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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1140048 |
審判番号 | 不服2005-17330 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-09-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-08 |
確定日 | 2006-07-13 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 60323号「暗号化装置及び暗号化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 5日出願公開、特開平 9-233065〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願の手続の経緯は次のとおりである。 出願 平成8年2月23日 拒絶理由の通知 平成17年5月17日(起案日5月12日) 意見書、補正書の提出 平成17年7月15日 拒絶査定 平成17年8月3日 同 謄本送達 平成17年8月9日 審判請求 平成17年9月8日 補正書の提出 平成17年10月7日 2.平成17年10月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年10月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 前記手続補正により、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7について、次のとおり補正された。 「【請求項1】 入力された平文データに正しく所定の暗号アルゴリズムの暗号処理が施されたと検出された暗号文データを、前記暗号文データを解読可能な受信装置側に送信する暗号化装置において、 暗号化ブロック単位ごとに、前記平文データを暗号化して暗号文データを出力する暗号化手段と、 前記暗号化手段から出力された暗号文データに所定の解読アルゴリズムの解読処理を施して解読文データを出力する解読化手段と、 前記暗号化ブロック単位ごとに、前記平文データを記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された前記平文データを、前記暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、前記暗号化ブロック単位ごとに、遅延させて出力する遅延手段と、 前記遅延手段から出力される平文データと、前記解読化手段で解読されて出力される前記解読文データを比較し、遅延された前記平文データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力する比較手段と、 前記不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御手段と、 前記暗号化データを前記受信装置に出力する出力端子と、 を備えて構成されていることを特徴とする暗号化装置。 【請求項2】 前記比較手段より出力される比較信号が制御手段に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の暗号化装置。 【請求項3】 入力された平文データに正しく所定の暗号アルゴリズムの暗号処理が施されたと検出された暗号文データを、前記暗号文データを解読可能な受信装置側に送信する暗号化方法において、 暗号化ブロック単位ごとに、前記平文データを暗号化して暗号文データを生成するとともに、 前記暗号文データを所定の解読アルゴリズムで解読化して解読文データを生成し、 前記暗号化ブロック単位ごとに、前記平文データを記憶し、 前記記憶された前記平文データを、前記暗号化及び解読化の処理時間に応じて、前記暗号化ブロック単位ごとに、前記解読文データと比較し、 前記平文データと前記解読文データとが不一致の場合には、不一致信号を出力し、 前記不一致信号が出力されると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御をし、 前記暗号化データを前記受信装置に送信する ことを特徴とする暗号化方法。 【請求項4】 入力データに正しく暗号処理が施されたと検出された暗号化データを、前記暗号化データを解読可能な受信装置側に送信するための前記暗号化データを得る暗号化装置において、 前記入力データが入力される入力端子と、 所定の暗号アルゴリズムによって、前記入力端子から入力される前記入力データに暗号化処理を施して暗号化データを出力する暗号化手段と、 前記所定の暗号アルゴリズムに対応する所定の解読アルゴリズムによって、前記暗号化手段から得られた前記暗号化データに解読化処理を施して解読化データを出力する解読化手段と、 前記入力端子から入力される前記入力データを記憶する記憶手段と、 前記暗号化処理と前記解読化処理に係る処理時間を計測し、前記処理時間だけ遅延処理を施して、前記記憶手段から読み出す遅延手段と、 前記遅延手段によって遅延された前記入力データを、前記解読化データとを比較し、遅延された前記入力データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力する比較手段と、 前記不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御手段と、 前記暗号化データを前記受信装置に出力する出力端子と、 を備えることを特徴とする暗号化装置。 