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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1140191 |
審判番号 | 不服2003-10686 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-12 |
確定日 | 2006-07-18 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第240570号「系切替制御方法および系切替システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月30日出願公開、特開平11- 85644〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成9年9月5日の出願であって、その請求項8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項8に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項8】 現用系サーバと予備系サーバおよびクライアントを互いにネットワークを介して接続し系の切替制御を行うシステムであって、 前記クライアントは、前記現用系サーバおよび予備系サーバそれぞれのアドレスをあらかじめ格納する格納部と、前記現用系サーバに対する第1の接続確立要求情報を生成し、前記格納部からアドレスを参照し、前記現用系サーバに対し第1の接続確立を要求する機能と、送信先サーバの障害を検知した場合に、前記予備系サーバに対する第2の接続確立要求情報を生成し、前記予備系サーバに対し前記第2の接続確立を要求する機能とを有し、 前記予備系サーバは、前記現用系サーバの生存確認を行う機能と、前記現用系サーバが生存中である場合は、前記クライアントからの接続確立処理を拒否する機能とを有することを特徴とする系切替システム。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-34814号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (1)「【0013】図1を参照すると、本発明の一実施例である情報処理装置の予備切り替えシステムは、IPアドレスの値としてIPアドレス110を持つ情報処理装置100と、IPアドレスの値としてIPアドレス210を持つ情報処理装置200と、IPアドレスの値としてIPアドレス310を持つ情報処理装置300とがローカルエリアネットワークで接続されて構成されている。なお、情報処理装置300は、現用装置である情報処理装置200の予備装置である。 【0014】情報処理装置100は、アプリケーションプログラム(以下、アプリケーションとする)220またはアプリケーション320と通信を行うアプリケーション120と、現用装置と予備装置とを切り替える切り替え制御部130と、IPアドレスを元にしてアプリケーション間の通信を処理する通信処理部140とを含む。 【0015】情報処理装置200は、アプリケーション220を含む。 【0016】情報処理装置300は、アプリケーション320を含む。 【0017】切り替え制御部130は、通信元となる情報処理装置と通信先となる情報処理装置との対応関係を示す情報を定義する図示しない通信装置情報テーブルを有する。この通信装置情報テーブルは、通信先の情報処理装置のIPアドレスと、該情報処理装置が現用装置であるか、予備装置であるかの情報をも含んでいる。例えば、本実施例においては、情報処理装置100は、現用装置である情報処理装置200(IPアドレス210)と、予備装置である情報処理装置300(IPアドレス310)と通信する旨の情報が定義されている。」(4頁左欄47行〜右欄26行) (2)「【0024】アプリケーション120は、アプリケーション220と通信を行うために、仮想IPアドレスのIPアドレス400との通信を通信処理部140に要求する(ステップ56)。」(5頁左欄13行〜16行) (3)「【0027】次に情報処理装置200が障害となり情報処理装置300に切り替えを行う場合の処理について説明する。 【0028】切り替え制御部130は、情報処理装置200に障害が発生したことを認識する(ステップ59)と、通信制御部140に対して、仮想IPアドレスであるIPアドレス400と、情報処理装置200の予備装置である情報処理装置300のIPアドレスの値であるIPアドレス310との対応付けを要求する(ステップ5A)。 【0029】通信処理部140は、切り替え制御部130から仮想IPアドレスであるIPアドレス400とIPアドレス310との対応付けを要求されると、IPアドレス変換テーブルにおいて仮想IPアドレスであるIPアドレス400に対応するIPアドレスの値を、IPアドレス210からIPアドレス310に変更する(ステップ5B)。 【0030】図3において、IPアドレス変換テーブルには、仮想IPアドレスの値であるIPアドレス400に対応するIPアドレスの値としてIPアドレス310が設定されている。 【0031】アプリケーション120が、仮想IPアドレスのIPアドレス400との通信を通信処理部140に要求する(ステップ5C)と、通信処理部140は、IPアドレス変換テーブルを参照して、アプリケーション120から要求されたIPアドレス400に対応するIPアドレスがIPアドレス310であることを認識し(ステップ5D)、該IPアドレス310に対して通信を行う(ステップ5E)。 