ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
---|---|
管理番号 | 1139245 |
審判番号 | 不服2003-11693 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-08-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-24 |
確定日 | 2006-07-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第248226号「肌のくすみ改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月24日出願公開、特開平11-228334〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年9月2日(国内優先権主張1997年12月8日、優先権主張番号 特願平9-337049号;国内優先権主張1997年12月8日、優先権主張番号 特願平9-337050号)の出願(特願平10-248226号)であって、平成15年5月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。 2.平成15年6月24日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年6月24日付の手続補正を却下する。 [理由] 請求項1についての補正は限定的減縮を目的とするものであるが、以下に示すように補正後の発明は引用例1(特開平3-161415号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、独立して特許を受けることができないものである。したがって、この補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の要件を満たしていない。 (1)補正後の本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成15年6月24日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願補正発明」という。) 「炭酸ガス、美白剤及び増粘剤を含有し、25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、かつ吐出後15分間炭酸ガスの濃度を60ppm以上に保つことができる化粧料を耐圧容器に封入してなる肌のくすみ改善剤」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-161415号公報(以下、引用例1という。)には、 (1-1)「(1)(A)分子内にヘテロ環を有する水溶性非イオン性高分子1種又は2種以上0.01〜20重量%、及び (B)炭酸ガス0.01〜10重量% を含有することを特徴とする薬用化粧料」(1頁左下欄5〜9行) (1-2)「本発明の成分(A)である分子内にヘテロ環を有する水溶性非イオン性高分子としては、合成高分子、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプ口ピルセルロース、ポリビニルピロリドン;天然多糖類、例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、デンブン、タマリンドガムなどの、流動性を有する粘調液を作る化合物が好ましく、特に、セルロース誘導体である重合度200〜2000のヒドロキシエチルセルロースが好ましい。成分(A)として上記化合物を用いた場合は、安定性(pH、耐塩、温度及び経時安定性など)及び粘度特性の優れたものが得られる」(2頁左下欄8〜20行) (1-3)「また、本発明の成分(B)である炭酸ガスは、 ・配合量が0.01〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、 ・耐圧容器に充填した際の圧力が0.1〜10kg/cm2、好ましくは4〜8kg/cm2、及び ・化粧料中の炭酸ガス濃度が、噴射直後の濃度で100ppm以上、好ましくは500 ppm以上、噴射10分後の濃度で80ppm以上、好ましくは400ppm以上 であることが好ましい」(2頁右下欄18行〜3頁左上欄7行) (1-4)「更に、本発明の薬用化粧料には、任意成分として、流動パラフィン、ワセリン、固型パラフィン等の炭化水素;液状ラノリン、ラノリン脂肪酸などのラノリン誘導体;ジメチルボリシロキサン、メチルフェニルポリンロキサン、グリコール変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサンなどのシリコン誘導体;ボリオキシプロピレンーボリオキシエチレン共重合体並びにそのエーテル化物、エステル、高級アルコールなどの油剤、脂肪酸、抗フケ剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗脂漏剤、ビタミン類などの薬効剤、各種植物動物エキス、防腐剤、紫外線吸収剤、酵素、酸化防止剤、キレート剤、有機塩、無機塩、研磨剤、カチオン性高分子、色素、各種香料などを適宜配合することもできる」(3頁左下欄8行〜右下欄1行) (1-5)「本発明の薬用化粧料は、例えば、前記成分(A)の分子内にヘテロ環を有する水溶性非イオン性高分子、水及び必要に応じ前記極性溶媒や前記任意成分を常法に従って配合し、配合物を耐圧容器に入れ、前記成分(B)の炭酸ガスを充填することにより調製される」(3頁右下欄2〜7行) (1-6)「本発明の薬用化粧料は、分子内にヘテロ環を有する水溶性非イオン性高分子を含有し粘性が高いため、炭酸ガスの飛散を著しく防止し、炭酸ガスを高濃度で長時間保持する能力を持ち、そのため、皮膚に作用させた場合、高い血行促進効果を長時間得ることができる」(4頁左下欄15〜20行)及び (1-7)「(3)毛髪用品や皮膚一般用品への応用が容易であり、その場合、これらの製品の本来の機能に加えて炭酸ガスによる効果が加わり、シャンプー、トリートメント、クリーム、パック等多岐にわたり応用できる多機能な薬用化粧料が得られる。」(5頁、右下欄下から2行〜6頁左上欄3行)と記載されている。 (3)対比 そこで本願補正発明と引用例1の薬用化粧料とを対比すると,引用例1では、分子内にヘテロ環を有する水溶性非イオン性高分子の使用により粘度特性の優れたものが得られる(摘記事項(1-2))のであるから、上記高分子は本願発明の増粘剤に相当し、また、引用例1の化粧料は耐圧容器に封入されたものである(摘記事項(1-5))。 そうすると、両者は「炭酸ガス、及び増粘剤を含有し、耐圧容器に封入してなる化粧料」である点で一致し、以下の点で相違する。 A.前者は美白剤を含有するのに対して後者では美白剤を含有していない点 B.前者が、25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、かつ吐出後15分間炭酸ガスの濃度を60ppm以上に保つことができるとされているのに対し、後者ではこの点の記載がない点 C.前者は肌のくすみ改善剤であるのに対して後者は薬用化粧料である点 (4)判断 (相違点A) 引用例1には、当該薬用化粧料がクリーム、パック剤にも応用できること(摘記事項(1-7))や、任意成分としてビタミン類などの薬効剤、各種植物動物エキスなどを適宜配合することもできる(摘記事項(1-4))とされているが、クリーム、パック剤にアスコルビン酸(ビタミンC)や植物エキスなどの美白剤を添加することは当業界ではよく行われていることである。 したがって、引用例1に記載された薬用化粧料において美白剤を配合することは当業者であれば容易になし得ることである。 (相違点B) 引用例1には、「化粧料中の炭酸ガス濃度が、噴射直後の濃度で100ppm以上、好ましくは500ppm以上、噴射10分後の濃度で80ppm以上、好ましくは400ppm以上であることが好ましい」(摘記事項(1-3))との記載、及び「分子内にヘテロ環を有する水溶性非イオン性高分子を含有し粘性が高いため、炭酸ガスを高濃度で長時間保持する能力を持つ」(摘記事項(1-6))との記載がある。 そうすると、薬用化粧料において噴射後も長時間高濃度で炭酸ガスを保持するために配合物の粘度を調整すること、例えば吐出後15分間炭酸ガスの濃度を60ppm以上に保つことができるように25℃における粘度が100〜500,000mPa・sとすることは当業者が容易になし得ることである。 (相違点C) 引用例1には「炭酸ガスが高濃度で長時間保持されるため、皮膚に作用させた場合高い血行促進効果を長時間得ることができる」(摘記事項(1-6))との記載があるが、肌色のくすみは血行不順により生じるものであり、血行促進によりくすみが改善されることは当業界ではよく知られているから、炭酸ガスを含む化粧料にくすみ改善作用が期待できることは自明のことである。 そうすると、炭酸ガスを配合した化粧料を肌のくすみ改善剤とすることは当業者が容易になし得ることである。 また、美白剤によってもくすみの改善が得られることはよく知られているから、炭酸ガスと美白剤を併用したことによる本願補正発明のくすみ改善向上の効果にしても当業者の予測の範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年6月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年3月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「炭酸ガス、美白剤及び増粘剤を含有し、該化粧料の25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、かつ吐出後15分間炭酸ガスの濃度を60ppm以上に保つことができる化粧料」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「化粧料」の限定事項である「耐圧容器に封入してなる肌のくすみ改善剤」との構成を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により引用例1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-27 |
結審通知日 | 2006-05-09 |
審決日 | 2006-05-22 |
出願番号 | 特願平10-248226 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
谷口 博 弘實 謙二 |
発明の名称 | 肌のくすみ改善剤 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |