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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1139288
審判番号 不服2004-9393  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-02-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-06 
確定日 2006-07-06 
事件の表示 平成 7年特許願第182507号「磁気ヘッド装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月 7日出願公開、特開平 9- 35205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年7月19日の出願であって、平成15年12月8日付けで手続補正がなされ、その後平成16年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年5月6日に審判請求がなされたものである。
本願の請求項1乃至5に係る発明は、上記平成15年12月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、それぞれ本願特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「磁性材料からなる第1のコアと、上記第1のコアとの間に磁気的記録または再生を行う第1の磁気ギャップを形成する第2のコアと、磁性材料からなり上記第2のコアとの間に磁気的消去を行う第2の磁気ギャップを形成する第3のコアとを有するヘッドコア部と、電磁変換を行うために上記第1のコアに設けられた記録・再生用コイルと、電磁変換を行うために上記第3のコアに設けられた消去用コイルと、磁性材料からなり上記第1のコアと上記第2のコアと上記第3のコアとに接合されバックギャップを形成するバックコアとを有する磁気回路部と、
上記第1のコアと上記第2のコアと上記第3のコアとに接着され上記磁気回路部を保持する第1のホルダー部と、
上記バックコアに接着されることなく分離して配置され、上記第1の磁気ギャップ側および上記第2の磁気ギャップ側にて上記第1のコアと上記第2のコアと上記第3のコアとに接着され上記磁気回路部を保持する第2のホルダー部と、
上記第1のホルダー部を保持すると共に、上記第1のコア乃至第3のコアの上記バックギャップ側を上記第2のホルダー部側の上方に配置した支持部材とを備えたことを特徴とする磁気ヘッド装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平1-192011号公報(以下「引用例1」という。)には、磁気ヘッドに関して次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア) 「本発明はフロッピーディスクドライブ装置等の磁気ヘッドに係り、特にコイルをスライダーの内側に取り付け可能でかつジンバル上に安定に支持できる磁気ヘッドの製造方法に関する。」(公報1頁左下欄15行〜19行)
(イ) 「一般にフロッピーディスクドライブ装置等の磁気ヘッドは第2図に示すように記録再生ギャップlを有する記録再生用磁気コア11と消去ギャップ2を有する消去用磁気コア21を非磁性体スペーサ3を介在させて接合した磁気コアチップ4にスライダー51、52を接着し、ジンバル8上にスライダー51の底面で支持した後記録再生用磁気コア11及び消去用磁気コア21にコイル6を挿入し、リアコア7を接着した構造となっている。またフロッピーディスクドライブ装置の薄型化のために、第3図に示すように磁気コアチップ4に磁気コアチップとの接着面の下部を一部切除したスライダー53とスライダー54を接着し、記録再生用磁気コア11及び消去用磁気コア21にコイル6を挿入しスライダーの内側に設置させ、リアコア7を接着した後、スライダー53の底面でジンバル8上に支持させた構造の磁気ヘッドも広く使用されている。しかしながら第3図に示す構造の磁気ヘッドではスライダ53の底面による片側支持であり、スライダー53の底面は一部切除されていることから、底面積が狭く、ジンバル上の支持が不安定になるという欠点があった。そこで第3図に示す構造の磁気ヘッドの欠点を対処した構造として第4図及び第5図に示す構造の磁気ヘッドも使用されている。」(公報1頁右下欄1行〜2頁左上欄5行)
(ウ) 第3図には、スライダー54は、略角柱形状であって、磁気コアチップ4を構成する記録再生用磁気コア11と消去用磁気コア21に、記録再生ギャップ及び消去ギャップ側にて、接着され、かつ、スライダー54は、リアコア7には接着されることなく分離して配置されていることが、図示されている。また、第3図には、記録再生用磁気コアは、記録再生ギャップを挟んで、記録再生用の外側磁気コアとセンタ側磁気コアからなり、消去用磁気コアは、消去ギャップを挟んで、消去用の外側磁気コアとセンタ側磁気コアからなることが図示されている。また、第3図には、記録再生用の外側磁気コアにコイルが挿入され、消去用の外側磁気コアにコイルが挿入されていることが図示されている。また、第3図には、記録再生用磁気コアと消去用磁気コアにおけるリアコア側が、ジンバルを貫通していることが図示されている。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1には、上記2(イ)(ウ)(下線部参照)に摘示した記載事項によれば、
「記録再生ギャップを有する記録再生用磁気コアと消去ギャップを有する消去用磁気コアを非磁性体スペーサを介在させて接合した磁気コアチップに、第1のスライダーと第2のスライダーを接着し、記録再生用磁気コア及び消去用磁気コアにコイルを挿入し、リアコアを接着し、第1のスライダーの底面でジンバル上に支持させた構造の磁気ヘッドであって、
第2のスライダーは、磁気コアチップを構成する記録再生用磁気コアと消去用磁気コアに、記録再生ギャップ及び消去ギャップ側にて、接着され、かつ、リアコアには接着されることなく分離して配置され、
記録再生用磁気コアは、記録再生ギャップを挟んで、記録再生用の外側磁気コアとセンタ側磁気コアからなり、消去用磁気コアは、消去ギャップを挟んで、消去用の外側磁気コアとセンタ側磁気コアからなり、記録再生用の外側磁気コアにコイルが挿入され、消去用の外側磁気コアにコイルが挿入されている、磁気ヘッド。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「記録再生ギャップ」「消去ギャップ」「磁気コアチップ」は、それぞれ本願発明の「磁気的記録または再生を行う第1の磁気ギャップ」「磁気的消去を行う第2の磁気ギャップ」「ヘッドコア部」に相当している。
本願発明の「第2のコア」とは、「第2のコアは磁気回路部を記録・再生用磁気回路の磁路と消去用磁気回路の磁路とに分離されている」(本願の請求項4)構成を含むものであるから、引用例1に記載された発明の「記録再生用のセンタ側磁気コアと消去用のセンタ側磁気コア」は、本願発明の「第2のコア」に相当し、引用例1に記載された発明の「記録再生用の外側磁気コア」「消去用の外側磁気コア」は、それぞれ本願発明の「磁性材料からなる第1のコア」「磁性材料からなる第3のコア」に相当している。
引用例1に記載された発明では、「記録再生用の外側磁気コアにコイルが挿入され、消去用の外側磁気コアにコイルが挿入されている」ので、「記録再生用の外側磁気コアに挿入されたコイル」「消去用の外側磁気コア挿入されたコイル」は、それぞれ本願発明の「第1のコアに設けられた記録・再生用コイル」「第3のコアに設けられた消去用コイル」に相当しており、電磁変換を行うためのものであることは明らかである。
引用例1に記載された発明の「リアコア」は、本願発明の「バックコア」に相当している。引用例1に記載された発明において、「リアコア」は、「磁気コアチップ」を構成する記録再生用の外側磁気コア及びセンタ側磁気コア並びに消去用の外側磁気コア及びセンタ側磁気コアに接着されることにより接合され、その接合部分がバックギャップを形成しているから、引用例1に記載された発明の「リアコア」は、本願発明の「磁性材料からなり第1のコアと第2のコアと第3のコアとに接合されバックギャップを形成するバックコア」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「磁気コアチップ」と「コイル」と「リアコア」とは磁気回路部を構成するものであるから、本願発明の「磁気回路部」に相当している。
引用例1に記載された発明の「第1のスライダー」「第2のスライダー」は、それぞれ本願発明の「第1のホルダー部」「第2のホルダー部」に相当している。
引用例1に記載された発明の「第1のスライダー」は、「磁気コアチップ」に接着されているから、本願発明の「第1のコアと第2のコアと第3のコアとに接着され磁気回路部を保持する第1のホルダー部」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「第2のスライダー」は、「磁気コアチップを構成する記録再生用磁気コアと消去用磁気コアに、記録再生ギャップ及び消去ギャップ側にて、接着され、かつ、リアコアには接着されることなく分離して配置され」ているから、本願発明の「バックコアに接着されることなく分離して配置され、第1の磁気ギャップ側および第2の磁気ギャップ側にて第1のコアと第2のコアと第3のコアとに接着され磁気回路部を保持する第2のホルダー部」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「ジンバル」は、本願発明の「支持部材」に相当している。引用例1に記載された発明の磁気ヘッドは、磁気コアチップに接着された第1及び第2のスライダーとコイルとリアコアを、第1のスライダーの底面で、ジンバル上に支持させた構造であるから、本願発明の、「支持部材」が「第1のホルダー部を保持する」、に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「磁気ヘッド」は、「ジンバル」を備えた構成において、本願発明の「磁気ヘッド装置」に相当している。

