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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1139162
審判番号 無効2005-80199  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-06-30 
確定日 2006-06-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第3549849号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3549849号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3549849号の発明は、平成4年11月6日に出願した特願平4-297124号の一部を平成13年3月26日に新たな特許出願とした特願2001-88130号であって、平成16年4月30日に設定登録がなされ、これに対して平成17年6月30日に榊原令子より本件無効審判の請求がなされ、平成17年7月19日付けで被請求人に対して答弁が指令され、被請求人からその指定期間内である平成17年9月15日付けで答弁書及び訂正請求書が提出され、平成18年2月24日付けで請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出されるとともに、同日に特許庁大審判廷にて口頭審理が行われ、その後書面審理とされ、平成18年3月20日付けで当審から職権による無効理由通知がなされ、これに対して被請求人からその指定期間内に何らの応答もなかったものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容(下線部訂正個所)
平成17年9月15日付けの訂正請求の内容は、以下のとおりである。
i.訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のように訂正する。
(以下、訂正後の請求項1に記載の発明を「本件訂正発明」という。)
「回転リールと、
この回転リールを回転させる駆動源と、
投入メダル検出手段から出力された投入メダル検出信号に基づいて、投入メダル数を計数する投入メダル計数手段と、この投入メダル計数手段の計数値が最大遊技メダル数を越えた場合に、クレジットモードと判定し、最大投入メダル数を越えて投入された投入メダル数をクレジットメダルとして計数するとともに、前記クレジットモードにおいて、クレジット投入信号にもとづいて、計数されたクレジットメダル数から最大投入枚数を減算し、遊技メダル投入信号を出力するクレジットメダル計数手段と、このクレジットメダル計数手段からの遊技メダル投入信号にもとづいて遊技メダル数を計数する遊技メダル計数手段と、
スタートスイッチからのスタート信号にもとづいて、前記駆動源の駆動を開始させるリール駆動制御手段とを備えると共に、
計数されたクレジットメダル数が最大遊技メダル数以上の時、クレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入されるように形成すると共に、
最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入口から投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ遊技メダルとして投入されるように形成したことを特徴とするスロットマシン。」
ii.訂正事項b
特許明細書の段落【0008】の記載を以下のように訂正する。
「更に、計数されたクレジットメダル数が最大遊技メダル数以上の時、クレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入されるように形成すると共に、最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入口から投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ遊技メダルとして投入されるように形成したことを特徴とする。」
iii.訂正事項c
特許明細書の段落【0009】【0010】【0011】【0026(2カ所)】に記載の「すでに投入されている」を「すでに投入口から投入されている」に訂正するとともに、【0038(3カ所)】に記載の「すでに投入されている」を「すでに投入口に投入されている」に訂正する。
iv.訂正事項d
特許明細書の段落【0012】の記載を以下のように訂正する。
「また、計数されたクレジットメダル数が最大遊技メダル数以上の時、クレジット投入信号により、最大遊技枚数のメダルが遊技メダルとして投入されるように形成されている。このとき、最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入口から投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ遊技メダルとして投入されるように形成してあるので、投入メダルの有無に係わらず、クレジット投入信号が発せられると、常に最大投入枚数でのゲームが行える。」
v.訂正事項e
特許明細書の段落【0021】の記載を以下のように訂正する。
「なお、最大遊技メダル数は、例えば通常ゲーム中は「3」枚としたが、それ以外に例えばボーナスゲーム中は「1」枚であるし、それ以外の枚数でもよい。また、クレジットメダル数の最大値は、例えば50枚に設定されているが、それ以外の枚数でもよい。さらに、前記中央制御装置30には、図1に示すように、前記スタートスイッチ25からのクレジット投入信号にもとづいて、例えば最大遊技メダル数、すなわち通常ゲーム中は「3」枚に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるクレジットメダル自動投入手段35を備えている。なお、クレジットメダル自動投入手段35は、スタートスイッチ25からのクレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるように構成したが、スタートスイッチ25からのクレジット投入信号を1回入力する度に、1枚のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるように構成してもよい。同様に、クレジット投入スイッチ27からの投入信号に基づいて計数されたクレジットメダル数から「1」を減算するとして説明したが、スタートスイッチの場合の説明とは逆に、最大遊技メダル数である「3」枚に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして投入させるようにしてもよい。 」
vi.訂正事項f
特許明細書の段落【0034】の記載を以下のように訂正する。
「また、先のステップ65において、スタートスイッチ25が下方に操作されていないと判定されない場合にも、図4に示すように、当該ループを抜ける。なお、本実施例では、図3に示すように、スタートスイッチ25を上方に操作することに
より、クレジットメダルを最大遊技メダル数に等しい枚数である3枚投入させたが、1回の操作により投入できるクレジットメダルの投入枚数は、特にこれに限定されるものではなく、1回の操作により「1」枚若しくは「2」枚又は任意の枚数でも同様の効果を得ることができる。同様に、ステップ67ではクレジット投入スイッチONに伴ったクレジット投入信号に基づいて計数されたクレジットメダル数から「1」を減算するとして説明したが、3枚投入で説明した上で1枚投入も可能であるとしたスタートスイッチの場合の説明とは逆に、最大遊技メダル数である「3」枚に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして減算させるようにしてもよい。このときには、ステップ67の「クレジット投入スイッチON」に伴って遊技メダルとして投入されるメダルが3枚となるので、ステップ68の「遊技メダルMAX?」が必ずYとなる。従って、実質的にステップ69が不要となる。またこの時、ステップ68の「遊技メダルMAX?」を、既に説明したステップ63の「MAX投入」に置き換えることもできる。」
vii.訂正事項g
特許明細書の段落【0040】の記載を以下のように訂正する。
「特に、投入口に投入するメダルと、クレジットされているメダルとを同時に使用する場合に、最大投入枚数までの投入の範囲で、操作性を改善したものである。また、クレジット投入信号により、常に最大遊技枚数のメダルが投入されるように形成されている。」
viii.訂正事項h
特許図面の図4の記載を別紙のように訂正する。
図4の各ステップ及び処理後の方向について以下のように訂正する。
ア.ステップ61の「スタートスイッチON?」を「スタートスイッチ上方向ON?」に訂正する。
イ.ステップ62の「クレジット信号有?」を「遊技メダルMAX?」に訂正する。
ウ.ステップ68の「遊技メダル数が上限値か?」を「遊技メダルMAX?」に訂正する。
エ.ステップ65の「スタート信号有?」を「スタートスイッチ下方向ON?」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
i.訂正事項aについて
訂正事項aは、特許請求の範囲について、明りょうでない記載の釈明を目的に訂正するものであって、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ii.訂正事項b、c、d及びgについて
訂正事項b、c、d及びgは、本件特許明細書の特許請求の範囲の訂正に整合させて発明の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであって新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
iii.訂正事項e及びfについて
訂正事項e及びfは、クレジット投入スイッチによって、最大遊技メダル数である「3」枚のクレジットメダルが遊技メダルとして投入可能であることを明細書に記載する趣旨のものである。
ところで、訂正前の本件特許明細書には、クレジット投入スイッチによって、「1」枚のクレジットメダルが遊技メダルとして投入可能であることのみが記載されており、クレジット投入スイッチによって「3」枚が投入可能であることは自明とはいえず、新たな実施例を追加するものである。
この点について、訂正請求人は、訂正前の本件特許明細書に、スタートスイッチにより「3」枚以外に「1」枚のクレジットメダルを遊技メダルとして投入可能であることが記載されており、「3」枚と「1」枚のメダル枚数として大きな意味がない旨を主張するが、実施例においては、遊技者がスイッチ操作するときの利便性を考慮し、遊技者が一般的に選択するメダルの3枚投入をスタートスイッチにより行えるようにするとともに、メダルの1枚投入をクレジット投入スイッチにより行えるようにすることで、2つのスイッチに付与するメダル投入枚数に係る機能を異ならせているものと解され、クレジット投入スイッチによって最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジット投入信号を出力することは、何ら想定していないものと認められる。
iv.訂正事項hについて
訂正事項hは、本件特許明細書の発明の詳細な説明に整合するように図面を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的に訂正するものであって、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
v.よって、本件訂正は、前記訂正事項e及びfにおいて、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものではなく、また、実施例を追加するものとして実質上特許請求の範囲を拡張するものである。

