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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1139932
審判番号 不服2003-8902  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-19 
確定日 2006-07-10 
事件の表示 平成 7年特許願第188461号「携帯電話端末装置及び通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月17日出願公開、特開平 9- 18375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、及び本願発明の認定

本件出願は平成7年6月30日に出願された特許出願であり、平成15年4月17日付で拒絶査定がなされ、これを不服として平成15年5月19日に審判請求がなされたものである。
そしてその請求項1に係る発明は、平成18年3月14日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のような事項によって特定されるものと認められる。

「音声による通話機能及びメツセージ情報を伝送することが可能な付加機能を有する携帯電話端末装置において、
受信した上記音声及び上記メツセージ情報を復調すると共に上記音声及び上記メツセージ情報を送信のために変調する変復調手段と、
予め蓄えるために用意した文章パターン、及び上記変復調手段を介して復調された上記メツセージ情報を記憶する情報記憶手段と、
上記文章パターン、上記メツセージ情報及び上記付加機能の設定項目を表示する表示手段と、
上記文章パターン、上記メツセージ情報及び上記付加機能の設定項目を選択入力する入力手段と、
上記文章パターンを上記情報記憶手段から読み出して上記表示手段に表示させると共に、上記入力手段を用いて上記表示した文章パターンの中から上記メツセージ情報の編集に用いる当該文章パターンを選択入力させることにより、当該メツセージ情報を編集するように制御する制御手段とを具え、
上記制御手段は、
上記付加機能として、着信に対して電話で応答発信することを設定する機能、及び着信に対して上記編集したメツセージ情報を応答発信させる情報応答発信を設定する機能を有する
ことを特徴とする携帯電話端末装置。」

2.引用例の認定

[引用文献1]
当審における平成18年1月6日付の拒絶理由通知において引用された特開平6-244989号公報(平成6年9月2日公開、以下「引用文献1」と言う。)には、図面(図1、図2、図3、図4(A))とともに、以下の事項が記載されている。

A.「(略)・・・しかし、電子メール、計算機、アドレス帳、カレンダのようなパーソナルコンピュータ上で実行できる個人的機能を実行でき、さらに携帯電話の機能性を提供する、パーソナル通信装置の必要性はまだ存在する。」(公報第3段落)

B.「複雑な計算および通信機能を提供する携帯電話の通信機能と、パーソナルコンピュータの機能性を合わせ持つ携帯通信装置が、ここで提案される。」(公報第4段落)

C.「(略)・・・・図1に言及すると、本発明の実例となるパーソナル通信装置10の概要のブロック図が示されている。以下に詳細に記述されるように、通信装置10は単純な実施例において、他の要素と共にトランシーバ12、モデム14および中央制御装置16を含む。」(公報第7段落)

D.「中央制御装置16は、マイクロプロセッサ20、電力制御論理18、バックライト回路22、液晶ディスプレイ(LCD)24および接触オーバレイ26を含む。バックライト回路22、LCD24および接触オーバレイ26は集合的に、以下に説明されるように、仮想キーボード構成が表示されるユーザ・インタフェース35を定義する。中央制御装置16はさらに、プロセッサ20に接続する直接記憶装置(RAM)27および固定記憶装置(ROM)29を含む。・・・・(略)」(公報第10段落)

E.「通信装置10の物理的構造を記述してきたが、実施例、そのグラフィック・ユーザ・インタフェースおよびアプリケーション間の移動のためのナビゲーション・ユーティリティを、以下に詳細に説明する。・・・・(中略)・・・・複数のアプリケーションまたは実行可能ファイルが、PCMCIAカード28に保存される。ポート31にカード28を挿入すると、プロセッサ20はこれらの保存されたアプリケーションにアクセスすることができる。」(公報第14段落)

F.「本発明において、カード28に保存された各アプリケーションは異なる機能を持ち、実行の際には図3ないし図5に図示されるように異なるグラフィック・ユーザ・インタフェースを生成する。図3は、制御装置16によって電話エミュレーション・アプリケーションが実行された際に生成される、グラフィック・ユーザ・インタフェースを図示する。12デジット・キーボードは、インタフェース35上に視覚的に表示される。利用者が希望するキー上のオーバレイ26に触ると、プロセッサ20は選択されたデジットを登録し表示する。図4(A)は、制御装置16が電子メール・アプリケーションを実行した際生成される、グラフィック・ユーザ・インタフェースを図示する。ここで利用者は、表示されたオプションのいずれかを選択するためにタッチスクリーン機能を使用する。・・・・(中略)・・・・図3ないし図5に図示されたスクリーン、キーボードおよびキーパッドは仮想的であり、・・・・(略)」(公報第15段落)

