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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B |
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管理番号 | 1139230 |
審判番号 | 不服2003-1416 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-23 |
確定日 | 2006-07-06 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 9043号「紫外線遮断性積層フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月26日出願公開、特開平 7-246677〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年1月24日(特許法第41条に基づく優先権主張 優先日 平成6年1月24日)の出願であって、本願の請求項1〜11に係る発明(以下、本願発明1〜11という)は、平成14年8月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】金属酸化物含有層と、粒径が5μm以下、アスペクト比が50以上5000以下の無機層状化合物と樹脂とを含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層積層してなるフィルムであって、該フィルムが330nm以下の波長の光の全光線透過率が10%以下で、450nm以上700nm以下の波長の光の全光線透過率が80%以上であることを特徴とする紫外線遮断性積層フィルム。 【請求項2】無機層状化合物が、溶媒に膨潤・へき開することを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。 【請求項3】無機層状化合物が、膨潤性をもつ粘土鉱物であることを特徴とする請求項2記載の積層フィルム。 【請求項4】無機層状化合物のアスペクト比が、200〜3000であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の積層フィルム。 【請求項5】無機層状化合物の粒径が3μm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の積層フィルム。 【請求項6】無機層状化合物の粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の積層フィルム。 【請求項7】樹脂が高水素結合性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項8】高水素結合性樹脂が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項7に記載の積層フィルム。 【請求項9】金属酸化物含有層に用いられる金属酸化物が、酸化セリウムであることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項10】樹脂組成物中に水素結合性基用架橋剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項11】30℃、60%RH下での酸素透過度が0.2cc/m2・day・atm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層フィルム。」 2. 引用文献 (ア)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平2-105856号公報(以下、引用文献2という)には、以下の事項が記載されている。 (2a)ポリアミドフィルム(請求項1) 「(1)ポリアミドおよびそれに均一に分散されている層状珪酸塩を含有する混合物の成形体であることを特徴とするポリアミドフィルム。」 (2b)積層体ポリアミドフィルム(請求項2) 「(2)請求項1記載のポリアミドフィルムおよびそれ以外の高分子フィルムからなる積層体であることを特徴とするポリアミドフィルム。」 (2c)引用文献2のポリアミドフィルム(1頁左下欄14行〜右下欄3行) 「本発明はポリアミドフィルムに関し、さらに詳しくはガスバリヤー性、透明性、滑り性が優れており、かつラミネート、印刷、製袋などの後加工に必要な剛性を有するポリアミドフィルムに関するものである。 (従来の技術) ポリアミドフィルムは、透明性、耐ピンホール性、ガスバリヤ-性、耐熱性および耐油性などの諸特性が優れているために主に食品包装の分野で使用されている。」 (2d)層状珪酸塩(2頁左下欄11行〜右下欄17行) 「ポリアミドフィルムを構成する層状珪酸塩としては、その厚みが6〜20Åで、一辺の長さが0.002〜1μmの平板状のものが好ましい。 また、層状珪酸塩はポリアミド中に均一に分散することが必要であるが、分散した際にそれぞれが平均的に20Å以上の層間距離を保ち、均一に分散されていることが好ましい。ここで層間距離とは層状珪酸塩の平板の重心間の距離を言い、均一に分散するとは層状珪酸塩の一枚一枚が、もしくは平均的に重なりが5層以下の多層物が、平行にまたはランダムに、もしくは平行とランダムが混在した状態で、その50%重量以上が、好ましくは70重量%以上が局所的な塊を形成することなく分散する状態を言う。従って層状珪酸塩とは例えば一辺が0.002〜1μm、厚みが6〜20Åの物質の一単位を示すものである。 このような層状珪酸塩の原料としては、珪酸マグネシウムまたは珪酸アルミニウムの層から構成される層状フィロ珪酸鉱物を例示することができる。具体的には、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイトなどを例示することができ、これらは天然のものであっても、合成されたものであってもよい。これらのなかでもモンモリロナイトが好ましい。」 (2e)積層体(3頁左下欄5行〜13行) 「本発明のポリアミドフィルムは、以上に説明した均一に分散された層状珪酸塩を含有するポリアミドフィルムおよびそれ以外の高分子フィルムからなる積層体にすることもできる。 他の高分子フィルムとしては低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルムなどを挙げることができる。」 (2f)ガスバリヤー性(3頁右下欄1行〜5行) 「本発明のポリアミドフィルムは、フィルム中に層状珪酸塩が均一に分された状態で存在することから、高湿度雰囲気中においても優れたガスバリヤー性および剛性を発揮することができるものである。」 (2g)実施例1の層状珪酸塩(実施例1) 「(実施例1) 層状珪酸塩の一単位の厚みが平均8Åで一辺の長さが約0.1μmの原料であるモンモリロナイト100gを10lの水に分散し、これに51.2gの12-アミノドデカン酸と24mlの濃塩酸を加え、5分間攪拌したのち、濾過した。さらにこれを十分洗浄したのち、真空乾燥した。この操作により、12-アミノドデカン酸アンモニウムイオンとモンモリロナイトの複合体を調製した。複合体中の層状珪酸塩分は約80重量%となった。X線解析の結果この複合体中の層状珪酸塩の層間距離は18.0Åであった。 次に、撹拌機付きの反応容器に10kgのε-カプロラクタム、1kgの水および100gの乾燥した前記複合体を入れ、100℃で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。さらに温度を260℃に上昇させ、15kg/cm2 の加圧下で1時間撹拌した。その後、放圧し、水分を反応容器から揮散させながら、常圧下、260℃で2時間反応を行い、さらに400mmHgの減圧下で260℃で、1時間反応させた。反応終了後、反応容器の下部ノズルから、ストランド状に取り出した反応物を水冷し、カッティングを行い、ポリアミドおよびモンモリロナイトからなるペレットを得た。このペレットを熱水中に浸漬し、未反応のモノマー約10%を抽出、除去したのち、真空中で乾燥した。」 (2h)実施例5の積層体(実施例5) 「実施例5 実施例1のペレット(層状珪酸塩1.26%含有)にエチレンビスステアリルアミドを0.08重量%添加した。これを用いてブラコー(株)製水冷3層インフレーションフィルム成形装置により、PA6(外層)/接着性樹脂(中間層)/LDPE(内層)(20/20/30μ)の3層構造のフィルムを得た。接着性樹脂はUBE-BOND Fl100(宇部興産(株)製)であり、LDPEはUBEポリエチレンF023(宇部興産(株)製)である。 成形条件は下記のとおりである。 ダイ径:直径100mm フィルム折径:200mm (B.U.R.