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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1140016
審判番号 不服2004-21289  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-14 
確定日 2006-07-13 
事件の表示 平成 8年特許願第265955号「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月28日出願公開、特開平10-112487〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成8年10月7日の特許出願であって、同14年12月20日付で拒絶の理由が通知され、同15年3月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同15年12月10日付で最後の拒絶の理由が通知され、同16年2月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同16年8月25日付で同16年2月13日の手続補正書でした手続補正が却下されるとともに拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同16年10月14日に本件審判の請求がされ、同16年11月9日に手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載は以下のとおりである。
(1) 補正前の請求項1
「基板の処理を行う複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部の全てに対する基板搬送を行う1台の搬送ロボットとを備え、所定の処理手順に従って基板を順次処理する基板処理装置において、
前記所定の処理手順は、それぞれが複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を含み、
各並行処理部内の単位処理部のそれぞれを残りの並行処理部内の単位処理部と1対1に固定的に対応させることによって、前記各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路をあらかじめ設定し、前記複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って基板を順次搬送するように前記搬送ロボットを制御する搬送制御手段を備えたことを特徴とする基板処理装置。」
(2) 補正後の請求項1
「基板の処理を行う複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部の全てに対する基板搬送を行う1台の搬送ロボットとを備え、所定の処理手順に従って基板を順次処理する基板処理装置において、
前記所定の処理手順は、それぞれがホットプレート、クールプレートまたはスピンデベロッパのいずれかの複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を含み、
複数のスピンデベロッパからなる並行処理部内のスピンデベロッパのそれぞれを残りの並行処理部内のホットプレートおよび/またはクールプレートと1対1に固定的に対応させることによって、前記各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路をあらかじめ設定し、前記複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って基板を順次搬送するように前記搬送ロボットを制御する搬送制御手段を備えたことを特徴とする基板処理装置。」
2 補正の適否
請求項1における補正は、複数の単位処理部がホットプレート、クールプレートまたはスピンデベロッパのいずれかの複数の単位処理部である旨、及び、1対1に固定的に対応させる各並行処理部内の単位処理部のそれぞれが複数のスピンデベロッパからなる並行処理部内のスピンデベロッパのそれぞれであり、残りの並行処理部内の単位処理部が残りの並行処理部内のホットプレートおよび/またはクールプレートである旨の限定事項を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、前記1の(2) の補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 周知技術及び引用例記載事項
ア 周知技術
デベロッパとしてスピンデベロッパは慣用手段であり、また、例えば、特開平7-169678号公報に複数の基板処理部、搬送ロボット等を配置した現像セクション12が記載されていることから、基板の処理を行うホットプレート、クールプレート及びスピンデベロッパの複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部の全てに対する基板搬送を行う1台の搬送ロボットとを備え、所定の処理手順に従って基板を順次処理する基板処理装置において、経路に沿って基板を順次搬送するように前記搬送ロボットを制御する搬送制御手段を備えた基板処理装置は、従来周知であると認める。以下、この従来周知な基板処理装置を「周知の基板処理装置」という。
イ 引用例記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-274746号公報(以下「引用例」という。)には、以下のとおり記載されている。
(ア) 第3頁右下欄第9-11行
「本発明マルチチャンバ装置の第2のものは、一連の処理を行う複数のチャンバの組を複数組設けるようにしたことを特徴とする。」
(イ) 第4頁左上欄第13-20行
