• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1138785
審判番号 不服2003-20560  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-23 
確定日 2006-06-19 
事件の表示 平成 9年特許願第350593号「磁気ヘッドの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月12日出願公開、特開平11- 7608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年12月19日(国内優先権主張平成9年4月25日)の出願であって、平成15年8月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成15年10月23日に審判請求がされるとともに、平成15年11月25日付けで手続補正がなされたものである。
平成15年11月25日付け手続補正は、補正前の請求項1の「前記非磁性絶縁層」を「前記非磁性ギャップ層」と補正して誤記を訂正し、補正前の請求項1の「集束イオンビームを該ポールティップの外から側部に向けて移動しながら膜厚方向に照射することにより」を「選択的に集束イオンビームを該ポールティップの外から側部に向けて移動しながら膜厚方向に照射することにより」と補正して明りょうにするものであるので、特許法第17条の2第4項第3号及び第4号に規定する誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本願の請求項1乃至10に係る発明は、平成15年11月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、それぞれ本願特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 ウェハの上に下部磁極を形成する工程と、
前記下部磁極の上に非磁性ギャップ層を形成する工程と、
前記非磁性ギャップ層の上で、非磁性絶縁層に挟まれるコイルを形成する工程と、
先端が細く且つ前記非磁性ギャップ層上でポールティップを有する上部磁極を前記非磁性絶縁層の上に形成する工程と、
前記ポールティップの側部とその直下の前記非磁性ギャップ層及び前記下部磁極に選択的に集束イオンビームを該ポールティップの外から側部に向けて移動しながら膜厚方向に照射することにより、前記ポールティップの幅を狭くするとともに、前記ポールティップの側面直下から外側への領域の前記下部磁極に凹部を形成して該凹部に挟まれた前記下部磁極の幅を前記ポールティップの幅に揃える工程と、
前記凹部に充填するとともに、前記上部磁極及び前記下部磁極を覆う非磁性絶縁材よりなる保護層を形成する工程と
を有することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。」

2 引用例
(1) 原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-296331号公報(以下「引用例1」という。)には、「シールド付き書き込みポール構造を持つ磁気ヘッドアセンブリ」に関して次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付加したものである。)
(ア)「【0008】【課題を解決するための手段】この発明によれば、薄膜読み取り/書き込み磁気ヘッドアセンブリは、誘導型書き込みヘッドとMRセンサ素子で形成された磁気抵抗効果型読み取りヘッドを含んでいる。誘導型ヘッドは、パーマロイのような強磁性材料で出来たそれぞれP1およびP2層と称する第一および第二のポールを含んでおり、書き込み用変換ギャップを持つ磁気回路を形成する。この発明に伴って、P1ポール層およびP1ポールの下部から張り出し好ましくはパーマロイで出来たシールド部分とを含んで、一体の段付き構造が提供される。(後略)」