以上A〜Fの記載事項と図面(図1、図2、図3、図4(A))を参照すると、引用文献1には、以下のような発明(以下「引用発明1」と呼ぶ)が記載されているものと認められる。

『液晶ディスプレイ(LCD24)、接触オーバレイ(26)、マイクロプロセッサ(20)を具備し、音声通話機能と電子メール送受信機能とを有する携帯電話端末装置。』

[引用文献2]
同じく当審における平成18年1月6日付の拒絶理由通知において引用された引用文献2(特開平5-207544号公報、平成5年8月13日公開)には、図面(図3)とともに、以下の事項が記載されている。

A.「(略)・・・・図3は無線携帯端末1の内部構成のブロック図である。」(公報第14段落)

B.「図3において、101はアンテナであり、例えば800MHz帯対応のダイバーシチアンテナである。102は送信回路であり、通信モード選択回路107により選択された音声回路112又はモデム108からのアナログ信号をFM変調、増幅し、出力する。104は受信回路であり、アンテナ101から受信した所定の周波数の信号を入力し、雑音処理、フェージング処理、増幅及びFM復調してアナログ信号を出力するとともに、受信信号の電界強度情報、雑音情報等を通信品質判定回路106に送る。・・・・(中略)・・・・107は通信モード選択回路であり、CPU116からの指示により、音声通信の場合には音声回路112、データ通信の場合にはモデム108を選択し、送信回路102及び受信回路104と接続する。108はモデムであり、データ通信モードの場合に通信モード選択回路107を介して送信回路102及び受信回路104と接続し、受信回路104からのアナログ信号のデジタル化しメモリ117へ格納すると共に、メモリ内のデジタル信号をアナログ化し送信回路102に出力する。」(公報第15段落)

以上A、Bの記載事項と図面(図3)を参照すると、引用文献2には次のような技術事項が記載されているものと認められる。

『音声とデータの両方を送受信することが可能な携帯通信装置が、音声やデータを変復調するための変復調手段(「受信回路104」および「送信回路102」のこと)を具備していること。』

[引用文献3]
同じく当審における平成18年1月6日付の拒絶理由通知において引用された引用文献3(特開平7-79248号公報、平成7年3月20日公開)には、図面(図1)とともに、次の事項が記載されている。

A.「(略)・・・・図1の(a)において、携帯機1は、電子メール端末本体2に接触あるいは非接触で接続可能であり、受信メールを表示したり、送信メールを作成したりなどするものであって、表示パネル10、受信メモリ11、文書ファイル12、受信管理テーブル13、表示処理部14、および入力処理部15などから構成されるものである。」(公報第16段落)

B.「表示パネル10は、各種データを表示するものであって、ここでは、受信メモリ11に格納された受信メールを表示したり、入力機構から入力された文字などを表示して文書を作成したりなどするためのものである。」(公報第17段落)

C.「受信メモリ11は、携帯機1を電子メール端末本体2に接続したときに、当該電子メール端末本体2がセンタ3から回線を介して受信した受信メールを格納するものである。」(公報第18段落)

以上A〜Cの記載事項と図面(図1)を参照すると、引用文献3には次のような技術事項が記載されているものと認められる。

『電子メール(本願発明の「メッセージ情報」に相当)を表示・送信する機能を備えた携帯端末装置が、過去に受信したメールの情報(本願発明の「上記変復調手段を介して復調された上記メツセージ情報」に相当)を格納する情報記憶装置(「受信メモリ11」)を具備していること。』

[引用文献4]
同じく当審における平成18年1月6日付の拒絶理由通知において引用された引用文献4(特開昭62-242270号公報、昭和62年10月22日公開)には、図面(第1図)とともに、次の事項が記載されている。

A.「第1図において、100はワードプロセッサ本体であり、101は定型文およびタイトルを記憶しておく、例えば、リードオンリメモリのような定型文記憶手段である。」(公報第2頁左下欄第14行〜第17行)

