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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1139273 |
審判番号 | 不服2003-23959 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-05-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-11 |
確定日 | 2006-07-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第311270号「はんだ付け用ランド」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月18日出願公開、特開2001-135923〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年11月1日の出願であって、平成15年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日付けで審判請求がなされるとともに、同年12月26日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年12月26日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年12月26日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に記載された発明 平成15年12月26日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「【請求項1】 部品を貫通させる貫通孔を有し基板に部品を固定するためのディップ方式によるはんだ付け用ランドであって、 前記ランドは、前記貫通孔を有する略円形部と、前記貫通孔より突出した部品の先端折曲げ部を係止するために前記ディップ方式で前記基板を移動させる方向に向かって前記略円形部から一部延伸した延伸部と、を有し、 前記延伸部の幅は、前記部品の先端折曲げ部の折曲げ方向誤差を許容して先端折曲げ部が延伸部から張り出さない必要十分な幅であることを特徴とするはんだ付け用ランド。」 本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記略円形部から一部延伸した延伸部」について、「前記ディップ方式で前記基板を移動させる方向に向かって」との限定を付加するものであって、本件補正に係る事項は、新規事項を含むものとは認められず、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年法律第47号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である「特開平9-321417号公報」(以下、「引用例」という。)には、「片面印刷配線基板」に関して、図1〜4とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0009】また、自動挿入による印刷配線基板への電気・電子部品の装着は、図4に示すように、電気・電子部品のリ-ドピン11を前記片面印刷配線基板1の貫通孔6に挿入後、このリ-ドピン11を裏面側に折曲げるため、折曲げられたリ-ドピン11aとランド7とは密着状態となる。 【0010】このため、図示しない半田槽に浸漬して半田付けするフロ-方式では、リ-ドピンとランドとの間に半田が浸透しにくく、クラックが生じやすいという問題があった。」(第2頁第1欄第50行〜同頁第2欄第9行) (イ)「【0016】図1は半田補強するランドに連続して外方に突起する補助ランドを形成する突起状ランドを延出形成した片面印刷配線基板を示すもので、片面印刷配線基板30の裏面には、従来技術と同様に電気回路を構成する銅箔が張付されたパタ-ン4が形成され、このパタ-ン4の表面には、半田が付かないようにレジスト5が塗布されている。 【0017】銅箔により形成されたパタ-ン4上には、例えば、コンデンサ-などの電気・電子部品10のリ-ドピン11を挿入するための貫通孔6が形成され、この貫通孔6と貫通孔6の周囲はレジスト5を塗布せず、電気・電子部品10のリ-ドピン11とパタ-ン4の表面に張付された銅箔とを半田で電気的に接続するためランド7が形成され、このランド7は、通常、均一に半田がランド7に付くように貫通孔6との距離を均一にするため円形に形成されている。」(第2頁第2欄第35〜50行) (ウ)「【0019】図2は自動挿入する電気・電子部品を取り付けるランドに連続して外方に突起する補助ランドを形成する突起状ランドを延出形成した片面印刷配線基板を示すもので、この補助ランドである突起状ランド31は、リ-ドピン11の折曲げ方向と同一方向に延出形成されている。 【0020】このため、折曲げられたリ-ドピン11aの先端まで半田が回り、リ-ドピンとランドの密着部分の半田15の浸透を向上させ、クラック発生を防止する。」(第3頁第3欄第8〜17行) 引用例記載のものにおいて、突起状ランド31は、円形ランド7から延出形成されている(上記記載事項(ウ)、図2参照)から、円形ランド7から一部延伸したものであることは明らかである。 したがって、上記記載事項(ア)〜(ウ)及び図1〜4の記載を総合すると、引用例には、 「電気・電子部品10のリ-ドピン11を貫通させる貫通孔6を有し片面印刷配線基板1に電気・電子部品10を固定するための半田付け用ランドであって、 前記ランドは、前記貫通孔6を有する円形ランド7と、前記貫通孔6より突出したリ-ドピン11aを係止するために前記円形ランド7から一部延伸した突起状ランド31と、を有する半田付け用ランド。