(イ)【0009】【発明の作用】書き込みはみ出し磁界が、P1層と第二のデポジットされたP2ポール層との間に形成された書き込み変換ギャップの領域におけるP1層の上表面によって定まることは公知である。薄膜磁気ヘッドを支承するエアベアリングスライダのエアベアリング面でP1ポールの幅が張り出しシールド部分S2の幅に比較して狭くなっていることにより、誘導型書き込みポール対P1・P2により誘起された書き込み磁界の側方へのはみ出しが減少する。側方はみ出し磁束は、書き込み中のデータトラックのエッジのところでスキューした側方遷移として現れがちである。与えられたトラック間隔に対して、隣接トラックトランジションの側縁からの望ましくない信号は減少するであろう。書き込みはみ出し磁界の減少は、データ信号記録を改良し、データトラックをより狭くでき、それによりより高いトラック密度を実現する。」
(ウ)「【0014】ポールとシールドの一体結合構造により、書き込みモード時に発現するはみ出し磁界の大きさが顕著に減少する。ポール/シールド構造体が段付き形状をなし、書き込みギャップの領域でP1層の幅が狭くP1ポールの頂面が小さくなっているので、はみ出し磁界の量が減じられる。(後略)
【0015】(前略)P1ポール層部分42は、底面シールド部分44より狭く、その幅は、製造誤差の許す限りP2ポール層48の幅に近づける。」
(エ)「【0017】図3を参照して、読み取り書き込みヘッドアセンブリは、例えば、アルミナ-チタン-カーバイドの複合材料のような絶縁材料の基板82を有して出来ている。(後略)」(実施例の項)
(オ)「【0019】(前略)次いで、パーマロイのような適当な軟磁性材料で出来た書き込みポール/磁気シールド一体結合構造98がスパッタリング、蒸着、めっき、その他適宜な手段で第二アルミナ絶縁層88Bの上に形成される。シールド付きP1ポール構造体98の段付き形状は、後述するように、適宜の順次処理工程により形成される。Al2O3のような第三絶縁層100が、十分な厚さのシールド付きP1ポール98の上にデポジットされ、書き込み変換ギャップ100を形成する。それから、導電コイル102が適当な巻数の銅または他の適当な材料でデポジットされ、パターン取りされ、絶縁材料の層104、106の中に埋設される。この絶縁材料は、加熱硬化したホトレジストであってもよい。書き込み用P2ポール層108は、P1ポール層98に後端結合部(図示せず)で接触しており、連続的な磁気回路を形成している。P2ポール層108の上には、絶縁保護外皮(図示せず)が設けられる。」(実施例の項)
(カ)「【0023】段付きの書き込みポール/シールド一体結合構造体の構造を形成するためのこの発明に従った他の方法を図8〜10に示す。強磁性体層46(後にP1ポール層部分42と張り出し磁気シールド部分44になる)が絶縁基板(図示せず)の上に総厚さtになるまでデポジットされる。書き込みギャップを形成するために、強磁性体層46の上にAl2O3のような絶縁層100がデポジットされる。図3を参照して述べたように、コイル102、絶縁層104、106、そしてP2ポール層48とP1ポール層42の間の後端結合部が形成される。最終マスク層140が、ホトレジストまたはチタンその他の適当な材料を使ってデポジットされパターン取りされる。別法として、P2ポール層は、製造中、P2ポール層の仕上がり厚さより厚く作ることもでき、それによりセルフアラインマスクを提供して別個のマスク工程の必要性をなくすことができる。例えば、イオンビームエッチングまたはリアクティブイオンエッチングにより、P2ポール層48、書き込みギャップ絶縁材料100、P1ポール層42の一部を除去する。これらの層は、層140のホトレジストパターン取りにより露光されたところが取り除かれる。エッチングは、層48および100が完全に突き抜けるまで続けられる。エッチングは、層46の半ばで中止し、厚さd1の書き込みポール部分42と厚さd2のシールド部分44を有し書き込みギャップのところで定義される幅wの延長体を有する異形断面のシールド44付きP1ポール42を残す。(後略)」(実施例の項)

(2) 同じく引用された特開平3-296907号公報(以下「引用例2」という。)には、「磁気ヘッドおよびその製造方法」に関して次の事項が記載されている。
(サ)「磁気記録媒体への磁気情報の記録、再生動作を行なう磁気ヘッドにおいて、媒体との摺動面の一部に一つ以上の溝が設けられており、この溝は収束イオンビームエッチングにより加工されていることを特徴とする磁気ヘッド。」(特許請求の範囲の請求項1)