【請求項5】 入力データに正しく暗号処理が施されたと検出された暗号化データを、前記暗号化データを解読可能な受信装置側に送信するための前記暗号化データを得る暗号化装置において、 前記入力データが入力される入力端子と、 所定の暗号アルゴリズムによって、前記入力端子から入力される前記入力データに暗号化処理を施して暗号化データを出力する暗号化手段と、 前記所定の暗号アルゴリズムに対応する所定の解読アルゴリズムによって、前記暗号化手段から得られた前記暗号化データに解読化処理を施して解読化データを出力する解読化手段と、 前記入力端子から入力される前記入力データを記憶する記憶手段と、 前記暗号化処理と前記解読化処理に係る処理時間を計測し、前記処理時間だけ遅延処理を施して、前記記憶手段から読み出す遅延手段と、 前記遅延手段によって遅延された前記入力データを、前記解読化データとを比較し、遅延された前記入力データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力する比較手段と、 前記不一致信号を受信すると、前記暗号化データの送信を停止させる制御手段と、 前記暗号化データを前記受信装置に出力する出力端子と、 を備えることを特徴とする暗号化装置。 【請求項6】 入力データに正しく暗号処理が施されたと検出された暗号化データを、前記暗号化データを解読可能な受信装置側に送信するための前記暗号化データを得る暗号化方法において、 前記入力データを入力端子を介して入力し、 所定の暗号アルゴリズムによって、前記入力端子から入力される前記入力データに暗号化処理を施して暗号化データを出力するとともに、 前記所定の暗号アルゴリズムに対応する所定の解読アルゴリズムによって、前記暗号化データに解読化処理を施して解読化データを出力し、 前記入力端子から入力される前記入力データを記憶し、 前記暗号化処理と前記解読化処理に係る処理時間を計測し、前記処理時間だけ遅延処理を施して、前記記憶された入力データを遅延させて読み出し、 前記遅延処理を施された前記入力データを、前記解読化データとを比較し、遅延された前記入力データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力し、 前記不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替え、 前記暗号化データを前記受信装置に送信する ことを特徴とする暗号化方法。 【請求項7】 入力データに正しく暗号処理が施されたと検出された暗号化データを、前記暗号化データを解読可能な受信装置側に送信するための前記暗号化データを得る暗号化方法において、 前記入力データを入力端子を介して入力し、 所定の暗号アルゴリズムによって、前記入力端子から入力される前記入力データに暗号化処理を施して暗号化データを出力するとともに、 前記所定の暗号アルゴリズムに対応する所定の解読アルゴリズムによって、前記暗号化データに解読化処理を施して解読化データを出力し、 前記入力端子から入力される前記入力データを記憶し、 前記暗号化処理と前記解読化処理に係る処理時間を計測し、前記処理時間だけ遅延処理を施して、前記記憶された入力データを遅延させて読み出し、 前記遅延処理を施された前記入力データを、前記解読化データとを比較し、遅延された前記入力データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力し、 前記不一致信号を受信すると、前記暗号化データの送信を停止させる ことを特徴とする暗号化方法。」 本件補正の前後における各請求項の対応関係は、請求の理由で明らかにされていないが、前記補正前の請求項1、2、7、6、11、10を補正した請求項が、前記補正後の請求項1、2、3、4、5、6、7にそれぞれ対応していると認められる。 補正後の請求項1の補正は、補正前の「暗号文データ」と「暗号文データを出力する暗号化装置」について、それぞれ「入力された平文データに正しく所定の暗号アルゴリズムの暗号処理が施されたと検出された暗号文データ」「前記暗号文データを解読可能な受信装置側に送信する暗号化装置」と補正するとともに、 補正前の「比較手段」と「制御手段」について、それぞれ「遅延された前記平文データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力する比較手段」「前記不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御手段」と補正し、 補正前の「暗号文データを出力する暗号化装置」が備えるものとして「前記暗号化データを前記受信装置に出力する出力端子」を有することを明らかにした補正であり、 これらの補正は、概略、暗号文データを限定し、暗号化装置が受信装置に送信する関係にあることを限定し、比較手段より出力される比較信号を限定し、暗号化装置が備えることが自明の制御手段の制御を限定するものであると認められる。 