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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1139986
審判番号 不服2003-22488  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-20 
確定日 2006-07-13 
事件の表示 特願2000-295371「遠隔操作システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-112354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年9月28日の出願であって、平成15年10月17日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成15年11月20日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成15年11月20日付けの手続補正について
[結論]
平成15年11月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1、及び請求項2に記載された発明を、
「【請求項1】車両に装着した監視装置の設定・解除を遠隔操作するための制御信号を重畳した電波の発信が可能なリモコンと、
前記監視装置の設定・解除を遠隔操作するための制御信号を重畳した、前記電波と周波数が異なる電磁波の発信が可能なキーリモコンと、
前記電磁波を受信して前記制御信号を復調する機器側受信部を有し、この復調された制御信号に基づいて、前記監視装置を作動状態または停止状態にする機器側装置と、
前記電波を受信して前記制御信号を復調する受信部と、この復調された制御信号を重畳し前記電磁波として前記機器側装置へ発信する送信部とを有し、車庫または車室内に配される中継装置とを備え、
前記車両との距離が遠い場合には、前記リモコンを用いて前記監視装置を遠隔操作し、 前記車両との距離が近い場合や、前記リモコンまたは前記中継装置が壊れた場合には、前記キーリモコンを用いて遠隔操作することを特徴とする遠隔操作システム。

【請求項2】車両に装着した監視装置の設定・解除を遠隔操作するためのコマンド信号を重畳した第1の電波の発信および後述する第2の電波から制御結果を示すアンサー信号の復調が可能であり、設定結果や解除結果を確認するためのランプを設けたリモコンと、
前記第1の電波を受信して前記コマンド信号を復調する第1の受信部、この復調されたコマンド信号を重畳するとともに、前記第1の電波と周波数が異なる第3の電波として後述する機器側装置へ発信する第1の送信部を有する第1の送受信部と、後述する第4の電波を受信して前記アンサー信号を復調する第2の受信部、この復調されたアンサー信号を重畳するとともに、前記第4の電波と周波数が異なる前記第2の電波として前記リモコンへ発信する第2の送信部を有する第2の送受信部とを備え、車内または車庫に設置される中継装置と、
前記第3の電波から前記コマンド信号を復調する機器側受信部、およびこの復調されたコマンド信号に基づいて、前記監視装置を作動状態または停止状態にするとともに、この制御結果を示す前記アンサー信号を重畳して前記第4の電波として前記中継装置へ発信する機器側送信部を有する機器側装置とを具備することを特徴とする遠隔操作システム。」
という発明(以下、各々「補正後の発明1」、「補正後の発明2」という。)に、各々変更することを含むものである(アンダーラインは補正箇所を示す。)。

2.補正の適否

(2-1)新規事項の有無、補正の目的要件について
(請求項1に係る補正について)
請求項1に係る補正は、「前記リモコンまたは前記中継装置が壊れた場合には、」の要件を付加する補正を含むものであるところ、当該補正は、請求項1に記載された発明特定事項(「前記車両との距離が近い場合」)に対し、択一的に発明特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当しない。更に当該補正は、請求項の削除、誤記の訂正、及び、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明、のいずれの目的にも該当しないから、請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合していない。

(請求項2に係る補正について)
請求項2に係る補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、発明を特定するために必要な事項である(a)「車両に装着した自動車の監視装置」を「車両に装着した監視装置」と補正し、(b)同「電磁波」を「電波」と補正し、(c)同「車内や車庫等の車外に設置される中継装置」を「車内または車庫に設置される中継装置」と補正し、(d)同「・・・アンサー信号の復調が可能なリモコン」を「・・・アンサー信号の復調が可能であり、設定結果や解除結果を確認するためのランプを設けたリモコン」とそれぞれ補正するものである。
前記補正のうち、補正事項(a)は表現を変えただけで、実質的に構成内容を変更するものではなく、補正事項(b)は「電磁波」を「電波」に限定し、補正事項(c)は「車内や車庫等の車外に」を「車内または車庫に」に限定し、補正事項(d)は「リモコン」を特定するため「設定結果や解除結果を確認するためのランプを設け」との限定を付加することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、これらの補正事項(a)〜(d)は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合する。

(2-2)独立特許要件について
上記請求項2に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、当該補正後の請求項2に記載された事項からなる発明(「補正後の発明2」)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する。