(シ)「上記第一の目的は磁気ヘッドの媒体との摺動面の一部に一以上の溝を設けることにより達成される。より具体的には、磁気ヘッドの磁気ギャップあるいは感磁部近傍に、局所的な凹部を設け、これらの幅を規定する。本発明の好ましい状様ではこれらの溝あるいは凹部は収束イオンビーム(FIBと言う)により加工される。また、本発明の好ましい態様ではこれらの溝のあるいは凹部に物質が充填される。」(課題を解決するための手段の項、公報3頁左下欄16行〜右下欄2行)
(ス)「摺動面の一部のみに溝を形成する際に、収束イオンビームを用いれば、加工歩留り、精度が向上する。」(作用の項、公報4頁左上欄16行〜18行)
(セ)「スライダーレール上にレジストを塗布することなく、収束されたエネルギーを有するビームを用いて磁気ヘッドの形状を加工すれば、所望の形状を歩留まり良く加工することができる。」(作用の項、公報4頁左下欄10行〜13行)
(ソ)「第1図はフォーカスドイオンビームエッチング法(以下FIBと略す)により加工した後の誘導型薄膜ヘッドの磁極部を摺動面側から観察した斜視図である。」(実施例の項、公報4頁右下欄2行〜5行)

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1には、上記2(ア)(オ)(カ)(下線部参照)に摘示した記載事項によれば、
「薄膜読み取り/書き込み磁気ヘッドアセンブリの形成方法であって、
書き込みヘッドは、強磁性材料で出来たそれぞれP1ポール層およびP2ポール層と称する第一および第二のポールを備え、P1ポール層部分およびP1ポールの下部から張り出したシールド部分とを含む段付きの書き込みポール/シールド一体結合構造体を備え、P2ポール層の上には絶縁保護外皮が設けられるものであり、
上記書き込みポール/シールド一体結合構造体を形成するための工程は、
強磁性体層(後にP1ポール層部分と張り出し磁気シールド部分になる)が絶縁基板の上にデポジットされる工程と、
書き込みギャップを形成するために、強磁性体層の上に絶縁層がデポジットされる工程と、
コイル、コイルを埋設する絶縁材料の層、そしてP2ポール層とP1ポール層の間の後端結合部が形成される工程と、
最終マスク層が、デポジットされパターン取りされる工程と、
イオンビームエッチングにより、P2ポール層、書き込みギャップ絶縁層、P1ポール層の一部を除去する工程であって、上記エッチングは、P2ポール層および書き込みギャップ絶縁層が完全に突き抜けるまで続けられ、強磁性体層の半ばで中止し、厚さd1の書き込みポール部分と厚さd2のシールド部分を有し書き込みギャップのところで定義される幅の延長体を有する異形断面のシールド付きP1ポールを残す工程と、
を有する方法。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「薄膜読み取り/書き込み磁気ヘッドアセンブリの形成方法」「絶縁基板」「P1ポール層、P1ポール層部分およびP1ポールの下部から張り出したシールド部分とを含む段付きの書き込みポール/シールド一体結合構造体」「書き込みギャップ絶縁層、絶縁層」「P2ポール層」「絶縁保護外皮」は、それぞれ本願発明の「磁気ヘッドの製造方法」「ウェハ」「下部磁極」「非磁性ギャップ層」「上部磁極」「保護層」に相当している。
引用例1に記載された発明の「コイルを埋設する絶縁材料の層」は、本願発明の「非磁性絶縁層」に相当している。
引用例1に記載された発明の「デポジット」とは、「堆積」の意味であるから、引用例1の「強磁性体層(後にP1ポール層部分と張り出し磁気シールド部分になる)が絶縁基板の上にデポジットされる工程」は、本願発明の「ウェハの上に下部磁極を形成する工程」に相当している。
同様に、引用例1の「書き込みギャップを形成するために、強磁性体層の上に絶縁層がデポジットされる工程」は、本願発明の「下部磁極の上に非磁性ギャップ層を形成する工程」に相当している。
引用例1に記載された発明の「P2ポール層」は、媒体摺動面側のギャップ近傍では、先端部を構成しているから、P2ポール層の先端部はポールティップといえる。
引用例1の発明は、「コイル、コイルを埋設する絶縁材料の層、そしてP2ポール層とP1ポール層の間の後端結合部が形成される工程」を有しているから、本願発明の「非磁性ギャップ層の上で、非磁性絶縁層に挟まれるコイルを形成する工程と、先端が細く且つ前記非磁性ギャップ層上でポールティップを有する上部磁極を前記非磁性絶縁層の上に形成する工程」に相当する工程を有している。