また、前記補正前の請求項2、7、6、11、10についても、概略、同様の補正乃至請求項の削除をするものであるから、前記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものにあたる。 そこで、補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において第4項2号の場合に準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 以下、前掲の【請求項1】に記載された事項により特定される発明を「本願補正発明」という。 (2)引用例の発明 原審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭58-90849号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 A.「デジタル信号を暗号化する暗号回路とその暗号化信号を解読する解読回路とを含む装置の試験を行う暗号試験装置において、所定スタート信号に従って所定長のデジタル試験信号を発生するテスト信号発生回路と、前記暗号回路で暗号化したデジタル試験信号を記憶し所定時間後に前記解読回路に供給する記憶回路と、前記解読回路の出力と前記テスト信号発生回路の試験信号とを比較しこの比較結果を出力する比較判定回路と、前記暗号回路および前記解読回路の各同期信号から前記スタート信号を形成し前記テスト信号発生回路に供給する手段とを含む暗号試験装置。」(特許請求の範囲) B.「一般に、デジタル信号,ファクシミリ信号などのデータ伝送において、第三者に受信されることを避けるために暗号化して送信し受信側でこれを解読して受信することがある。」(第1頁右下欄3行〜6行) C.「本発明の目的は、半二重通信を行なう暗号装置の送信状態と受信状態を時分割的に切り換えることにより、任意の鍵に対して自動的に自己試験を行なうことのできる暗号試験装置を提供することにある。」(第2頁左上欄13行〜17行) D.「第1図は本発明の実施例を含むブロック図である。図中、点線の内部が自己試験回路10であり、試験をすべき暗号装置の送信回路11と受信回路12とに入出力が接続されており、送信回路11では暗号化の処理を行ない、受信回路12では復元の処理を行なうものである。この装置の自己試験状態においては、装置の送信状態と受信状態が時分割に切り換わる。 まず、送信状態において、テスト信号発生回路1より所定の長さ(例えば、32ビット)のテスト信号が発生され、そのテスト信号が送信回路11に入力される。この送信回路11で暗号処理されたテスト信号はメモリ3に逐次記憶される。次に、この装置が送信状態から受信状態に切り換わると、メモリ3に記憶されているテスト信号が読み出され受信回路12に入力される。この受信回路12で暗号の解読処理がされて復元したテスト信号は比較判定回路5に入力される。この比較判定回路5はこの受信回路12より入力される復元したテスト信号と共にテスト信号発生回路1よりテスト信号が同時に入力されるため、比較判定回路5においてこの2つの信号を比較し、自己試験結果の各ビット毎に調べ良否の判定を行い表示部4に結果を示す。」(第2頁右上欄13行〜左下欄下5行)」 E.第1図には、自己試験回路10を有する暗号装置が示されている。 引用例1のA.に記載された、デジタル信号を暗号化する暗号回路とその暗号化信号を解読する解読回路とを含む装置、つまり暗号装置は、暗号試験装置により試験される。 実施例である第1図とD.の記載を参照すると、A.の暗号試験装置は、点線で囲まれた自己試験回路10が対応し、前記暗号装置は、第1図では送信回路、受信回路を含み、暗号試験装置(自己試験回路10)を内蔵しているものも暗号装置とみることができる。第1図に送信信号出力の記載があることから送信信号出力端子があることが読み取れる。 前記暗号装置には、暗号送信信号が入力され、送信回路11で暗号化され、送信信号出力が出力されるが、前記入力される送信信号は暗号化される前のデジタル信号であるからデジタル信号は平文データといえる。 また、B.の記載を参照すると、暗号化して送信されたデータは、受信側でこれを解読して受信されるので、前記暗号装置は、暗号化された送信信号を、暗号文データを解読可能な受信装置側に送信する暗号装置である。 また、前記暗号装置のように、デジタル処理を行う装置は制御手段を通常備えている。 これらの点をふまえると、引用例1には、自動的に暗号装置の自己試験を行うことを目的とし、A.