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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1139207
審判番号 不服2003-14507  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-29 
確定日 2006-07-07 
事件の表示 平成11年特許願第 32129号「厚みモニタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月22日出願公開、特開2000-230819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年2月10日の出願であって、平成15年6月26日付け(発送日;同月30日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 真空槽内を走行するフィルムに蒸着された薄層からなる混合膜の厚みを測定する厚みモニタ装置において、前記混合膜に一次X線を照射するX線照射手段と、前記一次X線の照射により励起される特性(蛍光)X線の強度を測定する特性X線測定手段と、前記混合膜の成分に対応する元素に応じた既知の特性を有する複数の標準試料を備えた標準板を、前記一次X線の照射光路に出退可能に移動させる標準板移動手段と、前記標準試料から得られる特性X線強度の測定値に基づいて前記特性X線測定手段で測定された特性X線強度を補正する補正手段と、補正後の特性X線強度を基に前記混合膜の成分毎の厚みを出力する混合膜厚み出力手段と、を備えたことを特徴とする厚みモニタ装置。
【請求項2】 前記特性X線測定手段近傍の雰囲気温度を測定する温度検出手段を備えると共に、前記補正手段が、前記標準試料から得られる特性X線強度の測定値と前記温度検出手段で得られた温度とに基づいて、前記特性X線測定手段で測定された特性X線の強度を補正する請求項1の厚みモニタ装置。」
を、
「【請求項1】 真空槽内を走行するフィルムに蒸着された薄層からなる混合膜の厚みを測定する厚みモニタ装置において、前記混合膜に一次X線を照射するX線照射手段と、前記一次X線の照射により励起される特性(蛍光)X線の強度を一定間隔連続的に測定する特性X線測定手段と、前記混合膜の成分に対応する元素に応じた既知の特性を有する複数の標準試料を備えた標準板を、前記一次X線の照射光路に出退可能に移動させる標準板移動手段と、前記標準試料から得られる各成分毎の特性X線強度の測定値に基づいて前記特性X線測定手段で測定された特性X線強度を薄板状の標準試料を用いて補正する補正手段と、補正後の特性X線強度を基に前記混合膜の成分毎の厚みをデジタル信号に変換して出力する混合膜厚み出力手段と、を備えたことを特徴とする厚みモニタ装置。
【請求項2】 前記特性X線測定手段近傍の雰囲気温度を測定する温度検出手段を備えると共に、前記標準試料がX線減衰層を有していて、前記補正手段が、前記標準試料から得られる特性X線強度の測定値と前記温度検出手段で得られた温度とに基づいて、前記特性X線測定手段で測定された特性X線の強度を補正する請求項1の厚みモニタ装置。」
と補正する補正事項を含むものである。
なお、下線は、補正箇所を示すために付したものである。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特定X線測定手段」について「一定間隔連続的に測定する」との限定を附加し、「標準試料」について「薄板状の」との限定を附加し、「混合膜厚み出力手段」について「デジタル信号に変換して出力する」との限定を附加するものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものと認められる。
したがって、上記補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法(以下、「平成15年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-330318号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 無機薄膜を形成する原子を励起状態とした後に放たれる当該薄膜組成の元素の特性X線の内、少なくとも一つの元素の特性X線強度を測定することにより当該薄膜の膜厚をモニターしながら、連続に走行するプラスチック基材上に無機薄膜を設けることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項2】 連続に走行するプラスチック基材上に無機薄膜を設けるガスバリアフィルムの作製において、当該無機薄膜を形成する原子を励起状態とした後に放たれる薄膜組成の元素の特性X線の内、少なくとも一つの元素の特性X線強度を測定することにより当該薄膜の膜厚をモニターしうる設備を有してなるガスバリアフィルムの製造装置。」