B.「103は、例えばキーボードのような入力手段であり、文章を作成する際に、入力手段103からの入力指示により、第1の表示制御手段104は定型文記憶手段101に格納されているタイトルを表示手段105に表示させ、次に入力手段103からの入力指示により指示されたタイトルに対応する定型文を表示手段105に表示させる。
さらに、入力手段103の入力指示により、挿入手段106はこの定型文を作成していた文章の所定の位置に挿入し、挿入された文章は、記憶制御手段107により、記憶手段102に格納されるとともに、第2の表示制御手段108により、表示手段105に表示される」(公報第2頁左下欄第20行〜同頁右下欄第12行)

C.「次に、内蔵定型文を使用して文章を作成する場合のワードプロセッサ本体8の操作手順について説明する。・・・・(中略)・・・・・をキーボード6から入力すれば、第4図(F)のように文章が完成する。」(公報第3頁右上欄第17行〜同頁右下欄第16行)

D.「以上説明したように、本発明によれば、・・・・(中略)・・・・文章作成および編集作業の効率を高めることができるという効果が得られる。」(公報第4頁左下欄第11行〜第15行)

以上A〜Dの記載事項と図面(第1図)を参照すると、引用文献4には次のような周知技術が記載されているものと認められる。

『文書(本願発明の「メッセージ情報」に相当)を作成する装置において、文章作成の効率を高めるため、予め用意した定型文を用いて文章を作成する機能を設けること、および、その機能を実現させるため、定型文(本願発明の「予め蓄えるために用意した文章パターン」に相当)を格納した情報記憶手段を設け、この記憶手段から読み出した定型文を表示手段に表示させ、こうして表示された複数の定型文の中から、入力手段を用いて所望の定型文を選択させ、このようにして選択された定型文を用いて文書を編集する、という一連の操作を実行すること。』

[引用文献5]
同じく当審における平成18年1月6日付の拒絶理由通知において引用された引用文献5(特開平6-6384号公報、平成6年1月14日公開)には、図面(図3)とともに、以下の事項が記載されている。

A.「受信している電子メールの内、ユーザが所望する電子メールを表示装置に表示している場合、例えば電話を要求する操作に対応するファンクションキー入力がユーザによってなされると、データベース手段を用いて電話をする対象である、電子メールの発信人名及び関連配布先の名称を含む相手先情報の一覧表を作成して表示装置に表示する手段によって、開封している電子メールの発信人、その他の関連配布先等をサーチして、相手先の一覧表が表示される。そして、キー操作等によってユーザが相手先を選択すると自動的に電話がかかる。」(公報第12段落)

B.「(略)・・・・電子メールが開封された場合の表示画面の一例を図3に示す。」(公報第26段落)

C.「また、電子メールの下部には、ファンクションキーに割り当てられている、実行内容が表示されているファンクションキー表示部23が設けられている。」(公報第28段落)

D.「そこで、ユーザが電子メール本文を読んで電話をしたい場合、ユーザは図3に示す電子メール開封の状態で電話の指定を行うことができる。指定の方法は、ファンクションキー表示部23の“電話”に対応するファンクションキーを押すことによってなされる。・・・・(略)」(公報第32段落)
E.「相手が限定されれば、個人情報データベースを自動的に検索し、電話番号を得る。電話番号がわかれば、公知の方法でモデムを使ってダイアルを自動的に行うことができる。」(公報第36段落)

以上A〜Eの記載事項と図面(図3)を参照すると、引用文献5には次のような周知技術が記載されているものと認められる。

『電子メール(本願発明の「メッセージ情報」に相当)の送受信システムにおいて、電子メールの着信に対して電話で応答発信する機能を含む、幾つかの付加機能を用意すること、ならびに、これら複数の付加機能に対応するファンクションキー(本願発明の「付加機能の設定項目」に相当)を表示手段に表示させ、そのうちの1つを入力手段を用いてユーザーに選択させることによって、所望の付加機能を起動させること。』

[引用文献6]
引用文献6(特開平5-2539号公報、平成5年1月8日公開)には、図面(図1)とともに、次の事項が記載されている。

A.「受信簿5は、受信したメールの情報を保存するものである。ディスプレイ6は、初期値として過去に発信あるいは受信したメールの情報を表示して編集などするものである。」(公報第6段落)