に記載された暗号試験装置を含む暗号装置であって、次の構成を備えた暗号装置の発明(以下「引用例1の発明」という。)が開示されている。 「入力されたデジタル信号(送信信号入力)に暗号処理が施された送信デジタル信号(送信信号出力)を、前記暗号処理信号の解読が可能な受信装置側に送信する暗号装置において、 前記入力されたデジタル信号を暗号化して送信デジタル信号を出力する暗号回路と、 所定スタート信号に従って所定長のデジタル試験信号を発生するテスト信号発生回路と、 前記暗号回路で暗号化したデジタル試験信号を記憶し所定時間後に前記解読回路に供給する記憶回路と、 前記暗号回路で暗号化したデジタル試験信号に解読処理を施して解読文データを出力する解読回路と、 前記解読回路の出力と前記テスト信号発生回路の試験信号とを比較しこの比較結果を出力する比較判定回路と、 前記暗号回路および前記解読回路の各同期信号から前記スタート信号を形成し前記テスト信号発生回路に供給する手段と、 制御回路と、 送信デジタル信号を前記受信装置側に出力する出力端子と、 を含む暗号装置」 同じく、原審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-270585号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 あ.「第2図に示す様な構成としたものが知られている。…(中略)…第2の制御系を構成する予備機器(22)にもコントローラ(24)とスクランブラ(26)を有し、これらは現用機器(21)のコントローラ(23)及びスクランブラ(25)と同一に構成され、…(中略)…第1の制御系(21)の現用機器(21)に異常が発生した場合には第2の制御系である予備機器(22)の接続された固定接点b側にスイッチ(20)の可動接片aを切換えることでデータソース(19)からのデータ伝送送出を行うことが出来る様に成されている。」(第2頁右上欄4行〜左下欄4行) (3)対比 本願補正発明と引用例1の発明とを対比すると、 (a)引用例1の発明の、「入力されたデジタル信号(送信信号入力)に暗号処理が施された送信デジタル信号(送信信号出力)を、前記暗号処理信号の解読が可能な受信装置側に送信する暗号装置」は、本願補正発明の「入力された平文データに正しく所定の暗号アルゴリズムの暗号処理が施されたと検出された暗号文データを、前記暗号文データを解読可能な受信装置側に送信する暗号化装置」と実質的な差異はない。 (b)引用例1の発明の、「前記入力されたデジタル信号を暗号化して送信デジタル信号を出力する暗号回路」は、暗号化ブロック単位ごととは言えないまでも、送信信号入力又はテスト信号のような、デジタル信号を暗号化して出力する点では本願補正発明と共通するので、本願補正発明の「前記平文データを暗号化して暗号文データを出力する暗号化手段」と差異はない。 (c)引用例1の発明の、「前記暗号回路で暗号化したデジタル試験信号に解読処理を施して解読文データを出力する解読回路」は、その解読処理が、所定の解読アルゴリズムの解読処理といえることは自明であるから、本願補正発明の「前記暗号化手段から出力された暗号文データに所定の解読アルゴリズムの解読処理を施して解読文データを出力する解読化手段」と実質的な差異はない。 (d)引用例1の発明の「前記暗号回路で暗号化したデジタル試験信号を記憶し所定時間後に前記解読回路に供給する記憶回路」は、暗号化したデータを記憶するので、平文データを記憶するものではないが、上位概念ではデータを記憶する記憶回路であるから、本願補正発明の「データを記憶する記憶手段」である点では共通する。 また、引用例1の発明の、前記暗号化したデジタル試験信号を記憶し「所定時間後に前記解読回路に供給する記憶回路」は、所定の時間遅延させて出力させているとみることができるので、本願補正発明の「前記記憶手段に記憶された前記データを、遅延させて出力する遅延手段」と実質的な差異はない。 (e)引用例1の発明の「前記解読回路の出力と前記テスト信号発生回路の試験信号とを比較しこの比較結果を出力する比較判定回路」は、該試験信号は遅延手段から出力された信号ではないが、暗号化されていないので平文データではあり、比較判定に一致、不一致をみるのは通常のものうちであるので、前記比較判定回路の比較、判定として示されているに等しいことであり、これらをふまえると、前記比較判定回路は、本願補正発明の「平文データと、前記解読化手段で解読されて出力される前記解読文データを比較し、平文データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力する比較手段」と実質的な差異はない。 (f)引用例1の発明の「制御回路」は、本願補正発明の「制御手段」に対応する。 (g)引用例1の発明の「送信デジタル信号を前記受信装置側に出力する出力端子」は、本願補正発明の「前記暗号化データを前記受信装置に出力する出力端子」と差異はない。 したがって、引用例1の発明と本願補正発明とは、次の構成を有する発明である点では一致し、そして、次の点で相違している。 