3.むすび
よって、本件訂正は、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合しないから、その訂正を認めることができない。

第3.本件発明
本件特許第3549849号の発明は、訂正が認められないから、本件の特許明細書及び図面の記載からみて、その設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。(以下、本件特許の設定登録時の請求項1に記載の発明を「本件発明」という。)
「回転リールと、
この回転リールを回転させる駆動源と、
投入メダル検出手段から出力された投入メダル検出信号に基づいて、投入メダル数を計数する投入メダル計数手段と、この投入メダル計数手段の計数値が最大遊技メダル数を越えた場合に、クレジットモードと判定し、最大投入メダル数を越えて投入された投入メダル数をクレジットメダルとして計数するとともに、前記クレジットモードにおいて、クレジット投入信号にもとづいて、計数されたクレジットメダル数から最大投入枚数を減算し、遊技メダル投入信号を出力するクレジットメダル計数手段と、このクレジットメダル計数手段からの遊技メダル投入信号にもとづいて遊技メダル数を計数する遊技メダル計数手段と、
スタートスイッチからのスタート信号にもとづいて、前記駆動源の駆動を開始させるリール駆動制御手段とを備えると共に、
計数されたクレジットメダル数が最大遊技メダル数以上の時、クレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入されるように形成すると共に、
最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ投入されるように形成したことを特徴とするスロットマシン。」

第4.当事者の求めた審判及び当審無効理由通知
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、特許第3549849号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、下記の甲第1号証乃至甲第3号証を提出して、本件発明の特許を無効とすべき理由1乃至3として、次のように主張する。
無効理由1(特許法第29条の2違反)
本件発明は、本件特許の出願前に出願され、その出願後に出願公開された甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきである。
無効理由2(特許法第29条第2項違反)
本件発明の特許は、特許法第44条第2項の規定の適用を受けることができず、その出願日は、本件分割出願の現実の出願日(平成13年3月26日)に繰り下がるため、その出願前に発行された甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
無効理由3(特許法第36条第4、5項違反)
本件発明の特許請求の範囲には、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されておらず、また、発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に構成が記載されていないため、本件特許は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。
甲第1号証:特開平6-71012号公報
甲第2号証:特開平6-142275号公報
甲第3号証:実願平4-59705号(実開平6-15683号)
のCDROM

2.被請求人の主張
被請求人は、訂正請求を行うとともに、本件発明は、特許法第29条の2第29条第2項第36条第4項及び第5項のいずれの規定に違反するものではないから、無効理由は存在しない旨主張する。

3.当審無効理由通知
当審は、平成18年3月20日付けで職権による無効理由1乃至4を以下のように通知した。
当審無効理由1(特許法第29条第2項違反)
本件発明は、刊行物である下記の第1引用例及び第2引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効にすべきものである。
第1引用例:特開平1-268588号公報
第2引用例:特開平4-64377号公報

当審無効理由2(特許法第29条第2項違反)
本件特許に係る分割出願は、その原出願である特願平4-297124号の出願当初の明細書又は図面(以下、「原明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でない事項を含むため、本件特許に係る出願は、原出願に基づく適法な分割出願とは認められず、特許法第44条の規定に適合しないから、その出願日は、原出願の出願日に遡及せず、現実の出願日である平成13年3月26日である。
しかして、本件発明は、刊行物である下記の第1引用例乃至第6引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効にすべきものである。
第1引用例:特開平1-268588号公報
第2引用例:特開平4-64377号公報
第3引用例:特開平6-142275号公報(甲第2号証)
第4引用例:実願平4-59705号(実開平6-15683号)
のCD-ROM(甲第3号証)
第5引用例:特開平6-71012号公報(甲第1号証)
第6引用例:特開平5-208061号公報

当審無効理由3(特許法第29条第2項違反)
本件特許第3549849号の発明は、平成17年9月15日付けの訂正請求が適法であるとすると、前記第2.1.i.に記載されるとおりのもの(以下、同じく「本件訂正発明」という。)である。
しかして、本件訂正発明は、刊行物である下記の第1引用例及び第2引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効にすべきものである。
第1引用例:特開平1-268588号公報
第2引用例:特開平4-64377号公報

当審無効理由4(特許法第29条第2項違反)
本件特許第3549849号の発明は、平成17年9月15日付けの訂正請求が適法であるとすると、前記第2.1.i.に記載されるとおりのもの(以下、同じく「本件訂正発明」という。)である。
ところで、本件特許に係る分割出願は、その原出願である特願平4-297124号の出願当初の明細書又は図面(以下、「原明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でない事項を含むため、本件特許に係る出願は、原出願に基づく適法な分割出願とは認められず、特許法第44条の規定に適合しないから、その出願日は、原出願の出願日に遡及せず、現実の出願日である平成13年3月26日である。
しかして、本件訂正発明は、刊行物である下記の第1引用例乃至第6引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件訂正発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効にすべきものである。
第1引用例:特開平1-268588号公報
第2引用例:特開平4-64377号公報
第3引用例:特開平6-142275号公報(甲第2号証)
第4引用例:実願平4-59705号(実開平6-15683号)
のCD-ROM(甲第3号証)
第5引用例:特開平6-71012号公報(甲第1号証)
第6引用例:特開平5-208061号公報

