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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1138773
審判番号 不服2003-11137  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-18 
確定日 2006-06-19 
事件の表示 特願2000-345155「顆粒食品の製造方法、コーヒー顆粒およびココア顆粒」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月21日出願公開、特開2002-142731〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月13日の出願であって、平成15年5月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年6月18日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成15年7月18日付で手続補正がされたものである。

2.平成15年7月18日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正は、特許請求の範囲の請求項1を、「牛乳または牛乳状の牛乳由来物を他の食品原料に噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法。」から、「牛乳または牛乳状の牛乳由来物をコーヒーパウダーまたはココアパウダーに噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法。」と補正し、同じく請求項2を、「低温に維持された牛乳または牛乳状の牛乳由来物を他の食品原料に噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法。」から、「低温に維持された牛乳または牛乳状の牛乳由来物をコーヒーパウダーまたはココアパウダーに噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法。」に補正するものである。
上記補正は、平成15年2月7日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明を特定するために必要な事項である「他の食品原料」を「コーヒーパウダーまたはココアパウダー」に限定したものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
本願出願前に頒布された特開平11-32682号公報(以下、「引用例1」という。)には、「ココアパウダーと、乳原料とを含有する原料を温水又は熱水に溶解し、スプレードライして得られた、前記原料成分が融合して一体化した粒子、又は該粒子を造粒してなる顆粒を含むことを特徴とするインスタントココア。」(請求項1)、「前記乳原料が牛乳である請求項1〜3のいずれか1つに記載のインスタントココア。」(請求項4)、「本発明では、上記粉末を更に適当な大きさに造粒して顆粒状にしてもよく、それによって、湯に対する溶解性を更に高めることができる。造粒方法としては、公知の各種の方法が採用できるが、特に流動層造粒法や、撹拌造粒法が好ましく用いられる。」(段落0023)、及び「実施例2 60℃に加熱した牛乳100部(乳固形分として11.8部)に、ココアパウダー(カカオバター22〜24%)15部、全粉乳4部、脱脂粉乳5部、砂糖5部、乳糖8部、食塩0.1部を加え、ミキサーで10分間撹拌混合した。これを150kg/cm2でホモゲナイザー処理し均質化した。この溶液を熱風温度230℃、排風温度110℃の条件でスプレードライして乾燥粉末を得た。この乾燥粉末を流動層造粒機にて造粒し、乾燥した。この粉末60部に、砂糖35部を加えて混合し、本発明のインスタントココアを得た。」(段落0028及び0029)と記載されている。
上記の記載からみて、引用例1には、「牛乳にココアパウダーを溶解して得た溶液をスプレードライして乾燥粉末にし、この乾燥粉末を流動層造粒機にて造粒し、乾燥する顆粒状インスタントココアの製造方法。」という発明が記載されているといえる。
同じく引用された特開平8-131132号公報(以下、「引用例2」という。)には、顆粒状インスタントスープ又はインスタントソースの製造法に関し、「製造例1 第1表に示す原材料のうち、食用油脂としての水添ナタネ油(融点40℃)以外の粉末原料をミキサーで混合し、これに前記水添ナタネ油を70℃で加温溶解させ液状で添加して混合した後、未乾燥液体原料バインダーとしてチキンエキス(総固形分量25重量%)或いは市販3.5牛乳(総固形分量12重量%)を噴霧ノズルより供給しながら、下記の条件で流動層にて造粒・乾燥・冷却して、良好なチキン風味或いはミルク風味を有する顆粒状のインスタントコーンスープAとBを得た。」(段落【0016】)が記載されている。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は「牛乳とココアパウダーを使用して流動層乾燥造粒を行って得られるココア顆粒」の点で一致し、ただ、前者が、牛乳をココアパウダーに噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行って得られるものであるのに対し、後者は、牛乳にココアパウダーを溶解し、スプレードライして乾燥粉末にした後に流動層乾燥造粒を行って得られるものである点で、両者は相違する。
上記相違点について検討する。
本願補正発明は、牛乳を原材料の1つとして用いてインスタントココア等の顆粒食品を製造するにあたって、あらかじめ牛乳を加えてスプレードライ法により一旦乾燥粉末化し、得られた粉末を通常の流動層乾燥造粒法を用いて顆粒化するという従来技術を改良したものであって、流動層乾燥造粒工程
において牛乳を直接ココアパウダー等に噴霧して顆粒化する点に特徴を有するものと認められるが、顆粒中に含ませるべき成分である牛乳を他の食品原料に加えて一旦乾燥粉末にする工程を経ることなく、流動層乾燥造粒工程において牛乳をバインダーとして直接噴霧ノズルより供給しながら造粒を行ってインスタントスープの顆粒を製造することが引用例2に記載されており、両者は同じ顆粒食品であるから、ココア顆粒を調製するにあたって、引用例1に記載の流動層乾燥造粒法(上記従来技術に該当する。)に代えて、牛乳をココアパウダーに噴霧しながら流動層乾燥造粒を行う方法を採用することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
そして、一般に熱による品質劣化を避けるために、流動層乾燥造粒を可及的低温度、例えば30〜55℃で実施することは周知であった(必要ならば、前置報告で示した特公昭56-15215号公報を参照のこと。)ことを考慮すると、熱による品質劣化が予想される牛乳を噴霧して流動層乾燥造粒
を行うに際して、流動層乾燥造粒時の品温を「70℃以下」に限定することは、当業者において格別困難なことではない。
また、本願補正発明に係る効果は、引用例1及び2に記載の事項並びに周知の事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び2に記載の発明並びに上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(4)むすび
したがって、上記補正は、平成15年改正前特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年7月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成15年2月7日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】牛乳または牛乳状の牛乳由来物を他の食品原料に噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法。
【請求項2】低温に維持された牛乳または牛乳状の牛乳由来物を他の食品原料に噴霧しながら、品温70℃以下で流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-131132号公報(以下、「引用例」という。)には、「少なくとも澱粉及び/又は穀粉、糖類、粉末食用油脂、野菜粉末を含む粉末混合物に対して、融点30〜50℃の食用油脂を全量に対して1〜12重量%となるように液状で添加して混合した後、未乾燥液体原料をバインダーとして噴霧ノズルより供給しながら混合・造粒することを特徴とする顆粒状インスタントスープ又はインスタントソースの製造法。」(請求項1)、「未乾燥液体原料が、肉エキス及び/又はブイヨン、或いは乳製品である請求項1記載の製造法。」(請求項2)、「乳製品が、総固形分量5〜14重量%の牛乳水溶液若しくは市販特濃牛乳である請求項2記載の製造法。」(請求項4)、「製造例1 第1表に示す原材料のうち、食用油脂としての水添ナタネ油(融点40℃)以外の粉末原料をミキサーで混合し、これに前記水添ナタネ油を70℃で加温溶解させ液状で添加して混合した後、未乾燥液体原料バインダーとしてチキンエキス(総固形分量25重量%)或いは市販3.5牛乳(総固形分量12重量%)を噴霧ノズルより供給しながら、下記の条件で流動層にて造粒・乾燥・冷却して、良好なチキン風味或いはミルク風味を有する顆粒状のインスタントコーンスープAとBを得た。・・・〔造粒・乾燥・冷却条件〕・・・ ・造粒時間:8分 ・乾燥吸気温度:120℃ ・乾燥時間:14分 ・・・」(段落0016及び0017)、及び「本発明の方法によれば、風味豊かなエキス/ブイヨン・乳製品などの未乾燥液体原料をバインダーとして噴霧ノズルより供給しながら造粒することにより、原料素材の良好な香り、風味が付与された顆粒状インスタントスープ又はインスタントソースを製造することができる。また、本発明の方法によれば、バインダーの粘着力、結着力によって粉末混合物の顆粒形成が促進され、造粒時間を短縮することができる。」(段落0024)と記載され、さらに、表1には、コーンパウダー、澱粉、脱脂粉乳、乳糖、食塩、デキストリン等の原材料とその配合量が記載されている。
上記の記載からみて、引用例には、「少なくとも澱粉及び/又は穀粉、糖類、粉末食用油脂、野菜粉末を含む粉末混合物に対して、融点30〜50℃の食用油脂を全量に対して1〜12重量%となるように液状で添加して混合した後、牛乳をバインダーとして噴霧ノズルより供給しながら流動層にて造粒、乾燥することを特徴とする顆粒状インスタントスープ又はインスタントソースの製造法」という発明が記載されているといえる。