〈一致点〉 「入力された平文データに正しく所定の暗号アルゴリズムの暗号処理が施されたと検出された暗号文データを、前記暗号文データを解読可能な受信装置側に送信する暗号化装置において、 前記平文データを暗号化して暗号文データを出力する暗号化手段と、 前記暗号化手段から出力された暗号文データに所定の解読アルゴリズムの解読処理を施して解読文データを出力する解読化手段と、 データを記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された前記データを、遅延させて出力する遅延手段と、 平文データと、前記解読化手段で解読されて出力される前記解読文データを比較し、平文データと前記解読化データとが不一致の場合には、不一致信号を出力する比較手段と、 制御手段と、 前記暗号化データを前記受信装置に出力する出力端子と、 を備えて構成されていることを特徴とする暗号化装置」 〈相違点1〉暗号化手段で暗号化し、記憶手段で記憶し、遅延手段で遅延させて出力するデータが、本願補正発明では、暗号化ブロック単位ごとのデータであり、平文データであるのに対し、引用例1の発明では、暗号化ブロック単位であるとは記載されておらず、暗号化したデジタル試験信号である点。 〈相違点2〉データを遅延させて出力する遅延手段が、本願補正発明では、暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、遅延させて出力するのに対し、引用例1の発明では、そのような処理時間に応じて、遅延させることは記載されていない点。(C.の記載を参照すると、メモリ3から読み出されて受信回路で解読処理されたテスト信号と、テスト信号発生回路からのテスト信号は、比較判定回路に同時に入力される。よって、暗号化されたデータの方が遅延されて出力される。) 〈相違点3〉制御手段が、本願補正発明では、不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御手段であるのに対し、引用例1の発明では、そのような制御をすることは記載されていない点。 (4)相違点についての当審判断 〈相違点1〉について 暗号化手段で暗号化し、記憶手段で記憶し、遅延手段で遅延させて出力するデータが、暗号化ブロック単位ごとであり、平文データである技術は、本願出願前周知の技術である。 即ち、例えば、特開平1-99341号公報には、「暗号装置に於いて信号を暗号化した後に復号すれば信号が元に戻る性質を利用して,1つの系で正常性を検査するようにしている。つまり,暗号化手段および復号手段が正常であれば,入力信号(平文)を暗号化処理し,その結果(復号化された平文)と元の入力信号(平文)が一致することを確認する検査をする。」(第2頁右下欄末行〜第3頁左上欄7行)、「例えば64ビットのブロックを単位とするブロック暗号方式の場合」(第4頁左上欄5行〜6行)と記載され、 第3の実施例として、図3を用いて、入力信号を入力信号保持手段7に書き込むとともに、処理手段に入力して暗号化し、処理手段で復号化し、この復号化した信号と、入力信号保持手段7に蓄積された信号とを比較手段に入力する旨記載(第3頁左下欄7行〜右下欄7行)されており、 この記載に示された技術は、暗号化手段(処理手段)で暗号化し、記憶手段(入力信号保持手段7)で記憶し、遅延手段(入力信号保持手段7)で遅延させて出力するデータが、暗号化ブロック単位ごとであり、平文データである技術であるといえる。 引用例1の発明において、暗号化手段で暗号化し、記憶手段で記憶し、遅延手段で遅延させて出力するデータを、暗号化ブロック単位ごととし、平文データとすることは、前記周知の技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。 〈相違点2〉暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、遅延させて出力する同期の技術は本願出願前周知の技術である。 即ち、前記特開平1-99341号公報には、前記のように、図3に関連して、入力信号を入力信号保持手段7に書き込むとともに、処理手段に入力して暗号化し、処理手段で復号化し、この復号化した信号と、入力信号保持手段7に蓄積された信号とを比較手段に入力する旨記載されており、この入力信号が入力信号保持手段に保持されている時間は、少なくとも、暗号化と復号化に要する時間を含み、暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、比較手段への入力が遅延される時間であることが読み取れるので、この点を加味すれば、暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、遅延させて出力する同期の周知技術が示されているといえる。 引用例1には、比較判定回路へ比較信号が同時に入力されることが記載されており、同時の入力において、入力信号の方を遅延させることは前記のように周知技術であるから、これに倣うこととし、引用例1の発明において、データを遅延させて出力する遅延手段が、暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、遅延させて出力するように成すことは、前記周知技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。 