B.「本発明は、図1に示すように、メール発信時に、発信簿4および受信簿5から過去に発信および受信したメール一覧をディスプレイ6上に表示し、このディスプレイ6上に表示されたメールの一覧からいずれかが選択されたことに対応してこの選択されたメール情報を表示し、この表示したメール情報について上書きなどして編集され、発信指示されたことに対応して、この編集されたメール情報をもとに新たなメールを作成して発信簿4に格納すると共にこのメールを宛先に発信するようにしている。」(公報第7段落)

C.「従って、発信簿4および受信簿5から選択した情報を初期値として編集してメールを作成・発信することにより、発信簿4、受信簿5に保存されている情報の再利用を図り、電子メールを発信する際の情報を入力する手間を大幅に軽減することが可能となる。」(公報第8段落)

以上A〜Cの記載事項と図面(図1)を参照すると、引用文献6には次のような周知技術が記載されているものと認められる。

『電子メール(本願発明の「メッセージ情報」に相当)の送受信システムにおいて、メール作成の手間を軽減するために、過去の受信メールの情報に編集を加えて新たな送信メールを作成する機能を設けること、および、この機能を実現させるために、情報記憶手段(受信簿)に格納された過去の受信メールの情報(本願発明の「上記変復調手段を介して復調された上記メツセージ情報」に相当)を読み出して表示手段(ディスプレイ6)に表示させ、こうして表示された複数の受信メール情報の中から入力手段(引用文献6には明記されていないが、所望のメールを選択するために何らかの入力手段が用いられていることは明らかである。)を用いて所望の受信メール情報をユーザーに選択させ、さらに、このようにして選択された受信メール情報に対して編集を施す、という一連の操作を実行すること。』

[引用文献7]
引用文献7(特開平5-68053号公報、平成5年3月19日公開)には、図面(図1、図2、図4)とともに、以下の事項が記載されている。
A.「一方、端末装置TRMにおいて、操作者がメール受信コマンドを入力すると、入力部1で受け付けられ、処理部2によりコマンド内容が解析されて、メール端末制御部8が起動される。メール端末制御部8では、入力内容に基づいてメール受信手段RCVが起動され、図4(a)のようなメール受信用操作画面により受信メールの一覧が表示されて、操作者にメール情報の選択を促す。操作者が受信メールを選択すると、選択された受信メール情報の取り出し要求が、通信制御部7によりネットワークを通じてメール蓄積交換装置MNGに送信される。メール蓄積交換装置MNGでは、通信制御部17がその要求を受信すると、メール蓄積交換制御部18の要求解析手段ANLが起動され、その要求内容を解析し、要求されたメール情報を取り出すためにメール情報取出・送信手段TAKが起動される。メール情報取出・送信手段TAKでは、通信制御部17を通して要求されたメール情報を同図の外部記憶部14を通して外部記憶装置から取り出し、再び、通信制御部17を通じて、要求元の端末装置TRMに送り出す。端末装置TRMでは通信制御部7を通じてメール情報を入手できたならば、メール端末制御部8のメール受信手段RCVにおいて、図4(b)又は(d)のようにメール情報の内容が表示される。」(公報第25段落)

B.「通常のメール情報についても、同図(b)の画面において、編集を指定することにより、メール作成・編集手段EDTが起動され、図4(c)のような画面が表示され、メール情報の編集が可能となる。これらの操作終了後、再び、メールの発信元へ受信メールを返信したい場合には、操作者が同図(c)又は(d)で終了を選択した後に表示される同図(e)のメール送信画面において、送信開始を選択することにより、メール送信手段SNDが起動され、メール送信の場合と同様に通信制御部7を通して、メール情報がメール蓄積交換装置MNGに送信される。」(公報第5頁右欄第35行〜第45行)

以上A、Bの記載事項と図面(図1、図2、図4)を参照すると、引用文献7には次のような周知技術が記載されているものと認められる。

『電子メール(本願発明の「メッセージ情報」に相当)の送受信システムにおいて、着信した電子メールの内容に編集を加え応答発信を行う機能を設けること。』
(図4を参照されたい。受信メールの内容が表示される図4bの状態において、ユーザーが「編集」を選択すると、図4cで図示されたメール編集画面に移行し、このメール編集画面上にて受信メールの内容に編集が施され送信メールが作成される。そして図4eのメール送信画面に移行し、ユーザーが「送信開始」を選択するとこの送信メールが返信される。したがって、“着信した電子メールの内容に編集を加え応答発信を行う”技術が、引用文献7に記載されていると言うことができる。)