第5.当審無効理由1(特許法第29条第2項違反)に係る判断
当審が平成18年3月20日付けで職権によりなした前記第4.3.当審無効理由1(特許法第29条第2項適用)に基づいて、以下検討する。
1.引用刊行物に記載の発明
(1)第1引用例に記載の発明
i.第1引用例〔特開平1-268588号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「(1)コイン貯留装置動作スイッチをオンとすると所定枚数のコインが貯留される機構を有しかつコインを投入した後スタートレバーを押すと3個の回胴が回転をはじめ各回胴に対応して設けられたストップスイッチを押すと対応する回胴が停止し各回胴に表示された図柄が所定の組み合わせの状態で停止した場合に入賞として所定の枚数のコインを払い出すようにしたオリンピアゲームマシンにおいて、3個のコイン投入スイッチを設け第一のコイン投入スイッチを押すとコイン貯留装置から1枚のコインが投入され第二のコイン投入スイッチを押すとコイン貯留装置から2枚のコインが投入されかつ第三のコイン投入スイッチを押すとコイン貯留装置から3枚のコインが投入されるようにしたことを特徴とするオリンピアゲームマシン。」(第1頁左下欄第4〜19行)、
「(2)コイン貯留装置動作スイッチをオンとすると所定枚数のコインが貯留される機構を有しかつコインを投入した後スタートレバーを押すと3個の回胴が回転をはじめ各回胴に対応して設けられたストップスイッチを押すと対応する回胴が停止し各回胴に表示された図柄が所定の組み合わせの状態で停止した場合に入賞として所定の枚数のコインを払い出すようにしたオリンピアゲームマシンにおいて、各ストップスイッチにコイン投入機構を併有せしめ第一のストップスイッチを押すとコイン貯留装置から1枚のコインが投入され第二のストップスイッチを押すとコイン貯留装置から2枚のコインが投入されかつ第三のストップスイッチを押すとコイン貯留装置から3枚のコインが投入されるようにしたことを特徴とするオリンピアゲームマシン。」(第1頁左下欄第20行〜右下欄第15行)、
「(5)コイン貯留装置動作スイッチを設置せず、4枚以上のコインが投入されると自動的にコイン貯留装置にコインが貯留されるようにした機構を有することを特徴とする請求項(1),(2),(3)又は(4)記載のオリンピアゲームマシン。」(第2頁右上欄第19行〜左下欄第3行)、
「第1図は本発明にかかるオリンピアゲームマシン2の正面図である。同図において、4は回胴窓で、各21個(7種類)の図柄があり回転可能な3個の回胴R1,R2,R3の停止時の図柄の状態を外部から目視できるようになっている。6はコイン投入口である。8は投入コイン枚数を表示するためのコインランプで、該コインランプ8の点灯によって有効ラインの表示をも行う。10は回胴R1,R2,R3を回転させるためのスタートレバーである。12は回胴R1,R2,R3の停止操作可能を表示するための停止ランプである。14a,14b,14cは回胴R1,R2,R3をそれぞれ停止させるためのストップスイッチである。16は入賞時のコイン払い出し枚数を表示するための払い出し表示器である。18はコインの払い出し及び返却用の受け皿である。20は連続役物によるゲーム(ボーナスゲーム)表示パネルである。22は入賞図柄の一覧と入賞コイン枚数の表示部である。」(第3頁左下欄第15行〜右下欄第13行)、
「第2図は本発明にかかるオリンピアゲームマシン2の内部図である。同図において、24はコインガイドレールでコイン投入口6からコインセレクター26にコインを誘導するものである。該コインセレクター26は投入されたコインが規格サイズか否かを選別する。28はミニソレノイドでオンオフ動作によりコインをホッパー30に受け入れるか、受け皿18に返却するかを選別するものである。該ホッパー30は入賞時に正確に入賞枚数分のコインを遊技者に対して払い出しをするための装置である。32は補助収納庫で該ホッパー30内のコインが満杯になりあふれた場合にコインを収納する。34はコイン振り分け機構でホッパー30のコイン収納数が満杯の際にコインを補助収納庫32に誘導するか否かを決める作用を行う。36はコインセンサー基板で投入コインをカウントする。38は回胴R1,R2,R3を回転させるためのステッピングモータである。40はマイクロコンピュータ基板で、本オリンピアゲームマシン2の頭脳部に該当しゲームをとどこおりなく遂行するための計算、記憶、指示等を統括するものである。該マイクロコンピュータ40のメモリはコインの投入枚数に応じて複数枚(現在は最大50枚に制限されている)のコインの貯留を行い、コイン貯留装置としての働きも行う。」(第3頁右下欄第14行〜第4頁左上欄第18行)、
「上述した構成により、コイン貯留装置動作スイッチをオフとしておく場合には、オリンピアゲームマシン2は、通常は最大3枚しかコインの受付をせず、4枚以上投入された場合にはコイン受け皿18に返却される。しかし、コイン貯留装置動作スイッチ66をオンとしておくと、4枚以上のコインの投入があった場合でも受け皿18にコインを返却することなくマイクロコンピュータ40が判断しマイクロコンピュータ40の内部メモリに多数枚(現行では最大50枚)のコインの貯留を行い、貯留装置内コイン貯留枚数表示器68に貯留枚数を表示する。」(第4頁左下欄第7〜18行)。

ii.第1引用例には、前記摘示の記載によれば、以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。
「回胴R1,R2,R3と、
前記回胴R1,R2,R3を回転させるステッピングモータ38と、
コイン投入口6から投入された投入コインを検出して投入コイン数を計数するコインセンサー基板36と、前記コインセンサー基板の計数値が1ゲームの最大投入コイン数である3枚を越えた場合に、自動的にコイン貯留装置にコインが貯留される動作状態になるように構成して、3枚を越えて投入された投入コインをコイン貯留枚数として計数するとともに、前記コイン貯留装置にコインが貯留される動作状態において、第三のコイン投入スイッチからのコイン投入信号にもとづいて、前記コイン貯留枚数から最大投入枚数である3枚を減算してマイクロコンピュータ40の内部メモリに記憶し、前記第三のコイン投入スイッチからのコイン投入信号にもとづいて当該ゲームに投入されたコイン数を計数するマイクロコンピュータ40と、
スタートレバー10からのスタート信号にもとづいて、前記ステッピングモータ38の駆動を開始させるマイクロコンピュータ40とを備えると共に、
コイン貯留枚数が1ゲームの最大投入コイン数である3枚以上の時、前記第三のコイン投入スイッチからのコイン投入信号にもとづいて、1ゲームの最大投入コイン数に等しい3枚のコインを機内に投入されるように形成するオリンピアゲームマシン。」

