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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1138819
審判番号 不服2002-19617  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-08 
確定日 2006-06-21 
事件の表示 平成 6年特許願第 19389号「電子図書館システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月29日出願公開、特開平 7-230466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年2月16日の出願であって、平成14年8月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年11月7日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月7日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年11月7日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
平成14年11月7日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成14年4月25日付の手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)について、以下のとおりの特許請求の範囲(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)に補正するものである。

(補正前の特許請求の範囲)
「【請求項1】
本の機能を擬似し、書籍情報を本のイメージで表示する計算機システムにおいて、
複数冊分の書籍情報を蓄積する大容量ファイルメモリと、
蓄積された書籍情報に対する検索情報を持つ書籍管理データベースとを具備し、
該検索情報には、著者名、出版社名、本の分野、本の様式、本の題名、出版年度のうちの1つ以上を含み、さらに、1つ以上のキーワードを含み、
著者名、出版社名、本の分野、本の様式、本の題名、出版年度のうちの1つ以上を含んだ第1の検索条件を入力するための第1の入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件に一致する検索情報にあるキーワードをリストとして提示する第1の書籍検索手段と、
提示されたキーワードのリストに対する第2の検索条件を入力するための第2の入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件と前記第2の検索条件の両者に一致する検索情報にある本の題名をリストとして提示する第2の書籍検索手段と、
提示された本の題名のリストから書籍を指定するための第3の入力手段と、
前記第3の入力手段にて指定された書籍に対応する書籍情報を前記大容量ファイルメモリから読み込んで表示する書籍表示手段と
を有することを特徴とする電子図書館システム。

【請求項2】
請求項1の電子図書館システムにおいて、
前記大容量ファイルメモリへの蓄積対象となる書籍情報を格納した媒体に、該書籍情報の検索情報が所定の様式で格納され、
該媒体から検索情報を抽出し前記書籍管理データベースに登録する手段と、
該媒体から書籍情報を抽出し前記大容量ファイルメモリに登録する手段と
を有することを特徴とする電子図書館システム。」

(補正後の特許請求の範囲)
「【請求項1】
本の機能を擬似し、書籍情報を本のイメージで表示する計算機システムにおいて、
複数冊分の書籍情報を蓄積する大容量ファイルメモリと、
蓄積された書籍情報に対する検索情報を持つ書籍管理データベースとを具備し、
該検索情報には、本の種別、本の分野、出版社名、著者名、出版年度、本の題名のうちの1つ以上を含み、さらに、1つ以上のキーワードを含み、
本の種別、本の分野、出版社名、著者名、出版年度、本の題名のうちの1つ以上を含んだ第1の検索条件を、本のイメージで別々のページで入力するための第1の入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件に一致する検索情報にあるキーワードをリストとして提示する第1の書籍検索手段と、
提示されたキーワードのリストに対する第2の検索条件を入力するための第2の入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件と前記第2の検索条件の両者に一致する検索情報にある本の題名をリストとして提示する第2の書籍検索手段と、
提示された本の題名のリストから書籍を指定するための第3の入力手段と、
前記第3の入力手段にて指定された書籍に対応する書籍情報を前記大容量ファイルメモリから読み込んで表示する書籍表示手段と
を有することを特徴とする電子図書館システム。

【請求項2】
請求項1の電子図書館システムにおいて、
第1の検索条件に含まれる6つの検索キーである、本の種別、本の分野、出版社名、著者名、出版年度、本の題名は、この順序で本のイメージのページで入力されることを特徴とする電子図書館システム。」

(2)本件補正の目的
本件補正が、特許法第17条の2第3項各号に掲げる事項を目的としたものであるかについて検討する。

(2-A)補正前後の請求項の対応関係について
審判請求人は、補正前後の請求項の対応関係について説明をしていないが、補正前後の請求項1の記載を対比すると、補正後の請求項1は、補正前の請求項1の発明特定事項である検索情報および第1の検索条件に含まれる「本の様式」を「本の種別」とするとともに、補正前の請求項1の発明特定事項である第1の入力手段について、「本のイメージで別々のページで」との限定を付加したものとなっており、補正後の請求項1は、補正前の請求項1について、特許請求の範囲の減縮および誤記の訂正をしたものと認められるから、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に対応すると解される。
してみると、補正後の請求項2は、補正前の請求項2に対応するものと解される。