3.本願請求項1発明と引用例記載の発明との対比

引用発明1における、「液晶ディスプレイ」、「接触オーバレイ」、「マイクロプロセッサ」、「電子メール」の各構成要素は、本願発明における、「表示手段」、「入力手段」、「制御手段」、「メッセージ情報」の各構成要素にそれぞれ相当するものであると認められる。

したがって、本願請求項1に係る発明と引用発明1とは、

『表示手段と入力手段と制御手段とを具備するとともに、音声通話機能とメッセージ情報送受信機能とを有する携帯電話端末装置』

である点で共通し、以下の各点で相違するものと認められる。

(相違点1)
本願請求項1に係る発明は、「受信した上記音声及び上記メツセージ情報を復調すると共に上記音声及び上記メツセージ情報を送信のために変調する変復調手段」を具備しているのに対し、引用文献1には、引用発明1がこのような「変復調手段」を具備しているとは記載されていない点。

(相違点2)
本願請求項1に係る発明には、「予め蓄えるために用意した文章パターン」(以下、略して「文章パターン」と呼ぶ。)や「上記変復調手段を介して復調された上記メツセージ情報」(以下、略して『復調メッセージ情報』と呼ぶ。)を記憶する「情報記憶手段」が設けられているのに対し、引用文献1には、引用発明1がこのような(「文章パターン」や「上記変復調手段を介して復調された上記メツセージ情報」を格納するような)記憶手段が設けられているとは、記載されていない点。

(相違点3)
本願請求項1に係る発明の「表示手段」は、「文章パターン」と『復調メッセージ情報』と「付加機能の設定項目」を表示するものであるのに対し、引用文献1には、引用発明1が具備する表示手段(液晶ディスプレイLCD24)がこれらに相当するものを表示するとは記載されていない点。

(相違点4)
本願請求項1に係る発明の「入力手段」は、「文章パターン」と『復調メッセージ情報』と「付加機能の設定項目」を選択入力するために用いられるのに対し、引用文献1には、引用発明1が具備する入力手段(接触オーバレイ26)が、これらに相当するものを選択する役割を持っているとは記載されていない点。

(相違点5)
本願請求項1に係る発明は、「上記文章パターンを上記情報記憶手段から読み出して上記表示手段に表示させると共に、上記入力手段を用いて上記表示した文章パターンの中から上記メツセージ情報の編集に用いる当該文章パターンを選択入力させることにより、当該メツセージ情報を編集する」という機能が設けられており、かつ、この機能が「制御手段」の制御によって実現されるのに対し、引用文献1には、引用発明1がこのような機能を持っているとは記載されていない点。

(相違点6)
本願請求項1に係る発明は、「付加機能」として、「着信に対して電話で応答発信することを設定する機能」と「着信に対して上記編集したメツセージ情報を応答発信させる情報応答発信を設定する機能」を備えているのに対し、引用文献1には、引用発明1がこれらの機能に相当するものを持っているとは記載されていない点。

4.相違点の判断
上記6つの相違点について以下に検討する。

(相違点1について)
引用文献2には前記したごとく、音声とデータの両方を送受信することが可能な携帯通信装置が、音声やデータを変復調するための変復調手段を具備していることが記載されている。
この記載からみて、引用文献1に記載されているような、通話機能と電子メール送受信機能とを有する携帯電話端末装置が、音声信号と電子メール情報を変復調するための変復調手段を具備していることは技術常識であったと認められる。
したがって、引用文献1には明記されていないが、引用発明1の携帯電話端末装置もまた、本願請求項1に係る発明と同様、音声信号や電子メール情報を変復調する変復調手段を具備していることは明らかである。

