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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q |
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管理番号 | 1139242 |
審判番号 | 不服2003-10309 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-09-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-05 |
確定日 | 2006-07-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 43334号「移動体通信システム及び基地局及び移動局」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-244976〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年2月22日の出願であって、平成14年10月30日付けで拒絶理由通知がなされ、平成15年2月20日付けで手続補正がなされたが、同年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月7日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年7月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「無線圏内の移動局に対して制御チャネルの信号を間欠送信している基地局において、 移動局に表示させるための表示情報と当該表示情報の分野を識別する識別情報と当該表示情報の送信条件とを記憶する記憶手段と、 送信条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、 前記判定手段により満たされたと判定されたとき複数の表示情報と識別情報とを制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段と を備えることを特徴とする基地局。」 と補正された。 上記補正は、補正前の「前記判定手段により満たされたと判定されたとき表示情報と識別情報とを制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段」を「前記判定手段により満たされたと判定されたとき複数の表示情報と識別情報とを制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段」に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-283782号公報(以下、「引用例1」という。)、及び原査定の備考欄において周知例として引用された特開平8-154074号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【特許請求の範囲】 【請求項1】複数の通信網に接続された回線制御局と、該回線制御局に有線接続された複数の基地局と、該基地局の一つと無線接続される複数の移動局とを備え、該基地局の少なくとも一つが同報通信主体となって、同報通信情報を複数の移動局に一斉着信させることが可能な移動通信システムであって、 前記回線制御局が、有線回線を通じて、同報通信主体となる基地局に対し同報通信情報を送信する同報通信情報送信手段を備え、 前記移動局が、個別の制御チャネルを使用して、同報通信主体となる基地局に対し同報通信情報を送信する同報通信情報送信手段と、該基地局から一斉呼出チャネルを通じて送信されてくる同報通信情報を受信する同報通信情報受信手段とを備える一方、 前記基地局が、前記回線制御局から有線回線を通じて、或いは前記移動局から個別の制御チャネルを通じて送信されてくる同報通信情報を受信する同報通信情報受信手段と、 受信した同報通信情報を保持する保持手段と、受信した同報通信情報を、一斉呼出チャネルを使用して、該当する複数の移動局に対して一斉着信させるように送信する同報通信情報送信手段と、 を備えたことを特徴とする移動通信システム。」(第2頁左欄第1〜24行) B.「【請求項7】前記移動局における同報通信情報送信手段或いは前記回線制御局における同報通信情報送信手段は、更に、同報通信情報に報知時間、報知時刻、報知時間間隔、報知回数、報知優先度等の報知制御情報を付加して送信することを特徴とする請求項1または請求項6記載の移動通信システム。 【請求項8】 前記基地局における同報通信情報送信手段は、受信した同報通信情報に付加された前記報知制御情報に従い、同報通信情報を送信することを特徴とする請求項7記載の移動通信システム。」(第2頁右欄第8〜17行) C.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、基地局を介し、複数の移動局に対して同報通信を行うことが可能な移動通信システムに関するものである。」(第3頁左欄第1〜4行) D.「なお、同報通信の一般的な例としては、時刻の報知サービスや天気予報サービス等がある」(第3頁左欄第49行〜右欄第1行) E.「【0006】移動通信方式を利用した同報通信方式については、特開昭62-225095号公報に、同報通信時の接続方式が開示されている。図11は、その内容を示すものであり、従来の同報通信方式による接続処理の制御シーケンス図を示している。ここで、移動局は、基地局と無線通信を行う場合、制御チャネルを利用して無線区間の通信路を設定するようになっている。この制御チャネルは、無線チャネル情報や基地局のシステム情報を送信するための報知用チャネル(BCCH;Broadcast Control Channel )と、無線ゾーン内の移動局を呼び出すために着呼情報等を一斉に送信するための一斉呼出用チャネル(PCH;Paging Channel)と、基地局と移動局の間に通信路を設定するために必要な制御情報を送信するための移動局に個別の制御用チャネル(SCCH;Signaling Control Channel )等から構成されており、これらのチャネルは、単一搬送波内において、時間的に分割されて使用されるようになっている。なお、図中、右端部に各制御段階にて使用される制御チャネルを示している。」(第3頁右欄第5〜23行) F.