(2-B)請求項2に係る補正について
(ア)そこで、補正後の請求項2は、補正前の請求項2に対応するものとして、請求項2に係る補正の目的を検討する。

補正前後の請求項2の記載を比較すると、本件補正は、補正前の請求項2に記載された発明を特定するための発明特定事項である「前記大容量ファイルメモリへの蓄積対象となる書籍情報を格納した媒体に、該書籍情報の検索情報が所定の様式で格納され、該媒体から検索情報を抽出し前記書籍管理データベースに登録する手段と、該媒体から書籍情報を抽出し前記大容量ファイルメモリに登録する手段」を削除する補正事項を含んでいるので、当該補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項第2号に掲げる事項である、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとは認められない。

また、発明特定事項を削除する前記補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第3項第1号の請求項の削除、同第3号の誤記の訂正、同第4号の明りょうでない記載の釈明、を目的とするものでないことは明らかである。

(イ)なお、補正後の請求項2と補正前の請求項1および2とを対比すると、本件補正は、補正前の請求項2を削除するとともに、補正前の請求項1について「第1の検索条件に含まれる6つの検索キーである、本の種別、本の分野、出版社名、著者名、出版年度、本の題名は、この順序で本のイメージのページで入力される」との限定を付加して、新たな請求項2(補正後の請求項2)とする補正事項を含むものであるとも解されるが、そのような補正は、「一つの請求項を削除して新たな請求項をたてる」という態様の補正であり、たとえそれが全体として一つの請求項に記載された発明特定事項を限定する趣旨でされたものであるとしても、特許法第17条の2第3項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮」には当たらない。(知財高裁 平成17(行ケ)10192号判決参照。)
したがって、当該補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項第2号に掲げる事項である、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとは認められない。

また、当該補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第3項第1号の請求項の削除、同第3号の誤記の訂正、同第4号の明りょうでない記載の釈明、を目的とするものでないことは明らかである。

(2-C)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項各号に掲げる何れの事項をも目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年11月7日付の手続補正は上記のとおり決定をもって却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年4月25日付の手続補正により補正された明細書および図面の記載からみて、その請求項1に記載された以下のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。

「本の機能を擬似し、書籍情報を本のイメージで表示する計算機システムにおいて、
複数冊分の書籍情報を蓄積する大容量ファイルメモリと、
蓄積された書籍情報に対する検索情報を持つ書籍管理データベースとを具備し、
該検索情報には、著者名、出版社名、本の分野、本の様式、本の題名、出版年度のうちの1つ以上を含み、さらに、1つ以上のキーワードを含み、
著者名、出版社名、本の分野、本の様式、本の題名、出版年度のうちの1つ以上を含んだ第1の検索条件を入力するための第1の入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件に一致する検索情報にあるキーワードをリストとして提示する第1の書籍検索手段と、
提示されたキーワードのリストに対する第2の検索条件を入力するための第2の入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件と前記第2の検索条件の両者に一致する検索情報にある本の題名をリストとして提示する第2の書籍検索手段と、
提示された本の題名のリストから書籍を指定するための第3の入力手段と、
前記第3の入力手段にて指定された書籍に対応する書籍情報を前記大容量ファイルメモリから読み込んで表示する書籍表示手段と
を有することを特徴とする電子図書館システム。」

(2)引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された「安達淳、学術文献を対象とした電子図書館システムの構成法、情報処理学会研究報告(93-FI-29)、日本、社団法人情報処理学会、1993年5月18日、Vol.93,No.39、pp.51-58」(以下、「引用例1」という。)、「米村俊一、小川克彦、ブックメタファを用いたガイドライン検索システム、第6回ヒューマン・インタフェース・シンポジウム論文集、日本、1990年10月24日、Vol.6th、pp.235-238、jois cn:91a0170191」(以下、「引用例2」という。)、特開昭64-1030号公報(以下、「引用例3」という。)、特開平3-131974号公報(以下、「引用例4」という。)には、それぞれ図面とともに次の事項が記載されている。