1b.「【0005】本発明の目的は、無色透明の薄膜及び複合酸化物薄膜等を用いたガスバリアフィルムに対しても有効な膜厚モニター法を有するガスバリアフィルムの製造装置及び製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、本発明により上記目的が達成されることを見出した。即ち、本発明は、無機薄膜を形成する原子を励起状態とした後に放たれる当該薄膜組成の元素の特性X線の内、少なくとも一つの元素の特性X線強度を測定することにより当該薄膜の膜厚をモニターしながら、連続に走行するプラスチック基材上に無機薄膜を設けることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法であり、また、当該ガスバリアフィルムの製造装置である。」
1c.「【0018】本発明における無機薄膜の膜厚モニター法について、具体例を挙げて以下に説明する。・・・例えばW、Mo、Rh、Cr等をターゲットとしたX線管球から発生したX線をコリメーターで面積を制限し、励起源として無機薄膜に照射する。
・・・
【0020】・・・薄膜を形成する原子は、X線等を照射されて励起状態になり、その後基底状態に戻るときに各元素に固有の蛍光X線(特性X線)を放出する。この放出された特性X線を分光し、検出部で検出する。
【0021】この分光、検出部としては、グラファイト、フッ化リチウム、塩化ナトリウム等の分光結晶や回折格子による回折現象を利用した分散型でも、測定X線のエネルギーに比例した出力をもつ検出器を使用する波高分析法による非分散型でもどちらでもよい。また、特性X線検出器としては、ガス増幅比例計数管、半導体検出器、シンチレーション検出器等を用いることができる。
【0022】ここで特性X線とは、各元素に固有な線スペクトル又はその一部によって構成されるX線であり、固有X線ともいう。この特性X線の波長としては、例えばCuのKα線(特性X線の一種で電子がL殻からK殻の空準位へ遷移する時に放出されるX線)は1.542Å、MoのKα線は0.710Åであり、また、Al、Si、Mg、CaのKα線の波長は、それぞれ8.339Å、7.126Å、9.889Å、3.360Åである。
【0023】上記のようにして得られた無機薄膜を形成する元素の特性X線強度は、薄膜の膜厚と相関関係があり、前もって膜厚既知のサンプルで特性X線強度を測定して作製した検量線から、膜厚測定が可能となる。即ち、薄膜中に含まれる元素の内の少なくとも1つの元素の特性X線強度を測定すればよい。また、2つ以上の構成元素の特性X線の強度比をとることによって、薄膜組成に関する情報も得られる。」
1d「【0026】ここで、図1は本発明のガスバリアフィルム製造装置の一実施例を示す図であり、この図を用いて本発明のガスバリアフィルムの製造方法を説明する。るつぼ6に入った蒸着源材料10に、EB銃5から電子ビームを照射し、巻き出しロール1から送り出されたプラスチック基材4に蒸着源材料10を蒸着させる。これにより、プラスチック基材4上に無機薄膜16を形成させ、ガスバリアフィルム15が得られる。次に、励起用X線源11から発生させた励起用X線17をコリメーター14でその直径を制限しながら、ガスバリアフィルム15の無機薄膜16上に照射し、その時に放出される特性X線18の強度を特性X線検出器12で測定する。この得られたデータをパソコンに入れ、目標値との差をEB銃5のエミッション電流等へフィードバックしながらガスバリアフィルム15の作製を行う。」
1e.「【0029】実施例1
蒸着源として3〜5mm程度の大きさの粒子状の酸化アルミニウム(Al2 O3 ,純度99.5%)を用い、電子ビーム蒸着法により12μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株) 製、E5100)上に、酸化アルミニウム薄膜の形成を行った。フィルム送り速度を約100m/min 、EB銃のエミッション電流を1.2A付近とし、目標膜厚は500Åとした。膜厚モニターとしてX線管から発生させた白色X線を、コリメーターで直径30mmに制限し、酸化アルミニウム薄膜に照射した。このとき、薄膜を形成するアルミニウム原子は励起状態となり、その後基底状態に戻るときに波長8.339Åの特性X線を放出した。この強度をシンチレーションカウンターで測定し、前もって用意していた検量線により自動的に膜厚値に換算できるようにした。この膜厚モニターからの出力をパソコンにいれ、目標値との差をEB銃のエミッション電流等へフィードバックしながら、ガスバリアフィルムの作製を行った。このようにして作製されたガスバリアフィルムの蒸着開始位置から2000、4000、6000mのところのサンプルを切り出し、膜厚と酸素透過度を測定した。その結果を表1に示す。これからわかるように、膜厚が一定で、酸素バリア性が良好で、長さ方向に酸素バリア特性の均一な長尺透明ガスバリアフィルムが得られた。」