「【0045】図6は、同じく図1に示す移動通信システムで行われる第2の同報通信方式による接続処理を示す制御シーケンス図である。基地局5は、各移動局1〜3に対して、BCCH上で無線チャネル情報並びにシステム情報を送信している。いま、移動局1或いは回線制御装置7において、無線ゾーン15内の各移動局1〜3に対する同報通信要求が発生すると、移動局1或いは回線制御装置7は、基地局5が同報通信情報をPCHで送信するための報知制御情報を、同報通信情報に付与して基地局5に対して送信する。基地局5は、移動局1からの同報通信情報を受信して、付与された報知制御情報により、PCH上での同報通信に必要な送信制御情報を獲得する。 【0046】この場合、例えば、報知制御情報で報知時刻が指定されていた場合には、基地局5は、指定された時刻に、受信した同報通信情報をPCH上で各移動局1〜3に対して送信する。また、報知制御情報で報知時間(例えば1分間)と報知間隔が指定されていた場合には、基地局5は、指定された時間、指定された時間間隔でもって、受信した同報通信情報を、PCH上で同じく各移動局1〜3に対して送信する。更に、報知制御情報で報知優先度(例えば、着呼情報の送信が、同報通信情報の送信に優先するか否かを決める)が指定されていた場合には、基地局5は、PCH上で送信予定の情報について、指定された報知優先度に従い、優先度の高い情報からPCH上で各移動局1〜3に対して送信する。また、報知制御情報で送信回数が指定されていた場合には、基地局5は、受信した同報通信情報を指定回数(例えば、nBS回の2倍)だけPCH上で各移動局1〜3に対して送信する。 【0047】以上の制御シーケンスによれば、基地局5がPCH上で送信する同報通信情報の報知時刻、報知時間、報知間隔、報知優先度、送信回数等を、回線制御装置7や移動局1が指定することができるので、効率的な同報通信を実現することが可能となる。」(第7頁右欄第45行〜第8頁左欄第29行) ここで、上記Fの記載に見られる信号PCHは、上記Eの従来例の記載に見られる信号PCHと同じものであり、基地局から無線ゾーン内の移動局に対して間欠送信される制御チャネルの信号であるということができる。 また、上記Fの記載中に、「・・・基地局5は、移動局1からの同報通信情報を受信して、付与された報知制御情報により、PCH上での同報通信に必要な送信制御情報を獲得する。 【0046】この場合、例えば、報知制御情報で報知時刻が指定されていた場合には、基地局5は、指定された時刻に、受信した同報通信情報をPCH上で各移動局1〜3に対して送信する。・・・」とあり、この記載中の「報知制御情報」で指定される「報知時刻」は、同報通信情報を送信する送信条件であるということができ、また、上記Aの記載中に「受信した同報通信情報を保持する保持手段」とあり、上記Bの記載中に「受信した同報通信情報に付加された前記報知制御情報」とあることから、この送信条件は、上記「保持手段」に、同報通信情報とともに保持されるものと解される。 よって、上記A〜Fの記載を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「無線ゾーン内の移動局に対して制御チャネルの信号を間欠送信している基地局において、 移動局に対する同報通信情報と当該同報通信情報の送信条件とを保持する保持手段と、 前記送信条件が満たされたとき同報通信情報を制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段と を備える基地局。」 (引用例2) G.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は,特定の地域で価値を持つ情報を,通信機能付き携帯情報機器を持ち歩く人や,移動電話と携帯端末を積んだ車からアクセスする情報収集システムに関するものである。例えば広告主が店の近くにいる潜在的な利用者に広告を流す場合などに適用することができる。」(第3頁左欄第23〜29行) H.「【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は,まず受信エリアが限られた放送メディアを用いて特定の地域に概要情報を放送することにより,受け手を潜在的な利用者に絞る手段を持つこと,また,放送の内容を,情報の種類,概要,詳細情報へのアクセス方法など,ユーザが有効性を判断できるために必要な最小限に制限して放送する手段を持つこと,概要情報の放送を受け取ったユーザがそれをもとに詳細情報を取得するかどうかを判断して,個別情報源にアクセスする手段を持つことを主要な特徴とする。」(第3頁右欄第11〜21行) I.「【0022】(9)移動体は詳細情報を受け取るとドライバに表示する。 [情報形式]図4は概要情報の形式の例を示す図である。 【0023】概要情報はタグとコンテンツのペアの集合で表現される。この例における概要情報はサービス名を示す「分類」,分類の詳細を示す「カテゴリ」,店の名前である「店舗名」,店の「場所」,店の電話番号である「アドレス情報」,簡単な店の「特色」の情報群から構成される。 【0024】提供情報としてレストラン情報を想定した図4の例では,分類は「食事」であり,カテゴリは「中華」,店舗名は「○○軒」,場所は所定の区画,座標または住所などの情報,アドレス情報は電話番号,特色は今日のお勧めメニューなどの情報である。」(第4頁左欄第47行〜右欄第11行) 上記G〜Iの記載を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。) 「移動体に対して提供する提供情報において、情報の中身とともに分類情報を提供すること。」 (3)対比 本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、まず、引用例1記載の発明における「無線ゾーン」は、本願補正発明における「無線圏」に相当する。 次に、引用例1の上記Dの記載によれば、「なお、同報通信の一般的な例としては、時刻の報知サービスや天気予報サービス等がある」とあり、引用例1記載の発明における「移動局に対する同報通信情報」は、当然、移動局で表示され、確認することができる情報であると解され、本願補正発明における「移動局に表示させるための表示情報」に相当する。 また、引用例1記載の発明における「保持」、「保持手段」は、本願補正発明における「記憶」、「記憶手段」に相当する。 