【0032】以上により、アプリケーション120は、情報処理装置200に代わって現用装置となった情報処理装置300上のアプリケーション320と通信することができる。」(同頁左欄26行〜右欄8行) 以上の記載から、引用例には、次の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されているものと認める。 「IPアドレスの値としてIPアドレス110を持つ情報処理装置100と、IPアドレスの値としてIPアドレス210を持つアプリケーション220を含む情報処理装置200と、IPアドレスの値としてIPアドレス310を持つアプリケーション320を含む情報処理装置300とがローカルエリアネットワークで接続されて構成される情報処理装置の予備切り替えシステムであって、 前記情報処理装置100は、前記アプリケーションプログラム(以下、アプリケーションとする)220または前記アプリケーション320と通信を行うアプリケーション120と、現用装置と予備装置とを切り替える切り替え制御部130と、IPアドレスを元にしてアプリケーション間の通信を処理する通信処理部140とを含み、前記切り替え制御部130は、通信先の情報処理装置のIPアドレスと、該情報処理装置が現用装置であるか、予備装置であるかの情報をも含み、通信元となる情報処理装置と通信先となる情報処理装置との対応関係を示す情報を定義する通信装置情報テーブルを有し、前記アプリケーション120は、前記アプリケーション220と通信を行うために、仮想IPアドレスのIPアドレス400との通信を前記通信処理部140に要求し、前記情報処理装置200が障害となり前記情報処理装置300に切り替えを行う場合、前記アプリケーション120が、仮想IPアドレスのIPアドレス400との通信を前記通信処理部140に要求すると、前記通信処理部140は、前記IPアドレス変換テーブルを参照して、前記アプリケーション120から要求されたIPアドレス400に対応するIPアドレスがIPアドレス310であることを認識し、該IPアドレス310に対して通信を行うことにより、前記アプリケーション120は、前記情報処理装置200に代わって現用装置となった前記情報処理装置300上の前記アプリケーション320と通信することができる予備切り替えシステム。」 3.対比 本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「ローカルエリアネットワーク」は、本願発明の「ネットワーク」に相当し、引用例発明の「情報処理装置の予備切り替えシステム」は、本願発明の「系の切替制御を行うシステム」にそれぞれ相当する。 引用例発明の「情報処理装置100」の「アプリケーション120」は、「情報処理装置200」の「アプリケーション220」及び「情報処理装置300」の「アプリケーション320」と通信を行うものであり、情報処理装置200に障害が発生した場合には情報処理装置300に切り替えを行うものであるから、引用例発明の「情報処理装置100」、「情報処理装置200」及び「情報処理装置300」は、それぞれ本願発明の「クライアント」、「現用系サーバ」、「予備系サーバ」に相当するものと認められる。 引用例発明の「通信装置情報テーブル」は、「通信先の情報処理装置のIPアドレスと、該情報処理装置が現用装置であるか、予備装置であるかの情報をも含み、通信元となる情報処理装置と通信先となる情報処理装置との対応関係を示す情報を定義する」ものであるから、本願発明の「現用系サーバおよび予備系サーバそれぞれのアドレスをあらかじめ格納する格納部」に相当する。 引用例発明は、情報処理装置100のアプリケーション120が、アプリケーション220と通信を行うために、仮想IPアドレスのIPアドレス400との通信を前記通信処理部140に要求するものであるから、引用例発明のクライアントは、「現用系サーバに対する第1の接続確立要求情報を生成し、格納部からアドレスを参照し、現用系サーバに対し第1の接続確立を要求する機能」を有するものと認められる。 同じく、引用例発明は、「情報処理装置200が障害となり前記情報処理装置300に切り替えを行う場合、前記アプリケーション120が、仮想IPアドレスのIPアドレス400との通信を前記通信処理部140に要求すると、前記通信処理部140は、前記IPアドレス変換テーブルを参照して、前記アプリケーション120から要求されたIPアドレス400に対応するIPアドレスがIPアドレス310であることを認識し、該IPアドレス310に対して通信を行うことにより、前記アプリケーション120は、前記情報処理装置200に代わって現用装置となった前記情報処理装置300上の前記アプリケーション320と通信することができる」から、引用例発明のクライアントは、「送信先サーバの障害を検知した場合に、予備系サーバに対する第2の接続確立要求情報を生成し、予備系サーバに対し前記第2の接続確立を要求する機能」を有するものと認められる。 