(2-1)引用例1
(ア)「電子媒体による情報蓄積とその処理の一般化が進行していく中で、「電子図書館」に対する期待が高まってきている[1]。 ・・・(途中省略)・・・
本稿では、筆者らが現在試作している情報システムについて、その設計思想と稼働中のプロトタイプシステムを紹介する。このシステムでは、主に学術的な情報に限って考えており、機械可読化された学術論文が「電子図書館」での蓄積の対象となる。また、蓄積された文書情報は、高速の広域ネットワークを介して直接利用者のワークステーション等で検索・表示・印刷することが可能なようにシステムを設計している。 ・・・(途中省略)・・・
本稿で述べるオンライン電子図書館システムの基本的特性は以上のようなものであるが、まず第2節ではシステムの置かれる環境と基本的な構想について述べる。第3節では核となる画像データベース、第4節ではシステムの実装方針について紹介し、最後に今後の進め方について述べたい。」(第52頁左欄第2行〜第33行)

(イ)「基本的な構想としては、センターの中核システムと利用者のワークステーションをネットワークで結合したclient-server型の構成をとっている。サービスセンター側のシステムは、学術図書や雑誌等のすべてのページを画像データベースに蓄積し、オンラインで利用者に情報提供するような画像データベースを中核に位置付けており、一時情報の配布には広帯域の広域ネットワーク(WAN)を介し、利用者に対して直接的に行えるような形態を考えている。図1にシステム全体像を示している。図中Bの部分に学術雑誌等のページをラスター情報で蓄積し、さまざまな広域ネットワークやLANを通して利用者に直接原文献を送り届けようとするものである。 ・・・(途中省略)・・・ 本プロトタイプでは今のところ二次情報の延長線上に全文データを位置付けている。」(第52頁左欄第36行〜同頁右欄第35行)

(ウ)「プロトタイプでの検索機能は大きく二つに分けられる。従来の二次情報データベース流のアプローチと、雑誌文献への直接的アクセスの二つである。
図1からわかるように、オンライン電子図書館システムは、従来の二次情報文献データベース(A)を基本として、これを一次情報と直結させたものと見ることもできる。
オンライン二次情報データベースでは、伝統的にキーワード等を用いて主題によるアクセスを中心に利用者インターフェースや検索機能が考えられてきた。プロトタイプでは、このような形での論文の検索も基本機能として実装している。現在稼働しているプロトタイプでの検索例を示したのが図2である。キーワードによる文献検索を行い論文情報の簡略表示とその詳細情報を行った結果である。
しかし、研究者の日常の活動を考えると、多くの場合、入手したい論文名、雑誌名等は明らかになっていることが多く、主題からよりも、書誌情報に基づく原文献への直接アクセスが主な関心事である。現在のところ、学術情報センターの持つ学術雑誌総合目録[4]が、唯一この情報を提供するデータベースであり、プロトタイプでもこれを内蔵している。このような観点から、文献書誌情報からの一次情報の直接的な入手プロセスを全面的に電子化することが、本プロトタイプでの主要な実現項目になる。この例を示したのが図3である。ここでは書誌情報の検索から、必要な巻、号、ページ番号等を指定して、直接画像情報を検索している。
2.4 データベースサーバの蓄積するもの
以上をまとめると、本システムのデータベースサーバでは、
- 二次情報データ(論文単位の文献情報)
- 雑誌に関する書誌データ(雑誌目録所在情報)
- 画像データ(雑誌のすべてのページの画像情報、ラスターないしPostScript)
- 全文データ(論文単位のテキスト情報)
の情報を統合的に扱えるようなシステムが望まれる。特に、画像情報や全文情報にアクセスするために必要となる二次情報(文献情報および書誌所在情報)を、一次情報へのアクセスのためにいかに再構成するかが、電子図書館システムの成否を分ける。また、各種の二次情報データベースの統合型の利用者インタフェース機能などもシステムの基本として重要である。」(第53頁右欄第13行〜第55頁左欄第3行)

