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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01F |
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管理番号 | 1139969 |
審判番号 | 不服2003-11084 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-07-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-17 |
確定日 | 2006-07-13 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第156071号「α-アルミナの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 7月12日出願公開、特開平 6-191835〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年6月1日(国内優先主張平成4年6月2日および平成4年10月28日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年7月17日付け補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりものと認める(以下、「本願発明」という)。 「遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩化水素ガスを5体積%以上含有する雰囲気ガス中にて、600℃以上で焼成することを特徴とするα-アルミナの製造方法。」 2.引用例および記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-303809号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「(1)平均二次粒子径5μm以下の水酸化アルミニウム及び/または遷移アルミナを水溶液中に分散したスラリ-を・・・該スラリ-を噴霧乾燥し、得られた乾燥粉末を焼成することを特徴とする粒度分布の狭いアルミナ粉末の製造方法。 (2)・・・ (3)噴霧乾燥により得られた乾燥粉末を塩素含有物質の存在下に焼成することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の製造方法。」(特許請求の範囲) (イ)「本発明方法に於いては、水酸化アルミニウムの焼成は塩素含有物質の存在下で実施することが推奨される。塩素含有物質としては焼成時塩素または塩化水素を発生するものであれば、特にその種類は制限されるものではないが、通常、塩酸、塩素ガス、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム 、塩化カルシウム等の塩素化合物更には塩素含有高分子化合物等が使用される。」(第3頁左下欄第4〜12行) (ウ)「通常1000℃以上、好ましくは1100〜1500℃の温度範囲で焼成される」(第4頁右上欄第20行〜同頁左下欄第1行) (オ)「塩素含有物質存在下に焼成せしめたものにあっては、粒度分布がシャープで粒子アスペクト比が小さいアルミナが得られる。」(第4頁右下欄第2〜5行) (カ)「また、塩素含有物質が存在する場合には、焼成時原料アルミナのC軸方向の粒成長を促進し、結果として粒子アスペクト比が小さく、個々の粒子が均一で粒度分布のシャープなα晶アルミナが得られるものと推測される。」(第5頁左上欄第1〜6行) (キ)「本発明方法によって、αアルミナを製造する」(第5頁左上欄第8〜9行) 3.対比 引用刊行物1には、適示事項(ア)から「遷移アルミナ」を「塩素含有物質の存在下に焼成することを特徴とする粒度分布の狭いアルミナ粉末の製造方法」が、適示事項(イ)の「塩素含有物質としては焼成時塩素または塩化水素を発生させるものであれば、特にその種類は制限されるものではないが、通常、塩酸、塩素ガス、塩化アンモニウム・・・使用される」であるから、「塩素含有物質の存在下」は「焼成時に塩素または塩化水素を発生させる塩酸、塩素ガス、塩化アンモニウム」であると云える。また、適示事項(ウ)から「焼成温度」は「1000℃以上」であり、適示事項(ア)の「アルミナ粉末の製造方法」は、適示事項(キ)から「αアルミナの製造方法」が記載されていると云える。 これらを本願発明の記載振りに則して表すと、引用刊行物1には「遷移アルミナを焼成時に塩素または塩化水素を発生させる塩酸、塩素ガスまたは塩化アンモニウムの存在下、1000℃以上で焼成してなるαアルミナの製造方法」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されていると云える。 ここで、本願発明と引用1発明とを対比すると、引用1発明の「遷移アルミナ」、「焼成」、「αアルミナの製造方法」は、それぞれ本願発明の「遷移アルミナ」、「焼成」、「α-アルミナの製造方法」に相当する。また、引用1発明の「1000℃以上で焼成」は、本願発明の「600℃以上で焼成」の範囲に含まれる。さらに本願発明の「塩化水素ガス」として、本願明細書中で「塩化アンモニウムの分解ガスを用い」(【0037】欄参照)ており、これは引用1発明の「焼成時」に「塩化水素を発生させる」ものとしてあげられている「塩化アンモニウム」に相当する。 したがって、両者は「遷移アルミナを塩化水素ガスを含有する雰囲気ガス中で1000℃以上で焼成することを特徴とするα-アルミナの製造方法」で一致し、以下の点で相違する。 相違点a:本願発明は「塩化水素ガスを5体積%以上含有する雰囲気ガス中」で焼成するのに対し、引用1発明は、塩化水素ガスの割合について記載がない点で相違する。 4.当審の判断 そこで、上記相違点aについて検討する。 (a)相違点aについて 引用刊行物1の適示事項(カ)の「塩素含有物質が存在する場合には、焼成時原料アルミナのC軸方向の粒成長を促進し、結果として粒子アスペクト比が小さく、個々の粒子が均一で粒度分布のシャープなα晶アルミナが得られる」という記載からみて、C軸方向の粒成長を促進し、アスペクト比が小さく粒度分布がシャープなα-アルミナを得るためには、焼成時に一定量以上の塩化水素ガスが必要であるから、本願発明は、微細で均一な、粒度分布が狭く且つD/H比が0.5以上3.0以下(但し、D:六方最密格子であるα-アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径、H:六方格子面に垂直な粒子径)であるα-アルミナを得るために、焼成雰囲気における塩化水素ガスの割合の実験値の中から下限値を単に選定したにすぎす、当業者であれば容易になしうるものである。また、これによる効果も予測できる範囲内のものである。 さらに、請求人は、平成15年9月4日付の審判請求書とともに実験成績証明書を提出して、該証明書には、塩化水素が1%と5%の雰囲気では、α-アルミナの結晶構造が大きく異なり、5%は臨界的意義を有する旨主張しているが、該証明書の実験例1は、本願明細書の実施例5と異なる条件(保持時間)によるもので、しかも、本願明細書には、両者の間において結晶構造に差がないことを示すデータ(表2における実施例4と実施例5)しか示されていないから、上記主張は採用することができない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-11 |
結審通知日 | 2006-05-16 |
審決日 | 2006-05-29 |
出願番号 | 特願平5-156071 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 雅博 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
松本 貢 廣野 知子 |
発明の名称 | α-アルミナの製造方法 |
代理人 | 中山 亨 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 榎本 雅之 |