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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1139995
審判番号 不服2004-2871  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-12 
確定日 2006-07-13 
事件の表示 平成11年特許願第371064号「2周波共用アンテナ、多周波共用アンテナ、および2周波または多周波共用アレーアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-185938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成11年12月27日の出願であって、平成16年1月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年3月10日付けで手続補正書が提出され、平成17年11月24日付けで審尋がなされ、平成18年1月16日に回答書が提出されたものである。

2 平成16年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月10日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「誘電体基板の表面にプリント化して形成された給電線路、該給電線路に接続する内側放射素子、および外側放射素子と、前記誘電体基板の表面にプリント化して形成された内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタと、前記誘電体基板の裏面にプリント化して形成された給電線路、該給電線路に接続する内側放射素子、および外側放射素子と、前記誘電体基板の裏面にプリント化して形成された内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタとを備え、前記誘電体基板の表面に形成される内側放射素子と給電線路との交差部位、および前記誘電体基板の裏面に形成される内側放射素子と給電線路との交差部位にそれぞれ前記内側放射素子上を流れる電流の経路を変える切り込み部が形成されると共に、前記誘電体基板の表面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部と、前記誘電体基板の裏面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より小さくしてΛ字形の線状アンテナを構成するか、あるいは前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部と前記誘電体基板の裏面に形成されたアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より大きくしてV字形の線状アンテナを構成することを特徴とする2周波共用アンテナ。」と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「・・・それぞれ切り込み部が形成される・・・」を、「・・・それぞれ前記内側放射素子上を流れる電流の経路を変える切り込み部が形成されると共に、前記誘電体基板の表面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部と、前記誘電体基板の裏面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より小さくしてΛ字形の線状アンテナを構成するか、あるいは前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部と前記誘電体基板の裏面に形成されたアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より大きくしてV字形の線状アンテナを構成する・・・」とするものであり、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「切り込み部」について「前記内側放射素子上を流れる電流の経路を変える」との限定を、「2周波共用アンテナ」について「前記誘電体基板の表面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部と、前記誘電体基板の裏面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より小さくしてΛ字形の線状アンテナを構成するか、あるいは前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部と前記誘電体基板の裏面に形成されたアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より大きくしてV字形の線状アンテナを構成する」との限定をそれぞれ付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特公平7-77325号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項がそれぞれ記載されている。
記載事項1
「従来のプリントダイポールアンテナを用いて2周波共振させる方法として、第1図に示すような構成により実現したものがある。
同図において、1はプリントダイポールアンテナの放射素子、2は無給電素子、3は誘電体基板、4は反射板を表わしており、プリントダイポールアンテナの放射素子の中心と反射板の間隔をd0、無給電素子と中心と反射板との間隔をdl、プリントダイポールアンテナの放射素子長をl0、無給電素子長を・・・として示している。
プリントダイポールアンテナの放射素子1の長さ10は、第1の共振周波数に対応する波長λLの約1/2である。・・・
無給電素子2はプリントダイポールアンテナの放射素子の上部で放射素子1と重なるように配置されている。したがって、放射素子1の反射板からの距離d0が決まれば、無給電素子2の反射板からの距離d1もほぼ決まる。無給電素子2の素子長・・・は第2の共振周波数に対応する波長λHの約1/2である。・・・
第2図は反射板4とプリントダイポールアンテナの放射素子1との間隔を変化させた場合の周波数に対する反射減衰量の測定例で、(a)はd0=0.15λL、(b)はd0=0.18λL、(c)はd0=0.27λLである。
放射素子と反射板との間隔dtが小さくなると、反射減衰量が小さくなりインピーダンスが劣化してくる。このとき、第2の共振周波数では共振時の比帯域は狭くなるものの、インピーダンスの劣化は少ない。」(1頁2欄7行〜2頁3欄19行)
記載事項2
「誘電体基板に構成された第1の周波数が共振するプリントダイポールアンテナと、該プリントダイポールアンテナの放射素子を挟むごとく対向せしめた第2の周波数が共振する金属導体からなる無給電素子を反射板の前面に取り付けた2周波共振プリントダイポールアンテナにおいて、該プリントダイポールアンテナの放射素子の前方に、長さが第1の共振周波数の1/2波長以下、幅が1/10波長以下の金属導体からなる無給電素子を取り付けたことを特徴とする2周波共振プリントダイポールアンテナ。」(1頁1欄2〜11行)
(3)対比
アンテナの分野において、放射素子に切り込み部を設けて、放射素子上を流れる電流の経路を変えることは技術常識である。したがって、引用刊行物1において、内側放射素子に切り込み部が設けられているので、この切り込み部により、内側放射素子上を流れる電流の経路は当然に変えられている。
本願補正発明1と引用刊行物1に記載された発明を対比すると、両者は、
「誘電体基板の表面にプリント化して形成された給電線路、該給電線路に接続する内側放射素子と、前記誘電体基板の表面にプリント化して形成された内側放射素子と、前記誘電体基板の裏面にプリント化して形成された給電線路、該給電線路に接続する内側放射素子と、前記誘電体基板の裏面にプリント化して形成された内側放射素子とを備え、前記誘電体基板の表面に形成される内側放射素子と給電線路との交差部位、および前記誘電体基板の裏面に形成される内側放射素子と給電線路との交差部位にそれぞれ前記内側放射素子上を流れる電流の経路を変える切り込み部が形成されると共に、前記誘電体基板の表面に形成された内側放射素子から成るアンテナ素子部と、前記誘電体基板の裏面に形成された内側放射素子から成るアンテナ素子部との線状アンテナを構成することを特徴とする2周波共用アンテナ。」である点で一致し、
