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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1139263
審判番号 不服2003-20544  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-23 
確定日 2006-07-06 
事件の表示 特願2000-175615「画像読取装置および画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月26日出願公開,特開2001-358894〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年6月12日の出願であって,平成15年9月17日付で拒絶査定がされ,これに対し,同年10月23日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月23日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月23日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】 原稿から読み取る画像情報を複数の使用目的に使用可能とする画像読取装置において,前記原稿から画像情報を読み取る画像読取手段と,
前記原稿が載置される複数の原稿トレイごとに,使用目的を設定された複数の専用トレイと,
前記原稿トレイに載置された原稿を前記画像読取手段へと供給する原稿給送手段と,
前記使用目的に応じた操作条件の提示と,該操作条件の設定入力と,を可能とする表示手段を有する操作手段と,
前記専用トレイに原稿が載置された時点で,予めモードを定めている管理テーブルを用いて,前記操作手段の操作条件の提示内容を,該原稿が載置された該専用トレイの使用目的に応じた操作条件に自動的に切り換え,該専用トレイの使用目的に応じた操作条件の設定入力を可能とする制御部と,を有することを特徴とする画像読取装置。」と補正された。

上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である操作手段の操作条件を限定するものであって,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-310341号公報(以下,「引用例」という。)には,図面と共に,次の記載が認められる。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動原稿送り手段を有するデジタル複写機に関する。」
イ 「【0003】複写機はデジタル化,複合化により複写機能,プリンタ,ファックス(ファクシミリ)などの機能(アプリケーション)を持つようになり,各アプリケーションで原稿を共通のスキャナ部により読み取ることが多くなっている。また,プロッター部をプリンタとして各アプリケーションで使用するものがある。」
ウ 「【0024】このデジタル複写機55は操作部25のテンキーにより各原稿入力ビン23a,23b,23c毎にアプリケーションの指定を行うものであり,各原稿入力ビン23a,23b,23cから原稿を複写機本体21の原稿台上の読み取り位置に搬入する際に,その原稿がどの原稿入力ビンから搬入した原稿であるかを判断することによってどのアプリケーションの原稿であるかを判断し,そのアプリケーションによりモードの切り替えを行う。」
エ 「【0025】図14〜図17は上記メインCPU56の処理フローの一部を示す。メインCPU56は,まず,ステップ2.1で操作部25のテンキーから各原稿入力ビン23a,23b,23c毎のアプリケーションの指定を変数の値として取り込んで確保しておく。次に,メインCPU56は,ステップ2.2で原稿検知センサー49,50,51からの入力信号により各原稿入力ビン23a,23b,23cの原稿の有無を検知し,ステップ2.3で原稿の処理モードが指定されているか否かを判断し,つまり,どの原稿入力ビンが選択されてその原稿をどのように処理するかが指定されているか否かを判断する。
【0026】メインCPU56は原稿の処理モードが指定されていない場合にはステップ2.4で操作部25のスタートキーからの入力信号によりスタートキーが押されたか否かを判断し,スタートキーが押されない場合にはステップ2.5で待ちモードに戻る。また,メインCPU56はスタートキーが押された場合には処理2.1に進んでステップ2.6でスタートキーが押される前に原稿入力ビンA(23a)の選択が操作部25により行われていたか否かを判断し,原稿入力ビン23aが選択されていた場合にはステップ2.7で原稿検知センサー49からの検知信号により原稿入力ビン23a内に原稿が存在するか否かを判断する。
【0027】メインCPU56は原稿入力ビン23a内に原稿が存在する場合にはステップ2.8でADF22に対して原稿入力ビン23a内の原稿を複写機本体21の原稿台上の読み取り位置に搬入させ,ステップ2.9で上記変数の値から原稿入力ビン23aのアプリケーション指定がコピーモードかファックスモードかを判断する。メインCPU56は原稿入力ビン23aのアプリケーション指定がコピーモードである場合にはステップ2.10でモードをコピーモードに設定し,ステップ2.12で操作部25からのキー入力信号を全て有効としてコピーの枚数,濃度,倍率など処理モードの指定の受け入れを行う。
【0028】次に,メインCPU56はステップ2.13でスタートキーからの入力信号によりスタートキーが押されたか否かを判断し,スタートキーが押されなければ処理モードの変更があるものとみなしてステップ2.12に戻って処理モードの入力状態に戻る。また,メインCPU56はスタートキーが押された場合には処理モードが決定されたものとみなしてステップ2.14でその処理モードを設定してステップ2.15でコピーモードに戻る。」

