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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1139031 |
審判番号 | 不服2001-17924 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-05-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-10-05 |
確定日 | 2006-06-29 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第133252号「通話制御装置および通話を制御する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月 6日出願公開、特開平10-116193〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年5月23日(パリ条約による優先権主張1996年5月31日、米国)の出願であって、平成13年7月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年10月5日に審判請求がなされたが、平成17年9月5日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対し、平成18年1月25日に手続補正がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「ある装置で通話機能を提供する方法であって、該通話機能の各々が機能マネージャサーバプログラム及び協動する機能管理クライアントプログラムとして具現化され、前記装置は該機能管理クライアントプログラムと該機能マネージャサーバプログラムとを実行するものであり、該方法が、 通話機能に対する権限が与えられることになるユーザに応動して、その機能のための該機能マネージャサーバプログラムが、コンテキストインタフェースを介したコンテキストサービスを有する該機能マネージャサーバプログラムのインスタンスであるユーザポリシーを該ユーザのために登録する段階を含み、該通話機能を該コンテキストサービスに認識させるために、登録する該コンテキストインタフェースは該装置の動作中の実質的にいかなる時においても該機能マネージャサーバプログラムの全てに対して同一であり、該方法はさらに、 該機能管理クライアントプログラムのユーザに応動して、該機能マネージャサーバプログラムと該機能管理クライアントプログラムとの間で管理インタフェースを介して管理情報を通信する段階を含み、該管理インタフェースは該機能マネージャサーバプログラムの全てに対して同一であり、そして該管理情報は該ユーザのための該機能マネージャサーバプログラムのユーザポリシーを管理するものであり、該方法はさらに、 通話に対する当事者である該ユーザに応動して、該コンテキストサービスは、該通話に対する機能を提供するために、該通話のコンテキストに該機能マネージャサーバプログラムのユーザポリシーを関係づける段階からなり、該関係付けは、該機能マネージャサーバプログラムの全てに対して同一であることを特徴とする方法。」 2.当審の拒絶理由 当審において平成17年9月5日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないから、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない(以下「理由1」という。)、及び、本願は、特許請求の記載の範囲の記載に不備があるので、特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないので特許を受けることができない(以下「理由2」という。)というものである。 3.当審の判断 3-1.理由1について 本願発明は、その記載からして、「通話機能を提供する方法」でおり、その「通話機能を提供する」ことを実現するために、該「通話機能」が、「機能マネージャサーバプログラム」と「機能管理クライアントプログラム」として具現化されていることを前提とし、かつ、該「方法」は、「登録する段階」、「通信する段階」、及び、「関連づける段階」から構成されている。 ここで、本願発明が、該「通話機能を提供する」ための上記各構成が、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否かについて検討する。 まず、本願発明は、「装置」が用いられているが、該「装置」が、どのようなハードウェアから構成されているのかといった物理的な構成は一切特定されていない。つまり、該「装置」は、「機能管理クライアントプログラム」及び「機能マネージャサーバプログラム」を実行する機能を有し、かつ、前記の「登録する段階」、「通信する段階」、及び、「関連づける段階」を行うものであるが、前記各プログラムの実行、及び、前記各段階を行うにあたり、ハードウェア資源をどのように用いて実現しているのかについては何ら特定していない。 よって、本願発明において、「該装置は該機能管理クライアントプログラムと該機能マネージャサーバプログラムとを実行する」は、当該特定事項のみからは、ハードウェア資源を用いて具体的に実現しているとはいえない。 