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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1139222
審判番号 不服2002-20324  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-17 
確定日 2006-07-06 
事件の表示 平成11年特許願第371494号「遊技機用基板ケース封印構造及びそれに用いられる封印部品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 3日出願公開、特開2001-178929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年12月27日の出願であって、平成14年9月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月13日付で手続補正がなされたものである。
2.平成14年11月13日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成14年11月13日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「スロットマシン等の遊技機において、その回路基板を収納した基板ケースの不正開封を防止する構造であって、
上ケースと下ケースとに上下二つに分解可能に構成された基板ケースを閉じる固定ねじは、その頭部を封印部品の本体部にて覆い隠され、
封印部品は、その本体部の周囲に、複数個の固定部がブリッジ部を介して一体形成されて構成され、
封印部品の各固定部には、ねじ挿通穴が形成されており、
締め付け方向にのみ回転可能に構成された一方向ねじにて、封印部品はいずれかの固定部を基板ケースの上ケースに固定され、
基板ケースの開封は、前記一方向ねじにて固定された固定部とのブリッジ部を切断することで行われ、
下方に開口した略矩形状の箱状に形成された上ケースに対して、封印部品の固定部を一方向ねじを用いて固定する構成を採ることにより、既存の基板ケースにも容易に適用できるようにしたことを特徴とする遊技機用基板ケース封印構造。」
と補正された(以下、「本願補正発明」という。)。
本願補正発明は、発明を特定する事項である「封印部品の本体部には、複数個の固定部がそれぞれブリッジ部を介して一体的に設けられており」を「封印部品は、その本体部の周囲に、複数個の固定部がブリッジ部を介して一体成形されて構成され」と補正し、また、「下方に開口した略矩形状の箱状に形成された上ケースに対して、封印部品の固定部を一方向ねじを用いて固定する構成を採ることにより、既存の基板ケースにも容易に適用できるようにした」とする事項を追加補正するものである。
上記「封印部品は、その本体部の周囲に、複数個の固定部がブリッジ部を介して一体形成されて構成され」とする補正は、固定部の本体部に対する配設位置を限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、「下方に開口した略矩形状の箱状に形成された上ケースに対して、封印部品の固定部を一方向ねじを用いて固定する構成を採ることにより、既存の基板ケースにも容易に適用できるようにした」という記載事項は、上ケースの形状を限定する事項及び請求項1に既出の「一方向ネジにて、封印部品はいずれかの固定部を基板ケースの上ケースに固定」する構成と重複する事項、そしてそれら構成が有する機能について記載されたものであるから、前記記載事項を追加する補正は、実質的に特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。
(2)引用例の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-151366号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 制御素子を設置した基板を覆う第1カバーと第2カバーとを分離可能に組み付ける一方、前記第1カバーの表面に、少なくとも前記第2カバーとの組付け部分をカバー可能で、且つ、夫々切断容易な切断部を介して、ワンウェイタイプのネジを保持する複数のネジ保持部を連設してなる止着用カバーを配置し、前記ネジにより、前記ネジ保持部の少なくとも1つずつを、前記第1カバーを貫通させて前記第2カバーへ螺着可能としたことを特徴とする遊技機用制御装置。」、
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ機、スロットマシーン等の遊技機に設けられる制御装置に関するものである。」、