(2)第2引用例に記載の発明
i.第2引用例〔特開平4-64377号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「コイン投入口18から投入されたコインは投入コイン検出器22により検出される。コイン投入口18の近傍にはコイン返却ボタン19が設けられている。投入コインが通路途中で詰った場合にはこのコイン返却ボタン19を押圧することにより投入されたコインがコイン払出口37からコイン受皿38上に返却される。さらに、コイン投入口18にコインを投入する毎にスピーカ50からコイン投入用効果音が発せられる。前面カバー板21には、トラブルボタン23,クレジットボタン24,1枚賭けボタン25,最大賭けボタン26,スタートボタン27が設けられている。」(第2頁左下欄第6〜18行)、
「クレジットボタン24を押圧すればクレジット表示器40bが点灯するとともにクレジットゲームが可能となるこのクレジットゲームとは、1ゲームごとに必要なコインを投入するのに代えて一時に多くのコインを前もって投入しておき、1ゲームごとに必要なコインを前もって投入したコインの中から引落して行なう遊技であり、投入コインが存在する限りいちいちコインを投入することなく繰返し遊技を行なうことができる。このクレジットボタン24を再度押圧すれば通常のコイン投入方式のゲームになる。このコイン投入方式のゲームとは、1ゲームごとに必要な枚数だけコインをコイン投入口18に投入して行なう遊技である。クレジットゲームにおいて1枚賭けボタン25を押圧すれば1枚賭け表示器40cが点灯するとともに1枚賭けの遊技が可能となる。この1枚賭けの遊技とは、1ゲームに費すコインの枚数を1枚に限定した遊技であり、1ゲームを行なうのに1枚のコインを必要とするとともにその1ゲームによって遊技者に付与される遊技価値もコイン1枚に対応する少ない遊技価値となる。この1枚賭けボタン25を2度押圧することにより2枚賭け遊技が可能となる。この2枚賭け遊技とは、1ゲームを行なうのに費すコインが2枚に限定された遊技であり、1ゲームを行なうのに2枚のコインを必要とするとともにその1ゲームによって遊技者に付与される遊技価値も投入コイン2枚に対応する比較的大きな遊技価値となる。最大賭けボタン26を押圧すれば最大賭け表示器40dが点灯するとともに最大賭け遊技が可能となる。この最大賭け遊技とは、1ゲームを行なうのに費されるコインの枚数がたとえば3枚に限定された遊技であり、1ゲームを行なうのに3枚のコインを必要とするとともにその1ゲームによって遊技者に付与される遊技価値もコイン3枚に対応する最大の遊技価値となるものである。」(第2頁右下欄第11行〜第3頁右上欄第6行)、
「遊技盤6には、3つの回転ドラムを有する可変表示装置7が設けられている。この可変表示装置7は、複数種類の識別情報を可変表示するものであり、その詳細は後述する。」(第3頁左下欄第11〜14行)、
「本実施例で説明した弾球遊技機では、スタートボタン27を押圧することによって初めて遊技がスタートするのであるが、それに代えて、最大賭けボタン26を押圧することによりスタートボタン27の押圧操作を待つことなく遊技をスタートさせてもよい。」(第4頁右上欄第17行〜左下欄第2行)、
「前面カバー板21の裏面側には、コイン投入口18(第1図参照)から投入されたコインを検出するための投入コイン検出器22が設けられている。この投入コイン検出器22には、コインの遊技機内への投入を阻止するための投入阻止ソレノイド42が設けられている。コイン投入方式による遊技の場合には、最大賭け数が前述したようにコイン3枚であるために、コイン投入口18には3枚までのコインの投入が許されるのであり、その3枚までの投入コインは正常コイン出口45から正常コイン受口47に進入し、投入コイン通路64(第2図参照)に案内される。一方、4枚目以降の投入コインに関しては、投入阻止ソレノイド42が励磁されて投入コイン誘導経路が切換えられるために、返却コイン出口44から返却コイン受口46にコインが進入し、払出コイン連絡通路63を通ってコイン払出口37にコインが導かれてコイン受皿38上にコインが返却される。クレジットゲームの場合においては、300枚までの投入コインに関しては正常コイン出口45に導かれるが、301枚以降の投入コインに関しては前述と同様に返却コイン出口に導かれる。」(第5頁左下欄第4行〜右下欄第6行)、
「この各回転モータ107a,107b,107cにそれぞれ回転ドラム105a,105b,105cが取付けられており、この回転モータ107a〜107cの駆動力により各回転ドラム105a〜105cが回転する。」(第7頁右下欄第3〜8行)、
「ゲーム制御用マイクロコンピュータ120は以下に述べる各種機器の動作を制御する機能を有する。このため、ゲーム制御用マイクロコンピュータ120は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU200と、MPU200の動作プログラムデータを格納するROM202と、主要なデータの書込および読出ができるRAM201とを含む。」(第8頁左下欄第17行〜右下欄第5行)、
「RAM201は、投入コインの数を記憶するための投入コイン数記憶部(賭け数カウンタ)121と、1ゲームにおける残り打球数を記憶するための打球数記憶部(打球数カウンタ)122と、打玉の入賞に基づく得点を記憶するための入賞得点記憶部123と、クレジット数すなわちクレジットゲーム時における投入コイン数を記憶するためのクレジット数記憶部(クレジットカウンタ)124とを含む。」(第9頁左上欄第10〜18行)、
「ドラム制御用マイクロコンピュータ125からは各回転モータ107a〜107c(第7図参照)を駆動制御するための制御信号が可変表示装置93に出力される。」(第10頁右下欄第13〜16行)、
「第11図に示すステップS(以下単にSという)1により、投入コインが検出されたか否かの判断が行なわれ、未だにコインが投入されていなければS4に進む。一方、遊技者がコイン投入口18(第1図参照)にコインを投入すればその投入コインが投入コイン検出器22により検出されてS2に進む。S2では、賭け数カウンタが「3」であるか否かの判断が行なわれる。この賭け数カウンタとは、クレジットゲームにおいて1枚賭けボタン25や最大賭けボタン26の操作によって遊技客が設定入力したコインの賭け数あるいはコイン投入によるゲームにおける投入枚数を計数するカウンタであり、前述したように最大「3」まで賭けることができる。この賭け数カウンタは、後述するS3,S6,S12によりそれぞれ所定値ずつ加算されて1ゲームが終了した段階でクリアされる。この賭け数カウンタが未だに「3」になっていない場合にはまだ余裕があるためにコインの投入に応じた賭け数カウンタの「1」の加算処理がS3により行なわれる。一方、賭け数カウンタが既にその最大値である「3」に達している場合にはS13に進みクレジットゲームであるか否かの判断がなされる。つまり、賭け数カウンタがその最大値である「3」に既に達しているにもかかわらずコインが投入されるということは、前もって多数のコインを投入しておきその投入コインをクレジットして繰返しゲームを行なうクレジットゲームを行なわんとしている場合が考えられるために、まずS13によりクレジットゲームであるか否かの判断がなされるのである。S13によりクレジットゲームでないと判断された場合には、賭け数の上限値を超えて投入された投入コインをS16により遊技者側に返却してS17に進む。一方、クレジットゲームになっている場合にはS14に進み、クレジットカウンタがその最大値である「300」に達しているか否かの判断がなされる。未だにこの上限値である「300」に達していない場合にはまだ余裕があるためにS15により投入コインに基づくクレジットカウンタの「1」の加算処理がなされた後S4に進む。一方、既にクレジットカウンタが上限値である「300」に達している場合にはS16に進み、クレジットカウンタの上限値を超えて投入されたコインを返却する。次にS4では、クレジットカウンタが「3」以上になっているか否かの判断が行なわれる。クレジットゲームの状態で投入コインが3枚以上投入されればS4によりYESの判断がなされてS5に進み、最大賭け操作が行なわれたか否かの判断がなされる。遊技者が最大賭けボタン26(第1図参照)を操作すればS6に進み、賭け数カウンタに「3」を加算し、S7に進み、賭け数カウンタ>3の判断がなされる。賭け数カウンタが「3」以下の場合にはS8に進み、クレジットカウンタから「3」を減算する処理がなされた後にS17に進む。つまりクレジットゲームを行なう場合において、最大賭けすなわち投入コイン3枚を賭ける操作が行なわれた場合には、そのコインを賭ける枚数だけ前もってクレジットしてある投入コインから減算して遊技に賭ける必要があるために、その減算する処理をS8で行なうのである。一方、クレジットゲームでない通常のコインの投入方式によりゲームを行なわんとして1枚〜3枚のコインを投入するかあるいは1枚賭け操作を行なって既に賭け数カウンタが1,2,3のいずれかの値になっている状態において最大賭け操作を行なった場合には、既に1,2,3のいずれかのカウント値になっている賭け数カウンタにさらに「3」が加算処理されるため(S6参照)、賭け数カウンタの値が「3」をオーバーする場合が生ずる。その場合には、S7によりYESの判断がなされてS9に進み、賭け数カウンタを「3」にするとともに、賭け数カウンタへの加算分をクレジットカウンタから減算する処理がなされた後にS17に進む。つまり、クレジットゲームにおいて通常のコイン投入方式によりゲームを行なわんとして既にコインがたとえば1枚投入された状態で最大賭け(3枚賭け)操作が行なわれた場合には、通常のコイン投入方式による遊技を行なわんとして投入された1枚の投入コイン+クレジットカウンタからの2枚のコインに相当するカウンタ値「2」を減算して1+2=3にして賭け数カウンタを「3」にするのである。」(第11頁左下欄第20行〜第12頁右下欄第1行)、
「スタート操作が行なわれS24により始動カウンタのカウント値が+1された場合や始動入賞が発生した場合にはS47によりNOの判断がなされてS48に進み、未払出枚数カウンタをクリアするとともに払出枚数カウンタをクリアする処理が行なわれる。このS48により前回のドラム制御のときの未払出枚数カウンタと払出枚数カウンタとがクリアされて「0」からカウントをスタートさせることになる。次にS49に進み、始動カウンタを「1」ディクリメントし、S50に進み、ドラムを回転制御し、S51に進み、ドラムを停止制御する。」(第15頁右上欄第17行〜左下欄第8行)。