1f.「【0033】実施例2
蒸着源として3〜5mm程度の大きさの粒子状の酸化マグネシウム(MgO,純度99.5%)と酸化硅素(SiO2 ,純度99.9%)を用い、電子ビーム蒸着法で12μm厚のPETフィルム(東洋紡績(株)製、E5100)上に、酸化物薄膜の形成を行った。蒸着材料のMgOとSiO2 は別々のるつぼに入れた。膜厚モニターは、実施例1と同様に励起用X線を照射して、薄膜の特性X線を測定できるようになっている。ここでは、Mg(9.889Å)とSi(7.129Å)の特性X線を測定し、EB銃のエミッション電流にフィードバックをかけられるようにした。フィルム送り速度は約100m/min とし、加熱源として一台のEB銃を用い、MgOとSiO2 のそれぞれを時分割で加熱し、MgOとSiO2 の複合膜を作製した。その時のEB銃のエミッション電流を1.5A付近とし、MgOとSiO2 への加熱比を1:1とし、目標膜厚を500Åとした。このようにして作製されたガスバリアフィルムの蒸着開始位置から1000m毎にサンプリングし、組成分析(ICP原子吸光分析)と膜厚測定を行った。この結果を表3に示す。これからわかるように、組成、膜厚とも一定な長尺透明ガスバリアフィルムが得られた。」
1g.図面の図1には、排気系8、励起用X線源11、特性X線検出器12、プラスチック基材4、電子銃5、るつぼ6等を有するガスバリアフィルム製造装置が示されている。

(2-2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である実願平1-113234号(実開平3-52609号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
2a.「本考案は、塗工量計の標準サンプルとその駆動装置に関し、更に詳しくは、標準サンプルの特性改善と駆動装置の構造改善に関する。・・・塗工紙の塗工量を直接測定するのにあたって、カルシウム,チタンなどを主成分とする塗工剤が塗布された塗工紙の塗工面に1次X線を照射し、これら塗工剤の主成分の光電効果により発生する元素固有の蛍光X線の強度を選択的に測定するように構成された塗工量計が用いられている。ところで、このような塗工量計の検出信号は、X線強度が気圧,温度,入射窓への紙粉の堆積,線源の減衰等で変化することによる影響を受けて変動する。そこでこれらの影響を除去して安定した測定を行うために、標準サンプル及び空気層の測定を定期的に行って自動校正することが行われている。・・・第4図は、これらの標準サンプルが取り付けられる従来の駆動装置の一例の構成図である。」(明細書1ページ19行〜2ページ20行)
2b.「本考案はこのような課題に着目されてなされたものであり、その目的は、・・・さらに、該標準サンプルを簡単な構造で所定の校正位置に移動させて保持できる駆動装置を提供することにある。」(明細書5ページ7行〜12行)
2c.「なお、本考案の駆動装置は塗工量計以外の標準サンプルを測定位置に移動させて校正を行う構成の測定装置にも適用できる。」(明細書10ページ19行〜11ページ1行)

(2-3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-118509号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
3a.「ケイ光X線膜厚測定法には、・・・ファンダメンタル・パラメータ法と、あらかじめ膜厚既知試料によってケイ光X線強度と膜厚との関係を求めておき、これに基づいて膜厚を求める検量線法の2通りがあるが、ケイ光X線膜厚測定装置に広く利用されているのは検量線法である。ケイ光X線の場合、マトリックス効果があり、一元素系の薄膜でも膜厚とケイ光X線強度との関係は直線にならず、指数関数で表現される。従って単層膜でも、第1図に示すように膜厚既知試料を最低3種必要とし、これが二元系ともなると8〜10種類必要となってくる。これを使用する装置毎に用意し、X線管球の寿命や、検出器の寿命や、温度特性等の経時変化は特定の元素によって校正する方法を採用している。」(1ページ右下欄5行〜20行)