次の点で相違する。
a)誘電体基板の表面において、放射素子として、本願補正発明1は内側放射素子の他に「外側放射素子」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載された発明はそのように構成されていない点。
b)誘電体基板の表面において、放射素子を接続する手段として、本願補正発明1は「内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタ」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載された発明はそのように構成されていない点。
c)誘電体基板の表面において、アンテナ素子部を、本願補正発明1は「内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子」で構成しているのに対し、引用刊行物1に記載された発明は「内側放射素子」で構成している点。
d)誘電体基板の裏面において、放射素子として、本願補正発明1は内側放射素子の他に「外側放射素子」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載された発明はそのように構成されていない点。
e)誘電体基板の裏面において、放射素子を接続する手段として、本願補正発明1は「内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタ」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載された発明はそのように構成されていない点。
f)誘電体基板の裏面において、アンテナ素子部を、本願補正発明1は「内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子」で構成しているのに対し、引用刊行物1に記載された発明は「内側放射素子」で構成している点。
g)ビーム幅を広くするために、誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部と誘電体基板の裏面に形成されたアンテナ素子部とからなる線状アンテナを、本願補正発明1は「給電線路側においてなす角度を180度より小さくしてΛ字形」で形成しているのに対し、引用刊行物1に記載された発明はそのように構成されていない点。
h)ビーム幅を狭くするために、誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部と誘電体基板の裏面に形成されたアンテナ素子部とからなる線状アンテナを、本願補正発明1は「給電線路側においてなす角度を180度より大きくしてV字形」で形成しているのに対し、引用刊行物1に記載された発明はそのように構成されていない点。
(4)判断
相違点a)b)c)d)e)f)について検討する。
誘電体基板の表面において、放射素子として、内側放射素子の他に外側放射素子を設けること、放射素子を接続する手段として、内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタを設けること、アンテナ素子部を、内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子で構成することはそれぞれ周知技術(特開平8-288731号公報、特開平8-186420号公報)であり、その周知技術を引用刊行物1に記載された発明の誘電体基板の表面及び裏面に適用することには格別の困難性が存在しないので、相違点a)b)c)d)e)f)は、当業者が容易に想到し得ることである。
相違点g)h)について検討する。
アンテナの分野において、放射素子の角度を180度より小さくしてΛ字形の放射素子としてビーム幅を広くすること、放射素子の角度を180度より大きくしてV字形の放射素子としてビーム幅を狭くすることは技術常識であり、しかも、誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部とからなる線状アンテナを、給電線路側においてなす角度を180度より小さくしてΛ字形で形成することは、周知技術(特開昭59-122205号公報、特開昭59-122203号公報)であるので、相違点g)h)は、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明1の作用効果も、引用刊行物1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明1は、引用刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
平成16年3月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成15年7月31日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「誘電体基板の表面にプリント化して形成された給電線路、該給電線路に接続する内側放射素子、および外側放射素子と、前記誘電体基板の表面にプリント化して形成された内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタと、前記誘電体基板の裏面にプリント化して形成された給電線路、該給電線路に接続する内側放射素子、および外側放射素子と、前記誘電体基板の裏面にプリント化して形成された内側放射素子と外側放射素子との間隙で両放射素子を接続するインダクタとを備え、前記誘電体基板の表面に形成される内側放射素子と給電線路との交差部位、および前記誘電体基板の裏面に形成される内側放射素子と給電線路との交差部位にそれぞれ切り込み部が形成されることを特徴とする2周波共用アンテナ。」
(1)引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1及びその記載事項は、前記「2 (2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明1は、前記2で検討した本願補正発明1から、「切り込み部」の限定事項である「前記内側放射素子上を流れる電流の経路を変える」との構成、「2周波共用アンテナ」の限定事項である「前記誘電体基板の表面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部と、前記誘電体基板の裏面に形成された内側放射素子、インダクタ、および外側放射素子から成るアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より小さくしてΛ字形の線状アンテナを構成するか、あるいは前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子部と前記誘電体基板の裏面に形成されたアンテナ素子部とが前記給電線路側においてなす角度を180度より大きくしてV字形の線状アンテナを構成する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2 (4)」に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-15 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願平11-371064
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 伊佐雄  
特許庁審判長 鈴木 康仁
特許庁審判官 宮下 誠
小林 紀和
発明の名称 2周波共用アンテナ、多周波共用アンテナ、および2周波または多周波共用アレーアンテナ  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 博昭  
代理人 田澤 英昭  
代理人 加藤 公延  

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