(エ)「学術雑誌のページとしての一次情報へのアクセスには次の四種が考えられる。
- 雑誌や会議録のタイトル・巻・号とそのページから所望の論文を得る。
- 二次情報を検索し、キーワード等から。
- 目次からの探索。
- 引用関係による探索。あるいはハイパーテキスト流のアプローチ。
後の二つは従来の検索情報システムには余り見られない機能であるが、今後の情報サービスシステムでは重要な機能であろう。理想的にはこれら四つのアクセスに対応可能な画像データベースとして設計されていることが望まれる。
本プロトタイプでは、なるべく現行の紙媒体の冊子の感覚を活かすように利用者インタフェースを実装する方針を採用した。すなわち、利用者は、目次のページから順々に冊子をブラウズしていくことも可能であるし、特定の論文の第一ページに位置付けた後、ひとつ前の論文の最後のページをめくることもできるようにと考えている。」(第55頁左欄第6行〜第56頁左欄第5行)

(オ)図2には、二次情報検索結果の例として、簡略情報表示ウィンドウに簡略的な論文情報をリスト形式で提示すること、および当該論文情報には、著者名<author>、本の様式<DTYP>、本の題名<journal>、出版年<YEAR>、論文名<title>、アブストラクト<abstract>等が含まれていることが示されている。

上記摘記事項を参酌するに、電子図書館システムが、本の機能を擬似し、画像データを表示する計算機システムであること((ア)、(イ)、(エ))、および、所望の文献を検索するに際しての検索条件を入力するための入力手段を有していること((ウ)、(エ))は明らかである。
上記摘記事項(イ)には「サービスセンター側のシステムは、学術図書や雑誌等のすべてのページを画像データベースに蓄積し、」と記載されていることから、画像データベースには複数冊分の画像データが蓄積されていることが明らかである。

してみれば、上記摘記事項から引用例1には、
「紙媒体の冊子の機能を擬似し、画像データを表示する計算機システムにおいて、
複数冊分の画像データを蓄積する画像データベースと、
蓄積された画像データに対する二次情報を持つ文献データベースサーバとを具備し、
該二次情報には、著者名、本の様式、本の題名、出版年のうちの1つ以上を含み、さらに、1つ以上のキーワードを含み、
検索条件を入力するための入力手段と、
前記文献データベースサーバを検索する画像データ検索手段と、
前記文献データベースサーバを検索し、検索結果である簡略的な論文情報をリスト形式で提示する手段と、
書籍に対応する画像データを前記画像データベースから読み込んで表示する表示手段と
を有する電子図書館システム。」(以下、「引用例1発明」という。)が開示されているものと認められる。

(2-2)引用例2
(カ)「ブックメタファの使用
システムユーザにとって、ソフトウェア操作の習得が容易であることが何よりも重要である。本システムでは、ソフトウェアの操作方法習得に関するユーザの記憶負担軽減を図るため、ソフトウェア操作環境として、ブックメタファを使用する。これに従って、システムの画面は見開きのルーズリーフ形式とし、ユーザの基本的な操作形式は、「本」の場合と同様に「ページをめくること」とする。」(第236頁左欄第14行〜第22行)

(キ)「文字列/キーワードによる検索
システムの検索機能を用いる方法には、文字列検索とキーワード検索の2種類がある。ここでは、キーワード検索を例として示す。キーワード検索では、図1に示したナビゲーションパネルのキーワード検索ボタンをクリックすることにより、ガイドライン本体にオーバーラップしてキーワード検索用の類義語辞書が呼び出される。この辞書は、画面の中を自由に移動可能である。類義語辞書は、図5に示すように、左ページがキーワードリスト、右ページには、上から、キーワード入力欄、検索開始ボタン、検索結果表示欄、類義語辞書on/offボタン、類義語表示欄が表示されている。例えば、キーワードリストより「項目レイアウト」の欄をクリックすることにより、キーワード入力欄に「項目レイアウト」というキーワードが自動的に書き込まれ、類義語表示欄には、「項目配置」という類義語が表示される。キーワード入力の際には、左ページのリストから選択せずに直接手入力することも可能である。」(第238頁左欄第1行〜第18行)