してみると、本願発明と引用例1に記載された発明は、
「磁性材料からなる第1のコアと、上記第1のコアとの間に磁気的記録または再生を行う第1の磁気ギャップを形成する第2のコアと、磁性材料からなり上記第2のコアとの間に磁気的消去を行う第2の磁気ギャップを形成する第3のコアとを有するヘッドコア部と、電磁変換を行うために上記第1のコアに設けられた記録・再生用コイルと、電磁変換を行うために上記第3のコアに設けられた消去用コイルと、磁性材料からなり上記第1のコアと上記第2のコアと上記第3のコアとに接合されバックギャップを形成するバックコアとを有する磁気回路部と、
上記第1のコアと上記第2のコアと上記第3のコアとに接着され上記磁気回路部を保持する第1のホルダー部と、
上記バックコアに接着されることなく分離して配置され、上記第1の磁気ギャップ側および上記第2の磁気ギャップ側にて上記第1のコアと上記第2のコアと上記第3のコアとに接着され上記磁気回路部を保持する第2のホルダー部と、
上記第1のホルダー部を保持する支持部材とを備えた磁気ヘッド装置。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。

(相違点1) 「支持部材」に関して、本願発明では、「第1のコア乃至第3のコアのバックギャップ側を第2のホルダー部側の上方に配置した」と特定しているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのような特定がない点。

(2)相違点についての判断
(相違点1について)
引用例1には、記録再生用磁気コアと消去用磁気コアにおけるリアコア側が、ジンバルを貫通していることが例示(上記(ウ)参照)されている。
しかしながら、本願発明や引用例1のフロッピーディスクドライブ装置用磁気ヘッドの技術分野において、記録再生用磁気コアと消去用磁気コアにおけるリアコア側の位置を、ジンバルの上方となるように、ホルダーをジンバルに保持させる構造は、周知の事項であって、例えば、実願平1-139772号(実開平3-80507号公報)のマイクロフィルム(従来例の第3〜5図参照)、特開平3-198216号公報(従来例の第7、8図参照)、特開平3-142748号公報(第4、6図)、特開平3-224117号公報(従来例の第2、3図)に記載されている。
してみれば、引用例1に記載された発明において、その記録再生用磁気コアと消去用磁気コアにおけるリアコア側の位置を、ジンバルに対して適宜配置して、第2のスライダー側であるジンバルの上方に位置させるようにすることは、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到しうることである。そして、ジンバルの上方に配置する構造においてはジンバルに貫通するための穴を必要としないことは、上記周知の事項による当然の効果にすぎず、相違点1に基づく作用効果は、格別顕著なものではない。

4 むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-28 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-24 
出願番号 特願平7-182507
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 吉村 伊佐雄
中村 豊
発明の名称 磁気ヘッド装置  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 高橋 省吾  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  

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