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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04D |
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管理番号 | 1139040 |
審判番号 | 不服2003-9072 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-06-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-22 |
確定日 | 2006-06-29 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第352293号「ターボ分子ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月23日出願公開、特開平10-169594〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件出願は、平成8年12月12日の出願であって、平成15年4月15日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ(平成15年4月22日発送)、これに対し、平成15年5月22日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに平成15年6月19日付けの手続補正により明細書の補正がなされたものである。 [2]平成15年6月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成15年6月19日付けの手続補正を却下する。 〔理 由〕 1.補正の内容、及び補正の目的 上記手続補正は、次の内容を含むものである。 請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】ポンプケーシング内に、ロータ側の回転翼とステータ側の固定翼が交互に配置された翼排気部と、該翼排気部の下流の前記ステータ側またはロータ側の少なくとも一方にねじ溝を有するねじ溝排気部とが設けられ、 前記翼排気部と前記ねじ溝排気部のロータは、一体に構成されているとともに、前記翼排気部のロータの外径は、前記ねじ溝排気部のロータの外径より大きく設定され、 前記ポンプケーシングは、前記翼排気部の周囲を覆う吸気口側ポンプケーシングと、前記ねじ溝排気部の周囲を覆う排気口側ポンプケーシングとを接続して構成され、 前記排気口側ポンプケーシングの内径は、前記吸気口側ポンプケーシングの内径より小径に設定されていることを特徴とするターボ分子ポンプ。」 から、 「【請求項1】ポンプケーシング内に、ロータ側の回転翼とステータ側の固定翼が交互に配置された翼排気部と、該翼排気部の下流の前記ステータ側またはロータ側の少なくとも一方にねじ溝を有するねじ溝排気部とが設けられ、 前記翼排気部と前記ねじ溝排気部のロータは、一体に構成されているとともに、前記翼排気部のロータの外径は、前記ねじ溝排気部のロータの外径より大きく設定され、 前記ポンプケーシングは、前記翼排気部の周囲を覆う吸気口側ポンプケーシングと、前記ねじ溝排気部の周囲を覆う排気口側ポンプケーシングとを接続して構成され、 前記排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、前記翼排気部のロータの外径より小径に設定されていることを特徴とするターボ分子ポンプ。」に補正する。(なお、下線は補正箇所を明示するために当審で付した。) 上記補正は、「排気口側ポンプケーシングの内径は、前記吸気口側ポンプケーシングの内径より小径に設定されている」を「排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、前記翼排気部のロータの外径より小径に設定されている」と限定するものであって、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものと認められる。 2.独立特許要件について 平成15年6月19日付けの手続補正書による手続補正は、以下の理由により平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反している。 (1)補正された請求項1に係る発明 平成15年6月19日付けの手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】ポンプケーシング内に、ロータ側の回転翼とステータ側の固定翼が交互に配置された翼排気部と、該翼排気部の下流の前記ステータ側またはロータ側の少なくとも一方にねじ溝を有するねじ溝排気部とが設けられ、 前記翼排気部と前記ねじ溝排気部のロータは、一体に構成されているとともに、前記翼排気部のロータの外径は、前記ねじ溝排気部のロータの外径より大きく設定され、 前記ポンプケーシングは、前記翼排気部の周囲を覆う吸気口側ポンプケーシングと、前記ねじ溝排気部の周囲を覆う排気口側ポンプケーシングとを接続して構成され、 前記排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、前記翼排気部のロータの外径より小径に設定されていることを特徴とするターボ分子ポンプ。」 (2)本願出願前公知の刊行物、及びその記載事項 刊行物:特開平4-31692号公報 ・刊行物の記載事項 a.「(6)実施例 以下、本発明をターボ分子真空ポンプに適用した第1実施例を第1図乃至第3図により説明する。(1)はハウジング、(2)は動翼(2a)と静翼(2b)とからなるターボ分子ポンプ、(3)はねじ溝ポンプ、(4)は該動翼(2a)及びねじ溝ポンプからなる回転体で回転軸(4a)に嵌入固定されている。」(第2頁右上欄第12〜20行) 上記記載aを図1の記載とともに看ると、刊行物には、 「ハウジング(1)内に、ロータ側の動翼(2a)とステータ側の静翼(2b)が交互に配置されたターボ分子ポンプ(2)と、該ターボ分子ポンプ(2)の下流の前記ロータ側にねじ溝を有するねじ溝ポンプ(3)とが設けられ、 前記ターボ分子ポンプ(2)と前記ねじ溝ポンプ(3)のロータは、一体に構成されており、 前記ハウジング(1)は、前記ターボ分子ポンプ(2)側のケーシングと、前記ねじ溝ポンプ(3)側のケーシングとを接続して構成されているターボ分子真空ポンプ。」の発明(以下、「刊行物記載の発明」という)が記載されているものと認められる。 また、刊行物記載の発明においては、ねじ溝ポンプ(3)のロータの外径は、ねじ溝ポンプ(3)側のケーシングの胴部の内径より小さくなっていると認められる。 (3)補正発明の進歩性の判断 補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると、後者の「ハウジング(1)」は、その構成、機能からみて、前者の「ポンプケーシング」に相当する。同様に「動翼(2a)」は「回転翼」に、「静翼(2b)」は「固定翼」に、「ターボ分子ポンプ(2)」は「翼排気部」に、「ロータ側にねじ溝を有するねじ溝ポンプ(3)」は「ステータ側またはロータ側の少なくとも一方にねじ溝を有するねじ溝排気部」に、「ねじ溝ポンプ(3)」は「ねじ溝排気部」に、「ターボ分子ポンプ(2)側のケーシング」は「翼排気部の周囲を覆う吸気口側ポンプケーシング」に、「ねじ溝ポンプ(3)側のケーシング」は「ねじ溝排気部の周囲を覆う排気口側ポンプケーシング」に、「ターボ分子真空ポンプ」は「ターボ分子ポンプ」に相当する。 