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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1140082
審判番号 不服2004-6696  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-02 
確定日 2006-07-14 
事件の表示 平成 7年特許願第130597号「光ヘッドアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-329495〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成7年5月29日に出願されたものであって、平成16年2月25日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、平成16年4月2日付けで特許法第121条第1項の審判が請求され、平成16年4月23日付けで手続補正書が提出されたものである。


II.平成16年4月23日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年4月23日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について補正の内容
本件補正による補正内容は、特許請求の範囲においては、
「【請求項1】 柱面を有し、この柱面の内の第1及び第2の主面が互に対向している柱状のレンズホルダと、このレンズホルダの一端面に保持されたピックアップ用のレンズと、前記レンズホルダの前記柱面にこのレンズホルダの中心軸に実質的に直交するように巻回されるフォーカシングコイルと、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第3及び第4のトラッキングコイルとを有する光ヘッドアクチュエータにおいて、
上下方向及び左右方向に変位可能となるように前記レンズホルダを支持する固定ベースとして機能するアクチュエータベースを有し、前記レンズホルダの両側に上下にそれぞれ、弾性を有する線材からなるサスペンションワイヤの一端が固定され、これら4本のサスペンションワイヤの他端が前記アクチュエータベースに固定されており、
断面凹型のヨークの互に対向する二つの内面には、第1及び第2のマグネットが固定され、これら第1及び第2のマグネットがそれぞれ前記第1及び前記第2の主面に対向するように、断面凹型のヨークの一端面が前記アクチュエータベースに固定され、
前記レンズホルダを変位させるための駆動装置は、前記フォーカシングコイル、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル、及び前記第3及び前記第4のトラッキングコイルと、前記アクチュエータベースに設けられた前記ヨーク、前記第1及び前記第2のマグネットとからなる磁気発生部とによって構成され、
前記レンズホルダは、前記レンズホルダの柱面に設けられ、前記レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在する凹溝からなるフォーカシングコイル受部を有し、このフォーカシングコイル受部に沿って前記フォーカシングコイルが巻回されており、
前記レンズホルダは、更に、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第1及び第2のトラッキングコイル巻枠部と、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第3及び第4のトラッキングコイル巻枠部とを有し、前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部に前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイルが巻回されていることを特徴とする光ヘッドアクチュエータ。
【請求項2】 前記第1及び前記第2のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第1の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第3及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第2の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドアクチュエータ。」
というものであったところ、
「【請求項1】 柱面を有し、この柱面の内の第1及び第2の主面が互に対向している柱状のレンズホルダと、このレンズホルダの一端面に保持されたピックアップ用のレンズと、前記レンズホルダの前記柱面にこのレンズホルダの中心軸に実質的に直交するように巻回されるフォーカシングコイルと、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第3及び第4のトラッキングコイルとを有する光ヘッドアクチュエータにおいて、
上下方向及び左右方向に変位可能となるように前記レンズホルダを支持する固定ベースとして機能するアクチュエータベースを有し、前記レンズホルダの両側に上下にそれぞれ、弾性を有する線材からなるサスペンションワイヤの一端が固定され、これら4本のサスペンションワイヤの他端が前記アクチュエータベースに固定されており、
断面凹型のヨークの互に対向する二つの内面には、第1及び第2のマグネットが固定され、これら第1及び第2のマグネットがそれぞれ前記第1及び前記第2の主面に対向するように、断面凹型のヨークの一端面が前記アクチュエータベースに固定され、
前記レンズホルダを変位させるための駆動装置は、前記フォーカシングコイル、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル、及び前記第3及び前記第4のトラッキングコイルと、前記アクチュエータベースに設けられた前記ヨーク、前記第1及び前記第2のマグネットとからなる磁気発生部とによって構成され、
前記レンズホルダは、前記レンズホルダの柱面に設けられ、前記レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在する凹溝からなるフォーカシングコイル受部を有し、このフォーカシングコイル受部に沿って前記フォーカシングコイルが巻回されており、
前記レンズホルダは、更に、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第1及び第2のトラッキングコイル巻枠部と、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第3及び第4のトラッキングコイル巻枠部とを有し、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第1の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第3及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第2の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第1のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第2のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第3のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメントに前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイルが巻回されていることを特徴とする光ヘッドアクチュエータ。」
と、請求項2を削除し、請求項1においては上記下線の構成要件を追加するものである。また、発明の詳細な説明の【0012】は、上記請求項の補正内容と同じ構成要件を付加するものである。