(2-3)引用例3
(ク)「2.特許請求の範囲
(1)検索キーワードを入力し、該検索キーワードに基づいて該当するファイルを検索出力するファイル検索方式であって、少なくとも1つの検索キーワードを入力する入力手段と、入力された検索キーワードに対応するファイル群を抽出する第1の抽出手段と、抽出されたファイル群中の前記検索キーワードを除くキーワード群を抽出する第2の抽出手段と、該第2の抽出手段により抽出されたキーワード群を表示する表示手段とを備えることを特徴とするファイル検索方式。
(2)第2の抽出手段はキーワード群の種類とその頻度数を抽出することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のファイル検索方式。
(3)更に表示されたキーワード群中の少なくとも1つを選択する選択手段とを備え、選択されたキーワードを前記入力手段で入力された検索キーワードに付加して前記第1の抽出手段で抽出されたファイル群を検索することを特徴とするファイル検索方式。」(特許請求の範囲)
(ケ)「上述した処理概要からCPU1の処理手順を説明すると、結局、第7図に示す様なフローチャートになる。以下、このフローチャートに従って実施例における検索処理を説明する。
ステップS1では先ず最初の検索キーワードを入力し、次のステップS2で、その検索キーワードを基にして検索処理を実行する。ステップS3では、各々のファイルに付随したキーワードからステップS1で入力された検索キーワード以外の集計をとり、ステップS4で検索結果と検索キーワード以外のキーワードをその頻度と共に表示する。(第3、4図)。ステップS5ではマウス3から入力された情報が検索キーワード追加のものであるのか、或いはコマンド入力であるのかを判断する。この入力判断で、検索キーワード追加を意味する情報である場合には、先に入力された検索キーワードに追加した論理式を構築し、ステップS2以下の検索、集計、表示の各処理を実行する。
さて、ステップS5でマウスより入力された情報がコマンド、すなわち、検索ファイル一覧を表示させるための情報であると判断した場合にはステップS7以下の処理を実行する。
ステップS7では検索結果しぼりこまれた各ファイル名のリストを表示させ、オペレータはこの表示画面(第5図)を見ながら、いずれか1つのファイル名を選択(ステップS8)し、ステップS9で選択されたファイルの内容を表示(第6図)することになる。」(第4頁左下欄第5行〜第5頁右上欄第1行)

してみると、上記摘記事項(ク)、(ケ)の記載事項、および同引用例に記載されている第1図〜第9図から、引用例3には、
「ファイル検索システムにおいて、第1の検索条件を入力するための第1の入力手段と、当該検索条件を基に対応するファイルを抽出するとともに抽出されたファイルに付随するキーワードをリストとして提示する手段と、提示されたキーワードのリストから第2の検索条件を入力する第2の入力手段と、第1の検索条件と第2の検索条件の両者に一致するファイル名をリストとして提示する手段とを有する」とのファイル検索技術(以下、「引用例3に記載された検索技術」という。)
、および、
「ファイル検索システムにおいて、提示されたファイル名のリストからファイル名を選択するための第3の入力手段と、第3の入力手段にて選択されたファイル名に対応するファイルの内容を表示する手段とを有する」とのファイル内容表示技術(以下、「引用例3に記載された表示技術」という。)、
が開示されているものと認められる。

(3)対比
本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「画像データ」は、上記摘記事項(イ)(ウ)に記載されているように学術図書や雑誌等のすべてのページの画像情報であるから本願発明の「書籍情報」に相当する。同様に、引用例1発明の「二次情報」は、上記摘記事項(ウ)(エ)に記載されているように所望の論文を検索するために用いられるものであるから本願発明の「検索情報」に相当する。
また、引用例1発明の「検索結果である簡略的な論文情報をリスト形式で提示する手段」と本願発明の「前記第1の検索条件と前記第2の検索条件の両者に一致する検索情報にある本の題名をリストとして提示する第2の書籍検索手段」は、「検索条件に一致した簡略的な論文情報をリストとして提示する手段」という概念で共通している。
そして、引用例1発明の「紙媒体の冊子」、「画像データベース」、「文献データベースサーバ」は、それぞれ本願発明の「本」、「大容量ファイルメモリ」、「書籍管理データベース」に相当する。