「【0002】
【従来の技術】
パチンコ機等の遊技機には、内部の基板上にROMやCPU等の制御素子を設置した遊技機用制御装置(以下「制御装置」と略称する)が内蔵されている。この制御装置は、遊技機の作動内容を制御するため、制御素子が不正に取り替えられたり、不正に改造されたりする虞れがある。
よって、このような不正行為を防止するために、出願人は、制御装置の第1カバーの端縁に、切断部を介して第1カバーから切断容易に連設され、ワンウェイタイプのネジを保持するネジ保持部を複数設けた制御装置の発明を提供している。これによれば、一旦ワンウェイタイプのネジで第2カバーに螺着した後は、ネジの取り外しが行えず、ネジ保持部ごと第1カバーから切断しないと第1、第2カバーの分離が不可能となるため、不正に第1カバーが取り外された場合には、切断部に切断の痕跡が残り、容易に不正な取り替え等を発見することができる。
よって、不正行為の防止が可能となる。尚、ネジ保持部を複数設けたのは、管轄の警察署のチェック等、正規の目的で第1カバーを取り外す必要があることから、このようなチェック後にも第1カバーの取り付けを可能として、ネジ保持部を少なくとも1つずつ使用するためである。」、
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1カバーに上記ネジ保持部を連設した制御装置においては、ネジ保持部が全て使い切られると、その後は当該第1カバーの螺着ができなくなる。よって、当該基板を使い続けるためには、第1、第2カバーを廃棄して第1カバーを新品に交換する必要があり、無駄が大きい。」、
「【0004】
そこで、請求項1に記載の発明は、不正行為防止のために設けられる上記ネジ保持部を使い切った場合でも、第1カバーはそのまま継続して使用可能とした遊技機用制御装置を提供することを目的としたものである。」、
「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、制御素子を設置した基板を覆う第1カバーと第2カバーとを分離可能に組み付ける一方、前記第1カバーの表面に、少なくとも前記第2カバーとの組付け部分をカバー可能で、且つ、夫々切断容易な切断部を介して、ワンウェイタイプのネジを保持する複数のネジ保持部を連設してなる止着用カバーを配置し、前記ネジにより、前記ネジ保持部の少なくとも1つずつを、前記第1カバーを貫通させて前記第2カバーへ螺着可能としたことを特徴とするものである。」、
「【0006】
【発明の実施の形態】
・・・この制御装置3は、図2に示すように、・・・表面にパチンコ機1の作動内容を制御するためのROMやCPU等の制御素子6,6・・が設置された基板5と、そして透明
な合成樹脂製の第1カバー7及び第2カバー8とによって形成される。」、
「【0007】
一方、第1カバー7の両サイドには、図3にも示す如く、上固着翼12,12が夫々突設されている。各上固着翼12には、透孔13,13・・が4つずつ並設され、その両側には、普通の木ネジ14,14を挿通する筒状のネジ受部15,15が夫々形成されている。又、第2カバー8は、図4にも示す如く、第1カバー7と同じく矩形に形成され、両サイドに下固着翼16,16が連設されている。各下固着翼16の上面には、第1カバー7の透孔13,13・・と対応する位置に取付タブ17,17・・が、ネジ受部15,15と対応する位置に螺着部18,18が夫々形成されて・・・いる。」、
「【0008】
そして、第1カバー7の上固着翼12,12には、同じ長方形状の止着用カバー20,20が装着可能となっており、各止着用カバー20には、図5にも示す如く、ネジ保持部21,21・・が4箇所設けられている。
各ネジ保持部21は、夫々上固着翼12の上面に重ねた状態で、上固着翼12の各透孔13に対応する位置に穿設された透孔22,22・・ごとに配置される筒状体で、その上端部から両サイドに設けられた一対の切断部23,23により、止着用カバー20前面の板状部分と連結されている。又、図7(A)の如く、各ネジ保持部21の内部中央に形成された仕切板24には、ネジ挿通孔25が穿設されると共に、ネジ挿通孔25の奥側には、ネジ挿通孔25を囲むように弾性片26が形成されている。
更に、各ネジ保持部21には、木ネジ27が、半分程度ネジ挿通孔25に挿通した状態で弾性片26に把持されている。この木ネジ27は、いわゆるワンウェイタイプで、ヘッドの部分にマイナスのドライバを押し当てて右回転させた場合には、その回転に伴って右回転するが、ドライバを左回転させた場合には、ヘッド上でドライバがスリップし、回転しないものである。」、
「【0009】