ii.第2引用例には、前記摘示の記載によれば、以下の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されているものと認められる。
「可変表示装置93を構成する回転ドラム105a〜105cと、
前記回転ドラム105a〜105cを回転させる回転モータ107a〜107cと、
コイン投入口18から投入された投入コインを検出する投入コイン検出器22から出力された投入コイン検出信号に基づいて、最大3枚までの投入コイン数を計数する賭け数カウンタ121と、前記賭け数カウンタ121の計数値が既に最大賭け数である3枚に達しているにもかかわらずコインが投入されたときに、クレジットゲームになっている場合には、最大賭け数である3枚を越えて投入された投入コイン数をクレジットコインとして計数するとともに、前記クレジットゲームにおいて、最大賭けボタン26からのコイン投入信号にもとづいて、計数されたクレジットコイン数から最大賭け数である3枚を減算するクレジットカウンタ124と、前記最大賭けボタン26からのコイン投入信号にもとづいて最大賭け数である3枚を遊技コインとして計数する賭け数カウンタ121と、
スタートボタン27によるスタート操作が行なわれ、始動カウンタのカウント値が+1された場合や始動入賞が発生した場合には、前記回転モータ107a〜107cの駆動を開始させるドラム制御用マイクロコンピュータ125とを備えると共に、
計数されたクレジットコイン数が最大賭け数である3枚以上の時、最大賭けボタン26からのコイン投入信号にもとづいて、最大賭け数である3枚のクレジットコインを遊技コインとして機内に投入されるように形成すると共に、
最大賭け数である3枚未満の遊技コインがすでにコイン投入口18から投入されている場合に、その後の最大賭けボタン26からのコイン投入信号では、最大賭け数である3枚とすでにコイン投入口18から投入されたコイン枚数との差枚数分だけ遊技コインとして投入されるように形成した弾球遊技機。」

