし得た設計変更にすぎないことである。

[相違点2について]
スリット状空隙に連続する鈎形断面の左右のラビリンス流路を、前記スリット状空隙の外側、又は内側の何れに設けても、ラビリンス流路を流れる際に受ける流路抵抗による圧力損失が同等であることは自明であり、刊行物1記載の発明において、ラビリンス流路を本願補正発明のようにスリット空隙の外側に設けるよう変更することは、そのことに格別な技術的意義を見出すことはできず、当業者が必要により適宜なし得た事項にすぎないことである。

[相違点3について]
直進動作ロボットにおいて、スリット状空隙を貫通して外部に露呈する搬送台の頂部と本体部とを一体形成することは、例えば、刊行物2(上記摘記事項(2-イ)及び図4参照。)、刊行物3(上記摘記事項(3-イ),(3-ウ)及び第1〜4図参照。)にも記載されているように本願出願前周知の事項であり、当該周知技術を刊行物1記載の発明に適用することにより、本願補正発明のようにスリット状空隙及びラビリンス流路を貫通して外部に露呈する搬送台の頂部と、本体部とを一体形成することは当業者が容易になし得た設計的事項にすぎないことである。

なお、請求人は上記相違点1,2に関して、本願発明においては、搬送台にトンネル状空隙を設けることなくスリット状空隙に対してラビリンス効果をもたせることができるので、搬送台を単一部品で構成でき、装置全体を大型化および部品点数を増加させることなく、少ない空気吸引流量をもってロボット本体内部よりの塵埃の放出を効果的に抑制できるという効果を奏する旨主張しているが、
上記本願出願前に周知である刊行物3の、特に摘記事項(3-イ)及び第2図には、搬送台(結合部材11)の頂部と上下軸ケース12下面とを固定して両者のトンネル状空隙に中央カバープレート(カバー10)を通すことが示されているところ、本願補正発明が、搬送台を単一部品で構成できるとしても搬送台の頂部と被送り部材とは固定するのが自然であると解され、その場合には、本願補正発明においてもトンネル状空間に中央カバープレートを通すことになるのであって、前記搬送台の頂部と本体部との間で結合する刊行物1記載の発明と比較して格別な技術的意義を見出すことができない以上、本願補正発明のような結合箇所とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎないことである。
したがって、上記請求人の主張は採用することができない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年2月4日付の手続補正書により補正がされた明細書の特許請求の範囲の請求項1記載された事項により特定される前記第2の1-1に示したとおりのものと認められる。

2.引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、また、本件出願前に日本国内で頒布された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2-2に示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2の2.で検討したように、本願補正発明の特定事項から前記限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2-4に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-20 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-09 
出願番号 特願平9-4967
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 豊原 邦雄
鈴木 孝幸
発明の名称 直進動作ロボット  
代理人 酒井 宏明  

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