したがって、補正発明と刊行物記載の発明とは、 「ポンプケーシング内に、ロータ側の回転翼とステータ側の固定翼が交互に配置された翼排気部と、該翼排気部の下流の前記ステータ側またはロータ側の少なくとも一方にねじ溝を有するねじ溝排気部とが設けられ、 前記翼排気部と前記ねじ溝排気部のロータは、一体に構成されており、 前記ポンプケーシングは、前記翼排気部の周囲を覆う吸気口側ポンプケーシングと、前記ねじ溝排気部の周囲を覆う排気口側ポンプケーシングとを接続して構成されているターボ分子真空ポンプ」の点で一致し、次の点で相違する。 ・相違点1 補正発明が、「前記翼排気部のロータの外径は、前記ねじ溝排気部のロータの外径より大きく設定され」ているのに対し、刊行物記載の発明では、そのようになっているのか不明である点。 ・相違点2 補正発明が、「前記排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、前記翼排気部のロータの外径より小径に設定されている」であるのに対し、刊行物記載の発明では、そのようになっているのか不明である点。 ・相違点1、2の検討、及び判断 上流側の翼排気部と下流側のねじ溝排気部とを組み合わせたターボ分子ポンプにおいては、ねじ溝排気部のロータと外側で対向する部材の内径を、翼排気部のロータの外径より小径に設定することは周知である(例えば、特開昭60-216096号公報第1図におけるステータ14の内径とロータ羽根8の外径との大小関係、特公昭47-33446号公報第3図における外筒11の内径と動翼4の外径との大小関係参照)。 してみれば、刊行物記載の発明に上記周知の事項を適用して、ねじ溝排気部のロータと外側で対向する部材である排気口側ポンプケーシングの胴部の内径を翼排気部のロータの外径より小径に設定することは、ポンプ装置において外形寸法を小型化することは一般に要求されることであることを考慮すれば、当業者が容易に想到することである。 さらに、刊行物記載の発明においては、吸気口側ポンプケーシングと排気口側ポンプケーシングとを接続して構成、換言すれば、吸気口側ポンプケーシングと排気口側ポンプケーシングとを別々に構成しているので、組立においても、排気口側ポンプケーシングの胴部の内径と翼排気部のロータの外径との寸法関係には、格別制約はない。したがって、刊行物記載の発明に上記周知の事項を適用することを阻害する要因は見あたらない。 してみれば、刊行物記載の発明に、上記周知の事項を適用して、上記相違点2のように「排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、翼排気部のロータの外径より小径に設定されている」ようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、刊行物記載の発明においては、ねじ溝排気部のロータの外径は、ねじ溝排気部側(排気口側)ポンプケーシングの胴部の内径より小さくなっているから、「排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、翼排気部のロータの外径より小径に設定」すれば、必然的に「ねじ溝排気部のロータの外径は、翼排気部のロータの外径より小径に設定」、換言すれば「翼排気部のロータの外径は、ねじ溝排気部のロータの外径より大きく設定」されるようになる。 したがって、刊行物記載の発明に、上記周知の事項を適用して、上記相違点1に関して、補正発明のようにすることも、当業者が容易になし得ることといえる。 また、補正発明によってもたらされる効果も、刊行物記載の発明、及び上記周知の事項から予測し得る程度のものである。 以上のとおりであるから、本件の補正発明は出願前に頒布された刊行物記載の発明、及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件の補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (4)まとめ したがって、平成15年6月19日付けの手続補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する、同法第126条第4項の規定に違反している。 よって、この補正は、同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 [3]本願発明について (1)平成15年6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、その補正前の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、この発明を単に「本願発明」という。)。 「【請求項1】ポンプケーシング内に、ロータ側の回転翼とステータ側の固定翼が交互に配置された翼排気部と、該翼排気部の下流の前記ステータ側またはロータ側の少なくとも一方にねじ溝を有するねじ溝排気部とが設けられ、 前記翼排気部と前記ねじ溝排気部のロータは、一体に構成されているとともに、前記翼排気部のロータの外径は、前記ねじ溝排気部のロータの外径より大きく設定され、 前記ポンプケーシングは、前記翼排気部の周囲を覆う吸気口側ポンプケーシングと、前記ねじ溝排気部の周囲を覆う排気口側ポンプケーシングとを接続して構成され、 前記排気口側ポンプケーシングの内径は、前記吸気口側ポンプケーシングの内径より小径に設定されていることを特徴とするターボ分子ポンプ。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物( 特開平4-31692号公報)、および、その記載事項は、前記[2]2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記[2]2.で検討した補正発明の「前記排気口側ポンプケーシングの胴部の内径は、前記翼排気部のロータの外径より小径に設定されている」の事項を「前記排気口側ポンプケーシングの内径は、前記吸気口側ポンプケーシングの内径より小径に設定されている」と拡張したものに相当する。 そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに本願発明を減縮したものに相当する補正発明が、前記[2]2.(2)、(3)に記載したとおり刊行物記載の発明、及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明、及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明、及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-26 |
結審通知日 | 2006-05-02 |
審決日 | 2006-05-16 |
出願番号 | 特願平8-352293 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F04D)
P 1 8・ 575- Z (F04D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 黒瀬 雅一 |
特許庁審判長 |
大橋 康史 |
特許庁審判官 |
飯塚 直樹 関 義彦 |
発明の名称 | ターボ分子ポンプ |
代理人 | 堀田 信太郎 |
代理人 | 渡邉 勇 |