「本発明はマルチチャンバ装置の第2のものによれば、一連の処理を行う複数のチャンバの組を複数組設けるので、複数組分で1つの搬送チャンバを共有することができる。従って、マルチチャンバ装置全体で為し得る仕事に対するマルチチャンバ装置の占有面積の比を小さくすることができる。これは、無駄にすることを許されないIC製造工場の有効利用につながる。」
(ウ) 第6頁右下欄第1行-第7頁右上欄第6行
「(c.第3の実施例)[第6図]
第6図は本発明マルチチャンバ装置の第3の実施例を示す平面断面図である。本図においてはゲートバルブ等を本マルチチャンバ装置の特徴と関係しない部分を省略し、特徴的部分だけを様式的に示した。
本マルチチャンバ装置は三つの処理 A、B、Cからなる一連の工程を順次行うプロセスチャンバ8A、8B、8Cの組み合せを2組有し、この2組6個のチャンバ8A、8B、8C、8A、8B、8Cが1つの搬送チャンバ5及び1つのロードアンドロード室17を共有していることを特徴としている。破線は半導体ウエハ3の流れを示している。
8A、8Aは共にTiスパッタを行うプロセスチャンバ、8B、8BはTiNスパッタを行うプロセスチャンバ、8C、8CはAlSiスパッタを行うプロセスチャンバである。そして、三つの処理A、B、Cからなる工程は破線で示した2つの経路で同時に行うことができる。即ち、本マルチチャンバ装置は3つのプロセスチャンバ8からなるマルチチャンバ装置の2台分の働きを行う。それでいて搬送チャンバ5、その内部のウエハ搬送機構及びロードアンドロード室17は1つずつで済む。
従って、マルチチャンバ装置の為し得る仕事の量に比して占有面積を狭くすることができ、また、所要エネルギーの低減も図ることができるのである。
また、1つのプロセスチャンバ、例えば第6図における左側の方のプロセスチャンバ8Aに例えばターゲット交換等のメンテナンスを施す場合には、残りのプロセスチャンバ8Aを過渡的に上記2つの経路のAlSiスパッタ処理に共用して成膜することができる。従って、トラブルに対して対応の自由度が高まり、トラブルが起きてもマルチチャンバ装置のスループットを著しく下げなくて済む。
尚、複数の処理からなる一連の工程を順次行うプロセスチャンバの組み合せを複数組有するようにするという技術的思想は、スパッタリングを行うマルチチャンバ装置に限らずCVD、ドライエッチング等の他の一連の処理を行うマルチチャンバ装置にも通用することができることはいうまでもない。」
(エ) 第6図
図面の第6図を参照する。第6図において左側のプロセスチャンバ8A、8B、8Cと、右側のプロセスチャンバ8A、8B、8Cとは、半導体ウェハ3がそれぞれ独立した経路で搬送されることが破線で示されている。そこで、各プロセスチャンバを「単位処理部」とすると、プロセスチャンバ8A、プロセスチャンバ8B及びプロセスチャンバ8Cの複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を有し、各並行処理部内の単位処理部のそれぞれを残りの並行処理部内の単位処理部と1対1に固定的に対応させることによって、前記各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路があらかじめ設定されており、ウエハ搬送機構が並列搬送経路に沿って半導体ウエハ3を順次搬送することが記載されている。
上記各記載事項に加え、複数の並列搬送経路が設けられていれば、その複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って基板を順次搬送するようにウエハ搬送機構を制御することは技術常識より明らかであることから、引用例には、次の事項が記載されていると認める。
半導体ウエハ3の処理を行う複数の半導体ウエハ処理部と、前記複数の半導体ウエハ処理部の全てに対する半導体ウエハ搬送を行う1台のウエハ搬送機構とを備え、所定の処理手順に従って半導体ウエハ3を順次処理するマルチチャンバ装置において、
前記所定の処理手順は、それぞれがプロセスチャンバ8A、プロセスチャンバ8B及びプロセスチャンバ8Cの複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を含み、
各並行処理部内の単位処理部のそれぞれを残りの並行処理部内の単位処理部と1対1に固定的に対応させることによって、前記各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路をあらかじめ設定し、前記複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って半導体ウエハ3を順次搬送するように前記ウエハ搬送機構を制御する搬送制御手段を備えること(以下「引用例記載の技術的事項」という。)。
また、(ウ)の記載から、引用例には、「複数の半導体ウエハ処理部の全てに対する半導体ウエハ搬送を1台のウエハ搬送機構で行うので、装置の占有面積を小さくすることができる」という作用効果についても記載されていると認める。
(3) 対比
補正発明と周知の基板処理装置とを対比すると、両者は、次の「基板処理装置」で一致している。
基板の処理を行う複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部の全てに対する基板搬送を行う1台の搬送ロボットとを備え、所定の処理手順に従って基板を順次処理する基板処理装置において、経路に沿って基板を順次搬送するように前記搬送ロボットを制御する搬送制御手段を備えた基板処理装置。
そして、両者は、次の点で相違している。
