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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1138795 |
審判番号 | 不服2004-5946 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-12-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-25 |
確定日 | 2006-06-19 |
事件の表示 | 特願2000-156165「多層リードフレーム及びこれを用いた半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 7日出願公開、特開2001-339029〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成12年 5月26日に出願したものであって、その請求項1〜4に係る発明は、平成15年12月 8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 ヒートスプレッダとインナーリードとを積層して成る多層リードフレームにおいて、 前記ヒートスプレッダは導電性材料からなり、 前記インナーリードの先端に向かう中途部に、前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面に対して上下方向に屈曲した折り曲げ部を設け、全ての該インナーリードの先端部を前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面の周縁部に接着したことを特徴とする多層リードフレーム。」 2.刊行物及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に国内において頒布された刊行物である実願平4-67411号(実開平6-31157号)のCD-ROM(以下、「刊行物」という。)には、図1〜図3が示されると共に、 以下の事項が記載されている。 (a)段落【0001】に、 「本考案はLSIリードフレームに関し、特に放熱性の向上を主目的とした多層のLSIリードフレームに関する。」 (b)段落【0002】に、 「【従来の技術】 従来の多層のLSIリードフレームは、図5及び図6に示すように、LSIチップをマウントするアイランド部分を除去したLSIリードフレーム101に、パッケージの熱抵抗を下げる、すなわち放熱性を向上される為のヒート・スプレッダ(放熱板)102を、絶縁フィルム106によって接続し、アイランドを形成している。したがって、電気的な接合が全く無いため、ヒートスプレッダ102、すなわちアイランドの電位はフローティングとなっている。」 (c)段落【0011】〜【0015】に、 「図1は本考案の一実施例の樹脂封入後の断面図である。LSIチップ1は、電源用ヒートスプレッダ6、及び接地用ヒートスプレッダ9をアイランドとして、絶縁性のマウント材でマウントされている。本実施例の多層のLSIリードフレームにおいて、信号用リード4と電源用ヒートスプレッダ6または接地用ヒートスプレッダ9は、絶縁フィルム7によって、電気的に絶縁して接続されている。 一方、電源用内部リード5は電源用ヒートスプレッダ6と電気的に接続されている。また、接地用内部リード5は接地用ヒートスプレッダ9と電気的に接続されている。LSIチップ1と、信号用リード4及び電源用内部リード(接地用内部リード)5は、ボンディングワイヤ3によって、電気的に接続されている。ワイヤボンディング工程後、封入樹脂2によって、LSIチップ1は樹脂封入される。 図2はヒートスプレッダの形状を示す平面図である。本実施例において、ヒートスプレッダは電源用ヒートスプレッダ6と接地用ヒートスプレッダ9に2分割されており、絶縁フィルム7で位置固定することによって、2個のヒートスプレッダ6,9はLSIチップ1をマウントするアイランドを形成している。 尚、絶縁フィルム7はLSIリードフレームの内部リードと接着するヒートスプレッダ6,9の周辺部を覆っているが、電源用内部リード及び接地用内部リード5が接続される部分8には、存在しない。 図3は、LSIリードフレームとヒートスプレッダ6,9が一体形状になる前の形状を示す図である。LSIリードフレームの内部リード4,5は、パターン形成時に図3に示すように曲げられる。」 3.対比・判断 図3において、内部リードは、その先端部が内部リードの中途からLSIチップのマウントされているヒートスプレッダの表面に対して上下方向に曲げられているので、図1〜図3において、上記摘記事項(a)〜(c)を総合的に考慮すると、刊行物には、 「電源用ヒートスプレッダと接地用ヒートスプレッダに2分割されたヒートスプレッダと内部リードとを積層して成る多層のLSIリードフレームにおいて、信号用リード、電源用内部リード及び接地用内部リードの中途から上下方向に曲げられた先端部と、信号用内部リードの先端部をヒートスプレッダのLSIチップがマウントされている面の周縁部に接着したことを特徴とする多層リードフレーム」の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。 