3b.「本発明はケイ光X線のマトリックス効果で表現される吸収係数を物理的な定数と仮定し、・・・原器で作成した膜厚とX線強度の関係をデータベース検量線とし、・・・複数の無限厚試料を測定することによって校正しうることを特徴とするケイ光X線膜厚測定用検量線作成方法。・・・本発明においては、ある原器でI0,IsおよびIi:xi(当審注;I0,IsおよびIiはX線強度、xiは膜厚を表す。)の関係を求めデータベース検量線とし、個々の装置ではi0とIsのみ測定するだけで校正し、その装置の検量線とする。」(2ページ左上欄13行〜右上欄10行)
3c.図面の第2図に複数個の校正用標準試料を備えた板状の部材が示されている。

(3)対比・判断
刊行物1には、上記(2-1)の「1a.」乃至「1g.」の記載から、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「排気系8を有するガスバリアフィルム製造装置内を走行するプラスチック基材4上に蒸着された無機薄膜16の膜厚をモニターしうる設備であって、無機薄膜上に励起用X線17を照射する励起用X線源11と、前記励起用X線17の照射により放出される特性X線18の強度を測定する特性X線検出器12とを備え、前記薄膜中に含まれる元素のうち少なくとも1つの元素の特性X線強度を、前もって用意していた検量線により膜厚値に換算するもの。」
本願補正発明(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。
・後者の「排気系8を有するガスバリアフィルム製造装置」は、排気系8を有し、その中で無機薄膜の蒸着がなされるものであり、その内部はほぼ真空状態に保たれるものと解されるから、前者の「真空槽」に相当する。
・後者の「走行するプラスチック基材4」は、前者の「走行するフィルム」に相当し、後者の「無機薄膜16」は、複数の元素を含むのであるから、前者の「薄層からなる混合膜」に相当する。
・後者の、「励起用X線17」、「励起用X線源11」、「特性X線18」、「特性X線検出器12」は、それぞれ、前者の、「一次X線」、「X線照射手段」、「特性(蛍光)X線」、「特性X線測定手段」に相当する。
・後者の「前記薄膜中に含まれる元素のうち少なくとも1つの元素の特性X線強度を、前もって用意していた検量線により膜厚値に換算する」点の構成と、前者の「特性X線強度を基に前記混合膜の成分毎の厚みをデジタル信号に変換して出力する混合膜厚み出力手段」とは、前記相当関係も勘案すれば、ともに、「特性X線強度を基に前記混合膜の少なくとも1つの成分の厚みを出力する混合膜厚み出力手段」である点で共通する。
・後者の「無機薄膜16の膜厚をモニターしうる設備」は、前者の「厚みモニタ装置」に相当する。
したがって、両者は、
「真空槽内を走行するフィルムに蒸着された薄層からなる混合膜の厚みを測定する厚みモニタ装置において、前記混合膜に一次X線を照射するX線照射手段と、前記一次X線の照射により励起される特性(蛍光)X線の強度を測定する特性X線測定手段と、特性X線強度を基に前記混合膜の少なくとも1つの成分の厚みを出力する混合膜厚み出力手段と、を備えたことを特徴とする厚みモニタ装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者が、特定X線の強度を一定間隔連続的に測定するとともに、厚みをデジタル信号に変換して出力しているのに対し、後者には、この点の明記がない点。
[相違点2]
前者が、混合膜の成分毎の厚みを求めるのに対し、後者は、薄膜中に含まれる元素のうち少なくとも1つの元素について膜厚値に換算する点。
[相違点3]
前者が、混合膜の成分に対応する元素に応じた既知の特性を有する複数の標準試料を備えた標準板を、一次X線の照射光路に出退可能に移動させる標準板移動手段と、前記標準試料から得られる各成分毎の特性X線強度の測定値に基づいて前記特性X線測定手段で測定された特性X線強度を薄板状の標準試料を用いて補正する補正手段とを有しているのに対し、後者は、このような構成を有していない点。
上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
刊行物1の段落【0006】の「当該薄膜の膜厚をモニターしながら、連続に走行するプラスチック基材上に無機薄膜を設ける」との記載((2-1)の「1b.」の記載参照。)、から、膜厚のモニターを連続して行うことが示唆され、また、測定に当たり所定周期でサンプリングを行うことは普通に行われているところであるから、前者の「一定間隔連続的に」測定する点に格別のものは認められない。
次に、デジタル信号に変換する点についてみると、刊行物1の段落【0026】の「放出される特性X線18の強度を特性X線検出器12で測定する。この得られたデータをパソコンに入れ、・・・」との記載((2-1)の「1d.」の記載参照。)、及び、段落【0029】の「この膜厚モニターからの出力をパソコンにいれ、・・・」との記載((2-1)の「1e.」の記載参照。)、並びに、通常パソコンで取り扱われるのはデジタルデータであることからみて、パソコンに入力される膜厚モニターの出力データはデジタルデータであると解されることから、この点にも格別のものは認められない。