2.本件発明について
(1)本件発明と引用発明1との対比
i.本件発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における、「回胴R1,R2,R3」、「ステッピングモータ38」、「コイン投入口18」、「コイン」、「コインセンサー基板36」、「最大投入コイン数である3枚」、「自動的にコイン貯留装置にコインが貯留される動作状態」、「第三のコイン投入スイッチからのコイン投入信号」、「マイクロコンピュータ40の内部メモリ」、「当該ゲームに投入されたコイン数を計数するマイクロコンピュータ40」、「スタートレバー10」、「ステッピングモータ38の駆動を開始させるマイクロコンピュータ40」、「オリンピアゲームマシン」は、それぞれ、本件発明における、「回転リール」、「駆動源」、「投入口」、「メダル」、「投入メダル検出手段及び投入メダル計数手段」、「最大遊技メダル数、最大投入メダル数、最大投入枚数」、「クレジットモード」、「クレジット投入信号」、「クレジットメダル計数手段」、「遊技メダル計数手段」、「スタートスイッチ」、「リール駆動制御手段」、「スロットマシン」に相当する。
ii.そうすると、本件発明と引用発明1の両者は、以下の点で一致並びに相違するものと認められる。
一致点.
「回転リールと、
この回転リールを回転させる駆動源と、
投入メダル検出手段から出力された投入メダル検出信号に基づいて、投入メダル数を計数する投入メダル計数手段と、この投入メダル計数手段の計数値が最大遊技メダル数を越えた場合に、クレジットモードと判定し、最大投入メダル数を越えて投入された投入メダル数をクレジットメダルとして計数するとともに、前記クレジットモードにおいて、クレジット投入信号にもとづいて、計数されたクレジットメダル数から最大投入枚数を減算し、遊技メダル投入信号を出力するクレジットメダル計数手段と、このクレジットメダル計数手段からの遊技メダル投入信号にもとづいて遊技メダル数を計数する遊技メダル計数手段と、
スタートスイッチからのスタート信号にもとづいて、前記駆動源の駆動を開始させるリール駆動制御手段とを備えると共に、
計数されたクレジットメダル数が最大遊技メダル数以上の時、クレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入されるように形成するスロットマシン。」
相違点A1.
最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のクレジット投入信号があるときに、本件発明は、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ投入されるように形成した構成としたのに対して、引用発明は、前記構成のものか明らかでない点。

(2)相違点A1の検討
i.ところで、本件発明の如きスロットマシンと引用発明2の如き弾球遊技機が、いずれも、複数の回転リールを回転させ、該回転リールが停止して特定の図柄の組合せが有効ライン上に並んだときに所定の遊技価値が生じるようにした遊技機として、相互に互換性を有していることは、当業者の技術常識である。
ii.そこで、本件発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における、「回転ドラム105a〜105c」、「回転モータ107a〜107c」、「コイン投入口18」、「コイン」、「投入コイン検出器22」、「賭け数カウンタ121」、「最大賭け数である3枚」、「クレジットゲーム」、「最大賭けボタン26からのコイン投入信号」、「クレジットカウンタ124」、「スタートボタン27」、「ドラム制御用マイクロコンピュータ125」は、それぞれ本件発明における、「回転リール」、「駆動源」、「投入口」、「メダル」、「投入メダル検出手段」、「投入メダル計数手段、遊技メダル計数手段」、「最大遊技メダル数、最大投入メダル数、最大投入枚数」、「クレジットモード」、「クレジット投入信号」、「クレジットメダル計数手段」、「スタートスイッチ」、「リール駆動制御手段」に相当する。
そして、引用発明2を認定した引用例2に「クレジットゲームにおいて通常のコイン投入方式によりゲームを行なわんとして既にコインがたとえば1枚投入された状態で最大賭け(3枚賭け)操作が行なわれた場合には、通常のコイン投入方式による遊技を行なわんとして投入された1枚の投入コイン+クレジットカウンタからの2枚のコインに相当するカウンタ値「2」を減算して1+2=3にして賭け数カウンタを「3」にするのである。」(第12頁左下欄第13行〜右下欄第1行)と記載されているように、引用発明2には、投入口から投入されるメダルとクレジットされているメダルとを最大遊技メダル数の範囲内で同時に使用できるようにするための、前記相違点A1に係る本件発明の構成が具体的に開示されているものである。
iii.そうすると、引用発明1に示されるスロットマシンについて、引用発明2に示される、投入口から投入されるメダルとクレジットされているメダルとを最大遊技メダル数の範囲内で同時に使用できるようにする構成を採用して、前記相違点A1に係る本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.本件発明の作用効果について
本件発明の作用効果は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に予測できるものである。

3.まとめ
よって、本件発明は、第1引用例に記載された発明(引用発明1)及び第2引用例に記載された発明(引用発明2)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。

第6.当審無効理由2(特許法第29条第2項違反)に係る判断
当審が平成18年3月20日付けで職権によりなした前記第4.3.当審無効理由2(特許法第29条第2項違反)に基づいて、以下検討する。
1.本件発明の分割要件の適否の判断及び出願日の認定(特許法第44条)
(1)原出願の原明細書等に記載の発明
本件発明に係る出願の原出願である特願平4-297124号の出願当初の明細書及び図面を示す第3引用例〔特開平6-142275号公報(甲第2号証)〕には、以下の事項が記載されている。
「【請求項3】 クレジットメダル自動投入手段は、スタートスイッチからのクレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のスロットマシン。」
「【0020】前記中央制御装置30の出力側には、図1に示すように、3個の回転リール12〜14を個別に回転駆動させる駆動源としての、例えばモータ50が接続されている。一方、前記中央制御装置30は、図1に示すように、投入メダル検出手段40から出力された投入メダル検出信号にもとづいて、投入メダル数を計数する投入メダル計数手段31と、この投入メダル計数手段31の計数値が最大遊技メダル数、例えば通常ゲーム中は「3」枚を越えた場合に、クレジットモードと判定し、「3」枚を越えて投入された投入メダル数をクレジットメダルとして計数するとともに、前記クレジットモードにおいて、クレジット投入スイッチ27(図2)からのクレジット投入信号にもとづいて、計数されたクレジットメダル数から「1」を減算し、遊技メダル投入信号を出力するクレジットメダル計数手段32と、このクレジットメダル計数手段32からの遊技メダル投入信号にもとづいて遊技メダル数を計数する遊技メダル計数手段33と、前記スタートスイッチ25からのスタート信号にもとづいてモータ50の駆動を開始させるとともに、前記ストップスイッチ22〜24からのストップ信号にもとづいて、モータ50の駆動を停止させるリール駆動制御手段34とを備えている。」
「【0021】なお、最大遊技メダル数は、例えば通常ゲーム中は「3」枚としたが、それ以外に例えばボーナスゲーム中は「1」枚であるし、それ以外の枚数でもよい。また、クレジットメダル数の最大値は、例えば50枚に設定されているが、それ以外の枚数でもよい。
さらに、前記中央制御装置30には、図1に示すように、前記スタートスイッチ25からのクレジット投入信号にもとづいて、例えば最大遊技メダル数、すなわち通常ゲーム中は「3」枚に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるクレジットメダル自動投入手段35を備えている。なお、クレジットメダル自動投入手段35は、スタートスイッチ25からのクレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるように構成したが、スタートスイッチ25からのクレジット投入信号を1回入力する度に、1枚のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させるように構成してもよい。」
「【0025】上記ステップ62において、遊技メダル数がMAXに達していないと判定された場合には、図4に示すように、ステップ63に進む。このステップ63においては、遊技メダル数がMAX、すなわち最大遊技メダル数に到達するまで、クレジットメダルが遊技メダルとして投入される。スタートスイッチ25が上方に操作されると、図1に示すように、スタートスイッチ25から中央制御装置30のクレジットメダル自動投入手段35にクレジット投入信号が出力される。クレジットメダル自動投入手段35は、図1に示すように、スタートスイッチ25からのクレジット投入信号を入力すると、最大遊技メダル数、例えば通常ゲームでは「3」枚のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入させる。すなわち、クレジットメダル自動投入手段35は、図1に示すように、スタートスイッチ25からのクレジット投入信号を入力すると、クレジットメダル計数手段32に、クレジット投入信号を3回出力する。クレジットメダル計数手段32は、クレジットメダル自動投入手段35からのクレジット投入信号を1回、入力する度に、その計数値から「1」を減算させるとともに、遊技メダル計数手段33に遊技メダル投入信号を出力する。遊技メダル計数手段33は、遊技メダル投入信号を入力する度に、その計数値に「1」を加算させる。その結果、クレジットメダル計数手段32の計数値から「3」が減算され、遊技メダル計数手段33の計数値に「3」が加算される。」
「【0026】ただし、遊技メダルが「2」枚、すでに投入されている場合には、「1」枚のクレジットメダルが遊技メダルとして機内に投入される。これに対し、遊技メダルが「1」枚、すでに投入されている場合には、「2」枚のクレジットメダルが遊技メダルとして機内に投入される。その後、図4に示すように、ステップ63からステップ64〜66に進むが、当該各ステップ64〜66は、リール12〜14の回転を開始させるためのステップである。」
「【0032】上記ステップ68において、遊技メダル数がMAXに達していると、判定された場合には、図4に示すように、ステップ64に進む。これに対し、ステップ68において、遊技メダル数がMAXに達してないと判定された場合には、図4に示すように、ステップ69に進む。このステップ69においては、クレジットメダルが1枚だけ遊技メダルに移行される。すなわち、図1に示すように、クレジットメダル計数手段32は、クレジット投入スイッチ27からのクレジット投入信号を入力すると、その計数値から「1」を減算させるとともに、遊技メダル計数手段33に遊技メダル投入信号を出力する。遊技メダル計数手段33は、遊技メダル投入信号を入力すると、その計数値に「1」を加算させる。」
「【0038】なお、遊技メダルがすでに投入されている場合には、最大遊技メダル数に等しい枚数、例えば通常ゲーム中は「3」枚を限度に、クレジットメダルが遊技メダルとして投入される。すなわち、遊技メダルが「2」枚、すでに投入されている場合には、クレジットメダル自動投入手段は、スタートスイッチ25からクレジットメダル3枚投入信号又はクレジットメダル2枚投入信号を入力しても、「1」枚のクレジットメダルだけを遊技メダルとして機内に投入させる。これに対し、遊技メダルが「1」枚、すでに投入されている場合には、クレジットメダル自動投入手段は、スタートスイッチ25からクレジットメダル3枚投入信号入力しても、「2」枚のクレジットメダルだけを遊技メダルとして機内に投入させる。」