以上の如く構成された制御装置3においては、第2カバー8に第1カバー7を、上固着翼12,12が下固着翼16,16に一致するように重ね合わせ、各上固着翼12のネジ受部15,15と各下固着翼16の螺着部18,18とを、普通の木ネジ14,14で螺着する。すると、第1カバー7は第2カバー8に組み付けられ、基板5が、第1カバー7によって隙間が形成されることなく覆われた状態となる。
次に、図6のように、第1カバー7の左右の上固着翼12,12に夫々止着用カバー20,20をあてがう。・・・そして、右側の最上方(1番目)のネジ保持部21と、左側の最下方(1番目)のネジ保持部21とにおいて、図7(B)の如く木ネジ27を夫々ねじ込み、上固着翼12の透孔13を貫通させて下固着翼16の取付タブ17に螺合させる。すると、木ネジ27によって螺着される左右1つずつのネジ保持部21と取付タブ17とにより、上固着翼12を挟んだ状態で止着用カバー20が第2カバー8に固定される。この状態では、ワンウェイタイプの木ネジ27,27は、螺着時と反対方向(左回り)に回転させることができないから、ネジ保持部21での螺着状態を解除することができず、又、第1、第2カバー7,8を螺着するコーナー部の木ネジ14,14・・も、止着用カバー20で覆われて取り外しができないため、第1カバー7は第2カバー8に取り外し不能で組み付けられることになる。」、
「【0010】
但し、正規の目的で、基板5上に設置された制御素子6の内容をチェック等するために、第1カバー7を取り外す場合は、取付タブ17と螺着された左右のネジ保持部21の切断部23,23を、夫々ニッパ等の工具で切断し、図7(C)の如く、当該ネジ保持部21を止着用カバー20から切り離すことによって、左右の止着用カバー20,20を分離させることができる。よって、露出したコーナー部の木ネジ14,14・・を外せば、第1カバー7の取り外しが可能となる。
一方、チェック後に再び第1カバー7を組み付ける場合は、木ネジ14,14・・で第1カバー7を螺着後、止着用カバー20,20を上固着翼12,12にあてがい、今度は最初に螺着したネジ保持部21の次段(2番目)のネジ保持部21を上記と同様に左右の木ネジ27,27で螺着すれば良い。よってここでは、このような第1、第2カバー7,8の分離と組付けとを3回繰り返すことができる。ちなみに各止着用カバー20の表面には、ネジ保持部21の使用の順番が連続番号で表記されているため、誤使用が防止される。」、
「【0011】
このように、本形態においては、第1、第2カバー7,8を分離するためには、止着用カバー20上の切断部23,23を切断して、第2カバー8の取付タブ17と螺着されたネジ保持部21を止着用カバー20から切り離さなければならないから、不正に第1カバー7が取り外された場合には、必ずその痕跡が残る。従って、容易に不正行為を発見することができると共に、不正行為の防止にも繋がる。
特に、第1カバー7自体は、普通の木ネジ14でのみ螺着され、切り取られるネジ保持部21が設けられていないから、第1カバー7に損傷は生じず、分離と組付けの繰り返しでネジ保持部21を使い切っても、新たに止着用カバー20のみ交換すれば良く、引き続いて第1カバー7を使用することができる。よって、制御装置3の第1、第2カバー7,8を全て取り替える必要がなく、第1カバー7の無駄が解消されて経済的となる。」、
「【0012】
尚、止着用カバー20は、必ずしも上固着翼12と同形状である必要はなく、コーナー部の木ネジ14を覆うボス28と各ネジ保持部21とを1本の棒状体へ枝状に連結する等、適宜変更可能である。
又、上記形態では、第1カバー7の表面に止着用カバー20を設けて、第1カバー7のみを再利用可能としているが、ネジ保持部21が螺着される第2カバー8の下固着翼16を着脱可能にして、切断されたネジ保持部21が螺着される下固着翼16も交換する構成とすれば、第2カバー8の継続使用も可能となり、より大きな経済的効果が得られる。この作用効果は、取付タブ17に代えて透孔を穿設した下固着翼16の裏面に、取付タブ17を設けた別体のプレートを着脱可能に装着し、上下の固着翼12,16を止着用カバーとプレートとで挟み、木ネジ27,27を第1、第2カバー7,8を共に貫通させて螺着する等の他の構成でも達成可能である。」、
「【0013】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、ネジ保持部を設けた止着用カバーの採用によって、分離と組付けとの繰り返しでネジ保持部を使い切っても、第1カバーの損傷が生じず、止着用カバーを交換すればそのまま第1カバーを継続して使用できる。よって、制御装置の第1、第2カバーを全て取り替える必要がなくなり、第1カバーの無駄が解消されて経済的となる。」。
そして、上記記載より引用例を本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「スロットマシーン等の遊技機において、その制御素子が設置された基板を収納した第1カバー及び第2カバーの不正分離を防止する遊技機用制御装置であって、
上下二つに分解可能に構成された第1カバー及び第2カバーを螺着により組み付ける木ネジ14は、その頭部を止着用カバー20の板状部分に形成されたボス28にて覆い隠され、
止着用カバー20は、板状部分と複数個のネジ保持部が切断部により連結されて構成され、
止着用カバー20の各ネジ保持部には、ネジ挿通孔が形成されており、
螺着時と反対方向に回転させることができないワンウェイタイプの木ネジ27にて、止着用カバー20はいずれかのネジ保持部を第2カバーに固定され、
第1カバー及び第2カバーの分離は、前記ワンウェイタイプの木ネジ27にて固定されたネジ保持部との切断部を切断することで行われ、
矩形の箱状に形成された第2カバーと、第1カバー上に設置された止着用カバーのネジ保持部とが、第1カバーを挟んだ状態でワンウェイタイプの木ネジ27により固定される構成を備えた不正改造を防止する遊技機用制御装置」。
(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「遊技機」、「制御素子が設置された基板」、「第1カバー」、「第2カバー」、「第1カバー及び第2カバー」、「木ネジ14」、「ネジ保持部」、「切断部」、「ネジ挿通孔」、「ワンウェイタイプの木ネジ27」は、本願補正発明の「遊技機」、「回路基板」、「上ケース」、「下ケース」、「基板ケース」、「固定ねじ」、「固定部」、「ブリッジ部」、「ねじ挿通孔」、「一方向ねじ」にそれぞれ相当し、引用例記載の発明の「板状部分」は、同板状部分に形成された「ボス28」が木ネジ14の頭部を覆うのであるから、本願補正発明の「本体部」に相当し、引用例記載の発明の「止着用カバー20」は、【図5】や【図7】の記載を参酌すると板状部分やネジ保持部、切断部が一体に形成されていると認められることから、本願補正発明の「封印部品」に相当し、引用例記載の発明の「不正分離を防止する遊技機用制御装置」は、基板を収納した第1カバーと第2カバーとを不正目的で分離できないようにするものであるから、本願補正発明の「遊技機用基板ケース封印構造」に相当する。
そうすると、両者は、
「スロットマシン等の遊技機において、その回路基板を収納した基板ケースの不正開封を防止する構造であって、
上ケースと下ケースとに上下二つに分解可能に構成された基板ケースを閉じる固定ねじは、その頭部を上ケースに設置された封印部品の本体部にて覆い隠され、
封印部品は、本体部と複数個の固定部がブリッジ部を介して一体形成されて構成され、
封印部品の各固定部には、ねじ挿通穴が形成されており、
締め付け方向にのみ回転可能に構成された一方向ねじにて、封印部品はいずれかの固定部を基板ケースに固定され、
基板ケースの開封は、前記一方向ねじにて固定された固定部とのブリッジ部を切断することで行われ、
略矩形状の箱状に形成された何れかのケースに対して、封印部品の固定部を一方向ねじを用いて固定する構成を備えた遊技機用基板ケース封印構造」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
i)封印部品における複数個の固定部が、本願補正発明では本体部の周囲に形成されているのに対し、引用例記載の発明にはそのような構成がない点、
ii)上ケースに設置された封印部品の固定部と一方向ねじで固定されるケースが、本願補正発明では上ケースであるのに対し、引用例記載の発明では上ケースの下方に設置された下ケースである点。
(4)判断
上記相違点i)について検討する。
引用例記載の発明の止着用カバー20は、「必ずしも上固着翼12と同形状である必要はなく、コーナー部の木ネジ14を覆うボス28と各ネジ保持部21とを1本の棒状体へ枝状に連結する等、適宜変更可能」(段落【0012】)なもので、当業者が必要に応じて種々の設計変更をし得るものであり、一方、本願補正発明において、複数の固定部を本体部の周囲に形成する点に特段の技術的意義が存する記載も認められない。
そうすると、引用例記載の発明における止着用カバー20の板状部分や各ネジ保持部の配設位置を適宜変更し、本願補正発明のような板状部分の周囲に各ネジ保持部を配置する構成とすることは、当業者が適宜変更し得る設計的事項であり、格別困難なこととは認められない。
次に、相違点ii)について検討する。