[相違点2]について
刊行物1の段落【0023】の「前もって膜厚既知のサンプルで特性X線強度を測定して作製した検量線から、膜厚測定が可能となる。即ち、薄膜中に含まれる元素の内の少なくとも1つの元素の特性X線強度を測定すればよい。また、2つ以上の構成元素の特性X線の強度比をとることによって、薄膜組成に関する情報も得られる。」との記載((2-1)の「1c.」の記載参照。)から、刊行物1には、薄膜中に含まれる2つ以上の構成元素の特性X線強度をそれぞれ測定して薄膜組成を求めること、及び、薄膜中に含まれる元素の内の少なくとも1つの元素の特性X線強度を測定して膜厚測定を行うことが示されているから、混合膜の成分毎の厚みを求めるようにすることは、このような刊行物1記載の事項を勘案すれば、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。
[相違点3]について
刊行物2には、塗工紙の塗工面に1次X線を照射し、これら塗工剤の主成分の光電効果により発生する元素固有の蛍光X線の強度を選択的に測定するように構成された塗工量計を定期的に校正するための標準サンプルとその駆動装置が示され、また、塗工量計以外の標準サンプルを測定位置に移動させて校正を行う構成の測定装置にも適用可能なことも記載されている。そうすると、相違点3に係る「標準試料を備えた標準板を、一次X線の照射光路に出退可能に移動させる標準板移動手段と、前記標準試料から得られる各成分毎の特性X線強度の測定値に基づいて前記特性X線測定手段で測定された特性X線強度を標準試料を用いて補正する補正手段」点の構成は、刊行物2に示唆されているものと認められる。また、複数の薄板状の標準試料を備えた標準板の点に関しては、刊行物3に複数個の校正用標準試料を備えた板状の部材が示されており、また、標準試料を薄板状とすることも、校正用サンプルとして薄板状のものを用いることが従来周知(例えば、実願平3-94032号(実開平5-43009号)のCD-ROM参照。)であるから、この点も格別のものということはできない。

そして、本願補正発明による効果も、刊行物1乃至3の記載並びに周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1乃至3に記載された発明並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年8月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成15年3月24日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「2.(1)」の補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1乃至3並びにその記載事項は、前記「2.(2)」の(2-1)乃至(2-3)に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「特定X線測定手段」について「一定間隔連続的に測定する」との限定を省き、「標準試料」について「薄板状の」との限定の限定を省き、「混合膜厚み出力手段」について「デジタル信号に変換して出力する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり刊行物1乃至3記載の発明並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1乃至3記載の発明並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-15 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願平11-32129
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01B)
P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 卓弥大和田 有軌福田 裕司  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 後藤 時男
下中 義之
発明の名称 厚みモニタ装置  
代理人 谷口 俊彦  
代理人 梶崎 弘一  
代理人 尾崎 雄三  
代理人 鈴木 崇生  
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