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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1139227
審判番号 不服2002-25051  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-26 
確定日 2006-07-06 
事件の表示 平成 6年特許願第 65956号「耐水性、ガスバリア性に優れた樹脂組成物およびフィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月24日出願公開、特開平 7-276576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1].手続きの経緯
本願は、平成6年4月4日にした特許出願であって、平成14年3月11日付けで拒絶理由通知がなされ、平成14年4月22日に手続補正書が提出され、平成14年8月12日付けで再度拒絶理由通知がなされ、平成14年10月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成14年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成14年12月26日に審判請求がなされたものである。

[2].本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年4月22日及び平成14年10月18日に提出された手続補正書によって補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「高水素結合性樹脂と、粒径が5μm以下、アスペクト比が50以上5000以下の無機層状化合物よりなる組成物が、イオン交換選択指数が19以上である交換性カチオンによりカチオン交換されてなる樹脂組成物。」

[3].拒絶理由
原査定の理由とされた、平成14年8月12日付けで通知された拒絶の理由I及びIIの概要は次のようなものである。
理由I:請求項1〜3に係る発明は、本出願の出願前に頒布された引用例1,2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由II:請求項1〜3に係る発明は、引用例1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例>
引用例1:特開平5-193070号公報
引用例2:特開昭62-174148号公報
引用例3:特開平3-30944号公報
引用例4:特開昭64-43554号公報

[4].引用例1〜4の記載事項
引用例1
(1-1)「その少なくとも一面に酸性プライマー層を有する高分子材料の基材層及び前記プライマー層の反対面に層状無機質を含むコーティング層を含む高分子フィルム。」(特許請求の範囲の請求項1)

(1-2)「コーティング層の層状無機質は好ましくは、フィルム形成性2:1フィロシリケート層状無機質の小板を含む。-中略-
「小板」とは、無機質に離層加工を施し、高いアスペクト比の無機質の水性コロイド分散液を形成し、それよりフィルムを形成することにより得られる層状無機質の小さな粒子を意味する。」(段落【0025】〜【0026】)

(1-3)「好ましくは、層状無機質は、スメクチック、好ましくはヘクトライト及びモントモリロナイト、並びにバーミキュライトからなる群より選ばれる。
「バーミキュライト」とは、バーミュキュライトとして公知のあらゆる物質を含む。バーミュキュライトは層(例えばバーミキュライト、バイオタイト、ヒドロバイオタイト等)の混合物及び内層カチオン(例えばMg2+、Ca2+、K+ )の混合物を含む天然物質である。バーミキュライト小板の水性懸濁液もしくはスラリーの製造は、適当な膨潤を発生するためイオン交換をあてにしている。次いで膨潤した、完全にもしくは一部交換したバーミキュライトゲルを粉砕し、バーミキュライト小板のフィルム形成性水性懸濁液を製造する。金属(特にアルカリ金属)塩もしくはアルカリアンモニウム塩の1種以上の水溶液によるバーミキュライト粒子の処理、その後の水中膨潤及び粉砕によるバーミキュライトの離層は公知であり、・・・」(段落【0027】〜【0028】)

(1-4)「気体遮断性、特に酸素遮断性を示すコートフィルムが必要な場合、バーミキュライトは特に好適な層状無機質である。本発明に係る高分子フィルムは、好適には50未満、好ましくは20未満、より好ましくは10未満、特に5未満、とりわけ1cc/m2/day 未満の酸素透過性を有する。」(段落【0029】)

(1-5)「・・・バーミキュライト小板の数の80〜99.9%、より好ましくは85〜99.9%、とりわけ90〜99.9%が0.1〜5.0μmの粒度を有することが好ましい。バーミキュライト小板の平均粒度(これは小板の最大巾の平均値を意味する)は好ましくは1.0〜3.0μm、より好ましくは1.2〜2.2μm、とりわけ1.3〜1.6μmである。また、バーミキュライト小板は約10〜60Å、とりわけ25〜40Åの厚さを有することが好ましい。さらに、バーミキュライト小板の数の60〜100%、70〜90%、特に90〜95%が10〜60Åの厚さを有することが好ましい。バーミキュライト小板の平均厚さは好ましくは25〜50Å、より好ましくは25〜40Å、とりわけ25〜30Åである。」(段落【0030】)