=1.27) 引取速度: 10m/min 冷却水温度:20℃ 成形温度(設定) PA6 : 250℃、接着性樹脂:200℃、 LDPE : 200℃ 得られた3層構造フィルムの各物性値を第3表に示す。」 (2i)実施例6の積層体(実施例6) 「実施例6 実施例2のペレット(層状珪酸塩2.16%含有)にエチレンビスステアリルアミドを0.08重量%添加したものを用い、実施例5と同様にして3層構造のフィルムを調製した。得られた3層構造フィルムの各物性値を第3表に示す。」 (2j)発明の効果(6頁右下欄) 「本発明のポリアミドフィルムは、ガスバリヤー性、透明性、滑り性、耐衝撃性が優れているだけでなく、優れた剛性を有していることから印刷、ラミネート、製袋などの後加工が良好であり、特に食品包装用フィルムとして実用上極めて有用である。」 (イ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平4-99263号公報(以下、引用文献11という)には、以下の事項が記載されている。 (11a)積層フィルム(請求項1) 「合成樹脂系フィルム(A)の少なくとも片面に酸化珪素系(SiOx、x=1.0〜2.0)薄膜層(B)および紫外線遮断層(C)を設けることを特徴とする積層フィルム。」 (11b)透明性、ガスバリヤー性を有する包装用フィルム(1頁右下欄9行〜12行) 「従来より透明合成樹脂系フィルム上に酸化珪素系薄膜を形成した、透明性、ガスバリヤー性を有する包装用フィルムか知られている(例えば特公昭52-48510号公報、実公昭52-3418号公報など)。」 (11c)紫外線遮断フィルム(1頁右下欄13行〜2頁左上欄4行) 「また食品包装フィルムの保存性を高めるため紫外線遮断フィルムとして、紫外線吸収剤をコーティング剤とともに塗布したものが知られているが、食品包装用として実用できるものは少ない。 例えば合成樹脂系フィルムの表面に紫外線吸収剤を塩化ビニリデン系コーティング剤とともに表面コートしたフィルムが知られている。しかしながらこれは、レトルト処理の如き高温、高湿処理により紫外線吸収剤が溶出し、紫外線遮断性が低下するのみならず、ガスバリヤ-性も大幅に低下するため、食品包装用フィルムとしては極めて不満足なものであるという問題点があった。」 (11d)酸化珪素系薄膜蒸着フィルム(2頁左上欄5行〜15行) 「また、合成樹脂系フィルムの表面に酸化珪素系薄膜を蒸着したフィルムが知られている。しかしながらこれはレトルト処理の如き高温、高湿処理によりガスバリアヤー性が大幅に低下するようなことはないが、極僅かながら珪素酸化物蒸着膜に存在する微少ピンホール、微少クラックなどの欠陥のために例えば透湿度、酸素透過率などの特性が低下するのが普通てあって必ずしも満足できるものではなく、さらに紫外線遮断性において劣るため、食品包装用フィルムとしてはまだ不満足なものであるという問題点があった。」 (11e)珪素酸化物蒸着膜の厚みを厚くする試み(2頁左上欄16行〜右上欄3行) 「更に透湿度、酸素透過率の小さい、紫外線遮断性も優れた透明なフィルムを得ようとして珪素酸化物蒸着膜の厚みを厚くすることも試みられたが、実際問題としては、単に厚みを増加しても微少ピンホール、微少クラックなどの欠陥は改良されることなく、得られる膜の着色が濃くなるだけであって透明性が悪くなるという新たな問題点が生じた。」 (11f)酸化珪素系薄膜層(B)(3頁左上欄20行〜右上欄10行) 「酸化珪素系薄膜層(B)としては、SiOx (x=1.0〜2.0)を主体とするが、少量のAl2O3、MgO、ZnO、TiO2などの他の金属化合物を含有していてもよい。その形成には高周波加熱真空蒸着や電子ビーム加熱蒸着などが使われる。 珪素酸化物蒸着膜の厚さとしては特に制限はないが、その製品の用途と所望される性能などによって適宜選択決定されるが、ガスバリヤー性と耐屈曲性などを考慮して通常は100〜3000Å程度の範囲から、好ましくは200〜1000Å程度の範囲から選ばれる。」 (11g)紫外線遮断層(C)(3頁右上欄11行〜20行) 「紫外線遮断層(C)としては、特に制限はないが、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンなどの有機系紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどの微粉末系紫外線遮蔽剤を有機物バインダーに分散させた層が好ましい。