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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1139071
審判番号 不服2005-9956  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-26 
確定日 2006-06-29 
事件の表示 平成11年特許願第310754号「偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日出願公開、特開2000-329941〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成11年11月1日(優先日:平成11年3月18日、出願番号:特開平11-073666号)の出願であって、平成17年4月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年5月26日付けで審判請求がなされるとともに、平成17年6月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年6月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年6月24日付けの手続き補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成17年6月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「偏光フィルムの片面または両面に保護板が貼合されてなる偏光板であって、吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において80%以上であり、吸収軸に対して平行な振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において 0.3%以下であり、表面における反射率が波長430〜500nmの範囲において0.5%以下であることを特徴とする偏光板。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1の「吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において77%以上」を「吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において80%以上」と減縮したものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定した補正の目的に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-5881号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

[記載事項1]
「【0011】
【作用】原理は全ての光学系で同じであるので、ここでは青の光学系で説明をしてゆく。特に、黄色や赤の2色性染料は、2枚の偏光板の延伸方向が90度の時、青の周波数帯の光を遮断し、延伸方向が平行の時、青の周波数帯の光を透過する。従ってB(青)の光学系に用いる偏光板に、この光と実質的に同じ周波数帯の光を、偏光方向が平行の時に、偏光する染料を用いれば、入射される青の光の殆どが、吸収されず透過する。しかも染料は、第1、第2および第3の染料等を混ぜ合わせていないで、単独なので、実質的に染料が1/3倍またはそれ以下となり、その分この染料の吸収率が小さくなり、全体として透過率が拡大する。」

[記載事項2]
「【0015】・・(中略)・・図2は偏光板(62B),(62G),(62R)と偏光板(63B),(63G),(63R)に全て沃素系の偏光板を使用した従来例の平行分光特性および直交分光特性を示し、破線は70℃、200時間経過後の特性を示す。また、図3は偏光板の全てに染料系の偏光板を使用した場合の初期および70℃、200時間保存後の光学特性を示し、図4は偏光板(62B),(62G),(62R)に染料系の偏光板を使用し、偏光板(63B),(63G),(63R)に沃素系の偏光板を使用した場合の初期および70℃、200時間保存光学特性を示す。なお、図の横軸は波長(単位nm)であり、縦軸は透過率(単位%)である。」

[記載事項3]
「【0018】これらの各光学系で用いられる前記染料は、全て原理が同じであるので、ここでは以下に青の光学系に用いる前記染料について説明する。図5は、黄色の2色性染料が吸着された青色を偏光する偏光板の分光特性を示す図であり、図6は、赤の2色性染料が吸着された青色を偏光する偏光板の分光特性を示す図である。ここで実線は、延伸方向が90度のときであり、点線は延伸方向が平行のときである。この特性図から明らかなように、偏光方向が平行のときは、青色の周波数帯の光を透過するため、青の光学系の液晶パネルにこの色の染料を使用すると、プロジェクションレンズ(60)を介して写し出される青色の光は、従来の黒色系偏光板を使用する場合より映像が明るくなる。しかも染料の量は従来よりも約1/3またはそれ以下となるので、この染料全体の吸収率が低下し更に明るくなる。また延伸方向が90度のときにおいても、青色の光の吸光度が大きくなるので、良好なコントラストが得られる。」

そして、刊行物1の記載事項1〜3には、1枚の偏光板ではなく、2枚の偏光板が、その延伸方向が平行または90度で重ねられて用いられた場合について説明されているが、このうち、光が2枚の偏光板のうちの1枚目を通過した時点から、2枚目の偏光板を通過するまでの部分について見てみる。
ここで通常、偏光板の「延伸方向」に平行な振動面を有する光は吸収されるから、引用発明における「延伸方向」は本願補正発明における「吸収軸」に対応している。