2.本件補正の目的
本件補正は、請求項1をみると、第1〜第4までの各トラッキングコイル巻枠部に関して、一対の巻枠エレメントからなる構成とフォーカシングコイル受部との配置状態との構成を限定して減縮するものであって、特許請求の範囲全体としては特許法第17条の2第4項第1号及び第2号の規定を満たすものと認める。

3.独立特許要件
次に、本件補正の請求項1に記載された発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するか)否かについて、以下に検討する。

(3-1)本件補正後発明
本件補正の【請求項1】に記載された発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 柱面を有し、この柱面の内の第1及び第2の主面が互に対向している柱状のレンズホルダと、このレンズホルダの一端面に保持されたピックアップ用のレンズと、前記レンズホルダの前記柱面にこのレンズホルダの中心軸に実質的に直交するように巻回されるフォーカシングコイルと、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第3及び第4のトラッキングコイルとを有する光ヘッドアクチュエータにおいて、
上下方向及び左右方向に変位可能となるように前記レンズホルダを支持する固定ベースとして機能するアクチュエータベースを有し、前記レンズホルダの両側に上下にそれぞれ、弾性を有する線材からなるサスペンションワイヤの一端が固定され、これら4本のサスペンションワイヤの他端が前記アクチュエータベースに固定されており、
断面凹型のヨークの互に対向する二つの内面には、第1及び第2のマグネットが固定され、これら第1及び第2のマグネットがそれぞれ前記第1及び前記第2の主面に対向するように、断面凹型のヨークの一端面が前記アクチュエータベースに固定され、
前記レンズホルダを変位させるための駆動装置は、前記フォーカシングコイル、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル、及び前記第3及び前記第4のトラッキングコイルと、前記アクチュエータベースに設けられた前記ヨーク、前記第1及び前記第2のマグネットとからなる磁気発生部とによって構成され、
前記レンズホルダは、前記レンズホルダの柱面に設けられ、前記レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在する凹溝からなるフォーカシングコイル受部を有し、このフォーカシングコイル受部に沿って前記フォーカシングコイルが巻回されており、
前記レンズホルダは、更に、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第1及び第2のトラッキングコイル巻枠部と、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第3及び第4のトラッキングコイル巻枠部とを有し、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第1の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第3及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第2の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第1のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第2のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第3のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメントに前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイルが巻回されていることを特徴とする光ヘッドアクチュエータ。」(以下「本件補正後発明」という。)