(1-6)「本発明の好ましい実施態様において、コーティング層はさらに、連続、好ましくは均一コーティングを形成できることが当該分野において公知のあらゆるポリマーである少なくとも1種の材料を含む。この高分子材料は好ましくは有機樹脂であり、バーミキュライト小板のフィルムの形成を助けそしてそのフィルム形成能を損なわないあらゆるフィルム形成性高分子もしくはオリゴマー種又はその前駆体であってよい。
好適な高分子樹脂は以下のものを含む。・・・(h)ニトロセルロース、エチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース材料、及び(i)ポリビニルアルコール。」(段落【0032】〜【0033】)

(1-7)「本発明の他の好ましい実施態様において、コーティング層は架橋剤を含む組成物より形成される。架橋剤は、化学的に反応し、コーティング層の形成の間樹脂を形成し、好ましくはそれ自身と及び下層のプライマー層の表面と共有結合を形成し、架橋を形成し、それによって接着を改良する物質を意味する。・・・さらに、架橋剤は好ましくは溶媒浸透に対し保護を与えるために内部架橋できる。」(段落【0036】)

(1-8)「例1
これは比較例であり、本発明の例ではない。バーミキュライト懸濁液を以下の方法により製造した。100gのバーミキュライト鉱石・・・を1リットルの1Nクエン酸リチウム溶液と共に80℃で4時間還流し、室温に5日間放置した。これにより鉱石中のリチウムカチオンの100gあたり45.3mEqが交換した。」(段落【0051】)

引用例2
(2-1)「(1)膨潤性無機層状ケイ酸塩(A)と水溶性樹脂(B)との重量比(A/B)1/(5×104)〜2/1の混合体から得られた厚さ0.01〜15μmの層をプラスチツクフイルムの少くとも一表面に設けたことを特徴とするコーテイングフイルム。
(2)膨潤性無機層状ケイ酸塩由来の無機粒子の50%以上が800Å以下の厚みを有する特許請求の範囲第1項記載のコテイングフイルム。」(特許請求の範囲)

(2-2)「・・・本発明にいう膨潤性無機層状ケイ酸塩はこれらも包含する。
これらの具体例としては、モンモリロナイト、バーミキユライト等の天然物や前記一般式を有する溶融あるいは水熱で合成されるテトラシリシツクマイカ、テニオライト、ヘクトライト等の合成物の如き粘土系、雲母系鉱物がある。・・・また、層間イオンWとしては、1種以上のカチオン性イオンであればよく特に限定されないが、カチオン性イオンの例として、・・・K+、あるいはMg++、Ca++、Ba++等のアルカリ土金属、Al+++を挙げることができる。」(第2頁右下欄末行〜第3頁右上欄第4行)

(2-3)「膨潤性無機層状ケイ酸塩のサイズは特に限定されないが、沈降法により測定された平均粒径が0.05μm〜15μm、好ましくは0.1μm〜8μm、更に好ましくは0.15μm〜3μmの範囲にある場合、均一な層を得ることができるため好ましい。また全粒子の50%、好ましくは80%、更に好ましくは90%の厚みが800Å以下、好ましくは400Å以下、更に好ましくは100Å以下である場合、コーテイング層表面が平滑でコンパクトな製品となるためより好ましい。」(第3頁右上欄第9行〜同頁左下欄第2行)

(2-4)「本発明でいう水溶性樹脂とはコーテイング液形成時水溶性を示し最終製品たるコーテイングフイルムのコーテイング層中で重合体(架橋重合体又は非架橋重合体)であるものであれば本質的にはいづれでもよい。-中略-
代表的水溶性樹脂としては、・・・、ポリビニルアルコール、・・・、酢酸ビニル共重合体、・・・等の樹脂あるいはそれらの混合物を挙げることができる。」(第3頁左下欄第4行〜同頁右下欄第4行)

