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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1140197
審判番号 不服2003-21260  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-31 
確定日 2006-07-18 
事件の表示 平成 8年特許願第222261号「植物育成礁」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月 3日出願公開、特開平10- 56893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年8月23日の出願であって、平成15年9月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月31日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月31日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「浮力体枠2と、この浮力体枠2の内域全面に展張された透水性の網状物または交絡状物からなる植物育成床3とを含んで構成されており、かつ、この植物育成床3の下面は、1〜4m2 の面積ごとに中央部のたわみ量が30cm以下になるようにたわみ防止材4により支持されて当該植物育成床3の揺れが防止できることを特徴とする植物植生礁。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「植物育成床」について、「網状物または交絡状物からなる植物育成床」との限定を付加するとともに、「植物育成床3の下面は、・・・たわみ防止材により支持されて当該植物育成床3の揺れが防止できる」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-131187号(実開昭63-38758号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「植物育成礁」に関して、図面とともに、以下の記載がある。
(イ)「2.実用新案登録請求の範囲
(1) 少なくとも2組の、浮力枠体と網状体とからなる一体枠構造物で、植物育成床を挟持一体化したことを特徴とする植物育成礁。」(明細書第1頁第4-7行)
(ロ)「網状体2としては、通常の天然繊維、合成繊維、無機繊維などがあげられる。中でも合成繊維、無機繊維が強度、耐候性、耐腐蝕性の上から選択される。この網状体2は浮力枠体1の上面または底面またはその中間のいずれかに固定してもよいが、通常は上面か底面である。
要するに網状物2は植物育成床3を保持することが可能であれば、目付や網構造、さらに網状物2を構成する素材やその種類に限定されないが、通常はモノフィラメントが耐候性の上から選択される。
本考案は、かかる浮力枠体1と網状体2からなる構造体を、少なくとも2組を用いて一体化させて、植物育成床3を少なくとも2枚の網状体2で挟持して固定するものである。」(同第6頁第1-15行)
(ハ)「本校案でいう植物育成床3とは、天然植物構造体または繊維構造体で構成される。要するに植物の種胞子を保持可能なものであればよく、水の吸い上げが可能な構造であれば適用できる。天然植物構造体とは、木板、木屑、オガ屑、カンナ屑、天然木皮、ヘチマ、草の葉、茎などをいう。また、繊維構造体とは天然繊維や合成繊維からなる糸状物、網状物、編織物、不織布などをいう。」(同第7頁第3-10行)
これらの記載及び図面の内容を総合すると、引用例1には、
「浮力枠体1と、この浮力枠体1の内域全面に展張された植物育成床3を保持した網状体2を含んで構成された植物育成礁」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認めるられる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭57-138328号公報(以下、「引用例2」という。)には、「水耕ワサビ栽培器」に関して、図面とともに、以下の記載がある。
(二)「本発明は、このような欠点を除き簡単にワサビ栽培ができるようにされたもので、従来のように石や、砂礫でワサビ田を作らず、水槽を作り、わき水、渓流水、地下水などを流し入れて、図面第1図のように、スポンジ1を、浮き2の付いた枠3に取り付け、スポンジの植え付け切り込み4にワサビを植え付けて水面に浮かせて栽培する。・・・」(第2頁左上欄第4-11行)
(ホ)「6は、スポンジが、たわむのを防ぐ、網」(第2頁左下欄第16行)
(ヘ)第1図を参照すると、スポンジ1の下面側の全体にわたって網6が設けられている。

(3)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「浮力枠体1」、「植物育成床3を保持した網状体2」及び「植物育成礁」は、本願補正発明の「浮力体枠」、「植物育成床」及び「植物植生礁」にそれぞれ相当する。また、「網状物2」が、目付や網構造であること、また引用例1発明の「植生育成床3」が天然植物構造体または繊維構造体で構成されるもの、水の吸い上げが可能な構造であるものであることを考慮すれば、透水性の網状物または交絡状物からなるものであるといえる。
そうすると、両者は、
「浮力体枠と、この浮力体枠の内域全面に展張された透水性の網状物または交絡状物からなる植物育成床とを含んで構成された植物植生礁」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
植物育成床の下面は、本願補正発明では、1〜4m2の面積ごとに中央部のたわみ量が30cm以下になるようにたわみ防止材により支持されて当該植物育成床の揺れが防止できるのに対して、引用例1発明では、たわみ防止材により支持されていない点。

(4)判断
[相違点]について
引用例2に記載されたスポンジは、水域に浮かばされ、植物であるワサビが植え付けられ、枠に取り付けられた平面状のものであるから本願発明の植物育成床に相当し、また引用例2に記載された網は、スポンジの下面側において、スポンジがたわむのを防ぐためにスポンジを支持させたものであるから本願発明のたわみ防止材に相当するといえる。とすると引用例2には、水域に浮かばされる栽培装置に関して、植物育成床の下面側の全体にわたってたわみ防止材を設けたことが記載されている(以下、「引用例2発明」という。)。
そして、引用例1記載の発明の植物育成床の下面の支持構造として、引用例2に記載されているたわみ防止材を採用することは、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明がともに水域に浮かばされる栽培装置という同一の技術分野に属するものであるから、当業者が容易に想到するものであり、植物育成床の揺れが防止できることは、引用例2に記載のたわみ防止材を採用したことによる当然の帰結にすぎない。
また、どのような部位のたわみ量をどの程度以下にするかについては、植物植生床のたわみ量の許容範囲を決定する設計事項であり、また前記たわみ量の上限をどの程度の面積ごとにするかについても設計事項であり、「植物育成床の1〜4m2の面積毎に中央部のたわみ量が30cm以下になるように」たわみ防止材に支持されることに臨界的意義も認められないから、「植物育成床の1〜4m2の面積毎に中央部のたわみ量が30cm以下になるように」たわみ防止材により支持されるように構成することは、当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計事項にすぎないものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1発明及び引用例2発明の記載から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び引用例2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月31日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月15日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「浮力体枠2、この浮力体枠2の内域全面に展張された透水性材料の床材からなる植物育成床3、およびこの植物植生床3の揺れを防止するたわみ防止材4とを含んで構成されており、かつ、前記植物育成床は1〜4m2の面積ごとに中央部のたわみ量が30cm以下になるように前記たわみ防止材4にて当該植生床の上面または下面が支持されていることを特徴とする植物植生礁。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「植物育成床」の限定事項である「網状物または交絡状物からなる」との構成を省くと共に、「植物育成床3の下面は、・・・たわみ防止材により支持されて当該植物育成床3の揺れが防止できる」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-22 
結審通知日 2006-05-24 
審決日 2006-06-06 
出願番号 特願平8-222261
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一坂田 誠  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 植物育成礁  
代理人 戸川 公二  

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