したがって、両者は、
「本の機能を擬似し、書籍情報を表示する計算機システムにおいて、
複数冊分の書籍情報を蓄積する大容量ファイルメモリと、
蓄積された書籍情報に対する検索情報を持つ書籍管理データベースとを具備し、
該検索情報には、著者名、本の様式、本の題名のうちの1つ以上を含み、さらに、1つ以上のキーワードを含み、
検索条件を入力するための入力手段と、
前記書籍管理データベースを検索する書籍検索手段と、
前記書籍管理データベースを検索し、検索条件に一致した簡略的な論文情報をリストとして提示する手段と、
書籍に対応する書籍情報を前記大容量ファイルメモリから読み込んで表示する表示手段とを有する電子図書館システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、書籍情報について「本のイメージで表示する」との限定が付されているのに対し、引用例1発明には、かかる限定が明示されていない点。

[相違点2]
本願発明は、書籍を検索するための技術として「著者名、出版社名、本の分野、本の様式、本の題名、出版年度のうちの1つ以上を含んだ第1の検索条件を入力するための第1の入力手段と、前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件に一致する検索情報にあるキーワードをリストとして提示する第1の書籍検索手段と、提示されたキーワードのリストに対する第2の検索条件を入力するための第2の入力手段と、前記書籍管理データベースを検索し、前記第1の検索条件と前記第2の検索条件の両者に一致する検索情報にある本の題名をリストとして提示する第2の書籍検索手段」を有しているのに対し、引用例1発明は「検索条件を入力するための入力手段と、前記文献データベースサーバを検索する画像データ検索手段と、前記文献データベースサーバを検索し、検索結果である簡略的な論文情報をリスト形式で提示する手段」を有するとしか明示されていない点。

[相違点3]
本願発明は、書籍を表示するための技術として「提示された本の題名のリストから書籍を指定するための第3の入力手段と、前記第3の入力手段にて指定された書籍に対応する書籍情報を前記大容量ファイルメモリから読み込んで表示する書籍表示手段」を有しているのに対し、引用例1発明には、「書籍に対応する画像データを前記画像データベースから読み込んで表示する表示手段」を有することにとどまり、書籍を指定するための手段について明示されていない点。

(4)判断
[相違点1]について
書籍の情報を画面上に表示する際、当該情報を本のイメージで表示すること、および、その方式は、引用例2に開示されている。(上記3.(2-2)(カ)(キ)参照。)
また、引用例1には、「本プロトタイプでは、なるべく現行の紙媒体の冊子の感覚を活かすように利用者インタフェースを実装する方針を採用した。すなわち、利用者は、目次のページから順々に冊子をブラウズしていくことも可能であるし、特定の論文の第一ページに位置付けた後、ひとつ前の論文の最後のページをめくることもできるようにと考えている。」(上記3.(2-1)(エ)参照。)と記載されている様に、論文や学術雑誌の情報を本(冊子)のイメージ(感覚)で画面上に表示する旨示唆されている。
そこで、引用例1発明の電子図書館システムにおいて、論文や学術雑誌の情報を画面上に表示するに際して、引用例2に開示されている方式を適用することは当業者が容易になし得るものと認められる。

[相違点2][相違点3]について
引用例3のファイル検索システムにかかるファイルには文書情報が記憶されているので、上記引用例3に記載されている検索技術、および、上記引用例3に記載されている表示技術を引用例1発明の電子図書館システムにおいて書籍を検索するための技術、および、書籍を表示するための技術として適用することは当業者であれば容易になし得るところと認められる。
書籍を検索するに際して入力される第1の検索条件として「著者名、出版社名、本の分野、本の様式、本の題名、出版年度のうちの1つ以上」を入力することについては、引用例1発明も、蓄積された画像データに対する二次情報として、著者名、本の様式、本の題名、出版年のうちの1つ以上を含んでおり、これら著者名、本の様式、本の題名、出版年のうちの1つ以上を第1の検索条件として用いることは当業者による設計事項と認められる。
本願発明にかかる第2の書籍検索手段において、本の題名をリストとして提示することについては、上記摘記事項(オ)に示されているように、論文情報のひとつとして本の題名は含まれており、引用例1発明において、リスト形式で提示される簡略的な論文情報を本の題名とするかは、当業者が任意に決定し得る設計事項と認められる。

したがって、本願発明は、引用例1〜3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1〜3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-11 
結審通知日 2006-04-18 
審決日 2006-05-01 
出願番号 特願平6-19389
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高瀬 勤平井 誠  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 佐藤 智康
阿波 進
発明の名称 電子図書館システム  
代理人 入戸野 巧  
代理人 本山 泰  

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