ここで、本願発明と刊行物発明とを対比する。 刊行物発明において、「電源用ヒートスプレッダと接地用ヒートスプレッダに2分割されたヒートスプレッダ」、「内部リード」、「LSIチップ」、「マウント」は、各々本願発明の「スプレッダ」、「インナーリード」、「半導体素子」、「搭載」に相当する。また、刊行物発明の内部リードの中途から上下方向に曲げられた部分が、本願発明の「折り曲げ部」に相当し、刊行物発明の「内部リード」は、「信号用リード」、「電源用内部リード」、「接地用内部リード」のいずれかであり、信号用内部リードが、絶縁フィルムを介してヒートスプレッダのLSIチップがマウントされている面の周縁部に接着した構成は、本願発明の「該インナーリードの先端部を前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面の周縁部に接着したこと」に相当する。 とすると、両者は、「ヒートスプレッダとインナーリードとを積層して成る多層リードフレームにおいて、前記インナーリードの先端に向かう中途部に、前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面に対して上下方向に屈曲した折り曲げ部を設け、該インナーリードの先端部を前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面の周縁部に接着したことを特徴とする多層リードフレーム。」の点で一致し、以下の各点で相違する。 相違点(1) 本願発明では、ヒートスプレッダは導電性材料であるのに対して、刊行物発明では、ヒートスプレッダの導電性については明記していない点 相違点(2) 本願発明では、全てのインナーリードの先端部が前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面の周縁部に接着しているのに対して、刊行物発明では、信号用リードが半導体素子搭載面の周縁部に接着している点 以下、上記各相違点について検討する。 相違点(1)について 半導体実装分野においてヒートスプレッダとして導電性材料を用いることは慣用技術である。また、刊行物発明において、信号用内部リードと電源用ヒートスプレッダまたは接地用ヒートスプレッダを絶縁フィルムを介して接着するのは、両者を電気的に絶縁するためであり、他方、接地用内部リードは接地用ヒートスプレッダと、電源用内部リードは電源用ヒートスプレッダと直接接続することは電気的に接続することを意味するのであるから、各ヒートスプレッダは、導電性材料であることを示唆している。 したがって、刊行物発明のヒートスプレッダとして導電性材料を使用することは、当業者が容易に想到し得る事項と認められる。 相違点(2)について 刊行物発明において、「電源用内部リード」、「接地用内部リード」は、「電源用ヒートスプレッダ」、「接地用ヒートスプレッダ」と各々電気的接続を得るために、信号用内部リードとヒートスプレッダの間に介在する絶縁フィルムを取り除き直接接続する構造となっているが、摘記事項(b)に記載されているように、従来技術においては、ヒートスプレッダに電気的接続を要しない構成も存在し、その場合には、「信号用内部リード」、「電源用内部リード」、「接地用内部リード」といったリードの区別は必要ではなく、すなわち全てのインナリードの先端部は、絶縁フィルムを介して、ヒートスプレッダの半導体素子搭載面の周縁部に接着している構成となることは明らかである。 したがって、刊行物発明において、全てのインナーリードの先端部が前記ヒートスプレッダの半導体素子搭載面の周縁部に接着している構成とすることは、所望の電気的接続を考慮して決定しうる設計的事項である。 また、本願発明によるヒートスプレッダの厚みを従来よりも薄くすることができ、これによりヒートスプレッダの軽量化がされるので、リードフレーム、及び該リードフレームをそなえた半導体装置も軽量化することができるという効果についても、刊行物の記載から予測される程度のものであって格別なものではない。 したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2〜4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-23 |
結審通知日 | 2006-03-28 |
審決日 | 2006-04-10 |
出願番号 | 特願2000-156165(P2000-156165) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂本 薫昭 |
特許庁審判長 |
岡 和久 |
特許庁審判官 |
川真田 秀男 大嶋 洋一 |
発明の名称 | 多層リードフレーム及びこれを用いた半導体装置 |
代理人 | 岡本 啓三 |