補正発明では、所定の処理手順は、それぞれがホットプレート、クールプレートまたはスピンデベロッパのいずれかの複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を含み、複数のスピンデベロッパからなる並行処理部内のスピンデベロッパのそれぞれを残りの並行処理部内のホットプレートおよび/またはクールプレートと1対1に固定的に対応させることによって、前記各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路をあらかじめ設定し、前記複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って基板を順次搬送するように前記搬送ロボットを制御する搬送制御手段を備えたものであるのに対し、周知の基板処理装置では、所定の処理手順がそのようなものではなく、また、搬送ロボットが基板を搬送する経路がそのようなものではない点(以下「相違点」という。)。
(4) 相違点の検討
前記相違点について、以下検討する。
前記引用例には、前記(2) のイのとおりの技術的事項及び作用効果が記載されており、引用例記載の技術的事項の「半導体ウエハ」は、補正発明の「基板」に相当しており、以下同様に、「ウエハ搬送機構」は「搬送ロボット」に、「マルチチャンバ装置」は「基板処理装置」にそれぞれ相当していることが明らかであるので、結局、引用例記載の技術的事項は、次のとおりのものとなる。
基板の処理を行う複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部の全てに対する基板搬送を行う1台の搬送ロボットとを備え、所定の処理手順に従って基板を順次処理する基板処理装置において、
前記所定の処理手順は、それぞれが複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を含み、
各並行処理部内の単位処理部のそれぞれを残りの並行処理部内の単位処理部と1対1に固定的に対応させることによって、前記各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路をあらかじめ設定し、前記複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って基板を順次搬送するように前記搬送ロボットを制御する搬送制御手段を備えること。
そして、周知の基板処理装置と引用例記載の技術的事項とは、基板を処理する装置である点で技術分野が共通しており、また、周知の基板処理装置において、装置の占有面積を小さくすることは自明の課題であり、引用例記載の技術的事項は、装置の占有面積を小さくする作用効果を奏するものであるので、周知の基板処理装置におけるホットプレート、クールプレート及びスピンデベロッパの複数の基板処理部に引用例記載の技術的事項を採用することに格別の困難性は見当たらない。
したがって、周知の基板処理装置におけるホットプレート、クールプレート及びスピンデベロッパの複数の基板処理部に引用例記載の技術的事項を採用して、搬送ロボットを1台としたままで、所定の処理手順をそれぞれがホットプレート、クールプレートまたはスピンデベロッパの複数の単位処理部からなる複数の並行処理部を含むものとし、複数のスピンデベロッパからなる並行処理部内のスピンデベロッパのそれぞれを残りの並行処理部内のホットプレートおよびクールプレートと1対1に固定的に対応させること、すなわち、各並行処理部内の単位処理部のひとつずつを順次に経由する複数の並列搬送経路をあらかじめ設定し、複数の並列搬送経路の中から1つの経路を選択してその選択した経路に沿って基板を順次搬送するように搬送ロボットを制御することは、当業者が容易に想到することができたことである。
ウ 補正発明の作用効果について
補正発明が奏する作用効果は、周知の基板処理装置及び引用例記載の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
したがって、補正発明は、周知の基板処理装置及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成15年3月6日付手続補正書により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、前記第2の1の(1) で示した補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
2 周知技術及び引用例記載事項
これに対して、周知技術並びに原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記第2の2の(2) に示したとおりである。
3 対比・判断
本件発明は、前記第2の2で述べたとおり、補正発明の特定事項から、前記限定事項が省かれたものである。
そうすると、前記第2の2の(4) で検討したとおり、補正発明は、周知の基板処理装置及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明の特定事項から前記限定事項が省かれた本件発明についても、同様に周知の基板処理装置及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるので、本件発明は、周知の基板処理装置及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-15 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願平8-265955
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 佐々木 正章
菅澤 洋二
発明の名称 基板処理装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 吉田 茂明  

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