引用例1に記載された発明は、「イオンビームエッチングにより、P2ポール層、書き込みギャップ絶縁層、P1ポール層の一部を除去する工程であって、上記エッチングは、P2ポール層および書き込みギャップ絶縁層が完全に突き抜けるまで続けられ、強磁性体層の半ばで中止し、厚さd1の書き込みポール部分と厚さd2のシールド部分を有し書き込みギャップのところで定義される幅の延長体を有する異形断面のシールド付きP1ポールを残す工程」を有しており、ここでイオンビームによるエッチングはマスク等を用いて選択的にイオンビームを照射するものであることは明らかであるから、「ポールティップの側部とその直下の前記非磁性ギャップ層及び前記下部磁極に選択的に、イオンビームを、膜厚方向に照射することにより、ポールティップの幅を狭くするとともに、前記ポールティップの側面直下から外側への領域の下部磁極に、膜厚の薄い部分を形成して、該膜厚の薄い部分に挟まれた前記下部磁極の幅を前記ポールティップの幅に揃える工程」を有しているといえる。
引用例1に記載された発明は、「P2ポール層の上には絶縁保護外皮が設けられるもの」であるから、「上部磁極を覆う非磁性絶縁材よりなる保護層を形成する工程」を有しているといえる。
してみると、本願発明と引用例1に記載された発明は、
「ウェハの上に下部磁極を形成する工程と、
前記下部磁極の上に非磁性ギャップ層を形成する工程と、
前記非磁性ギャップ層の上で、非磁性絶縁層に挟まれるコイルを形成する工程と、
先端が細く且つ前記非磁性ギャップ層上でポールティップを有する上部磁極を前記非磁性絶縁層の上に形成する工程と、
前記ポールティップの側部とその直下の前記非磁性ギャップ層及び前記下部磁極に選択的にイオンビームを膜厚方向に照射することにより、前記ポールティップの幅を狭くするとともに、前記ポールティップの側面直下から外側への領域の前記下部磁極に膜厚の薄い部分を形成して膜厚の薄い部分に挟まれた前記下部磁極の幅を前記ポールティップの幅に揃える工程と、
前記上部磁極を覆う非磁性絶縁材よりなる保護層を形成する工程と
を有する磁気ヘッドの製造方法。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。
(相違点1) イオンビームについて、本願発明では、「集束イオンビーム」を用いて「ポールティップの外から側部に向けて移動しながら」膜厚方向に照射することにより、「凹部」を形成すると特定しているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのように特定されていない点。
(相違点2) 保護層の形成について、本願発明では、「凹部に充填するとともに、上部磁極及び下部磁極を覆う非磁性絶縁材よりなる保護層を形成する」と特定しているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
(相違点1について)
引用例1に記載された発明は、書き込みはみ出し磁界が、ギャップの領域における下部磁極の上表面の幅によって定まるので、膜厚の薄い部分に挟まれた下部磁極の幅を、上部磁極のポールティップの幅に揃えることにより、はみ出し磁界の量を減少させようとする目的(上記段落9,14,15)で、ギャップ領域における下部磁極の幅を規定するためにその周辺に膜厚の薄い部分を設けている。そうすると、引用例1の発明において、ギャップの領域近傍で膜厚の薄い部分が形成されていれば足り、ギャップの領域近傍から離れた領域では、膜厚が薄くなくてよいことが明らかであるから、引用例1に記載された膜厚の薄い部分の例は、段と記載されているが、これを凹部とすることは当業者が必要に応じ適宜なし得ることである。
また、磁気ヘッドの技術分野において、磁極の一部を選択的に除去して溝あるいは凹部を形成するために、集束イオンビームを用いて加工することは、引用例2に記載されている。なお、引用例2では、「収束イオンビーム」と記載されているが、「収束イオンビーム(FIBと言う)」「フォーカスドイオンビームエッチング法(以下FIBと略す)」と記載されているように、本願発明でいう「集束イオンビーム(Focussed Ion Beam:FIB)」のことであることは明らかである。