(相違点2について)
引用文献3には前記したごとく、メッセージ情報を表示・送信する機能を備えた携帯端末装置が、過去に受信したメールの情報(すなわち、『復調メッセージ情報』)を記憶するための情報記憶手段を具備している点が記載されており、この記載からみて、引用文献1に記載されているような電子メール送受信機能を有する携帯電話端末装置が、『復調メッセージ情報』を記憶するための情報記憶手段を具備していることは技術常識であったと認められる。
したがって、引用文献1には明記されていないものの、引用発明1が、『復調メッセージ情報』を記憶するための情報記憶手段を具備していることは明らかである。
また、引用文献4にも記載されているように、文書(本願発明の「メッセージ情報」に相当)を作成する装置において、文章作成の効率を高めるため、予め用意した定型文を用いて文章を作成する機能を設けること、および、その機能を実現するため、定型文(本願発明の「文章パターン」に相当)を格納した情報記憶手段を設け、この記憶手段から読み出した定型文を表示手段に表示させ、こうして表示された複数の定型文の中から、入力手段を用いて所望の定型文を選択させ、このようにして選択された定型文を用いて文書を編集する、という一連の操作を実行することは周知技術である。
引用発明1と引用文献4に記載された周知技術との関連性からみて(引用文献1の図4(A)を参照すれば明らかなように、引用発明1の携帯端末は、電子メールの内容を作成する機能を持っている。引用文献4に記載された文書作成装置もまた、「文書」というメッセージ情報を作成するものと言えるから、両者はメッセージ情報を作成する機能を持った装置に関する技術であるという点で共通している。)、引用発明1に引用文献4に記載された周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、定型文を用いてメッセージ情報を編集する機能を実現するため、「文章パターン」を格納した情報記憶手段を設けること)は、当業者であれば容易であったものと認められる。
なお、復調メッセージ情報を記憶するための情報記憶手段と、文章パターンを格納する情報記憶手段とを、別々に設けるのではなく、1個の情報記憶手段に復調メッセージ情報と文章パターンの両方を記憶させるようにすることは、当業者にとって適宜なし得る設計的事項に過ぎないと認められる。

(相違点3について)
前述したごとく引用文献4に記載されているように、文書(本願発明の「メッセージ情報」に相当)を作成する装置において、文章作成の効率を高めるため、予め用意した定型文を用いて文章を作成する機能を設けること、および、その機能を実現させるため、定型文(本願発明の「文章パターン」に相当)を格納した情報記憶手段を設け、この記憶手段から読み出した定型文(「文章パターン」)を表示手段に表示させ、こうして表示された複数の定型文の中から、入力手段を用いて所望の定型文を選択させ、このようにして選択された定型文を用いて文書を編集する、という一連の操作を実行することは周知技術である。
引用発明1において引用文献4に記載されたこの周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、定型文を用いてメッセージ情報を編集する機能を実現するため、記憶手段から読み出した「文章パターン」を表示手段に表示させること)に、格別な困難性は認められない。
また、これも前述したごとく、引用文献6にも記載されているように、電子メール(本願発明の「メッセージ情報」に相当)の送受信システムにおいて、メール作成の手間を軽減するために、過去の受信メールの情報に編集を加えて新たな送信メールを作成する機能を設けること、および、この機能を実現させるため、情報記憶手段に格納された過去の受信メールの情報(本願発明の『復調メツセージ情報』に相当)を読み出して表示手段に表示させ、こうして表示された複数受信メール情報の中から入力手段を用いて所望の受信メール情報をユーザーに選択させ、さらに、このようにして選択された受信メール情報に編集を施す、という一連の操作を実行することは周知技術である。
引用発明1において引用文献6に記載されたこの周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、過去の受信メールの情報に編集を加えて新たな送信メールを作成する機能を実現するために、情報記憶手段から読み出した『復調メッセージ情報』を表示手段に表示させること)に、格別な困難性は認められない。
また、前述したごとく、引用文献5にも記載されているように、電子メールの送受信システムにおいて、電子メールの着信に対して電話で応答発信する機能を含む、幾つかの付加機能を用意すること、ならびに、これら複数の付加機能に対応するファンクションキー(本願発明の「付加機能の設定項目」に相当)を表示手段に表示させることは、周知技術である。
引用発明1において引用文献5に記載されたこの周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、複数の付加機能のいずれかを選んで起動させるため、これら付加機能に対応した「複数の設定項目」を表示手段に表示させること)に、格別な困難性は認められない。