(3-2)刊行物について
これに対して、拒絶査定の理由で引用された刊行物である、特開平2-87961号公報(以下「刊行物1」という。)には、リニアアクチュエータに関するものであって、図面と共に以下の記載がある。
(i)「〔実施例〕 次に本発明について、図面を参照して説明する。第1図は本発明の一実施例の斜視図を示す。
レンズホルダ20に取付けられた対物レンズ1は、その光軸方向及び光軸と直交する方向(トラッキング方向)に移動可能に4本のバネ10により、ベース100に保持されている。
対物レンズ光軸と直交する方向に磁極を有する永久磁石3A,3Bが対物レンズ光軸を挟持する様に配置され、永久磁石3A,3Bとセンタヨーク2A,2Bの間に矩形状に巻き込んだトラックコイル4a,4b及び5a5bが配設されている。永久磁石3A,3Bには対物レンズ1の光軸と直交する方向で、トラックコイル3A,3Bの光軸方向中心位置近傍に矩形ミゾが形成されている。
上記構成により得られる永久磁石3A,3Bの磁束密度分布は、第2図に、示す実測値より矩形ミゾを形成した事により中心部近傍の磁束密度が凹状に減少する。これより、第3図Aに示す様に、前記磁束密度分布の中のトラックフィルが磁束密度分布の中心にある場合と、第3図C下方向にある場合及び第3図C下方向にある場合、それぞれにおいて図中トラックコイル上方断面部と、下方断面部に受ける磁束密度の変化が少なくなる。したがって第4図に示す様にトラックコイルに電流が流れる事により発生するモーメントを第5図に示すがモーメントM1及びモーメントM2に差が少なくなり、レンズホルダ20に発生する不用な回転モーメントは極めて少なくなり、トラックコイルに光軸と平行に電流が流れる事により発生する光軸と直交する力の成分のみが有効となり良好なトラッキング動作特性が得られる。
以上説明した様に本発明は、トラックコイルを挟持する永久磁石にミゾを形成するという簡単な構成で磁束密度を大きく減少させる事なく、良好なトラッキング動作特性を有する対物レンズアクチュエータを提供できる効果がある。
なお、本発明の効果は、実施例によるアクチュエータ構成のみならず、本例同様光軸方向と直交する磁極を有する対物レンズアクチュエータで光軸と平行に配置した矩形状及びリング状のトラックコイルを該永久磁石の発生する磁束中に配置してトラッキング動作を行う構成のアクチュエータにはすべて同様の効果が得られる事は言うまでもない。
さらに永久磁石に形成するミゾは、その形を変化させる事も容易である。」(第2頁左下欄第13行〜第3頁左上欄第19行目)
(ii)第1図には、大要、光ヘッドアクチュエータの上方斜視図であって、柱面形状で対物レンズ1を有しトラックコイル4a,4bとトラックコイル5a,5bとの面が対向している「レンズホルダ20」、レンズホルダ20の両側上下に弾性を有する線材からなるバネ10の一端が固定され、これら4本のバネ10の他端がベース100に固定されている「4本のバネ10」、上下方向及び左右方向に変位可能なようにレンズホルダ20を支持する「ベース100」、断面凹型のヨークの互いに対向する2つの内面に永久磁石3A,3Bが固定され、これらの永久磁石がレンズホルダ20の各トラックコイル面に対向するようにベース100に固定されている「永久磁石3A,3B」と「センタヨーク2A,2B」、レンズホルダ20の柱面にレンズホルダの中心軸に直交するように卷回されている「フォーカスコイル6」、フォーカスコイルの卷回方向における両端面に設けられた「トラックコイル4a,4b及び5a,5b」等からなる「対物レンズアクチュエータ」の具体的配置構成の記載がある。
(以下「刊行物1に記載の発明」という。)

(3-3)対比・判断
〔対比〕
a.刊行物1に記載の発明における「レンズホルダ20」であるが、第1図のリニアアクチュエータの上方斜視図を参酌、具体的にその構成をみていくと、ここには本件補正後発明における「柱面を有し、この柱面の内の第1及び第2の主面が互に対向している柱状のレンズホルダ」に相当する記載がある。
b.刊行物1に記載の発明における「トラックコイル4a,4b及び5a,5b」及び、第1図に記載のある「フォーカスコイル6」と、これら各コイルが卷回されている「レンズホルダ20」の配置構成であるが、第1図のリニアアクチュエータの上方斜視図を参酌、相互の結合構成を具体的にみていくと、ここには本件補正後発明における「レンズホルダの一端面に保持されたピックアップ用のレンズと、前記レンズホルダの前記柱面にこのレンズホルダの中心軸に実質的に直交するように巻回されるフォーカシングコイルと、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第3及び第4のトラッキングコイル」「レンズホルダは、前記レンズホルダの柱面に設けられ、前記レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在するフォーカシングコイル受部を有し、このフォーカシングコイル受部に沿って前記フォーカシングコイルが巻回」及び「レンズホルダは、更に、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に第3及び第4のトラッキングコイルとを有し」に相当する記載がある。
c.刊行物1に記載の発明における「対物レンズアクチュエータ」及び「ベース100」であるが、第1図のリニアアクチュエータの上方斜視図を参酌、具体的にみていくと、ここには本件補正後発明における「上下方向及び左右方向に変位可能となるように前記レンズホルダを支持する固定ベースとして機能するアクチュエータベースを有し」に相当する記載がある。
d.刊行物1に記載の発明における「4本のバネ10」であるが、第1図のリニアアクチュエータの上方斜視図を参酌、具体的な支持構成をみていくと、こには本件補正後発明における「レンズホルダの両側に上下にそれぞれ、弾性を有する線材からなるサスペンションワイヤの一端が固定され、これら4本のサスペンションワイヤの他端が前記アクチュエータベースに固定」に相当する記載がある。
e.刊行物1に記載の発明における「センタヨーク2A、2B」と「永久磁石3A、3B」の配置構成であるが、第1図のリニアアクチュエータの上方斜視図を参酌、具体的にみていくと、ここには本件補正後発明における「断面凹型のヨークの互に対向する二つの内面には、第1及び第2のマグネットが固定され、これら第1及び第2のマグネットがそれぞれ前記第1及び前記第2の主面に対向するように、断面凹型のヨークの一端面が前記アクチュエータベースに固定」に相当する記載がある。
f.刊行物1に記載の発明及び第1図に記載の「フォーカスコイル6」「トラックコイル4a,4b及び5a,5b」「センタヨーク2A、2B」及び「永久磁石3A、3B」等に係る磁気発生部であるが、第1図のリニアアクチュエータの上方斜視図を参酌、具体的にみていくと、これは本件補正後発明における「レンズホルダを変位させるための駆動装置は、前記フォーカシングコイル、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル、及び前記第3及び前記第4のトラッキングコイルと、前記アクチュエータベースに設けられた前記ヨーク、前記第1及び前記第2のマグネットとからなる磁気発生部」に相当する記載のものがある。

