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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1140248
審判番号 不服2005-14678  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-01 
確定日 2006-07-19 
事件の表示 平成 8年特許願第241562号「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月10日出願公開、特開平 9-152486〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権を伴う平成8年9月12日の出願(優先日、平成7年9月28日)であって、平成17年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年8月1日に審判請求がなされるとともに、平成17年8月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年8月26日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月26日付け手続補正を却下する。
[理由]独立特許要件違反
平成17年8月26日付け(以下「本件補正」という。)により、補正前の特許請求の範囲の請求項11が、
請求項1として「基板の表面上に設けられた複数の光電変換素子を有するセンサーアレーと、前記基板が配置される基台と、前記基台の裏面側に設けられ、該センサーアレーを駆動或いは該センサーアレーからの信号を処理する半導体回路と、を備え、前記基台は、放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属を含み、前記半導体回路への放射線を吸収又は遮蔽することが可能であることを特徴とする撮影装置。」と補正された。
そして、この補正は、補正前の「光電変換素子の複数を有するセンサーアレー」を「基板の表面上に設けられた複数の光電変換素子を有するセンサーアレー」に限定し、また、補正前の「前記センサーアレーが配置される基台と」を「前記基板が配置される基台と」に限定し、さらに、補正前の「前記基台は、前記半導体回路への放射線を遮蔽する遮蔽部材を有する」を「前記基台は、放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属を含み、前記半導体回路への放射線を吸収又は遮蔽することが可能である」と限定したものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本件補正後の本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書及び図面からみて、請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2)引用刊行物に記載された発明
本願の優先日前の平成7年8月11日に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-209430号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「放射線固体検出パネル」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
<記載事項1>
「【0003】近年、放射線検出器が提供された。この放射線検出器は、X線撮影対象物を検出するのにハロゲン化銀フィルムを使用しない。放射線検出器では、入射する放射線を検出するとともに、その入射放射線を電気信号に変換するようになっている。この電気信号は、像を画素の集合として表すために利用される。放射線検出器は、X線に感応するが、撮影対象物の像をハロゲン化銀フィルムに形成するものではない。放射線検出器は、X線に含まれるエネルギーを電気信号に直接変換するものである。これらの電気信号がデジタル信号でない場合には、それらをデジタル化でき、X線照射された対象物の像を画素の集合としてデジタル的に表すことができる。そして、像のデジタル表現は従来のディスプレイ又はモニター上に映し出すことができるとともに、離れた場所に送ることもでき、電気的に格納することもでき、さらに印刷することにより、医師が慣れ親しんでいるものに類する可視的出力手段を提供できる。」
<記載事項2>
「【0013】
【発明の要旨】上記目的を達成するための本発明によれば、以下の構成の放射線固体検出パネルが提供される。
【0014】すなわち、この放射線固体検出パネルは、放射線を受光するようにしたものにして、互いに近接して配置した多数のモジュールを有する。そして、各モジュールは、縦横多数列に配列された感光検出器アレイを有し、各感光検出器は放射線感応領域を有するようになっている。各モジュールは、また、多数の横列の内の1つと多数の縦列の内の1つをアドレス指定することにより上記感光検出器の1つを選択的にアドレス指定するとともに、感光検出器アレイの上記1つの感光検出器からの出力を読み出すための回路手段を備えている。」
<記載事項3>
「【0022】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図に従って、詳細に説明する。
【0023】図1に放射線検出パネル10を示している。各感光モジュール12を、ガラス板のような平らな基板14の上に縦横複数列に多数配列して装填している。各モジュールすなわちタイル12は、図1において、上方から入射する放射線に感応する。感光モジュール12の上面にはけいこう物質層16を形成している。放射線検出パネル10の上面は保護正面プレート18で覆っている。このプレート18は、気密シール20と共に、下方のけいこう物質層16及び感光タイル12を保護している。基板16の下方には、鉛隔離板22を設けている。この鉛隔離板22は、オプションで設けられるが、下方の電子部品を放射線照射から保護するものである。鉛隔離板22の下方つまり放射線の入射と反対の側にプリント配線板24を設けている。このプリント配線板24は、放射線検出パネル10と連携する所定の電子部品26を含んでいる。各タイル12の電子部品に接続する共通基板14上の電気接点と、プリント配線板24の鉛隔離板22の反対側に装填された電子部品26との間はフレキシブルケーブル28により電気的に接続している。」
<記載事項4>
「【0024】操作時、撮影対象物に合わせて変調したのちに、X線を放射して、正面プレート18を含む上面に入射する。放射線は正面プレート18を通過してけいこう物質層16に達する。このけいこう物質層16は、X線を可視光線に変換するための光輝性物質として機能する。けいこう物質層16から発する可視光線は、各タイル12の感光検出器アレイにより検出される。感光検出器は可視光線を電気信号に変換する。この電気信号は、これと協働する電子回路に向けて読み出される。電気信号の信号値、通常はデジタル値は、撮影対象物のイメージパターンを表している。」
<記載事項5>
「【0028】図3に、2つのタイル12のためのタイル法を示している。タイルセンサ12のアレイはガラスプレート14上に装填されている。ガラスプレート14は、鉛プレート22によりプリント配線板24から隔離されている。鉛プレート22は通常の厚み寸法すなわち1mmの厚みを有している。この鉛プレートは、プリント配線板24上の面実装デバイス(SMT device)26を、X線放射が原因で生じ得る破壊から保護するために用いられている。(略)」