以上総合して、両者は、 「現用系サーバと予備系サーバおよびクライアントを互いにネットワークを介して接続し系の切替制御を行うシステムであって、 前記クライアントは、前記現用系サーバおよび予備系サーバそれぞれのアドレスをあらかじめ格納する格納部と、前記現用系サーバに対する第1の接続確立要求情報を生成し、前記格納部からアドレスを参照し、前記現用系サーバに対し第1の接続確立を要求する機能と、送信先サーバの障害を検知した場合に、前記予備系サーバに対する第2の接続確立要求情報を生成し、前記予備系サーバに対し前記第2の接続確立を要求する機能とを有する系切替システム」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願発明の予備系サーバは、現用系サーバの生存確認を行う機能を有するのに対し、引用例発明の予備系サーバは現用系サーバの生存確認を行う機能を有しない点。 [相違点2]本願発明の予備系サーバは、現用系サーバが生存中である場合は、前記クライアントからの接続確立処理を拒否する機能を有するのに対し、引用例発明の予備系サーバは当該機能を有しない点。 4.判断 [相違点1] 一般に、予備系が現用系と共に稼働状態にある、所謂ホットスタンバイ構成のシステムにおいて、現用系、予備系共に生存確認を行うことは周知(特開平7-319817号公報「センタバックアップ監視手段14は、業務用AP12の動作状況を監視しており、業務用AP12が障害時にその旨をセンタシステム2のセンタバックアップ監視手段24へ通知する。センタバックアップ監視手段14とセンタバックアップ監視手段24とは、互いに相手センタの動作状況を監視し合っている。」(4頁左欄46行〜右欄1行)、特開平8-106426号公報「図3において2台のサーバ機31及び32は、基本的に同じソフトウェア構成を持っており、図3中のサーバ機31ではNFSサーバの場合のソフトウェア構成を示してある。図3中のサーバ機31中において、現用系HAモニタ305はサーバ機31からの鼓動メッセージを、サーバ間接続用伝送路203を通してサーバ機32に送出し、待機系HAモニタ306はサーバ機32からの鼓動メッセージを、サーバ間接続用伝送路204を通して受け取り、これにより相互に障害発生の有無を監視している。」(8頁左欄40行〜49行)、及び、特開平9-218842号公報「現在、「運用α」が活性状態であり、「運用β」が非活性状態である。図28はホットスタンバイ切り換えの状況を示す図である。2つのサーバ20,30が共に正常に動作している状態(図中、上側)では、端末63,64やシステム51からの業務Aの要求142は、現用であるサーバ20への要求143として振り分けられている。この時、双方のサーバ20,30内の状態管理エージェント23,33は、定期的に通信を行う事により、互いに監視し合っている。従って、一方のサーバがダウンすると、他方のサーバ内の状態管理エージェントがそのことを検出する仕組みになっている。」(12頁左欄5行〜15行)の各記載参照(下線は審決付記。以下同様。))であるから、引用例発明の予備系サーバに現用系サーバの生存確認を行わせる機能を持たせることは当業者が容易になし得ることである。 [相違点2] 一般に、サーバ側でクライアントからの要求を拒否することは周知(特開平9-218842号公報「ところで、振り分け処理部112は、利用者からの要求が全アプリケーションの最大振り分け数の合計を超えた場合に、いずれかのサーバのアプリケーションが振り分け可能になるまで、待ち合わせ(保留)を行う機能を有している。この際、要求を無制限に待ち合わせると、通信制御装置が資源枯渇したり、ネットワーク利用者の端末がハングする事態が生じる。 【0109】そこで、振り分け条件グループに、業務の最大処理数を超えた場合の処理を決定するためのファクターとして「要求の最大保留数」と「要求の最大保留時間」を指定する。この指定により、待ち合わせの上限が設定される。従って、待ち合わせが「要求の最大保留数」と「要求の最大保留時間」とのいずれかを超えた場合には、振り分け処理部112から利用者に対して処理不能の旨の応答を返し、利用者からの要求を失敗させる。」(12頁左欄44行〜右欄9行)の記載を参照。)であり、予備系サーバの機能として、現用系サーバの生存確認を行って、現用系サーバが生存中である場合は、クライアントからの接続確立処理を拒否する機能を持たせる程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 また、本願発明の効果も、引用例及び周知技術に基づけば、当業者が普通に想起する範囲内のものである。 なお、審判請求人は、この機能に関し、「相手側サーバの生存を確認した場合には、他(予備系)クライアントからの接続確立要求を拒否することで、他(予備系)クライアントからの自サーバへの接続確立要求の集中を防止することができ」る旨主張しているが、このような要求集中に対する効果も、上記周知技術の効果として当然である。 5.むすび したがって、本願発明(請求項8に係る発明)は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-25 |
結審通知日 | 2006-05-26 |
審決日 | 2006-06-06 |
出願番号 | 特願平9-240570 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺谷 大亮 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 和田 志郎 |
発明の名称 | 系切替制御方法および系切替システム |
代理人 | 磯村 雅俊 |
復代理人 | 渡邉 昌幸 |
代理人 | 磯村 雅俊 |
復代理人 | 渡邉 昌幸 |