まず、刊行物1に記載の「2枚の偏光板の延伸方向が平行」な場合、1枚目の偏光板を通過した光(光は直線偏光となっている)は、1枚目の延伸方向と平行な延伸方向(吸収軸)を有するものである2枚目の偏光板の延伸方向(吸収軸)とは直交する方向に振動面を有する光であるから、本願補正発明の用語に対応させて表現すれば「吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光」であると言える。
同様に、「2枚の偏光板の延伸方向が90度の場合」は1枚目の偏光板を通過した光は、1枚目の延伸方向と90度、つまり直交する延伸方向(吸収軸)を有するものである2枚目の偏光板の延伸方向(吸収軸)とは平行な方向に振動面を有する光であるから、同様に、「吸収軸に対して平行な振動面を有する直線偏光」であるといえる。
そして、刊行物1の[記載事項2]、及び[記載事項2]中で引用された【図4】に示された光学特性は、「2枚の偏光板の延伸方向が平行」である場合、青色の周波数帯の透過率が高く、「2枚の偏光板の延伸方向が90度」である場合、青色の周波数帯の透過率が低いことを示している。
したがって、刊行物1には、
「青色を偏光する偏光板であって、吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が青色の周波数帯において大きく、吸収軸に対して平行な振動面を有する直線偏光に対する透過率が青色の周波数帯において小さい偏光板。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
まず、「青色」は波長で言えば、一般的には400nm〜500nm程度の波長の光であるとされるので、引用発明における「青色」および「青色の周波数帯」とは、波長で言えば、本願補正発明における「波長430〜500nm」に相当する。
また、本願補正発明における「透過率・・・・0.3%以下」は「透過率・・・80%以上」に比べれば「透過率が小さい」と言うことができ、同時に「透過率・・・80%以上」は「透過率・・・・0.3%以下」に比べれば「透過率が大きい」と言える。
したがって、両者は、
「偏光板であって、吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において透過率が大きく、吸収軸に対して平行な振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において 透過率が小さい偏光板。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明の偏光板は、「偏光フィルムの片面または両面に保護板が貼合されてなる偏光板」であるのに対し、引用発明の偏光板はそのような限定がない点。
[相違点2]
本願補正発明の偏光板は、吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する「透過率」が「80%以上」と限定されているのに対し、引用発明の偏光板は、上記「透過率」に相当する値は限定されずに「透過し」とされている点。
[相違点3]
本願補正発明の偏光板は、吸収軸に対して平行な振動面を有する直線偏光に対する「透過率」が「0.3%以下」との限定されているのに対し、引用発明の偏光板は、上記「透過率」に相当する値は限定されずに「光を遮断し」とされている点。
[相違点4]
本願補正発明の偏光板は、「表面における反射率」が「波長430〜500nmの範囲において0.5%以下である。」とされているのに対し、引用発明の偏光板は表面における反射率が限定されていない点。

(4)当審の判断
上記[相違点1]〜[相違点4]について検討する。

[相違点1]について
偏光フィルムに保護板を貼合することは慣用されており(例えば、特開平2-89008号公報、特開平10-3007号公報参照)、何ら格別の構成ではなく、当業者が容易に採用することができたものである。

[相違点2]、[相違点3]について
偏光板は、特定の方向に偏光する光を透過させ、特定方向に直交する方向に偏光する光を透過させない機能を有するものである。
したがって引用発明に記載された発明である偏光板の特性として「透過する」場合はできるだけ透過させ、できれば透過率が100%であること、及び「光を遮断する」場合はできるだけ遮断、即ち、透過率が0%であることが理想的であることは当業者には明らかである。
そして、本願補正発明の記載は、上記「透過率」を「80%以上」、「0.3%以下」とするための具体的裏付けを欠くものであるから、[相違点2]、[相違点3]は単に偏光板としての性能が高いものを使用するとの限定に過ぎず、上記数値に格別の臨界的な意味を見いだせない。

[相違点4]について
引用発明の偏光板は表面における反射率の限定がないとしても、表面で反射が生じた場合には種々の偏光の光が反射され、偏光板の性能が低下することから、反射率0%であることが理想的であることは当業者には明らかである。
そして、本願補正発明の記載は、上記「反射率」を「0.5%以下」とするための具体的裏付けを欠くものであるから、[相違点4]は単に偏光板としての性能が高いものを使用するとの限定に過ぎず、上記数値に格別の臨界的な意味を見いだせない。

このように、[相違点1]〜[相違点4]に係る構成は、周知技術に基づき、当業者が容易に相当し得る程度のものであるし、それによる作用効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとは認められない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年6月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年6月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「偏光フィルムの片面または両面に保護板が貼合されてなる偏光板であって、吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において77%以上であり、吸収軸に対して平行な振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において 0.3%以下であり、表面における反射率が波長430〜500nmの範囲において0.5%以下であることを特徴とする偏光板。」

4.引用刊行物の発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で認定した本願補正発明における、「吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において80%以上」との構成要件を「吸収軸に対して直交する振動面を有する直線偏光に対する透過率が波長430〜500nmの範囲において77%以上」としたものであり、本願補正発明を包含するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、上記刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2006-04-21 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-12 
出願番号 特願平11-310754
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 浩  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森口 良子
瀬川 勝久
発明の名称 偏光板  
代理人 中山 亨  
代理人 榎本 雅之  
代理人 久保山 隆  

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