(3)対比・判断
(本願発明1について)
本願発明1と引用例に記載の発明を対比すると、両者は、牛乳を他の食品原料に噴霧しながら、流動層乾燥造粒を行うことを特徴とする顆粒食品の製造方法の点で一致し、前者では、品温70℃以下の条件下で流動層乾燥造粒を行うのに対して、後者は、流動層乾燥造粒を行っているときの品温が不明である点で、両者は相違する。
上記相違点について検討する。
各種食品原料の粉末を流動層乾燥造粒法を用いて顆粒化するとき、褐変防止、香気成分の揮散防止、風味劣化の防止等のために流動層乾燥造粒を低温下(例えば、30〜60℃程度)で行うことは、本願出願前に当業者において周知であった(必要なら、例えば特公昭56ー15215号、特開平3-206870号、特開平1-269469号及び特開平11ー313657号公報参照。)ことから、品温70℃以下の条件下で流動層乾燥造粒を行うことは当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明1に係る効果は、引用例に記載された事項から予測される範囲内のものであり、格別優れているとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用例に記載された事項及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(本願発明2について)
本願発明2は、本願発明1に係る「牛乳」に「低温に維持された」という事項を付加したものであるが、牛乳を低温に維持して保存することは当業者の技術常識であり、かつ、流動層乾燥造粒において、液体を予熱することなくそのままの温度状態で噴霧することは極く普通のことであるから、流動層乾燥造粒法により顆粒食品を製造するにあたって、低温に維持された牛乳を噴霧に供することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願発明2に係る効果は、引用例に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本願発明2は、引用例に記載された事項及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項3ないし5について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-19 
結審通知日 2006-04-20 
審決日 2006-05-10 
出願番号 特願2000-345155(P2000-345155)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 河野 直樹
阪野 誠司
発明の名称 顆粒食品の製造方法、コーヒー顆粒およびココア顆粒  
代理人 深井 敏和  
代理人 深井 敏和  

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