結局、本件補正後発明と、特に、第1図を参酌した刊行物1に記載の発明との[一致点]及び[相違点]は以下のようになる。
[一致点]
「柱面を有し、この柱面の内の第1及び第2の主面が互に対向している柱状のレンズホルダと、このレンズホルダの一端面に保持されたピックアップ用のレンズと、前記レンズホルダの前記柱面にこのレンズホルダの中心軸に実質的に直交するように巻回されるフォーカシングコイルと、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第3及び第4のトラッキングコイルとを有する光ヘッドアクチュエータにおいて、
上下方向及び左右方向に変位可能となるように前記レンズホルダを支持する固定ベースとして機能するアクチュエータベースを有し、前記レンズホルダの両側に上下にそれぞれ、弾性を有する線材からなるサスペンションワイヤの一端が固定され、これら4本のサスペンションワイヤの他端が前記アクチュエータベースに固定されており、
断面凹型のヨークの互に対向する二つの内面には、第1及び第2のマグネットが固定され、これら第1及び第2のマグネットがそれぞれ前記第1及び前記第2の主面に対向するように、断面凹型のヨークの一端面が前記アクチュエータベースに固定され、
前記レンズホルダを変位させるための駆動装置は、前記フォーカシングコイル、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル、及び前記第3及び前記第4のトラッキングコイルと、前記アクチュエータベースに設けられた前記ヨーク、前記第1及び前記第2のマグネットとからなる磁気発生部とによって構成され、
前記レンズホルダは、前記レンズホルダの柱面に設けられ、前記レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在するフォーカシングコイル受部を有し、このフォーカシングコイル受部に沿って前記フォーカシングコイルが巻回されており、
前記レンズホルダは、更に、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に第3及び第4のトラッキングコイルとを有し、前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイルが巻回されていることを特徴とする光ヘッドアクチュエータ。」の点。

[相違点]
イ.フォーカシングコイルの巻回であるが、本件補正後発明のものは「レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在する凹溝からなるフォーカシングコイル受部」と、特に『凹溝』を有しているものの、刊行物1に記載の発明にはそのような構成がみあたらない点。
ロ.第1〜第4のトラッキングコイルの巻回であるが、本件補正後発明のものは、フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された巻枠部を有して「前記第1及び前記第2のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第1の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第3及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第2の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第1のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第2のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第3のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント」と、特に、各トラッキングコイルが『一対の巻枠エレメント』を有しているものの、刊行物1に記載の発明にはそのような構成がみあたらない点。