(2-2-1)補正後の発明2
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(2-2-2)引用例、及び周知例
A.原査定の拒絶理由に引用された本願の出願の日前である昭和56年8月24日に頒布された特開昭56-106441号公報(以下、「引用例」という。)には、「遠方監視制御装置」の発明に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

「この発明は、無線通信を用い遠方にある機器の監視制御を行う遠方監視制御装置に関するものである。
従来この種の装置として第1図に示すものがあった。図において、(1)は制御局Aに設置された監視制御装置,(21)〜(24)は無線送信器,(31)〜(34)は無線受信器であり、送信器と受信器の下1桁が一致しているものは、同一周波数の送信器と受信器を示す。(4)はハイブリツトコイル,(5)は被制御局Bに設置された監視制御装置,(6)は送受信アンテナを示す。
又、(211)は制御局Aからの制御信号,(212)は中継局Cの制御受信及び制御送信信号,(213)は被制御局Bの制御受信信号,(311)は状態表示信号,(312)は中継局Cの状態表示受信及び送信信号,(313)は制御局Aの状態表示受信信号を示す。
制御局Aの監視制御装置(1)からの制御信号(211)は無線送信器(21)により無線周波に変調され、アンテナ(6)により中継局Cに送られ無線受信器(31)で複調され、無線送信器(22)で又無線周波に変調され、アンテナ(6)により、被制御局Bに送られ無線受信器(32)で複調され監視制御装置(5)に制御信号(213)を伝える。
又、被制御局Bの監視制御措置(5)からの機器の状態表示信号(311)は無線送信器(23)により無線周波に変調され、アンテナ(6)により中継局Cに送られ無線受信器(33)で複調され、無線送信器(24)で又無線周波に変調され、アンテナ(6)により制御局Aに送られ無線受信器(34)で複調され、制御局Aの監視制御装置(1)に状態表示信号(313)を伝える。
なお以上の各信号のタイミング図を第2図に示す。
従来この種の遠方監視制御装置は、以上のように構成されているので、無線送信器が制御局1台、中継局2台、被制御局1台、無線受信器が制御局1台、中継局2台、被制御局1台必要であり無線周波も4波又は2波必要であった。」(1頁左下欄10行〜2頁左上欄6行)。

上記引用例の記載、及びこの分野の技術常識によれば、引用例には、
「被制御局Bにおける監視制御装置を遠隔操作するための制御信号を重畳した第1の電波の発信および後述する第2の電波から制御結果を示す状態表示信号の復調が可能である制御局Aと、
前記第1の電波を受信して前記制御信号を復調する無線受信器31、この復調された制御信号を重畳するとともに、前記第1の電波と周波数が異なる第3の電波として後述する被制御局Bの無線受信器へ発信する無線送信器22を有する送受信部と、後述する第4の電波を受信して前記状態表示信号を復調する無線受信器33、この復調された状態表示信号を重畳するとともに、前記第4の電波と周波数が異なる前記第2の電波として前記制御局Aへ発信する無線送信器24を有する送受信部とを備える中継局Cと、
前記第3の電波から前記制御信号を復調する被制御局B側の無線受信器32、およびこの復調された制御信号に基づいて、被制御局B側監視制御装置を制御するとともに、この制御結果を示す前記状態表示信号を重畳して前記第4の電波として前記中継局Cへ発信する被制御局B側の無線送信器23を有する被制御局Bとを具備することを特徴とする遠方監視制御装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。(なお、「同一周波数でない4波(又は2波)が必要であった」とされる複数の電波を識別するため、無線周波に番号付けをしたが、その番号「第1」ないし「第4」は、本願補正発明に合わせた。また、「複調」は「復調」に読み変えた。)

B.また、周知例として提示する、本願の出願の日前である平成10年1月16日に頒布された特開平10-11669号公報(以下、「周知例1」という。)には、「車両盗難防止装置」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】図22は、従来から車載用セキュリテイ装置として採用されている車両盗難防止装置41の電気的構成の概要を示す。車両盗難防止装置41は、キーレスエントリ用として、遠隔的にドアの解錠が可能なマスターキー42と、車両に搭載される盗難防止装置43とを含む。盗難防止装置43は、予め設定されるプログラムに従って動作するコンピュータ制御装置であり、盗難防止のための警報出力として、ホーン44aの吹鳴や、ランプ44bのフラッシャを行うことが可能である。また、車両の走行機能を停止されるため、エンジンコントロール45として、スタータの駆動や燃料噴射のための回路を遮断し、エンジンの始動を停止する。盗難防止装置43に設けられるアンテナ46には、マスターキー42に設けられる押しボタン状などのスイッチ(以下、「SW」と略称することもある。)から、車両の盗難を防止するための機能である警備機能を能動化して能動状態にするアーミング用の警備指令、または能動状態を不能動化して不能動状態にするディスアーミング用の警備解除指令を受信する。」(第3頁第3欄)。