次に、本願発明の各プログラム及び各段階が、自然法則を利用したものであるか否かについて検討する。 まず、本願発明の前提として、「機能マネージャサーバプログラム」と「機能管理クライアントプログラム」は、「通話機能」の各々が「具現化」されたものとして特定されているが、どの機能をどのプログラムで実現するかは、人間がシステム開発時に任意に決めることができる事項であるから、前記「具現化」は、人為的な取決めのみに基づいた事項である。また、「機能マネージャサーバプログラム」と「機能管理クライントプログラム」とは、「協働する」ものとして特定しているが、どのプログラムを協働させるか、つまり、どのプログラムを組み合わせて動作させるかは、人間がシステム開発時に任意に決めることができる事項であるから、前記の「協働する」ことは、人為的な取決めのみに基づいた事項である。 よって、本願発明において、「該通話機能の各々がマネージャサーバプログラム及び協働する機能管理クライアントプログラムに具現化され」は、自然法則を利用したものではない。 ソフトウェアをどのような構造とし、どのソフトウェアにどの機能又はサービスを担当させるかは、人間がシステム開発時に任意に決めることができる事項であるから、本願発明において、「通話機能に対する権限が与えられることになるユーザに応動して、その機能のための該機能マネージャサーバプログラムが、コンテキストインタフェースを介したコンテキストサービスを有する該機能マネージャサーバプログラムのインスタンスであるユーザポリシーを該ユーザのために登録する段階」、「該機能管理クライアントプログラムのユーザに応動して、該機能マネージャサーバプログラムと該機能管理クライアントプログラムとの間で管理インタフェースを介して管理情報を通信する段階」、及び、「通話に対する当事者である該ユーザに応動して、該コンテキストサービスは、該通話に対する機能を提供するために、該通話のコンテキストに該機能マネージャサーバプログラムのユーザポリシーを関係づける段階」は、いずれも人為的な取決めのみに基づいたものであって、自然法則を利用したものではない。 また、ソフトウェアをどのような構造又は内容とするかも、人間がシステム開発時に任意に決めることができる事項であるから、本願発明において、「該通話機能を該コンテキストサービスに認識させるために、登録する該コンテキストインタフェースは該装置の動作中の実質的にいかなる時においても該機能マネージャサーバプログラムの全てに対して同一であり」、「該管理インタフェースは該機能マネージャサーバプログラムの全てに対して同一であり、そして該管理情報は該ユーザのための該機能マネージャサーバプログラムのユーザポリシーを管理するものであり」、及び、「該関係付けは、該機能マネージャサーバプログラムの全てに対して同一である」は、人為的な取決めそのものである。 発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、本願は、機能毎及びユーザ毎に「機能マネージャサーバプログラム」の「ユーザポリシー」(インスタンス)及び「機能管理クライアントプログラム」と、これらの間の通話を関連づける「コンテキスト」を設け、これらを介在するソフトウェアとして、同一の「管理インタフェース」、「コンテキストインタフェース」及び「関連付け」を設けるという、人為的な取決めのみに基づいたソフトウェアモデルに特徴があり、本願発明は、これを単に「装置」上で実現しているにとどまり、「装置」上のハードウェアと前記ソフトウェアモデルとがどのように協働して通話機能を実現しているのか何ら特定していないから、実質的には、前記の人為的な取決めのみに基づいたソフトウェアモデルを請求しているに等しい。 よって、本願発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないから、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許を受けることができない。 3-2.理由2について 3-2-1.特許法第36条第6項第2号違反について 本願の請求項1の記載(本願発明)は、以下の点が不明であり、技術常識を参酌したとしても、当業者が、「通話機能を提供する方法」を実現する上での一連のデータの流れ及び制御の流れを具体的に把握することができない。 (1)第2段落乃至第4段落の「ユーザに応動」とは、ユーザの行動に応じることを意味するが、ユーザがどのような行動を取り、この行動を、プログラムがどのように検出しているのか不明。 (2)第2段落において、「ユーザポリシー」をどこに「登録する」のか不明。 (3)第2段落の「コンテキストインタフェースは…実質的に…同一」は、「コンテキストインタフェース」が、どのような観点で、どの程度「同一」であるのか不明。 (4)第2段落の「該機能マネージャサーバプログラムが、…ユーザポリシーを該ユーザのために登録する段階を含み」からすると、「登録」の主体は、「機能マネージャサーバプログラム」であり、「登録」の対象は「ユーザポリシー」である。一方、第2段落の「登録する該コンテキストインタフェースは…」は、「登録」の主体又は対象が「コンテキストインタフェース」であることを示しているから、両者は矛盾している。 (5)第2段落の「通話機能に対する権限が与えられることになるユーザ」、第3段落の「機能管理クライアントプログラムのユーザ」、及び、第4段落の「通話に対する当事者である該ユーザ」の関係が不明。 (6)第3段落において、「管理情報」を「通信」することにより、何を実現しようとしているのか不明。 (7)第4段落において、「関連付け」が「同一」とは、どのような意味であるのか不明である。 上記事項を踏まえて、本願発明が「通話機能を提供する方法」として、全体として明確であるかを考察するに、本願発明において、登録されている「ユーザポリシー」と、該「ユーザポリシー」が関連づけられている「通話のコンテキスト」、及び、該「ユーザポリシー」を管理するものであり、「機能マネージャサーバプログラム」と「機能管理クライアント」との間で通信される「管理情報」が、「通話」の際にどのように用いられるのか全く特定されていない。すなわち、本願発明は、「通話」のための抽象的かつ静的なデータ構造を示しているにすぎず、その記載からは、該データ構造が、「通話」のためにどのように用いられるかを当業者が具体的に想定することはできない。 請求人は、平成18年1月25日付けの意見書において、「請求人は、請求項において詳細な事項が欠落していることは請求項の記載が不明りょうであるという直接的な理由とはならず、これは単に請求人(出願人)が保護を求める範囲が広いということであると思料致します。従来技術から区別するためにさらに必要となる事項が従来技術に存在しない場合、そのような事項を請求項に記載することは不合理な限定であると思料致します。」と主張している。この主張によると、従来技術に抵触しなければ、如何なる抽象的な記載も許容されることになる。 しかしながら、特許請求の範囲の記載は、これに基づいて特許発明の技術的範囲が定められるものであり、排他的独占権の範囲を定める重要な意義を有するものであるから、該記載が明確であるか否かの判断は、客観性をもってなされるべき性質のものであり、従来技術に依って相対的に変化するものではない。 なお、本願の場合、抽象的な記載によってしか明細書又は図面に記載された発明を適切に特定することができないという特殊は事情も存在しない。 よって、上記出願人の主張は採用しない。 したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が不明確であるので、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない。 3-2-2.特許法第36条第4項違反について 請求人は、上記意見書において、「登録」については段落【0072】乃至【0074】に、「関連付け」及び「コンテキスト」については段落【0030】乃至【0034】に、また、「コンテキストAPI」については段落【0091】乃至【0098】に記載されていると述べるにとどまり、請求項1に係る「登録」及び「関連付け」が、コンピュータのハードウェアをどのように用いて実現しているのかについては何ら釈明をしていない。 また、出願人が挙げる段落【0072】乃至【0074】、段落【0030】乃至【0034】、及び、段落【0091】乃至【0098】並びに関連する図面を参照しても、ソフトウェアが行う抽象的な処理が羅列してあるだけであり、何と何とがどのようなデータ構造でもってメモリ上に記録されることにより「登録」又は「関連づけ」を行っているのかについて、具体的に想定することはできない。 したがって、本願は、明細書及び図面が、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載していないので、特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができない。 3-2-3.理由2についてのむすび よって、本願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 4.むすび したがって、本願は、特許法第29条第1項柱書、並びに、特許法第36条第4項及び第6項第2号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-03 |
結審通知日 | 2006-02-06 |
審決日 | 2006-02-17 |
出願番号 | 特願平9-133252 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G06F)
P 1 8・ 536- WZ (G06F) P 1 8・ 14- WZ (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保 光宏 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
林 毅 堀江 義隆 |
発明の名称 | 通話制御装置および通話を制御する方法 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 藤野 育男 |
代理人 | 臼井 伸一 |
代理人 | 本宮 照久 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 高橋 誠一郎 |
代理人 | 吉澤 弘司 |
代理人 | 高梨 憲通 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 産形 和央 |
代理人 | 岡部 正夫 |