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明(以下,「引用発明」という。)とを対比する。
引用発明は,「複写機はデジタル化,複合化により複写機能,プリンタ,ファックス(ファクシミリ)などの機能(アプリケーション)を持つようになり,各アプリケーションで原稿を共通のスキャナ部により読み取る」(段落【0003】)ことから,複数の使用目的に使用可能であり画像読み取り手段であるスキャナ部を備えている。
また,段落【0024】に,「各原稿入力ビン23a,23b,23cから原稿を複写機本体21の原稿台上の読み取り位置に搬入する際に,その原稿がどの原稿入力ビンから搬入した原稿であるかを判断することによってどのアプリケーションの原稿であるかを判断し,そのアプリケーションによりモードの切り替えを行う」との記載があり,原稿トレイごとに使用目的が設定され,この設定は,同じ段落に「このデジタル複写機55は操作部25のテンキーにより各原稿入力ビン23a,23b,23c毎にアプリケーションの指定を行うものであ」るから,使用目的に応じた操作条件の設定入力が可能であることが分かる。
以上を踏まえると,本願補正発明と引用発明とは,次の一致点及び相違点が認められる。

【一致点】原稿から読み取る画像情報を複数の使用目的に使用可能とする画像読取装置において,前記原稿から画像情報を読み取る画像読取手段と,前記原稿が載置される複数の原稿トレイごとに,使用目的を設定された複数の専用トレイと,前記原稿トレイに載置された原稿を前記画像読取手段へと供給する原稿給送手段と,前記使用目的に応じた操作条件の提示と,該操作条件の設定入力と,を可能とする表示手段を有する操作手段と,前記専用トレイに原稿が載置された時点で,前記操作手段の操作条件の提示内容を,該原稿が載置された該専用トレイの使用目的に応じた操作条件に切り換え,該専用トレイの使用目的に応じた操作条件の設定入力を可能とする制御部と,を有することを特徴とする画像読取装置。

【相違点】本願補正発明では,「専用トレイに原稿が載置された時点で,予めモードを定めている管理テーブルを用いて,前記操作手段の操作条件の提示内容を,該原稿が載置された該専用トレイの使用目的に応じた操作条件に自動的に切り換える」のに対し,引用発明では,予めモードを定めている管理テーブルを用いておらず,自動的に切り換えることも明記されていない点。

(4)相違点についての判断
引用発明では,「メインCPU56は,ステップ2.2で原稿検知センサー49,50,51からの入力信号により各原稿入力ビン23a,23b,23cの原稿の有無を検知し,ステップ2.3で原稿の処理モードが指定されているか否かを判断し,つまり,どの原稿入力ビンが選択されてその原稿をどのように処理するかが指定されているか否かを判断する。」(段落【0025】)ことから,原稿の処理モードが指定されている場合は,本願補正発明と同様の機能を発揮することが認められる。
ところで,コンピュータを利用する分野では,デフォルト機能は普通に用いられている常識ともいえるものである。すなわち,あらかじめ標準として用意されている様態や動作を初期設定として操作手段や画面表示に割り当てることは特別な工夫を要することなく当業者が普通に採用している手段である。
本願補正発明もコンピュータを利用したものであり,デフォルト機能を採用することは当業者が自然に想起し得るものである。
そしてその具体的手段として管理テーブルを用いたことに当業者が格別推考力を要したとは認められない。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用例に示された技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願補正発明は,引用例記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に違反するものであるから,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成15年8月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「【請求項1】 原稿から読み取る画像情報を複数の使用目的に使用可能とする画像読取装置において,前記原稿から画像情報を読み取る画像読取手段と,前記原稿が載置される複数の原稿トレイの内,使用目的を設定された複数の専用トレイと,前記原稿トレイに載置された原稿を前記画像読取手段へと給送する原稿給送手段と,前記使用目的に応じた操作条件の提示と,該操作条件の設定入力と,を可能とする表示手段を有する操作手段と,前記専用トレイに原稿が載置されると,前記操作手段の操作条件の提示内容を,該原稿が載置された該専用トレイの使用目的に応じた操作条件に自動的に切り換え,該専用トレイの使用目的に応じた操作条件の設定入力を可能とする制御部と,を有することを特徴とする画像読取装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から操作手段の操作条件を限定する構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(3)及び(4)の対比,判断に記載したとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-26 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-22 
出願番号 特願2000-175615(P2000-175615)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 恵雄  
特許庁審判長 杉 山 務
特許庁審判官 岡本 俊威
伊知地和之
発明の名称 画像読取装置および画像形成装置  
代理人 藤本 英介  
代理人 宮尾 明茂  
代理人 神田 正義  

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