上記周知例1及びこの分野の技術常識によれば、上記周知例1には「リモコン(周知例1の「マスターキー42」)から発信された設定・解除を示すコマンド信号(周知例1の「アーミング用の警備指令」・「ディスアーミング用の警備解除指令」)に基づいて、車両に装着した監視装置(周知例1の「盗難防止装置」)を作動状態または作動停止状態に制御する」技術が開示されているが、当該技術は当該周知例1のほか、例えば実願平5-8488号(実開平6-67225号)のCD-ROM(以下、「周知例2」という。)に開示されているように、周知のものと認められる。

C.また、周知例として提示する、本願の出願の日前である平成10年12月15日に頒布された特開平10-331496号公報(以下、「周知例3」という。)には、「キーレスエントリー装置」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は主に自動車に用いられるキーレスエントリー装置に関するものである」(第2頁第1欄)、
b)「【0022】図2、図3は、受信器3をルームミラー部近辺に取付け、中継器20をリアのダッシュボードに設置した例を示したものである。
【0023】ここで、中継器20は、送信器2の赤外線発光ダイオード14が入力されると前記動作モードより車両のリヤー部のダッシュボードから受信器3の受光部15に赤外線発光ダイオード信号を発して、受信器3はドアのロック、アンロック信号をコントローラ16へ出力されるようになっている。」(第3頁第4欄)、
c)「【0029】今回の実施の形態は、媒体を赤外線タイプで説明したが、他の例をあげれば電波タイプでも実現可能であることはいうまでもないことである」(第4頁第5欄)。

上記周知例3及びこの分野の技術常識によれば、上記周知例3には「リモコン(周知例3の「送信器2」)から車両の各種装置(周知例3の「ドアのロック、アンロック」)を遠隔操作する際に、車両内(周知例3の「リアのダッシュボード」)に設けた中継装置(周知例3の「中継器20」)を介して車両の各種装置を遠隔制御する」技術が開示されているが、当該技術は当該周知例3のほか、例えば特開平8-13874号公報(以下、「周知例4」という。)に開示されているように、周知のものと認められる。

D.また、周知例として提示する、本願の出願の日前である平成4年10月5日に頒布された特開平4-278864号公報(以下、「周知例5」という。)には、「自動車用遠隔制御システム」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、特定小電力無線設備を用い、見通し100m前後の距離でエンジンの始動等の遠隔操作を行う自動車用遠隔制御システムに関する。」(第2頁第1〜2欄)、
b)「【0008】【実施例】本発明の第1実施例(請求項1に対応)を図1、図2に基づいて説明する。図に示すように、手動変速式ガソリン車用の遠隔制御システムは、送信部1、受信部2、報知部3を有する携帯器Aと、受信部4、マイクロコンピュータを備えた制御部5、送信部6を有する車載器Bとで構成される。
【0009】送信部1は、エンジンの始動や停止を行う指令信号10で搬送波をデジタル変調し、この変調波11をアンテナ12から電波(400MHz帯、10mW)として空中に放射する。・・・(中略)・・・受信部2は、車載器Bからの・・・(中略)・・・保全信号7、状況信号8を復調する。報知部3は、点灯すると“OK”の透かし文字が表示される緑色LED、点灯すると“RUN”の透かし文字が表示される黄色LED、点灯すると“ERROR”の透かし文字が表示される橙色LED、点灯すると“WARN”の透かし文字が表示される赤色LEDを並べた表示器と、ブザーと、これらを駆動する駆動回路とを備える。緑色LEDは指令信号10を送信する場合および正常情報を含む保全信号7を受信した場合(盗難の可能性や暴走の危険性がない場合)に点灯する。黄色LEDはエンジン作動の情報を含む状況信号8を受信した時(エンジン作動運転中)に点灯し、始動失敗の情報を含む状況信号8を受信した場合(エンジンの始動に失敗した場合)点滅する。橙色LEDは指令信号10を含む変調波11を送信し終わってから所定時間(例えば1秒)以内に、車載器Bからの保全信号7を復調できなかった場合に点灯する。赤色LEDは保全信号7に異常情報が含まれている場合に点灯する。」(第3頁第4〜第4頁第5欄)、
c)「【0010】受信部4は、携帯器Aからの変調波11をアンテナ41で捉え、この変調波11から指令信号10を復調する。
【0011】制御部5は、車両検知手段51、報告手段52、操作手段53、エンジン作動監視手段54で構成される。・・・(中略)・・・エンジンの始動を行う指令信号10が入力されると操作手段53はエンジンの始動を行う。エンジン作動監視手段54は、エンジンの作動状態を監視し、始動失敗、エンジン作動、エンジン停止を状況信号8として送出する。」(第4頁第5欄)。