(2)本件発明と原明細書等に記載された事項との対比検討
i.投入口から投入されるメダルと、クレジットされているメダルとを同時に使用できるとする技術事項について
本件発明と原明細書等に記載された事項とを対比すると、少なくとも本件発明に規定される「最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ投入されるように形成した」という構成要件において、そのうちの「投入口から」とする技術事項については、原明細書等に記載された事項ではないというべきである。
すなわち原明細書等には、クレジットモードにおける「遊技メダルがすでに投入されている場合」について、どのような経路あるいは手順を経て遊技メダルがすでに投入されている状態になるのか具体的に記載されていない。すでに投入されている遊技メダルの投入経路としては、クレジット投入スイッチからと投入口からの2つの可能性が想定されるところ、クレジット投入スイッチによって、「1」枚のクレジットメダルが遊技メダルとして投入可能であることが当初明細書の段落【0020】、【0031】及び【0032】に明確に記載されているのに対して、クレジットモードにおいて投入口から遊技メダルが投入されたときに該遊技メダルがどのように処理されるのか何ら記載されておらず不明である。この点について、本件発明と同一技術分野に属するスロットマシンを開示する第4引用例〔実願平4-59705号(実開平6-15683号)のCD-ROM(甲第3号証)〕には、クレジットモードにおいて投入口から遊技メダルが投入されたときに該遊技メダルをクレジットメダルとして計数し、その後のクレジット投入スイッチの操作を経て遊技メダルとして機内に投入されるものとして、直接遊技メダルとして機内に投入されるわけではないことが記載されており、また、クレジットモードにおいて投入口から遊技メダルが投入されたときに直接遊技メダルとして機内に投入されるようにすることが当業者に自明の事項であるとする証拠も見当たらない。
本件無効審判の被請求人であって今回の訂正請求を行った特許権者は、原出願の当初明細書では、「遊技メダルが投入」と「遊技メダルとして投入」とを明確に区別して記載し、クレジット投入スイッチによって投入された遊技メダルについて「遊技メダルとして投入」と記載しているから、「遊技メダルがすでに投入されている場合」とは、投入口から投入された遊技メダルのことである旨主張するが、当初明細書では、すでに投入されている状態のメダルを指して「遊技メダルが投入」と称し、投入される動作状態のメダルを指して「遊技メダルとして投入」と称するように使い分けているものと解されるのであって、例えば、当初明細書の段落【0027】には、スタートスイッチ又はクレジット投入スイッチによってクレジットメダルが遊技メダルとして機内に投入された後であるステップ64において、「遊技メダルが」有るか否かが判定されると記載しているとおりである。
付言すると、原明細書等において、投入されている遊技メダルが最大遊技メダル数未満か否かの判定を行う場合のメダルの具体的種別として、クレジット投入信号にもとづいてクレジットメダルが遊技メダルとして機内に投入される場合のみについて記載されていることからしても、「遊技メダルがすでに投入されている場合」とは、例えばクレジット投入スイッチによりすでに入力されたクレジット投入信号にもとづいて遊技メダルが機内に投入されている場合を指しているとみるのが実施例に裏付けられる最も自然な解釈というべきである。
したがって、原明細書等に、クレジットモードにおいて投入口からメダルが投入されたときに、これが遊技メダルとして機内に直接に投入されることが記載されていないことが明らかであるから、本件発明の前記構成要件に係る、投入口から投入されるメダルとクレジットされているメダルとを最大遊技メダル数の範囲内で同時に使用できるようにする技術事項が原明細書等に記載されているものとは認めることができない。
ii.実施例を示す図4について
本件発明と原明細書等とを対比すると、本件発明の実施例を示す図4には、クレジット投入スイッチがオンとされ、遊技メダル数が上限値でないと判定された場合に、ステップ69においてクレジットメダルが1枚だけ遊技メダルに移され、スタートに戻ることが記載されているが、原出願の図4には、クレジット投入スイッチがオンとされ、遊技メダル数がMAXでないと判定された場合に、ステップ69においてクレジットメダルが1枚だけ遊技メダルに移されると、ステップ64に進むことが記載されており、ステップ69の行き先において両者のスロットマシンの動作が異なるものというべきである。
例えば、クレジット投入スイッチが連続的に2回オンとされ、次いでスタートスイッチが下方向にオンとされた場合における、両者のスロットマシンの動作を検証すると、本件発明の実施例では、まず、ステップ67においてクレジット投入スイッチの1回目のオン操作に応答して、ステップ69においてクレジットメダルが1枚だけ遊技メダルに移された後に、スタートに戻り、再びステップ67においてクレジット投入スイッチの2回目のオン操作に応答して、再びステップ69においてクレジットメダルが1枚だけ遊技メダルに移行され、再びスタートに戻り、今度はステップ67においてクレジット投入スイッチのオン操作がないことからステップ64に進み、ステップ65においてスタートスイッチの下方向のオン操作に応答して、遊技メダルが2枚投入された状態としてリール回転を開始するものであるのに対して、原明細書等の実施例では、まず、ステップ67においてクレジット投入スイッチの1回目のオン操作に応答して、ステップ69においてクレジットメダルが1枚だけ遊技メダルに移された後にクレジット投入スイッチの2回目のオン操作の有無を判定することなくステップ64に進み、ステップ65においてスタートスイッチの下方向のオン操作に応答して、遊技メダルが1枚投入された状態としてリール回転を開始するものである。
したがって、本件発明の実施例に記載されたスロットマシンの動作は、原明細書等に記載された実施例のものと比較して、ゲームの進行に係る具体的な動作において異なるものを含むから、原出願の当初明細書又は図面に記載された事項に基づくものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明は、原出願の当初明細書又は図面に記載された事項に基づくものではなく、本件発明に係る出願は、原出願に基づく適法な分割出願とは認められず、特許法第44条の規定に適合しないから、その出願日は、原出願の出願日に遡及せず、現実の出願日である平成13年3月26日である。

