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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1139003
審判番号 不服2003-21110  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2006-06-28 
事件の表示 特願2000-336536「不動産物件情報確認システム、不動産物件情報確認方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-140413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月2日の出願であって、平成15年9月24日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年12月1日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月1日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年12月1日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「マンション等の不動産物件に関する空き状況、取引状況、価格変更等の物件取引情報を少なくとも含む物件情報を確認する際に利用される不動産物件情報確認システムであって、
少なくとも最新の物件取引情報を含む物件情報を物件の取引を行う複数の取引者から受け付ける物件情報受付手段と、前記物件情報受付手段により受け付けた物件情報を、物件取引情報が秒単位で最新の情報に更新されるように記憶・管理している物件情報管理手段と、前記物件情報管理手段で管理している秒単位での物件情報確認日時が表示される物件情報のうち少なくとも最新の物件取引情報を複数の取引者に対して出力するとともに、複数の物件を、その物件を管理している不動産業者毎にまとめた状態で順に並べて物件情報確認画面に表示されるように出力する出力手段とを具備してなることを特徴とする不動産物件情報確認システム。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「出力手段」について具体的な限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された、特開平10-63731号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア「【0014】本発明の一実施形態による住宅情報提示システムは、図1に示すように、モデム18、プリンタ17を有する顧客住宅15内のパソコン16と、住宅情報を提供するサービスプロバイダ13とが公衆回線網14により構成される。そして、サービスプロバイダ13には、住宅の売主11、不動産業者12から提供される基本物件情報、写真イメージ情報、周辺情報等を含む統合データベース、不動産情報統合管理システムが備えられる。
【0015】住宅情報を知りたい顧客は、自宅内のパソコン16を使用して、サービスプロパイダ13に備えられる統合データベースに公衆回線14を介してアクセスし、希望する必要な条件等を入力して検索することにより、希望する住宅情報を得ることができる。サービスプロパイダ13は、インターネット等にホームページを開いて、そこに統合データベースを持ってもよい。」(3頁右欄15行〜30行)

イ「【0019】サービスプロバイダに住宅の売主、不動産業者から提供する情報として、個別物件情報がある。この個別物件情報は、売りに出す住宅の個々の物件に関する情報であり、間取り、広さ、築年数、入居可能時期、価格、場所、契約条件情報、建屋全体及び内部各部屋の写真、窓からの眺望、周辺の騒音、建物のメーカー、売主、仲介者等に関する情報を含んで構成されている。」(4頁左欄6行〜12行)

ウ「【0021】サービスプロバイダは、前述のように提供される各種の情報をデータとして統合した統合データベースを作成して、常に、これらのデータを最新のものに更新しながら管理している。そして、住宅情報を知りたいという顧客の要求に合う物件を探すための検索ソフト、顧客の要望に合う物件が見つかったときに、金融情報とプライベートデータとに基づいて購入の可能性をチェックすると共に、返済のシミュレーションを行う返済計算ソフト、得られた各種の情報であるイメージ・図形データ、テキストデータ、物理データ等の異なった形式で記述されているデータを切り出し、合成する等の編集を行って1つの画像情報として顧客に提供するためのインテグレートソフトを用意している。
」(4頁左欄26行〜38行)

エ「【0053】(25)ステップ754の表示画面の中にデータ更新のボタンが表示されており、登録されている物件の価格等の変動、売却されてしまっているか否か、他の人にカタログを送付しているか否か等の更新の状況が知りたい場合、このボタンを指示する。これにより、一覧表示されている物件の最新データに対するアクセスを自動的に行い、これらの情報をデータベースから引き出して表示する(ステップ755〜757)。」(6頁右欄17行〜24行)

したがって、アないしエの記載及び図1,3,4,10,24,33,34から、引用例には、
「住宅の個別物件情報として、売主、仲介者等に関する情報を顧客に提示する住宅情報提示システムであって、住宅の売主、不動産業者から提供される基本物件情報等を含む統合データベース、不動産情報統合管理システムが備えられたサービスプロバイダを有し、サービスプロバイダは、常にこれらのデータを最新のものに更新しながら管理するものであり、住宅情報の一覧が表示される状態で、登録されている物件の価格等の変動、売却されてしまっているか否か、他の人にカタログを送付しているか否か等の更新の状況が知りたい場合に、データ更新ボタンを指示することにより、一覧表示されている物件の最新データに対するアクセスを行い、表示を行う機能を有する住宅情報提示システム。」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
本願補正発明の「物件情報管理手段」と引用発明の「不動産情報統合管理システム」は、不動産業者からの情報を格納し管理する手段である点で一致している。

本願補正発明の「出力手段」と引用発明の「表示を行う機能」とは、不動産業者からの情報を表示する点で一致している。

したがって、両者は、
「不動産業者からの情報を格納し管理する手段を有し、格納された情報を表示する機能を有するシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願補正発明が、「不動産物件情報確認システム」であるのに対し、引用発明は「住宅情報提示システム」である点。

(相違点2)
本願補正発明が「マンション等の不動産物件に関する空き状況、取引状況、価格変更等の物件取引情報を少なくとも含む物件情報を確認する際に利用される」ものであるのに対して、引用発明が「住宅の個別物件情報として、売主、仲介者等に関する情報を顧客に提示する」ものである点。

