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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1138824
審判番号 不服2003-10612  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-11 
確定日 2006-06-21 
事件の表示 特願2000-328886「液体磁気処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 8日出願公開、特開2002-126749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年10月27日の出願であって、平成15年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年6月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月4日付けで手続補正がなされたものである。
2.平成15年7月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、平成15年1月20日付けで提出された手続補正書により補正された請求項1の「液体磁気処理装置」について「前記磁石収納体内の前記永久磁石は、極性を交互に略密接して収納され、」を付加し、「該水処理部」を「前記水処理部」とすることにより、「内部を液体が流通する配管の周囲に捲回され、磁力によって液体の活性化を行なう液体磁気処理装置において、前記配管周囲に装着されるバンドと、このバンドに複数挿着され、内部に永久磁石が複数収納された磁石収納体を有する水処理部とを備え、前記磁石収納体内の前記永久磁石は、極性を交互に略密接して収納され、前記水処理部は前記配管周囲において略密着すると共に、該水処理部を、非磁性体から成るケースで覆ったことを特徴とする液体磁気処理装置。」と補正された。
そして、上記の補正は「永久磁石」について限定を付加し、それに伴う指示語を補正をするものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。
(i)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用した本願の出願の日前の平成12年10月17日に頒布された特開2000-288549号公報(以下、「引用例1」という。)には、
(i-1)「 流体導管の外周部に複数個の磁石体を互いに同一の着磁面が連続するように等間隔で装着してなる液体磁気処理装置において、
前記各磁石体をそれぞれホルダユニット内に収納するとともに、これらホルダユニットを互いに可変連結機構によって接続してなり、
前記流体導管の外径に対応して前記可変連結機構を調節して装着するように構成したことを特徴とする液体磁気処理装置。」(【請求項1】)、
(i-2)「 前記ホルダユニツトは、全体箱状を呈するとともにそれぞれ前記流体導管と直交する両側面に長孔が形成された連結片が一体に突設されたホルダケースと、前期磁石体がそれぞれ装填されたゴム製の磁石ケースと、この磁石ケースを密閉するゴム製のキャップとから構成され、
前記隣り合うホルダケースの連結片が、それぞれの長孔をその長さ範囲の適宜の位置で互いに連通させて軸孔を構成するようにして組み合わされ、これら軸孔にそれぞれ連結軸を組み付けることによって前記可変連結機構を構成することを」(【請求項2】)、
(i-3)「 前記ホルダケースには、前記連結片と直交して前記流体導管と平行な結合片が一体に突設され、これら結合片を締結バンドによって締結することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液体磁気処理装置。」(【請求項4】)
(i-4)「【発明の属する技術分野】本発明は、水道管等の流体導管に付設され、管内の不純物を磁気的に処理して飲料水等の味覚の向上を図るようにした液体磁気処理装置に関する。」(段落【0001】)、
(i-5)「また、本発明にかかる液体磁気処理装置は、ホルダユニツトが、全体箱状を呈するとともにそれぞれ流体導管と直交する両側面に長孔が形成された連結片を一体に突設したホルダケースと、磁石体をそれぞれ装填したゴム製の磁石ケースと、この磁石ケースを密閉するゴム製のキャップとから構成される。液体磁気処理装置は、隣り合うホルダケースの連結片が、それぞれの長孔をその長さ範囲の適宜の位置で互いに連通させて軸孔を構成するようにして組み合わされ、これら軸孔にそれぞれ連結軸を組み付けることによって可変連結機構を構成する。
したがって、液体磁気処理装置は、各磁石体がホルダユニットに封装されることによって破損や汚損等が防止される。また、液体磁気処理装置は、各磁石体がホルダユニットに封装されることで流体導管に対する付設作業時や取扱時にこれら磁石体が互いに吸着したり反発したりすることが抑制され作業性の向上が図られるようになる。さらに、液体磁気処理装置は、極めて簡易な操作によって、流体導管に対して各磁石が互いに正確に位置するようにして付設される。」(段落【0011】〜【0012】)
(i-6)「磁石11は、例えばそれぞれ矩形ブロック状を呈する磁石からなり、図3に示すように互いにN極とS極とが対向するようにして重ね合わされる。したがって、磁石11は、磁気力によって一体化されて後述するようにホルダユニット12内に収納される。」(段落【0018】)、
(i-7)「締結機構15は、各ホルダユニット12を上述した状態に設定した後、図1に示すようにバンド29が各係合片24の外周に掛け合わされる。締結機構15は、バンド29の長さを調節した後に締結ネジ30によって固定される。締結機構15は、各係合片24を介して可変連結機構13、14によって連結された各ホルダユニット12を水道管1の外周部に押し付けて保持させる。」(段落【0037】)、
(i-8)「上述した液体磁気処理装置10においては、4個のホルダユニット12を備えたが、例えば清涼飲料等の製造工程等のように大径の流体導管に付設して用いる場合やより多くの磁石11の磁気力を流体導管に作用させる必要がある場合に、任意の個数のホルダユニット12を可変連結機構13、14によって連結して構成するようにしてもよい。
図6および図7に示した液体磁気処理装置5は、6個のホルダユニット12が可変連結機構13、14によって連結されて構成されている。液体磁気処理装置5は、大径の流体導管1cに対して各ホルダユニット12が円周方向に対してそれぞれ60°の角度を以って等間隔に配置される。液体磁気処理装置5は、各ホルダユニット12が流体導管1cの中心軸に対してそれぞれ等角度に配置されるとともに中心からの間隔も等しいことで、それぞれの磁石11の磁気エネルギーが中心軸に集中される。」(段落【0041】〜【0042】)、
が記載されている。
これらの記載事項を本願補正発明の記載に則して整理すると、引用例1には、