〔判断〕
上記、相違点イ.、ロ.の各構成であるが、フォーカシングコイルを『凹溝』を有して巻回し、その外周上側に『一対の巻枠エレメント』を形成してトラッキングコイルを巻回してなる、フォーカシングコイルとトラッキングコイルの配置構成は、拒絶査定の理由で引用された刊行物である、特開平6-274910号公報(以下「刊行物2」という。)の、特に、第2図のコイルボビン12において記載されているし、他に、特開平5-342605号公報(各図面参照)に記載があるように周知構成である。
ないしは、コイルを直接ホルダ等に巻回していく場合には案内と正確な巻回を確保する手段として慣用的事項の構成にすぎない。

したがって、刊行物1に記載の発明のものにおいても、上記各相違点である各コイルの巻回構成を、上記刊行物2ないし周知技術を適宜採用して本件補正後発明のようにしていくことは当業者が容易に想到できるものである。

結局、本件補正後発明は、刊行物1及び刊行物2ないし周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

4.補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成16年4月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る発明は、平成15年6月17日付け手続補正で補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、その【請求項1】の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】 柱面を有し、この柱面の内の第1及び第2の主面が互に対向している柱状のレンズホルダと、このレンズホルダの一端面に保持されたピックアップ用のレンズと、前記レンズホルダの前記柱面にこのレンズホルダの中心軸に実質的に直交するように巻回されるフォーカシングコイルと、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第1及び第2のトラッキングコイルと、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に設けられる第3及び第4のトラッキングコイルとを有する光ヘッドアクチュエータにおいて、
上下方向及び左右方向に変位可能となるように前記レンズホルダを支持する固定ベースとして機能するアクチュエータベースを有し、前記レンズホルダの両側に上下にそれぞれ、弾性を有する線材からなるサスペンションワイヤの一端が固定され、これら4本のサスペンションワイヤの他端が前記アクチュエータベースに固定されており、
断面凹型のヨークの互に対向する二つの内面には、第1及び第2のマグネットが固定され、これら第1及び第2のマグネットがそれぞれ前記第1及び前記第2の主面に対向するように、断面凹型のヨークの一端面が前記アクチュエータベースに固定され、
前記レンズホルダを変位させるための駆動装置は、前記フォーカシングコイル、前記第1及び前記第2のトラッキングコイル、及び前記第3及び前記第4のトラッキングコイルと、前記アクチュエータベースに設けられた前記ヨーク、前記第1及び前記第2のマグネットとからなる磁気発生部とによって構成され、
前記レンズホルダは、前記レンズホルダの柱面に設けられ、前記レンズホルダの中心軸に実質的に直交する方向に延在する凹溝からなるフォーカシングコイル受部を有し、このフォーカシングコイル受部に沿って前記フォーカシングコイルが巻回されており、
前記レンズホルダは、更に、前記第1の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第1及び第2のトラッキングコイル巻枠部と、前記第2の主面の前記フォーカシングコイルの巻回方向における両端部に突設された第3及び第4のトラッキングコイル巻枠部とを有し、前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部に前記第1、前記第2、前記第3、及び前記第4のトラッキングコイルが巻回されていることを特徴とする光ヘッドアクチュエータ。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物
これに対して、原査定で引用された各刊行物及び記載された事項は、上記したとおりである(上記「II.〔理由〕3.(3-2)の刊行物について」を参照)。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.で検討した本件補正後発明から、トラッキングコイルの巻枠構成の手段として「前記第1及び前記第2のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第1の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第3及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の各々は、前記フォーカシングコイル受部を間に挟んだ状態に前記第2の主面に突設された一対の巻枠エレメントを有し、前記第1のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第2のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、前記第3のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント、及び前記第4のトラッキングコイル巻枠部の一対の巻枠エレメント」の、特に上記下線部分の構成を削除して上位概念の構成としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を実質的に全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正後発明が、上記「II.〔理由〕3.(3-3)の対比・判断」に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2ないし周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に記載された発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもので拒絶をすべきものである。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-08 
結審通知日 2006-05-10 
審決日 2006-05-31 
出願番号 特願平7-130597
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 潤  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 中村 豊
吉村 伊佐雄
発明の名称 光ヘッドアクチュエータ  
代理人 池田 憲保  
代理人 後藤 洋介  

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