よって、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「無線圏内の移動局に対して制御チャネルの信号を間欠送信している基地局において、 移動局に表示させるための表示情報と当該表示情報の送信条件とを記憶する記憶手段と、 前記送信条件が満たされたとき表示情報を制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段と を備える基地局。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:本願補正発明においては、「送信条件が満たされたか否かを判定する判定手段」を備え、「送信条件が満たされたとき」を「前記判定手段により満たされたと判定されたとき」と明示しているのに対し、引用例1記載の発明においては、構成要件として「判定手段」を明示しておらず、「送信条件が満たされたとき」を「前記判定手段により満たされたと判定されたとき」と明示していない点。 相違点2:本願補正発明は、「記憶手段」に「当該表示情報の分野を識別する識別情報」をも記憶するようにし、移動局に対して上記「識別情報」をも送信するようなものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。 相違点3:本願補正発明においては、移動局に対して「複数の表示情報」を送信するようにしているのに対し、引用例1記載の発明は、「複数の表示情報」を送信するとはされていない点。 (4)判断 そこで、上記相違点1〜3について検討する。 (相違点1について) 引用例1において、「判定手段」についての明示の記載はないものの、引用例1記載の発明は、「送信条件が満たされたとき同報通信情報を制御チャネルより移動局に一斉送信する」動作を行うものであることには変わりなく、「送信条件が満たされた」か否かを判定するために、何らかの手段が存在することは、当業者にとって明らかなことである。 よって、引用例1記載の発明において、「送信条件が満たされたか否かを判定する判定手段」を備えるようにし、「送信条件が満たされたとき」を「前記判定手段により満たされたと判定されたとき」と明示するようにした点が格別なこととは認められない。 (相違点2について) 引用例2記載の発明によれば、「移動体に対して提供する提供情報において、情報の中身とともに分類情報を提供すること」は、必要に応じて適宜に行われていることである。 ここで、「分類情報」は、「情報の分野を識別する識別情報」であることは明らかである。 そして、引用例1記載の発明において、「移動局に対する同報通信情報」は、移動局に対して外部から提供される情報である点においては、引用例2記載の発明における「移動体に対して提供する提供情報」と共通するものであるから、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の発明を適用し、「移動局に対する同報通信情報」に対して「情報の分野を識別する識別情報」を付加するようにすることは、当業者が容易に想到しうることと認められる。 よって、引用例1記載の発明を、「記憶手段」に「当該表示情報の分野を識別する識別情報」をも記憶するようなものとし、移動局に対して上記「識別情報」をも送信するようなものとすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。 (相違点3について) 「表示情報」が「複数の表示情報」であるか否かは、その情報の1単位がどのようなものであるかによって適宜に定義できるものである。 すなわち、例えば表示情報が文字情報である場合に、1文字が情報の1単位であるとすれば、複数の文字からなる文章は、「複数の表示情報」となる。 そして、本願の実施例のように、情報の大きさが送受信の単位よりも大きい場合にその単位に分割して「複数の表示情報」として送信するようにすることも、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。 よって、引用例1記載の発明において、「複数の表示情報」を送信するようにした点が格別なこととは認められない。 そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成15年7月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年2月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「無線圏内の移動局に対して制御チャネルの信号を間欠送信している基地局において、 移動局に表示させるための表示情報と当該表示情報の分野を識別する識別情報と当該表示情報の送信条件とを記憶する記憶手段と、 送信条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、 前記判定手段により満たされたと判定されたとき表示情報と識別情報とを制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段と を備えることを特徴とする基地局。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、及び原査定の備考欄において周知例として引用された引用例2とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「前記判定手段により満たされたと判定されたとき複数の表示情報と識別情報とを制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段」を、上位概念の「前記判定手段により満たされたと判定されたとき表示情報と識別情報とを制御チャネルより移動局に一斉送信する送信手段」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに下位概念化したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-26 |
結審通知日 | 2006-05-09 |
審決日 | 2006-05-22 |
出願番号 | 特願平11-43334 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 春樹、大日方 和幸 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
成瀬 博之 長島 孝志 |
発明の名称 | 移動体通信システム及び基地局及び移動局 |
代理人 | ▲角▼谷 浩 |