有機物バインダーは合成樹脂類が使用できるが、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタン、などが好適である。」 (11h)紫外線吸収遮断層の厚さ(3頁左下欄5行〜9行) 「紫外線吸収遮断層の厚さとしては特に制限はないが、その製品の用途と所望される性能などによって適宜選択決定されるが、紫外線遮断性などを考慮して通常は0.1〜20μm程度の範囲から、好ましくは0.3〜5μm程度の範囲から選ばれる。」 (11i)透明性、ガスバリヤ-性と紫外線遮断性(5頁左下欄2行〜右下欄3行) 「本発明は、前記構成、即ち酸化珪素系ガスバリヤ-層(B)と紫外線遮断層(C)の2層が存在するため、その相互作用によりレトルト処理後においても極めて優れた透明性、ガスバリヤ-性と紫外線遮断性を発揮する。したがって、レトルト食品包装用フィルムとして使用する場合、レトルト処理後でも内容物の透視性がよく、かつ食品保存に有害な酸素、紫外線、細菌などを極めて少ない状態に長時間維持することができ、食品保存特性としては抜群の作用効果を発揮する。 …このことは、食品包装用フィルムとして使用する場合には、内容物である食品に紫外線吸収剤が移行せしめないと言う作用効果を発揮し、極めて好ましい。」 3.対比・判断 本願発明1と引用文献2に記載された発明(以下、引用発明2という)とを対比する。 (3.1)引用発明2 引用文献2の実施例5に記載の「3層構造フィルム」におけるポリアミド層(PA6)は、実施例1の「層状珪酸塩」を使用するもので(摘示(2h))、該「層状珪酸塩」は一単位の厚みが平均8Å、一辺の長さが約0.1μmのものである(摘示(2g))。 したがって、摘示(2a)〜(2j)から、引用文献2には「一辺の長さが約0.1μm、一単位の厚みが平均8Åの層状珪酸塩とポリアミドとを含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層積層してなるガスバリヤー性透明積層フィルム。」の発明(引用発明2)が記載されているものと認める。 そして、引用発明2のフィルムは、フィルム中の層状珪酸塩により優れたガスバリヤー性を発揮するものであり(摘示(2f))、該フィルムは、特に「食品包装用フィルム」として好適に用いられるものである(摘示(2c)、(2j))。 (3.2)一致点 そうすると、層状珪酸塩が無機層状化合物に相当することは明らかであるから、本願発明1と引用発明2とは、次の点で一致する。 「無機層状化合物と樹脂とを含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層積層してなる積層フィルム。」である点。 (3.3)相違点 そして、本願発明1は、引用発明2と次の相違点1及び2で相違し、相違点3で一応相違する。 (相違点1) 本願発明1の「積層フィルム」は「金属酸化物含有層」を有する「紫外線遮断性」の「積層フィルム」であるのに対して、 引用発明2の「積層フィルム」は、「積層フィルム」を構成する層として「金属酸化物含有層」を有すること及び該「積層フィルム」が「紫外線遮断性」を有することが規定されていない点。 (相違点2) 本願発明1の「積層フィルム」は「330nm以下の波長の光の全光線透過率が10%以下」であり、「450nm以上700nm以下の波長の光の全光線透過率が80%以上」であるのに対して、 引用発明2の「積層フィルム」は「330nm以下の波長の光の全光線透過率」及び「450nm以上700nm以下の波長の光の全光線透過率」について規定されていない点。 (相違点3) 本願発明1の「積層フィルム」で使用する「無機層状化合物」は、「粒径が5μm以下、アスペクト比が50以上5000以下」であるのに対して、 引用発明2の「積層フィルム」で使用する「層状珪酸塩」は、「一辺の長さが約0.1μm、一単位の厚みが平均8Å」であり、粒径及びアスペクト比が規定されていない点。 (3.4)相違点についての検討 (1)相違点1について、 引用文献11には、透明性、紫外線遮断性、ガスバリヤー性を有する食品包装用フィルムに好適な包装用フィルムが記載され、食品包装用フィルムとしては従来から食品の保存性を高めるためにガスバリヤー性と併せて紫外線遮断性の両方の性能を満足させることが技術課題であった旨のことが記載されている(摘示(11a)、(11b)、(11c))。 