(相違点3)
本願補正発明が、「少なくとも最新の物件取引情報を含む物件情報を物件の取引を行う複数の取引者から受け付ける物件情報受付手段と、前記物件情報受付手段により受け付けた物件情報を、物件取引情報が秒単位で最新の情報に更新されるように記憶・管理している物件情報管理手段」を有するのに対し、引用発明は、「住宅の売主、不動産業者から提供される基本物件情報等を含む統合データベース、不動産情報統合管理システムが備えられたサービスプロバイダを有し、サービスプロバイダは、常にこれらのデータを最新のものに更新しながら管理するもの」である点。

(相違点4)
本願補正発明が、「物件情報管理手段で管理している秒単位での物件情報確認日時が表示される物件情報のうち少なくとも最新の物件取引情報を複数の取引者に対して出力するとともに、複数の物件を、その物件を管理している不動産業者毎にまとめた状態で順に並べて物件情報確認画面に表示されるように出力する出力手段」を有しているのに対して、引用発明は「住宅情報の一覧が表示される状態で、登録されている物件の価格等の変動、売却されてしまっているか否か、他の人にカタログを送付しているか否か等の更新の状況が知りたい場合に、データ更新ボタンを指示することにより、一覧表示されている物件の最新データに対するアクセスを行い、表示を行う」点。

(4)判断
(相違点1)について
引用発明は、住宅という不動産物件の情報を提示することにより確認させるためのものであり、不動産物件確認システムとすることは実質的な相違ではない。

(相違点2)について
引用発明の「価格などの変動、売却されてしまっているか否か、他の人にカタログを送付しているか否か」は、本願補正発明の「空き状況、取引状況、価格変更等の物件取引情報」に相当するといえる。そして、引用例の図34には、物件取引情報が表示された画面が示されており、引用発明はこの物件取引情報についても提示するものであり、確認する際に利用されるものであるといえる。
よって、相違点2は格別なものではない。

(相違点3)について
本願補正発明の「取引者」は【0007】、【0013】の記載から、不動産業者を含む概念である。引用発明のサービスプロバイダには、不動産業者から基本物件情報などが提供されることが記載されており、複数の不動産業者から物件に関する情報の提供を受けるようにすることは、当業者にとって困難であるとはいえない。また、相違点2について述べたように引用発明においても物件取引情報が扱われている。
さらに、引用発明においては、サービスプロバイダが不動産業者から提供される基本物件情報を含む統合データベースについて、常にこれらのデータを最新のものに更新しながら管理するのであり、この更新のタイミングをどの程度とするかは、更新処理の負荷と最新データの価値とを比較考量して適宜選択し得る事項であり、秒単位を選択することは通常想定される範囲のことである。
よって、引用発明において、複数の不動産業者から物件取引情報を含む物件情報の提供を受ける手段、すなわち本願補正発明の「物件情報受付手段」に相当する構成を設けること及び、秒単位で物件取引情報を含む物件情報の更新を行う手段、すなわち本願補正発明の「物件情報管理手段」に相当する構成を設けることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点4)について
情報処理の分野において、データの作成時、更新時、最新アクセス時を属性として記録し、必要に応じて提示することは周知である。例えば、毛呂宗夫、第3回プログラミング相談室、C MAGAZINE、ソフトバンクパブリッシング株式会社、第12巻、第4号、98頁、2000年4月1日、に記載されている。
また、引用発明は、物件取引情報について最新データに対するアクセスを行い、表示する機能を有している。
さらに、コンピュータを用いて一覧表形式でデータの表示を行う際に、特定の項目に着目して並べ替え処理を行ってから表示することは、普通に行われていることである。ここで、引用発明の統合データベースに格納される基本物件情報には、住宅の売主、仲介者の情報が含まれ、これは本願補正発明の「その物件を管理している不動産業者」に相当する。
よって、引用発明において、物件情報の最新アクセス時、すなわち物件情報を確認した最近の時刻を属性として登録させ、物件情報のうち最新の物件取引情報を表示するとともに、不動産業者という項目に着目して並べ替え処理を行った後に一覧表示するための手段、すなわち本願補正発明の「出力手段」に相当する構成を設けることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年12月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年3月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「マンション等の不動産物件に関する空き状況、取引状況、価格変更等の物件取引情報を少なくとも含む物件情報を確認する際に利用される不動産物件情報確認システムであって、
少なくとも最新の物件取引情報を含む物件情報を物件の取引を行う複数の取引者から受け付ける物件情報受付手段と、前記物件情報受付手段により受け付けた物件情報を、物件取引情報が秒単位で最新の情報に更新されるように記憶・管理している物件情報管理手段と、前記物件情報管理手段で管理している秒単位での物件情報確認日時が表示される物件情報のうち少なくとも最新の物件取引情報を複数の取引者に対して出力する出力手段とを具備してなることを特徴とする不動産物件情報確認システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「出力手段」について具体的な限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-14 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-09 
出願番号 特願2000-336536(P2000-336536)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 信行  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 伊知地 和之
田中 幸雄
発明の名称 不動産物件情報確認システム、不動産物件情報確認方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 井上 敬子  
代理人 赤澤 一博  

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