上記周知例5及びこの分野の技術常識によれば、上記周知例5には「リモコン(周知例5の「携帯器A」)から車両の各種装置を遠隔操作する際に、リモコン側にLED等のランプ(周知例5の「報知部3の緑色LED等」)を設けて遠隔制御の結果を確認する」技術が開示されているが、当該技術は当該周知例5のほか、例えば特開平9-187084号公報(以下、「周知例6」という。)に開示されているように、周知のものと認められる。

(2-2-3)引用発明との対比
そこで、補正後の発明2と引用発明とを対比する。

a)引用発明の「制御局A」、「中継局C」、「被制御局B」、「監視制御装置5」、「遠方監視制御装置」は、各々補正後の発明2の「リモコン」、「中継装置」、「機器側装置」、「監視装置」、「遠隔操作システム」に相当する。
b)引用発明の「制御信号」、「状態表示信号」は、各々補正後の発明2の「コマンド信号」、「アンサー信号」に相当する。
c)引用発明の「無線受信器31」、「無線送信器22」は、各々補正後の発明2の「第1の受信部」、「第1の送信部」に相当するとともに、これらが全体として「第1の送受信部」に相当することが明らかである。
d)引用発明の「無線受信器33」、「無線送信器24」は、各々補正後の発明2の「第2の受信部」、「第2の送信部」に相当するとともに、これらが全体として「第2の送受信部」に相当することが明らかである。
e)引用発明の「無線受信器32」、「無線送信器23」は、各々補正後の発明2の「機器側受信部」、「機器側送信部」に相当する。

したがつて、補正後の発明2と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
監視装置を遠隔操作するためのコマンド信号を重畳した第1の電波の発信および後述する第2の電波から制御結果を示すアンサー信号の復調が可能であるリモコンと、
前記第1の電波を受信して前記コマンド信号を復調する第1の受信部、この復調されたコマンド信号を重畳するとともに、前記第1の電波と周波数が異なる第3の電波として後述する機器側装置へ発信する第1の送信部を有する第1の送受信部と、後述する第4の電波を受信して前記アンサー信号を復調する第2の受信部、この復調されたアンサー信号を重畳するとともに、前記第4の電波と周波数が異なる前記第2の電波として前記リモコンへ発信する第2の送信部を有する第2の送受信部とを備える中継装置と、
前記第3の電波から前記コマンド信号を復調する機器側受信部、およびこの復調されたコマンド信号に基づいて、前記監視装置を制御するとともに、この制御結果を示す前記アンサー信号を重畳して前記第4の電波として前記中継装置へ発信する機器側送信部を有する機器側装置とを具備する遠隔操作システム。

[相違点1]
監視装置について、補正後の発明2は、「車両に装着した監視装置であって、設定・解除を示すコマンド信号に基づいて前記監視装置を作動状態または作動停止状態に制御する」のに対して、引用発明は、「コマンド信号に基づいて監視装置を制御する」ものの、その余の点を明示しない点。

[相違点2]
リモコンについて、補正後の発明2は、「監視装置の設定・解除を遠隔操作するためのコマンド信号を重畳して発信できるとともに、設定結果や解除結果を確認するためのランプを設ける」のに対して、引用発明は、「監視装置を遠隔操作するためのコマンド信号を重畳して発信できるとともに、監視された機器の状態表示信号を受信できる」ものの、その余の点を明示しない点。