2.本件発明の進歩性(特許法第29条第2項)に係る判断
前記のように、本件発明に係る出願日は、平成13年3月26日である。
(1)第3引用例に記載の発明
本件発明に係る出願の出願前の平成6年5月24日に公開された刊行物である第3引用例〔特開平6-142275号公報(甲第2号証)〕には、前記第6.1.(1)に摘示した事項が記載されており、前記摘示の記載及び図1乃至5によれば、第3引用例には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「回転リールと、
この回転リールを回転させる駆動源と、
投入メダル検出手段から出力された投入メダル検出信号に基づいて、投入メダル数を計数する投入メダル計数手段と、この投入メダル計数手段の計数値が最大遊技メダル数を越えた場合に、クレジットモードと判定し、最大投入メダル数を越えて投入された投入メダル数をクレジットメダルとして計数するとともに、前記クレジットモードにおいて、スタートスイッチからのクレジット投入信号にもとづいて、計数されたクレジットメダル数から最大投入枚数を減算し、遊技メダル投入信号を出力するクレジットメダル計数手段と、このクレジットメダル計数手段からの遊技メダル投入信号にもとづいて遊技メダル数を計数する遊技メダル計数手段と、
スタートスイッチからのスタート信号にもとづいて、前記駆動源の駆動を開始させるリール駆動制御手段とを備えると共に、
計数されたクレジットメダル数が最大遊技メダル数以上の時、スタートスイッチからのクレジット投入信号にもとづいて、最大遊技メダル数に等しい枚数のクレジットメダルを遊技メダルとして機内に投入されるように形成すると共に、
最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のスタートスイッチからのクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入されたメダル枚数との差枚数分だけ遊技メダルとして投入されるように形成したスロットマシン。」

(2)本件発明と引用発明3の対比
本件発明と引用発明3とを対比すると、本件発明と引用発明3の両者は、以下の点で相違することを除き、その余の点で一致するものと認められる。
相違点A2.
最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のクレジット投入信号があるときに、本件発明は、最大遊技メダル数とすでに投入口から投入されたメダル枚数との差枚数分だけ投入されるように形成した構成としたのに対して、引用発明3は、前記構成のものか明らかでない点。

(3)相違点A2の検討
前記相違点A2は、前記第5.「当審無効理由1に係る判断」の2.(1)「本件発明と引用発明1との対比」において認定した相違点A1と実質的に同一であるところ、前記第5.2.(2)「相違点A1の検討」において検討したとおり、第2引用例に基づいて認定した引用発明2には、前記相違点A1に係る本件発明の構成が具体的に開示されているものである。
そうすると、引用発明3に示される、最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入されたメダル枚数との差枚数分だけ投入されるように形成したスロットマシンについて、引用発明2に示される、投入口から投入されるメダルとクレジットされているメダルとを最大遊技メダル数の範囲内で同時に使用できるようにする構成を採用して、前記相違点A2に係る本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、第6引用例〔特開平5-208061号公報〕には、クレジットモードにおいて投入口からメダルが投入されるときに、すでに投入されている枚数が最大遊技メダル数未満であるときに、これが遊技メダルとして機内に直接に投入されるようにして、投入口から投入されるメダルとクレジットされているメダルとを同時に使用できるようにしたスロットマシンの技術が記載(第8頁、図7、S22〜S32)されているから、引用発明3に示される、最大遊技メダル数未満の遊技メダルがすでに投入されている場合に、その後のクレジット投入信号では、最大遊技メダル数とすでに投入されたメダル枚数との差枚数分だけ投入されるように形成したスロットマシンにおいて、第6引用例に示される前記スロットマシンの技術を採用して、前記相違点A2に係る本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
本件発明の作用効果は、引用発明3及び引用発明2あるいは第6引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に予測できるものである。

3.まとめ
よって、本件発明は、その出願が分割要件を満たさないため、出願日が現実の出願日である平成13年3月26日に繰り下がり、その出願日前に頒布された刊行物である第3引用例及び第2引用例あるいは第6引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。

第7.むすび
以上のとおり、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明)は、その出願日前に公知の刊行物に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、その余の無効理由について検討するまでもなく、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-11 
結審通知日 2006-05-12 
審決日 2006-05-23 
出願番号 特願2001-88130(P2001-88130)
審決分類 P 1 113・ 121- ZB (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 川島 陵司
篠崎 正
登録日 2004-04-30 
登録番号 特許第3549849号(P3549849)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 黒田 博道  
代理人 湯田 浩一  
代理人 手島 直彦  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 竹本 松司  
代理人 魚住 高博  

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