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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1139898
審判番号 不服2002-6950  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-22 
確定日 2006-07-12 
事件の表示 平成11年特許願第129786号「テキスト情報を処理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月25日出願公開、特開2000- 56977〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年5月11日(パリ条約による優先権主張1998年6月2日、欧州)の出願であって、平成14年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月22日に審判請求がなされ、同年5月21日に手続補正がなされたが、平成17年7月25日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対し、平成18年1月26日に手続補正がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「コンピュータ・システムにおいてテキスト情報を処理する方法であって、
前記コンピュータ・システムのプロセッサにより、
前記テキスト情報の入力文字列をセグメントに分け、
オブジェクト、関係及び属性のタイプから成る意味単位と、上下及び水平の方向を有する類似性及び機能並びに水平の方向のみを有する属性及び役割のタイプから成り、前記意味単位の各々をリンクし、リンクされた2つの意味単位間の意味距離に応じて重みが割当てられているポインタとで構成された前記コンピュータ・システムの知識データベースから、前記セグメントに適合する前記意味単位を前記セグメントに組み合わせて、前記セグメントに適合する前記意味単位及び前記ポインタで構成された意味ネットワークを生成する、
テキスト情報を処理する方法。」

2.当審の拒絶理由
当審において平成17年7月25日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないから、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.当審の判断
(1)ハードウェア資源の利用について、
本願発明は、「コンピュータ・システムにおいてテキスト情報を処理する方法」であり、かつ、当該「方法」は、「コンピュータ・システムのプロセッサ」により実現されているので、該「コンピュータ・システムのプロセッサ」がソフトウェアを実行することにより前記「方法」を実現しているコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。そして、コンピュータ・ソフトウェア関連発明が、自然法則を利用した技術的思想の創作であるためには、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されること、すなわち、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている必要がある。
ここで、本願発明によって、ソフトウェアにより実現されている情報処理は、「前記テキスト情報の入力文字列をセグメントに分け、オブジェクト、関係及び属性のタイプから成る意味単位と、上下及び水平の方向を有する類似性及び機能並びに水平の方向のみを有する属性及び役割のタイプから成り、前記意味単位の各々をリンクし、リンクされた2つの意味単位間の意味距離に応じて重みが割当てられているポインタとで構成された前記コンピュータ・システムの知識データベースから、前記セグメントに適合する前記意味単位を前記セグメントに組み合わせて、前記セグメントに適合する前記意味単位及び前記ポインタで構成された意味ネットワークを生成する」ものである。
当該情報処理を分割すると、a)テキスト情報の入力文字列をセグメントに分ける処理、b)コンピュータ・システムの知識データベースから、前記セグメントに適合する意味単位を前記セグメントに組み合わせて意味ネットワークを生成する処理、である。
上記a)の処理においては、「セグメント」の元となる「テキスト情報の入力文字列」が、どのように具現化されているのか何ら特定されていない。また、「セグメント」に分ける処理も、「プロセッサ」が行うこと以外は、ハードウェア資源の利用は特定されていない。
上記b)の処理において、「意味ネットワーク」を生成する元となる「知識データベース」については、「オブジェクト、関係及び属性のタイプから成る意味単位と、上下及び水平の方向を有する類似性及び機能並びに水平の方向のみを有する属性及び役割のタイプから成り、前記意味単位の各々をリンクし、リンクされた2つの意味単位間の意味距離に応じて重みが割当てられているポインタとで構成された」、というデータ内容が特定されているのみであり、「コンピュータ・システム」に存在していること以外、「コンピュータ・システム」上のどのようなハードウェア資源を用いて具現化されているのかは何ら特定されていない。また、生成対象となる「意味ネットワーク」は、「前記セグメントに適合する前記意味単位を前記セグメントに組み合わせて、前記セグメントに適合する前記意味単位及び前記ポインタで構成された」、というデータの生成過程及びその結果であるデータの内容が特定されているのみであり、どのようなハードウェア資源を用いて具現化されているのかは何ら特定されていない。また、前記「意味ネットワーク」の生成も、前記「プロセッサ」が行うこと以外、ハードウェア資源の利用は特定されていない。
つまり、上記b)の処理では、「セグメント」と「知識データベース」を用いて「意味ネットワーク」を生成する、という処理を「プロセッサ」が行うということ以外、ハードウェア資源の利用は特定されていない。
よって、本願発明において、上記a)の処理及びb)の処理のいずれにおいても、ハードウェア資源の利用は、「プロセッサ」を用いてコンピュータ・システム上で実現していることのみであるが、ソフトウェアをプロセッサが実行することはコンピュータ・システムにおいて自明かつ必然的な事項であるから、本願発明は、ソフトウェアによる情報処理を、単にコンピュータ・システムを道具として用いることにより自動化したにすぎず、それだけでは、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。

(2)ソフトウェアによる情報処理について、
次に、ソフトウェアによる情報処理自体が、自然法則を利用した技術的思想の創作にあたるか否かについて検討する。
まず、本願発明の目的は、特許請求の範囲の請求項1の記載からして、テキスト情報から「意味ネットワークを生成する」ことであるが、この「生成」自体は、機器等に対する制御を行うものではない。また、生成される「意味ネットワーク」も、機器等を制御するためのものではないから、当該「生成」が、間接的にも機器等を制御するためになされているとは認められない。
また、「意味ネットワーク」の「生成」は、テキスト情報をセグメントに分け、該セグメントに適合する意味単位及びポインタを知識データベースから組み合わせることにより行われるものであるが、処理対象である「テキスト情報」及びその処理に用いられる「知識データベース」、並びに生成後の「意味ネットワーク」は、所定のデータ構造を有しているものの、そのデータ構造は、いずれも論理的なものであって、かつ、言語学と、言語学に基づいた人為的な取決めのみに基づいたものであって、物理的な現象を模擬したものに例示できるような、何らかの物理的な性質に基づいたものではない。発明の詳細な説明を参酌しても、「セグメント」は、「テキスト情報の入力文字列」から言語の文法に基づいて切り出されたものであるから、言語学に基づいた処理であり、「知識データベース」が、オブジェクト、関係及び属性のタイプからなる「意味単位」と、該「意味単位」をリンクする「ポインタ」とから構成されていること、該「ポインタ」が、上下及び/又は水平方向を有する種々のタイプであり、意味距離間に応じた「重み」が割り当てられていることは、言語を構成する単語を、意味を併せ持った「意味単位」として表現し、各「意味単位」の関係を、「意味単位」間の因果関係を表す「ポインタ」とその因果関係の強さを表す「重み」で表現することにより、言語をモデリングしていることに他ならないから、当該モデリングは、言語学に基づいてなされた人為的な取決めである。
また、このように構成された「セグメント」と「知識データベース」とから、所定のデータ構造を有した「意味ネットワーク」を生成することも、言語学に基づいた人為的な取決めのみに基づいたものである。
つまり、本願発明におけるソフトウェアによる情報処理自体は、自然法則を利用した技術的思想の創作にはあたらない。

本願発明は、上記(2)で示したように、自然法則を利用した技術的思想の創作にあたらない情報処理を行う方法であって、かつ、当該方法は、上記(1)で示したように、ハードウェア資源を具体的に用いて実現したものではないから、全体としてみれば、自然法則を利用した技術的思想の創作にあたらない。

4.むすび
したがって、本願発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないので、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-08 
結審通知日 2006-02-14 
審決日 2006-02-27 
出願番号 特願平11-129786
審決分類 P 1 8・ 14- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 成瀬 博之
林 毅
発明の名称 テキスト情報を処理する方法および装置  
代理人 坂口 博  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 渡部 弘道  

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