「流体導管の外周部に複数個の磁石体を等間隔で装着し、飲料水等の味覚の向上を図るようにしてなる液体磁気処理装置において、互いにN極とS極とが対向するようにして重ね合わせた各磁石体をそれぞれ収納したホルダユニットを互いに可変連結機構によって接続し、ホルダユニットを構成するホルダケースに結合片を突設し、各結合片をその外周に掛け合わせた締結バンドによって締結し、各ホルダユニットを管の外周部に押しつけて保持し、各磁石体がホルダユニットに封装されることによって破損や汚損等が防止された液体磁気処理装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(ii)対比
本願補正発明と上記引用発明1を比較する。
引用発明1の「飲料水等の味覚の向上を図る」が本願補正発明の「活性化」に相当することは、明細書の段落【0038】の記載から明らかであるから、引用発明1の「流体導管の外周部に複数個の磁石体を等間隔で装着し、飲料水等の味覚の向上を図るようにしてなる液体磁気処理装置」が本願補正発明の「内部を液体が流通する配管の周囲に捲回され、磁力によって液体の活性化を行なう液体磁気処理装置」に相当する。そして、引用発明1の「締結バンド」は本願補正発明の「バンド」に、以下同様に「磁石体」は「永久磁石」に、「ホルダケース」は「磁石収納体」に相当し、引用発明1の「締結バンド」は複数の「ホルダケース」を固定するものであるから、引用発明1には「バンドに複数固定され内部に永久磁石が複数収納された磁石収納体」が記載されている。そして、引用発明1では「互いにN極とS極とが対向するようにして重ね合わせた各磁石体をそれぞれ収納」するから、「永久磁石は、極性を交互に略密接して収納され」ているものと認められる。さらに、引用発明1の「ホルダユニットを互いに可変連結機構によって接続し」たものは「内部に永久磁石が複数収納された磁石収納体を有する水処理部」に相当するから、引用発明1の「ホルダユニットを管の外周部に押しつけて保持し」は、本願補正発明の「水処理部は前記配管周囲において略密着する」に相当する。
したがって、両発明は、
「内部を液体が流通する配管の周囲に捲回され、磁力によって液体の活性化を行なう液体磁気処理装置において、前記配管周囲に装着されるバンドと、このバンドに複数保持され内部に永久磁石が複数収納された磁石収納体を有する水処理部とを備え、前記磁石収納体内の前記永久磁石は、極性を交互に略密接して収納され、前記水処理部は前記配管周囲において略密着する液体磁気処理装置。」点で一致し、
以下の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明では磁石収納体はバンドに挿着され保持しているのに対して、引用発明1ではホルダケースに結合片を突設し、各結合片をその外周に掛け合わせた締結バンドによって締結して保持している点。
[相違点2]
本願補正発明では、水処理部を、非磁性体から成るケースで覆うのに対して、引用発明1では、各磁石体がホルダユニットに封装されることによって破損や汚損等が防止されたことは記載されるものの、ホルダユニットを互いに可変連結機構によって接続したものを覆うことについては記載がない点。
(iii)当審の判断
上記各相違点について検討すると、相違点1については、例えば、拒絶の理由において技術常識を示すために引用された登録実用新案第3023755号公報(以下、「周知例1」という。)の自動車の燃料が磁力の作用で活性化される自動車の燃料系統用磁気構造物の永久磁石を固定したキャップに貫通孔を設けバネ(支持部材)が通され固定すなわち挿着されているように、永久磁石の固定において周知の態様にすぎないものと認められ、引用発明1における結合片の外周における掛け合わせに換えて貫通孔を各結合片に設け、貫通孔にバンドを通してホルダケースを締結することも、当業者であれば困難なくなしうる事項にすぎず、そうすることによって得られる効果も格別のものとすることができない。
相違点2については、引用発明1でも、磁石体を封装して破損や汚染を防止することが記載されており、しかも、例えば、登録実用新案第3038575号公報(以下、「周知例2」という。)にも記載されるように非磁性体ケースで覆った水浄化装置は周知であるから、引用発明1においても装置全体を更にケースで覆い腐食等を防止することは当業者であれば容易に想到しうる手段にすぎない。そして、そうすることによって得られる効果も格別のものとすることができない。
なお、本願補正発明では磁石収納体内の永久磁石が配管の軸方向に複数収納されるように限定されるものではないが、仮にそうであったとしても、原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開平10-180262号公報の段落【0028】及び図4にも示されるように、永久磁石による水処理装置において普通に採用されている磁石配置にすぎないものであるので、この限定によれば本願補正発明が進歩性を有するものとなるとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2の第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
平成15年7月4日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月20日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「内部を液体が流通する配管の周囲に捲回され、磁力によって液体の活性化を行なう液体磁気処理装置において、前記配管周囲に装着されるバンドと、このバンドに複数挿着され、内部に永久磁石が複数収納された磁石収納体を有する水処理部とを備え、該水処理部は前記配管周囲において略密着すると共に、該水処理部を、非磁性体から成るケースで覆ったことを特徴とする液体磁気処理装置。」
4.引用文献
原査定の拒絶の理由において提示した引用例1、周知例1、2及びそれらの記載事項は上記「2.(2)」に記載したとおりである。
5.対比・判断
本願発明は、上記「2.(2)(ii)」で対比した本願補正発明からみると、「磁石収納体」について、限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものである本願補正発明が上記「2.(2)(iii)」で述べたとおり引用発明及び上記の周知例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び上記周知例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-18 
結審通知日 2006-04-24 
審決日 2006-05-09 
出願番号 特願2000-328886(P2000-328886)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹中野 孝一  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 斉藤 信人
増田 亮子
発明の名称 液体磁気処理装置  
代理人 雨笠 敬  

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