引用例1にイオンビームによるエッチングが例示されているのであるから、さらに精度の向上等のために上記集束イオンビームによる加工を採用することは当業者が必要に応じ適宜なし得ることであって、集束イオンビームを用いて凹部を形成することは、当業者が必要に応じ適宜なし得ることである。
そして、集束イオンビームの技術において、集束イオンビームを用いると除去された物質が、すでに集束イオンビームの線走査を行った部分に再付着していくことが、従来より周知の事項であって、最後に集束イオンビームが照射される箇所には再付着がないことが技術常識ともいえるから(必要とあれば、例えば特開昭60-193341号公報(従来技術の項の記載)等参照)、引用例1に記載された発明において、集束イオンビームを採用した際、下部磁極の幅を精度よく形成するように、ポールティップの外から側部に向けて移動しながら照射することは、当業者であれば最も普通に採用する方向にすぎない。

(相違点2について)
引用例1には、保護層について上部磁極を覆うことが明記されているのみで他の部分についての詳しい記載はないものの、薄膜読み取り/書き込み磁気ヘッドの誘導型磁気ヘッドの素子部分全体を覆うように保護層を設けることは常套手段であるから、引用例1に記載された発明において、膜厚の薄い部分に挟まれた下部磁極の幅をポールティップの幅に揃える工程の後に、膜厚の薄い部分を含む下部磁極及び上部磁極を覆う保護層を形成することは当業者が適宜なし得ることにすぎない。

上記相違点1及び2を総合的に検討しても、本願発明の効果は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項から当業者であれば予測される範囲内であり、格別顕著なものではない。
なお、請求人は、本願発明は、集束イオンビームを使用しているため部分的に照射できマスクを介してエッチングする必要がない効果を主張しているが、当該効果は、集束イオンビーム技術自体の特長として周知のことであり、引用例2から予測しうる作用効果にすぎない。
また、請求人は、本願発明と引用例2の発明とは集束イオンビームの照射する方向が異なる旨等を主張しているが、磁気ヘッドの磁極の加工形態及びイオンビームを膜厚方向に照射することは引用例1に示されているとおりであって、引用例1に記載された発明のイオンビームによる加工に、引用例2の集束イオンビーム技術を採用することは、上述のように当業者が容易になし得ることであるから、請求人の主張は採用することができない。しかも、効果として主張する、集束イオンビームの照射による磁気抵抗効果素子の破壊を防止する効果について検討するに、その前提となる接地や磁気抵抗効果素子は本願発明を特定する事項でもないので、請求人の主張は当を得ていない。
また、請求人は、磁極をトリミングする前に上部磁極の先端部分がポールティップの形状にパターニングされているので、集束イオンビームにより磁極をトリミングする時間が下部磁極の幅をポールティップの幅に揃えるだけであるから短時間で済む旨主張している。しかしながら、「トリミングする前に上部磁極の先端部分がポールティップの形状にパターニングされている」ことは、請求項1に明確に記載されてないから、請求項の記載に基づかない主張であり、また引用例1に記載された発明が「先端が細く且つ前記非磁性ギャップ層上でポールティップを有する上部磁極」を形成する工程を備えていることは、上記(1)のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

4 むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-28 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-12 
出願番号 特願平9-350593
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 豊  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 川上 美秀
相馬 多美子
発明の名称 磁気ヘッドの製造方法  
代理人 岡本 啓三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