引用例3
(3-1)「熱可塑性樹脂からなる基材フイルムの少なくとも片面に、膨潤性を有するコロイド性含水層状珪酸塩化合物(A)および、ポリビニルアルコールおよびまたはその共重合体より選ばれた1種以上の樹脂(B)とからなり、(A)/(B)の重量比が70/30〜95/5であるごとく配合された組成物を主とする水性樹脂組成物からなる層が、少なくとも一層以上形成されたことを特徴とする被覆プラスチックフイルム。」(特許請求の範囲)

(3-2)「本発明の目的からは、前者の無制限膨脹のものが効果的であり好ましい。このような無制限膨脹スメクタイトグループとしては数種の鉱物があり、占有されている中央層におけるオクタヘドラルサイトの数の差により、三価および二価に置換された中央カチオンを有するジオクタヘドラルスメクタイト及び一価に置換された二価カチオンを有するトリオクタヘドラルスメクタイトに分類される。
ジオクタヘドラルスメクタイトの例としては、モンモロリロナイト、ビーデライト、ノントロナイトなどが、トリオクタヘドラルスメクタイトとしては、ヘクトライト、サポナイト、テニオライトなどが挙げられる。これらの鉱物は、天然のクレー中より産するもの、天然品より抽出したものの層間イオン交換処理を行った半合成品、及び天然品と類似構造を有するごとく合成した純合成品などがある。」(第3頁左下欄第2〜18行)

引用例4
(4-1)「20ないし60モルパーセントのエチレン含量および210℃で測定して0.1ないし100g/10分の溶融流量を有するエチレン/ビニルアルコール共重合体50ないし95重量パーセント、及び雲母50ないし5重量パーセントを含有して成り、そして該雲母粒子の少なくとも95重量%が74ミクロンよりも小さい粒径、小板状の形態及び10ないし150のアスペクト比を有することを特徴とする組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)

(4-2)「樹脂状フィルムの遮断性を改善するために小板状無機充填剤を使用することは、極めて古い技術である。」(第2頁右下欄第5〜7行)

(4-3)「本発明において使用される小板充填剤は雲母である。-中略-好適な雲母の種類はマスコバイトKAl2(ALSi3O10)(OH)2である。マスコバイト雲母は二つの型、即ち湿潤及び乾燥磨砕物として入手できる。湿潤磨砕雲母は通常きれいな形状、平滑な表面及び高いアスペクト比を有しており、本発明の組成物において好適である。」(第4頁左下欄第13行〜同頁右下欄第8行)

(4-4)「小板状型の充填剤は配合物中で均一に分布するために小さい粒径を持たねばならない。・・・最も好適には99.5%が400メッシュ(38μm)より小さくなければならない。」(第4頁右下欄第9〜15行)

(4-5)「本発明において有用である小板状充填剤の最も重要な態様は、それらが大きいアスペクト比を有することである。-中略-アスペクト比は10ないし150であり、好適な範囲は20ないし150である。」(第4頁右下欄第16行〜第5頁左上欄第5行)