したがって、上記記載事項1乃至5,及び図1,3に基づけば、引用刊行物には、
「基板14の上に装槙され、縦横複数列に配列され可視光線を電気信号に変換する感光検出器を有する感光モジュール12と、基板14と、基板14の下方に設けられ、該感光モジュール12からの電気信号を読み出す電子部品26と、を備え、前記基板14は、その下方に鉛隔離板22が設けられた放射線検出パネル10。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

また、本願の優先日前に頒布された特開平6-308299号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「放射線撮影用カセッテ及び放射線画像読取装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
<記載事項6>
「【0028】また図7に示す放射線撮影用カセッテ2_1は、図5の例と同様に、基板層4_7,蓄積性蛍光体層4_4,保護層4_3を備えるとともに、更に、カセッテ蓋2_2の内面には鉛板4_6が接着固定されている。上記実施例において、光反射層4_5と鉛板4_6を別々に備える場合について記載したが、双方ともに備えてもよいことは言うまでもない。また鉛板4_6が、後方散乱による虚像の発生を防止するためにカセッテ蓋2_2に設けられているが、これ以外の後方散乱を防止する方法として、保護層4_3に鉛を多く含有させた所謂鉛ガラスを用いてもよい。この場合この保護層4_3は、蓄積性蛍光体層4_4の保護と放射線遮蔽との両方の役割を持つことになる。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「縦横複数列に配列され」は本願補正発明の「複数の」に相当し、以下同様に、「可視光線を電気信号に変換する感光検出器」は「光電変換素子」に、「感光モジュール12」は「センサーアレー」に、「基板14」は「基台」に、「下方」は「裏面側」に、「電気信号を読み出す」は「「駆動」或いは「信号を処理する」」に、「鉛」は「放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「電子部品26」と本願補正発明の「半導体回路」とは、電子デバイスの点で一致する。
さらに引用発明の「基板14は、その下方に鉛隔離板22が設けられた」と本願補正発明の「基台は、放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属を含み」とは、基台は、放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属を備えた点で一致する。
そして、引用発明の対象である「放射線検出パネル10」は、撮影対象物の像を画素の集合として表すために用いられること(記載事項1等)は明らかであるので、本願補正発明の対象である「撮影装置」に相当する。

したがって、両者は、
「複数の光電変換素子を有するセンサーアレーと、基台と、前記基台の裏面側に設けられ、該センサーアレーを駆動或いは該センサーアレーからの信号を処理する電子デバイスと、を備え、前記基台は、放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属を備えたことを特徴とする撮影装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
センサーアレーが、本願補正発明は、基台に配置される基板の表面上に設けられているのに対して、引用発明は、基台の上に設けられる点。
[相違点2]
電子デバイスが、本願補正発明は、半導体回路であるのに対して、引用発明は、電子部品である点。
[相違点3]
本願補正発明は、基台が、放射線の吸収又は遮蔽が可能な金属を含み、半導体回路への放射線を吸収又は遮蔽することが可能であるのに対して、引用発明は、基板14(基台)の下方に鉛隔離板22が設けられている点。

