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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1140250
審判番号 不服2002-3955  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-07 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 平成11年特許願第151773号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 5日出願公開、特開2000-334121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年5月31日の出願であって、平成13年5月23日付で拒絶理由通知がなされ、同年7月25日付で手続補正がなされ、平成14年1月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月27日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年3月27日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月27日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「遊技球を検出する図柄始動手段(14)(16)と、該図柄始動手段(14)(16)が遊技球を検出することを条件に1個又は複数個の図柄を所定の図柄変動パターンで所定時間変動させる図柄表示手段(21)(24)と、該図柄表示手段(21)(24)の変動中に図柄始動手段(14)(16)が検出した遊技球の保留球数を設定上限個数値内で記憶する保留球数記憶手段(31)(37)と、前記図柄表示手段(21)(24)の変動終了後に、該図柄表示手段(21)(24)に前記保留球数記憶手段(31)(37)の保留記憶分の図柄変動を引き続き行わせる保留球数消化手段(32)(38)と、前記図柄表示手段(21)(24)の変動後の停止図柄が所定図柄又は所定図柄の組み合わせを表示することを条件に開閉式入賞手段(14)(15)を所定時間開放させて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(30)(36)とを備えた弾球遊技機において、前記保留球数記憶手段(31)(37)に遊技球の検出の記憶がない場合に、前記図柄表示手段(21)(24)の図柄の変動時間を、遊技球の検出の記憶がある場合の変動時間よりも短縮させ、且つその変動時間を図柄の前記変動パターンの種類によって変化させる図柄変動時間制御手段(33)(40)を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

と補正された。
上記補正は、平成13年7月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記変動パターンを条件に前記図柄表示手段(21)(24)の変動時間を短縮させる図柄変動時間制御手段(33)(40)」を「前記図柄表示手段(21)(24)の図柄の変動時間を、遊技球の検出の記憶がある場合の変動時間よりも短縮させ、且つその変動時間を図柄の前記変動パターンの種類によって変化させる図柄変動時間制御手段(33)(40)」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-177045号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
「遊技者が発射した打球が流下する遊技部内に、複数の図柄を可変表示可能な特別図柄表示装置と、該特別図柄表示装置の可変表示を開始するための条件を創出する始動手段と、上記特別図柄表示装置が可変表示を停止したときの表示図柄の組み合せ態様に基づく特定条件の成立により遊技者に不利な第1状態と遊技者に有利な第2状態とに変換可能は変動入賞装置と、・・・、上記各装置を制御する制御手段を有するパチンコ機において、
上記遊技部内に、複数の図柄を可変表示可能な普通図柄表示装置と、該普通図柄表示装置の可変表示を開始する表示開始手段とを配設し、
上記特別図柄表示装置の可変表示を開始するための条件を創出する始動手段を、上記普通図柄表示装置が可変表示を停止したときに表示する表示図柄に基づいて遊技者に不利な第1状態と遊技者に有利な第2状態とに変換可能な普通電動役物により構成し、
上記表示開始手段を、普通電動役物に臨ませた検出スイッチにより構成し、
特別図柄表示装置が表示する図柄の組み合せ態様が所定の態様となったとき、特別図柄表示装置及び普通図柄表示装置が可変表示を停止するのに要する変動時間を変更するようにした・・・パチンコ機。」(特許請求の範囲、請求項1)、
「【産業上の利用分野】
この発明は、特別図柄表示装置が表示する図柄の組み合せ態様に基づいて変動入賞装置が遊技者に不利な第1状態から遊技者に有利な第2状態に変換するパチンコ機に関する。」(段落【0001】)、
「【作用】
特別図柄表示装置が可視表示する図柄の組み合せが特定の表示態様のときに、変動表示制御信号を生起させ、この変動表示制御信号に基づいて、特別図柄表示装置及び普通図柄表示装置の可変表示時間を変更する。」(段落【0005】)、
「【実施例】
・・・、図1・・・パチンコ機2・・・、遊技盤1に・・・、特別図柄表示装置3を構成する中央役物4と、普通電動役物5及び普通図柄表示装置6を一体に構成した表示器付電動チューリップ7と、大入賞口である変動入賞装置8を設けた大入賞口ユニット9を各々配設し、・・・普通図柄表示装置6の可変表示を開始するための表示開始手段として、打球の通過或は入球を検出する普通始動スイッチを有する始動口ゲート11が配設してある。尚、遊技部の適宜位置に各種の表示灯L・・・等を配設し、・・・てある。」(段落【0006】)、