[5].対比判断
引用例1には、特許請求の範囲の請求項1に、「その少なくとも一面に酸性プライマー層を有する高分子材料の基材層及び前記プライマー層の反対面に層状無機質を含むコーティング層を含む高分子フィルム」(摘示記載(1-1))が記載されており、この高分子フィルムはとりわけ好ましくは1cc/m2/day 未満の酸素透過性を有するものであること(摘示記載(1-4))が記載され、コーティング層を形成する好適な高分子樹脂としてヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等が例示(摘示記載(1-6))されている。この「層状無機質」は「気体遮断性、特に酸素遮断性を示すコートフィルムが必要な場合、バーミキュライトは特に好適な層状無機質である」(摘示記載(1-4))と記載されているように気体遮断性に寄与するものであり、本願明細書に無機層状化合物として例示(段落【0012】)されているバーミキュライトが好適に用いられるものであるから、本願発明における「無機層状化合物」に相当するものである。また、コーティング層を形成する好適な高分子樹脂として例示された「ヒドロキシエチルセルロース」及び「ポリビニルアルコール」は、本願明細書において「高水素結合性樹脂」として挙げられた(段落【0015】〜【0016】)ものである。更に、引用例1には、バーミキュライト小板の平均粒度(これは小板の最大巾の平均値を意味する)は好ましくは1.0〜3.0μm、より好ましくは1.2〜2.2μm、とりわけ1.3〜1.6μmであること(摘示記載(1-5))が記載されている。
そうすると、引用例1には、ガスバリア性に優れた「高水素結合性樹脂と平均粒度1.0〜3.0μmの無機層状化合物よりなる樹脂組成物」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものということができる。
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、本願発明の「粒径」と引用例1発明の「平均粒度」とは無機層状化合物粒子に係る同様の寸法を意味するものと解されるから、これらの発明は、ともに、「高水素結合性樹脂と無機層状化合物よりなる樹脂組成物」である点で一致し、無機層状化合物の粒径範囲も重複しているが、本願発明における以下の点について引用例には明記されていない点で、これらの発明の間には相違が認められる。
(あ)無機層状化合物の「アスペクト比が50以上5000以下」である点、及び
(い)「イオン交換選択指数が19以上である交換性カチオンによりカチオン交換されてなる」点
そこで、これらの相違点について以下に検討する。
(あ)の点について
引用例1には、コーティング層の層状無機質がフィロシリケート層状無機質の小板を含むこと、及び、「小板」とは、無機質に離層加工を施し、高いアスペクト比の無機質の水性コロイド分散液を形成し、それよりフィルムを形成することにより得られる層状無機質の小さな粒子を意味すること(摘示記載(1-2))が記載されており、層状無機質(無機層状化合物)として高いアスペクト比の小板状の粒子を用いることが開示されている。
また、引用例4に記載されているように、樹脂状フィルムの遮断性を改善するために小板状無機充填剤を使用することは、極めて古い技術(摘示記載(4-1))として周知であり、その小板状充填剤としてアスペクト比が10ないし150のものを用いること(摘示記載(4-5))も公知である。
更に、引用例1には層状無機質(無機層状化合物)の一例であるバーミキュライト小板の寸法について、「平均粒度・・・は好ましくは1.0〜3.0μm、より好ましくは1.2〜2.2μm、とりわけ1.3〜1.6μmである。・・・バーミキュライト小板の平均厚さは好ましくは25〜50Å、より好ましくは25〜40Å、とりわけ25〜30Åである」(摘示記載(1-5))と記載されており、アスペクト比は(平均粒度)/(平均厚さ)で求められるから、「好ましい」とされる範囲についてこれを計算すると、
1.0×104/50〜3.0×104 /25=200〜1200(註:1μm=104Å)
となり、本願発明における(あ)の「50以上5000以下」の範囲に包含される。
したがって、引用例1発明においても「アスペクト比が50以上5000以下」の範囲の無機層状化合物が用いられるものというべきであり、仮にそうでないとしても、上記周知、公知技術を参酌してアスペクト比をこの範囲内とすることは、当業者が特に困難を伴うことなく実験的になし得たものというほかはない。