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「電気・電子部品10のリ-ドピン11」又は「電気・電子部品10」、「貫通孔6」、「片面印刷配線基板1」、「半田付け用ランド」、「円形ランド7」、「リ-ドピン11a」、「突起状ランド31」は、それぞれ本願補正発明の「部品」、「貫通孔」、「基板」、「はんだ付け用ランド」、「略円形部」、「部品の先端折曲げ部」、「延伸部」に相当する。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは、 「部品を貫通させる貫通孔を有し基板に部品を固定するためのはんだ付け用ランドであって、 前記ランドは、前記貫通孔を有する略円形部と、前記貫通孔より突出した部品の先端折曲げ部を係止するために前記略円形部から一部延伸した延伸部と、を有するはんだ付け用ランド。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明は、ディップ方式によるはんだ付け用ランドであって、延伸部がディップ方式で基板を移動させる方向に向かって一部延伸しているのに対して、引用発明は、ディップ方式によるものか否かが明らかではなく、突起状ランド31が延伸する方向と基板を移動させる方向との関係が明らかではない点。 [相違点2] 本願補正発明では、延伸部の幅は、部品の先端折曲げ部の折曲げ方向誤差を許容して先端折曲げ部が延伸部から張り出さない必要十分な幅であるのに対して、引用発明では、突起状ランド31の幅はかかる限定を有しない点。 (4)判断 まず、上記相違点1について検討するに、一般に、電子部品等のリードピンを基板上のランドにはんだ付けする方法としてディップ方式を採用することは、従来周知の技術であり(例えば、特開昭53-99468号公報、実願昭60-195574号(実開昭62-103277号)のマイクロフィルム、特開平9-191173号公報、又は特開平11-87895号公報参照)、また、ディップ方式において基板を移動させてはんだ付けすることは慣用手段に過ぎず、更に、はんだ付けの際の基板を移動させる方向に向かって一部延伸している延伸部をはんだ付けランドに設けることも、従来周知の技術である(例えば、特開昭62-128191号公報、実願昭62-168664号(実開平1-73967号)のマイクロフィルム、特開昭64-66993号公報、又は、実願平4-46173号(実開平6-23278号)のCD-ROM参照)。 してみれば、引用発明において、ディップ方式によるはんだ付けを採用するとともに、突起状ランド31をディップ方式で片面印刷配線基板1を移動させる方向に向かって一部延伸するように構成することは、上記周知技術及び慣用手段に照らせば、当業者が容易に想到し得たことといえるから、上記相違点1に係る本願補正発明の構成に格別の困難性は認められない。 次に、上記相違点2について検討するに、はんだ付け不良とはんだ付け用ランドの面積の関係につき、ランドの面積が大きくなると、ランド上のはんだの引っ張り力によりピンホールが発生するという課題は、例えば、実願昭58-134803号(実開昭60-42761号)のマイクロフィルムに記載されているように、はんだ付け用ランドの技術分野において良く知られたものである。また、部品(リードピン)の先端折曲げ部の折曲げ方向誤差は、電子部品等を基板にはんだ付けする上で通常予測されるものであって、かかる誤差を考慮してランドの形状を設計することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。 してみれば、引用発明において、突起状ランド31の幅につき、ピンホールの発生を防止すべく当該ランド上のはんだの引っ張り力を抑制する程度に小さく、かつ、リードピン11aの折曲げ方向誤差を許容して、当該リードピン11aが突起状ランド31から張り出さない程度に大きく、必要十分なものとすることは、当業者ならば容易に想到し得たことといえるから、上記相違点2に係る本願補正発明の構成に格別の困難性は認められない。 そして、本願補正発明が奏する作用効果も、引用発明及び周知技術から当然予測される程度のものであって格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年法律第47号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は上記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年9月9日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 部品を貫通させる貫通孔を有し基板に部品を固定するためのディップ方式によるはんだ付け用ランドであって、 前記ランドは、前記貫通孔を有する略円形部と、前記貫通孔より突出した部品の先端折曲げ部を係止するために前記略円形部から一部延伸した延伸部と、を有し、 前記延伸部の幅は、前記部品の先端折曲げ部の折曲げ方向誤差を許容して先端折曲げ部が延伸部から張り出さない必要十分な幅であることを特徴とするはんだ付け用ランド。」 (2)引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である引用例及びその記載事項は上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明から、「前記略円形部から一部延伸した延伸部」の限定事項である「前記ディップ方式で前記基板を移動させる方向に向かって」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-26 |
結審通知日 | 2006-05-09 |
審決日 | 2006-05-23 |
出願番号 | 特願平11-311270 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 豊島 ひろみ、新海 岳 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
平瀬 知明 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | はんだ付け用ランド |
代理人 | 吉田 研二 |
代理人 | 石田 純 |