引用例記載の発明では、第1カバー上に設置した止着用カバー20を、第1カバーの下方に設置した第2カバーに固定することで第1カバーを再利用可能とするものであるが、引用例には第2カバーを継続使用する点についても記載されており(段落【0012】参照)、第2カバーの再利用に着眼した点に格別の困難性は認められない。一方、ネジの頭部を他の部材で被覆して容易にネジを回すことができなくなるようにする際に、同被覆部材をネジが挿通された部材に固定することは、実願昭55-153702号(実開昭57-75174号公報)のマイクロフィルム、特開平6-323324号公報、特開平11-315821号公報、特開平11-290527号公報に記載されているように周知であり、同周知技術を引用例記載の発明のネジ被覆部材に適用することについては、引用例記載の発明の技術も前記周知技術もともにネジの頭部を他の部材で被覆して容易にネジを回すことができないようにするものである以上、何らの阻害要因も認めることができない。
そうすると、引用例記載の発明において、第1カバー上に設置した止着用カバー20を第1カバーに直接固定するように構成し、第2カバーを再利用可能とすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。
また、出願人は、平成14年8月13日付け意見書において、引用文献1(特開平11-151366号公報)に記載の発明は、本願発明のように、既設のケース(当然、内部には、通常の形状で且つ余分なスペースのない回路基板が予定される)には到底適用できない旨主張しているが、「既設のケース」や「既存の基板ケース」が具体的にいかなる構成を有するものなのか本願補正発明の請求項1には何ら記載されていないことや、引用例に記載の発明における第1カバーや第2カバーは略矩形状の箱状に形成されていて、本願補正発明の上ケースや下ケースと構成上明りょうな差異は認められないことから、本願補正発明の基板ケース封印構造が「既設のケース」や「既存の基板ケース」に適用できるとした作用効果が、格別のものであるということはできず、したがって、出願人の上記主張を採用することはできない。
してみれば、本願補正発明によって奏する効果も、引用例記載の発明及び周知技術から普通に予測できる範囲のものであって、格別なものがあるとは認められない。
よって本願補正発明は、上記引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
3.本願発明について
平成14年11月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりものである。
「スロットマシン等の遊技機において、その回路基板を収納した基板ケースの不正開封を防止する構造であって、
上ケース11と下ケース12とに上下二つに分解可能に構成された基板ケースを閉じる固定ねじは、その頭部を封印部品の本体部にて覆い隠され、
封印部品の本体部には、複数個の固定部がそれぞれブリッジ部を介して一体的に設けられており、
封印部品の各固定部には、ねじ挿通穴が形成されており、
締め付け方向にのみ回転可能に構成された一方向ねじにて、封印部品はいずれかの固定部を基板ケースの上ケースに固定され、
基板ケースの開封は、前記一方向ねじにて固定された固定部とのブリッジ部を切断することで行われることを特徴とする遊技機用基板ケース封印構造。」
(1)引用例の記載内容
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物である引用例、及び、その記載内容は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の「封印部品は、その本体部の周囲に、複数個の固定部がブリッジ部を介して一体形成され」た構成から「周囲に」の限定事項を省いたものであり、かつ、本願補正発明の構成要件から「下方に開口した略矩形状の箱状に形成された上ケースに対して、封印部品の固定部を一方向ねじを用いて固定する構成を採ることにより、既存の基板ケースにも容易に適用できるようにした」構成、すなわち上ケースの形状を限定する事項及び請求項1に既出の構成と重複する事項、そしてそれら構成が有する機能に関する事項を省いたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-21 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-24 
出願番号 特願平11-371494
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進池谷 香次郎  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 小田倉 直人
辻野 安人
発明の名称 遊技機用基板ケース封印構造及びそれに用いられる封印部品  
代理人 野中 誠一  

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