(相違点4について)
引用文献4には前述したように、文書(本願発明の「メッセージ情報」に相当)を作成する装置において、文章作成の効率を高めるため、予め用意した定型文を用いて文章を作成する機能を設けること、および、その機能を実現させるため、定型文(本願発明の「文章パターン」に相当)を格納した情報記憶手段を設け、この記憶手段から読み出した定型文を表示手段に表示させ、こうして表示された複数の定型文の中から、入力手段を用いて所望の定型文を選択させ、このようにして選択された定型文を用いて文書を編集する、という一連の操作を実行することは周知技術である。
引用発明1において引用文献4に記載されたこの周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、定型文を用いてメッセージ情報を編集する機能を実現するため、表示手段に表示された複数の文章パターンの中から、入力手段を用いて所望の文章パターンをユーザーに選択させること)に、格別な困難性は認められない。
また、これも前述したごとく、引用文献6にも記載されているように、電子メール(本願発明の「メッセージ情報」に相当)の送受信システムにおいて、メール作成の手間を軽減するために、過去の受信メールの情報に編集を加えて新たな送信メールを作成する機能を設けること、および、この機能を実現させるため、情報記憶手段に格納された過去の受信メールの情報(本願発明の『復調メツセージ情報』に相当)を読み出して表示手段に表示させ、こうして表示された複数受信メール情報の中から入力手段を用いて所望の受信メール情報をユーザーに選択させ、さらに、このようにして選択された受信メール情報に編集を施す、という一連の操作を実行することは周知技術である。
引用発明1において引用文献6に記載されたこの周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、過去の受信メールの情報に編集を加えて新たな送信メールを作成する機能を実現するために、表示手段に表示された複数の『復調メッセージ情報』の中から、入力手段を用いて所望の『復調メッセージ情報』をユーザーに選択させること)に、格別な困難性は認められない。
また、引用文献5には前記したように、電子メールの送受信システムにおいて、電子メールの着信に対して電話で応答発信する機能を含む、幾つかの付加機能を用意すること、ならびに、これら複数の付加機能に対応するファンクションキー(本願発明の「付加機能の設定項目」に相当)を表示手段に表示させ、そのうちの1つを入力手段を用いてユーザーに選択させることによって、所望の付加機能を起動させること、が記載されている。
引用発明1において引用文献5に記載されたこの周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、複数の付加機能のいずれかを選んで起動させるため、これら付加機能に対応した「複数の設定項目」を表示手段に表示させ、そしてそのうちの1つを入力手段を用いてユーザーに選択させること)に、格別な困難性は認められない。

(相違点5について)
前述したごとく、引用文献4にも記載されているように、文書(本願発明の「メッセージ情報」に相当)を作成する装置において、文章作成の効率を高めるため、予め用意した定型文を用いて文章を作成する機能を設けること、および、その機能を実現させるため、定型文(本願発明の「文章パターン」に相当)を格納した情報記憶手段を設け、この記憶手段から読み出した定型文を表示手段に表示させ、こうして表示された複数の定型文の中から、入力手段を用いて所望の定型文を選択させ、このようにして選択された定型文を用いて文書を編集する、という一連の操作を実行することは、周知技術である。
そして、引用発明1に引用文献4に記載されたこの周知技術を適用することに、格別な困難性は認められない。
なお、引用文献4に記載された上記一連の操作を実行するには、情報記憶手段や表示手段や入力手段などを統合的に制御する必要があるが、その制御を引用発明1が具備する制御手段(マイクロプロセッサ20)に行わせることは設計的事項であると認められる。

(相違点6について)
引用文献5には前述したように、メッセージ情報の送受信システムにおいて、メッセージ情報の着信に対して電話で応答発信する機能を設ける技術が記載されている。
また、引用文献7には、メッセージ情報の送受信システムにおいて、メッセージ情報の着信に対し、編集されたメッセージ情報を応答発信する機能を設ける技術が記載されている。
引用発明1と引用文献5、7に記載された各周知技術との技術的関連性を考慮すれば(いずれも、メッセージ情報の送受信に関わる技術である。)、引用発明1に引用文献5、7に記載された各周知技術を適用すること(すなわち、引用発明1において、メッセージ情報の着信に対して電話で応答発信するという付加機能と、メッセージ情報の着信に対し編集されたメッセージ情報を応答発信する付加機能とを設けること)は、当業者であれば容易であったものと認められる。

以上の検討結果により、本願請求項1に係る発明は、引用発明1と、引用文献2〜7に記載された各周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。


5.結び
上記したとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2〜7に記載された各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-10 
結審通知日 2006-05-12 
審決日 2006-05-25 
出願番号 特願平7-188461
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 溝本 安展  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 長島 孝志
彦田 克文
発明の名称 携帯電話端末装置及び通信方法  
代理人 田辺 恵基  

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