そして、引用文献11には、紫外線遮断性の性能を付与する「紫外線遮断層」として、「酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどの微粉末系紫外線遮蔽剤を有機物バインダーに分散させた層」が好ましい旨記載されており(摘示(11g))、この態様は本願明細書の段落【0027】、【0028】に記載された紫外線遮断性の「金属酸化物含有層」の態様と同一のものである。 そうすると、引用発明2において、透明性、ガスバリヤー性を有する包装用の積層フィルムを、その好ましい用途である食品包装用フィルムに適用するに際し、食品の保存性を高めるために、「紫外線遮断性」の層を設け、「紫外線遮断性」のものとすること、そして、その「紫外線遮断性」の層として「金属酸化物含有層」を採用することは、引用文献11の記載に基づけば、当業者が格別の創意を要することなく、容易に想到できることと認められ、その効果も当業者が予測できる程度のものである。 (2)相違点2について 紫外線領域の上限の波長は可視光線の短波長端360〜400nm程度であり、可視光線の領域は下限の波長が360〜400nm程度で、上限の波長が760〜830nm程度であるから、「紫外線遮断性」の程度を「330nm以下の波長の光の全光線透過率」で表示し、「透明性」の程度を「450nm以上700nm以下の波長の光の全光線透過率」で表示することは、紫外線領域及び可視光線領域の範囲が多少狭められているとしても、当業者が適宜選択し得る程度のことであり、格別の創意を要することとは認められない。 そして、食品の保存性を高めるために「紫外線遮断性」の程度を上記透過率が「10%以下」と高く設定すること及び透明性が要求される積層フィルムにおいて「透明性」の程度を上記透過率が「80%以上」と高く設定することは、その「紫外線遮断性」及び「透明性」の目的からして当然のことにすぎず、それらの範囲が紫外線遮断性積層フィルムの効果上、臨界的な意義を有するものとも認められない。 (3)相違点3について 引用文献2には、「層状珪酸塩」の「粒径」及び一辺の長さの測定方法は特に記載されていない。 しかし、「粒径」と引用発明2における「一辺の長さ」とが大きく異なるものとは認められないし、仮に、測定方法も異なるとしても、そのことにより、その値が本願発明1の上限を超えるほど大きく変動するものとも認められない。その理由は以下のとおりである。 本願明細書の段落【0010】には、樹脂組成物中での粒径を求める「溶媒中、動的光散乱法」による粒径測定方法は、膨潤後の「粒径」を測定したものである旨記載されているが、引用発明2の「層状珪酸塩」は、一辺の長さが約0.1μmであるから、仮に、膨潤によりその値が多少大きくなるとしても、その粒径は5μm以下の値であるものと認められる。 また、引用文献2では「層状珪酸塩」の層間距離をX線解析で求めることが記載されている(摘示(2g))ことから、引用発明2における「層状珪酸塩」の「一単位の厚み」も同様の方法で求めているものと認められ、この方法は本願明細書段落【0011】で例示されている方法と同一である。 そこで、本願明細書の段落【0011】の記載に基づき、この「層状珪酸塩」のアスペクト比を、単位厚みa=8Å=0.8nm、粒径L=0.1μm=100nmとして計算すると、引用発明2の「層状珪酸塩」のアスペクト比L/aは、125となり、仮に、膨潤により「粒径L」の値が多少大きくなるとしても、アスペクト比L/aが5000以下の値であるものと認められ、アスペクト比L/aは本願発明1の50以上5000以下の範囲と一致する。 したがって、粒径及びアスペクト比に関して一応相違するとした相違点3は、実質的な相違点とはいえない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明2及び引用文献11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-08 |
結審通知日 | 2006-05-09 |
審決日 | 2006-05-22 |
出願番号 | 特願平7-9043 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 とし子 |
特許庁審判長 |
松井 佳章 |
特許庁審判官 |
鴨野 研一 野村 康秀 |
発明の名称 | 紫外線遮断性積層フィルム |
代理人 | 中山 亨 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 榎本 雅之 |