(い)の点について
引用例1には、層状無機質(無機層状化合物)として用いるバーミュキュライトについて、「層(例えばバーミキュライト、バイオタイト、ヒドロバイオタイト等)の混合物及び内層カチオン(例えばMg2+、Ca2+、K+ )の混合物を含む天然物質である」(摘示記載(1-3))と記載されており、また、引用例2にも、バーミキュライト等の無機層状ケイ酸塩には層間イオンとして、K+、あるいはMg++、Ca++、Ba++等のアルカリ土金属が含まれること(摘示記載(2-2))が記載されている。そして、これらのカチオンはいずれも本願明細書に「イオン交換選択指数(原子番号とイオン価数の積)」(段落【0021】)と定義されたイオン交換選択指数が19以上のカチオンに該当するものであり、引用例1発明においても「イオン交換選択指数が19以上であるカチオン」を含む無機層状化合物が用いられるものと認められるが、引用例1には、樹脂組成物が、本願発明の(い)のように「交換性カチオンによりカチオン交換されてなる」ものである点については記載されていない。
そこで、この点についてみると、「物」の発明において、その物が成分組成で特定されており、物としての機能、特性が成分組成によって発現される場合、その組成に至った経過の如何は発明の構成とは直接関係がないものというべきであり、樹脂組成物中の特定のカチオンが本願発明のようにカチオン交換により導入されたものであっても、引用例1に記載されたもののように当該化合物中に元来含まれていたものであっても、「このようなカチオンを含む樹脂組成物」という「物」としては何ら変わるところがない。
そして、「交換性カチオンによりカチオン交換」するという技術的手段自体についてみても、引用例1には、バーミキュライト鉱石を「クエン酸リチウム溶液と共に80℃で4時間還流し、室温に5日間放置」することにより「鉱石中のリチウムカチオンの100gあたり45.3mEqが交換した」(摘示記載(1-8))と記載されており、また、引用例3には、層状珪酸塩化合物(A)及びポリビニルアルコール等の樹脂(B)とからなる組成物(摘示記載(3-1))において、層状珪酸塩化合物(A)として「天然品より抽出したものの層間イオン交換処理を行った半合成品」が例示(摘示記載(3-2))されているように、イオン交換によって無機層状化合物に所望のカチオンを導入することは当業界で広く知られている手法であるから、引用例1発明において「イオン交換選択指数が19以上であるカチオン」を含む無機層状化合物を得るべく、本願発明の(い)のように「交換性カチオンによってカチオン交換」することは、当業者が容易になし得たものというほかはなく、本願発明がそれにより特段の作用効果を奏し得たものとも認められない。
したがって、(い)の点に困難性は見出せない。

この点について審判請求人は「本願発明は、単にイオン交換選択指数が19以上の交換性カチオンを有する無機層状化合物を使用するというのではなく、イオン交換選択指数が19未満の交換性カチオンを有する無機層状化合物を、イオン交換選択指数が19以上の交換性カチオンによってカチオン交換された無機層状化合物を使用するものであって、「カチオン交換処理」を必須条件としており、その結果、見かけ上の化学成分としての成分自体に差異はないとしても、カチオン交換されることなく原料に由来して単にイオン交換選択指数が19以上の交換性カチオンたとえばCa2+、Ba2+を有しているだけの無機層状化合物をそのまま使用する場合に比べて、その性能が著しく向上するのである。・・・Na+、Li+などのイオン交換選択指数が19未満のカチオンを含む無機層状化合物を予め溶媒中に分散させることによって良好な分散物を得、その分散状態を維持した状態でCa2+、Ba2+などのイオン交換選択指数が19以上の交換性カチオンによってカチオン交換することにより、イオン交換選択指数が19以上のカチオンを有する無機層状化合物が溶媒中に良好に分散された状態になり、・・・バスバリア性に優れるとともに、合わせて耐水性も向上するという予期せぬ優れた効果が得られるのである。」(審判請求書第8頁第14行〜第9頁第7行)と主張している。
しかしながら、本願発明は単に「イオン交換選択指数が19以上である交換性カチオンによりカチオン交換されてなる樹脂組成物」とされているにすぎないのであって、審判請求人が主張するような「イオン交換選択指数が19未満の交換性カチオンを有する無機層状化合物を、イオン交換選択指数が19以上の交換性カチオンによってカチオン交換」することは、発明の構成とされていない。即ち、本願発明には、イオン交換選択指数が19以上の交換性カチオンをイオン交換選択指数が19以上の「他の」交換性カチオンとカチオン交換する場合も包含されるのであり、また、無機層状化合物のみならず、樹脂成分がイオン交換性基を有し、これがイオン交換される場合も排除されてはおらず、これらの場合においても、「交換性カチオンによってカチオン交換される」ことにより審判請求人が主張するような上記効果を生ずるものとは到底解されない。

したがって、本願発明は、引用例1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

[6].むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-27 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-22 
出願番号 特願平6-65956
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹田中 晴絵  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐野 整博
石井 あき子
発明の名称 耐水性、ガスバリア性に優れた樹脂組成物およびフィルム  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  
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