〈相違点3〉前記特開平1-99341号公報の周知技術を参酌した場合に、前記出力は、前記図3の比較手段の出力のように装置障害検出信号とすることができるものであるから、引用例1の比較手段からの出力信号は、装置障害検出信号としてもよく、しかも、障害検出時に暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替えることは常套手段(刊行物2には、スクランブラを含む第1の制御系の現用機器に異常が発生した場合にはスクランブラを含む第2の制御系である予備機器に切換える旨記載され、これは障害検出時に暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える技術に相当する。)であるから、引用例1の発明において、前記周知技術を参酌した場合に、制御手段を、不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御手段とすることは、前記刊行物2の技術乃至前記常套手段を参酌乃至適用することにより当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明によって得られる作用効果も、前記引用例1、2の記載及び前記周知の技術から当然予想される範囲内のものであり、格別顕著なものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び前記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において、第4項第2号の場合に準用するとしている同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)平成17年10月7日付の手続補正は前記のとおり却下された。 本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年7月15日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。 「平文データを入力して、所定の暗号アルゴリズムの暗号処理を施すことにより暗号文データを出力する暗号化装置において、 暗号化ブロック単位ごとに、前記平文データを暗号化して暗号文データを出力する暗号化手段と、 前記暗号化手段から出力された暗号文データに所定の解読アルゴリズムの解読処理を施して解読文データを出力する解読化手段と、 前記暗号化ブロック単位ごとに、前記平文データを記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された前記平文データを、前記暗号化手段と解読化手段の処理時間に応じて、前記暗号化ブロック単位ごとに、遅延させて出力する遅延手段と、 前記遅延手段から出力される平文データと、前記解読化手段で解読されて出力される前記解読文データを比較する比較手段と、 を備えて構成されていることを特徴とする暗号化装置。」 (2)引用例 引用例1とその記載事項、及び周知の技術は、前記2.の(2)、2.の(4)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.の(1)乃至2.の(4)で検討した本願補正発明から、補正前の特許請求の範囲の請求項1における、 暗号文、暗号化装置、比較手段に係る限定を省いたものであり、そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記(2)乃至(4)に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び前記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の限定部分である「不一致信号を受信すると、暗号化処理を行う他の暗号化手段に切替える制御手段」に対して示した引用例2は、前記限定の存在しない本願発明に対して用いるまでもなく、前記限定を省いた本願発明も、同様の理由により、引用例1及び前記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び、周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-10 |
結審通知日 | 2006-05-16 |
審決日 | 2006-05-29 |
出願番号 | 特願平8-60323 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 重徳 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
林 毅 長島 孝志 |
発明の名称 | 暗号化装置及び暗号化方法 |
代理人 | 鈴木 伸夫 |
代理人 | 脇 篤夫 |