(4)当審の判断
ア.相違点1について
複数の光電変換素子を、引用発明のように、基台の上に設けるか、本願補正発明のように、基台に配置される基板の表面上に設けるかは、当業者が必要に応じて適宜になし得る設計変更に過ぎないので、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は格別なものではない。
イ.相違点2について
一般に、電子デバイスとして半導体回路は周知に過ぎないので、引用発明の電子部品にかえて本願補正発明の半導体回路を用いることは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
ウ.相違点3について
引用刊行物2には、放射線撮影用カセッテの構成に関して「保護層4_3に鉛を多く含有させた所謂鉛ガラスを用いてもよい。この場合この保護層4_3は、蓄積性蛍光体層4_4の保護と放射線遮蔽との両方の役割を持つことになる。」と記載されており、すなわち、撮影装置の構成要素に放射線遮蔽の機能を付与するために、放射線を遮蔽する代表的な金属である鉛を上記構成要素に含有させることが記載されている。そして、引用刊行物2に記載された放射線撮影用カセッテの発明と、引用刊行物1に記載されたX線やγ線などを含む放射線を読み取る撮影装置の発明とは、放射線撮影という技術分野に属するので、引用刊行物2に記載された発明を引用刊行物1に記載された発明に適用することに困難性はない。
また、本願補正発明における基台が、半導体回路への放射線を吸収又は遮蔽することが可能であることは、上記適用により生じた効果を規定したものに過ぎない。
してみると、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の効果は、引用刊行物1及び2の記載並びに周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年8月26日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項11に係る発明は、平成15年11月3日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、以下のものと認める。(以下「本願発明」という。)
なお、平成16年8月31日付け手続補正は、平成17年6月27日付けで却下されている。
「光電変換素子の複数を有するセンサーアレーと、前記センサーアレーが配置される基台と、前記基台の裏面側に設けられ、該センサーアレーを駆動或いは該センサーアレーからの信号を処理する半導体回路と、を備え、前記基台は、前記半導体回路への放射線を遮蔽する遮蔽部材を有することを特徴とする撮像装置。」

4.引用刊行物に記載された発明
引用刊行物1に記載された発明は、前記「2.(2)」に記載されたとおりである。

5.対比
引用発明の「縦横複数列に配列され」は本願発明の「複数を有する」に相当し、以下同様に、「可視光線を電気信号に変換する感光検出器」は「光電変換素子」に、「感光モジュール12」は「センサーアレー」に、「基板14」は「基台」に、「下方」は「裏面側」に、「電気信号を読み出す」は「「駆動」或いは「信号を処理する」」に、「鉛隔離板22」は「放射線を遮蔽する遮蔽部材」に、「設けられ」は「有する」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「電子部品26」と本願発明の「半導体回路」とは、電子デバイスの点で一致する。
さらに、引用発明の対象である「放射線検出パネル10」は、撮影対象物の像を画素の集合として表すために用いられること(記載事項1等)は明らかであるので、本願発明の対象である「撮影装置」に相当する。
したがって、両者は、
「光電変換素子の複数を有するセンサーアレーと、前記センサーアレーが配置される基台と、前記基台の裏面側に設けられ、該センサーアレーを駆動或いは該センサーアレーからの信号を処理する電子デバイスと、を備え、前記基台は、前記電子デバイスへの放射線を遮蔽する遮蔽部材を有することを特徴とする撮影装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点a]
電子デバイスが、本願発明は、半導体回路であるのに対して、引用発明は、電子部品である点。

6.当審の判断
相違点aについて検討するに、一般に、電子デバイスとして半導体回路は周知に過ぎないので、引用発明の電子部品にかえて本願発明の半導体回路を用いることは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明の効果は、引用刊行物1及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
よって、本願発明は、引用刊行物1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-22 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-07 
出願番号 特願平8-241562
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01T)
P 1 8・ 121- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 柏崎 正男
辻 徹二
発明の名称 撮像装置  
代理人 山下 穣平  

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