[相違点3]
中継装置について、補正後の発明2は「車内または車庫に設置される」のに対して、引用発明はその設置場所を明示しない点。

(2-2-4)判断

[相違点1、相違点3について]
「リモコンから発信された設定・解除を示すコマンド信号に基づいて、車両に装着した監視装置を作動状態または作動停止状態に制御する」技術は、上記「(2-2-2)B.」に述べたように周知である。
そして、このようなリモコンから車両の各種装置を遠隔操作する際に、「車両内に設けた中継装置を介して車両の各種装置を遠隔制御する」こともまた、上記「(2-2-2)C.」に述べたように周知である。
引用発明は適用対象、即ち中継装置や機器側装置の設置場所について何も明示しないが、遠隔操作により中継装置を介して監視装置を制御するものであることに変わりはなく、又、上記周知技術を引用発明に適用することに何ら阻害要因は見あたらないのだから、当該引用発明を「車両用遠隔制御」用に特定するとともに、その際に上記周知技術を引用発明に適用して、補正後の発明2のように「車両に装着した監視装置であって、設定・解除を示すコマンド信号に基づいて前記監視装置を作動状態または作動停止状態に制御する」よう、及び「中継装置を車内または車庫に設置される」よう構成することは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2について]
上述したように、「リモコンから発信された設定・解除を示すコマンド信号に基づいて、車両に装着した監視装置を作動状態または作動停止状態に制御する」技術は、上記「(2-2-2)B.」に述べたように周知である。
そして、このようなリモコンから車両の各種装置を遠隔操作する際に、「リモコン側にLED等のランプを設けて遠隔制御の結果を確認する」こともまた、上記「(2-2-2)D.」に述べたように周知である。
引用発明は適用対象について何も明示しないが、引用発明のリモコンはコマンドを発信して遠隔操作し、その操作結果としての状態表示信号を受信できるものであり、又、上記周知技術を引用発明に適用することに何ら阻害要因は見あたらないのだから、当該引用発明を「車両用遠隔制御」用に特定するとともに、その際に上記周知技術を引用発明に適用して、補正後の発明2のように「監視装置の設定・解除を遠隔操作するためのコマンド信号を重畳して発信できるとともに、設定結果や解除結果を確認するためのランプを設ける」よう構成することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、補正後の発明2の作用効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

よって、補正後の発明2は、引用例に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本件手続補正のうち、請求項1についての補正は特許法第17条の2第4項の規定に適合しておらず、又、請求項2についての補正は平成15年改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、請求項3についての補正の適否を検討するまでもなく、本件手続補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定に基き却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成15年11月20日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、平成15年7月30日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「設定や解除を行うコマンド信号を重畳した第1の電磁波の発信が可能であり、第2の電磁波から制御結果を示すアンサー信号の復調が可能なリモコンと、
このリモコンから発信される前記第1の電磁波から前記コマンド信号の復調が可能な第1の受信部、この第1の受信部が復調した前記コマンド信号を重畳するとともに、前記第1の電磁波と周波数が異なる第3の電磁波として後述する機器側装置へ発信する第1の送信部を有する第1の送受信部と、第4の電磁波から前記アンサー信号の復調が可能な第2の受信部、この第2の受信部が復調したアンサー信号を重畳するとともに、前記第4の電磁波と周波数が異なる前記第2の電磁波として前記リモコンへ発信する第2の送信部を有する第2の送受信部とを備え、車内や車庫等の車外に設置される中継装置と、
前記第3の電磁波から前記コマンド信号の復調が可能な機器側受信部を有し、復調した前記コマンド信号に基づいて、車両に装着した自動車の監視装置を作動状態または作動停止状態にする制御を行うとともに、その制御結果を示す前記アンサー信号を重畳して前記第4の電磁波として機器側送信部が前記中継装置へ発信する機器側装置とを具備することを特徴とする遠隔操作システム。」

2.引用例、及び周知例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、周知例、並びにその記載事項は、前記「2.(2-2-2)引用例、及び周知例」に記載したとおりである。

3.引用発明との対比・判断
本願発明2は、前記「2.(2-1)新規事項の有無、補正の目的要件について」で検討した補正後の発明2から、「中継装置」の設置場所に関する限定、及び「リモコン」についての限定事項である「設定結果や解除結果を確認するためのランプを設け」との限定を省いたものであり、その余の構成は表現が異なるだけで、実質的な構成上の差異はない。
そうすると、実質的に本願発明2の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明2が、前記「2.(2-2)独立特許要件について」に記載したとおり、引用例に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2も、同様の理由により、引用例に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明2は、引用例に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-10 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願2000-295371(P2000-295371)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 浜野 友茂
宮下 誠
発明の名称 遠隔操作システム  
代理人 石黒 健二  

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