「・・・変動入賞装置8は、通常の状態においては・・・遊技者に不利な第1状態にあるが、・・・特定条件が成立すると、・・・ゲート板9cが前方に傾動して、・・・、遊技者に有利な第2状態に変換する。尚、以後、このような変動入賞装置8を単に大入賞口と称する。」(段落【0009】)、
「・・・、特別図柄表示装置3の始動手段を構成する検出スイッチ25(特別始動スイッチ)・・・。」(段落【0020】)、
「・・・入球して特別始動スイッチである・・・検出スイッチ25がオンすると、特別図柄表示装置3が図柄の変動表示を開始する。特別図柄表示装置3の図柄は左中右とも、「0〜9」の数字及びアルファベットの「ACHLPU」の16種類ある。そして、・・・変動時間短縮フラグがセットされていない場合は約8秒、セットされている場合は約1.3秒以上経過すると、特別図柄表示装置3は特別図柄左、特別図柄右、特別図柄中の順に変動表示を停止する。この結果、停止した図柄の組み合せ態様が所定の態様のときは、変動入賞装置8(大入賞口)が29.5秒間遊技者に有利な第2状態に変換する。即ち、大入賞口ソレノイドを29.5秒間励磁してゲート板9cを回動させて開口部9bに球を取り込むのである。・・・。」(段落【0027】)、
「・・・特別始動口である普通電動役物5への入球は最大4個まで記憶可能であって、この記憶は例えば中央役物4に設ける特別始動記憶表示灯により可視表示され、記憶がある場合には、図柄の変動表示が停止した後、又は大入賞口の開放動作が終了した後、再び変動表示を開始する。」(段落【0028】)、
「・・・ゲームを制御する制御手段は、図5のブロック図に示すように、MPUを中心とする電気的制御装置であって、MPUは入出力インターフェースと共に図6のブロック図に示すような系統の処理を行う。」(段落【0029】)、
「図7ないし図17において、ステップ(以下Sと略す)1・・・S6へ進み、特別始動入賞・・・の検出と特別始動入賞の記憶処理が実行される。」(段落【0031】)、
「・・・S6について・・・、図11に示す・・・、まず、S6-1において特別始動スイッチがオンされたか否かを判定し、オンされた場合は、S6-2へ進んで、始動記憶に「1」を加算した後、S6-3で始動入賞フラグをセットする。オンされていない場合は、・・・、普通始動スイッチがオンされたか否かを判定し、・・・、S6-13へ進む。・・・、但し、当りとなった場合、普通電動役物5の開放が終了するまで(普通役モード)、普通始動スイッチの検出は無効化され、普通図柄は回転を開始しないようになっている。」(段落【0032】)、
「・・・S6-13で始動記憶が「0」か否かを判定し、・・・元の処理へ戻る。」(段落【0034】)、
「・・・。S21-A-27では、停止している特別図柄左、中、右の全てが一致しているか否かを判定し、・・・、一致している場合はS21-A-28へ進んで、停止している特別図柄左、中、右が「777」か否かを判定し、一致している場合はS21-A-29へ進み、変動時間短縮フラグをセットし、「777」でない場合はS-A-30へ進み、変動時間短縮フラグをクリアする。・・・。」(段落【0048】)、
「・・・S37において始動モードがセットされている場合は、S40へ進んで変動時間短縮フラグがセットされているか否かを判定する。そして、変動時間短縮フラグがセットされていない場合はS41へ進み、特別図柄停止タイマに8秒をセットし、変動時間短縮フラグがセットされている場合には、S42へ進んで特別図柄停止タイマに1.3秒をセットする。・・・。」(段落【0073】)、
「・・・S83で始動記憶の有無を判定する。始動記憶のある場合は、S84において始動記憶を「1」減算処理して、S85へ進む。」(段落【0077】)、
「以後、・・・、割込信号が入力されるまで、S89-1以下の処理繰り返し実行する。」(段落【0084】)、
「・・・、特別図柄表示装置3の特別図柄左、特別図柄中、特別図柄右は、「0〜9」及び[ACHLPU]の16種類の図柄を各々表示可能であって、夫々左図柄用乱数(0-15)、中図柄用乱数(0-15)、右図柄用乱数(0-15)に対応する図柄を表示する。これらの図柄用乱数は割込信号によってリセットされるまでの間、右、中、左の順に「1」づつ加算処理を繰り返す。そして、図柄が変動表示を開始してから8秒又は1.3秒経過後の乱数の値に対応する図柄を停止図柄とし、0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄左が停止する。次に、この特別図柄左の停止から0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄右が停止する。そして、更に特別図柄右が停止してから所定の時間経過後に、特別図柄中が停止する。この所定の時間は、特別図柄左が表示する図柄(以下、図柄左という)と特別図柄右が表示する図柄(以下、図柄右という)とが一致する場合と、不一致の場合とで異なる。」(段落【0088】)、
「・・・、図柄左と図柄右とが不一致の場合は、上記と同様に0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄中が停止する。一方、左図柄左と図柄右とが一致する場合は、5.3秒に決定図柄に一致するまでの所要時間を加えた後、特別図柄中が停止する。尚、この場合は特別図柄中が1図柄の変換に要する時間を320m秒に変更してある。このようにして特別図柄中の停止を遅らせて遊技者の期待感を向上させる。」(段落【0089】)、
「・・・、特別図柄中が停止して0.5秒経過後に、役の判定を行い、図柄左、図柄右、図柄中が一致する場合は大当り(大役)となる。大当りになると、大入賞口ソレノイドを励磁して、大入賞口を開放する・・・。尚、開放中は、特別図柄左及び特別図柄右に停止図柄を点灯表示し、特別図柄中には大入賞口の開放回数を表示している。」(段落【0090】)、
「・・・普通電動役物5は、特別図柄表示装置3の始動手段として機能し、普通電動役物5に設けた特別図柄スイッチに打球が作用すると、特別図柄表示装置3が可変表示を開始し、所定時間経過後に可視表示する図柄の組み合せ態様が所定の組み合せの場合には、大入賞口を開放し、更に図柄の組み合せが特定の図柄、例えば「777」のときには、普通図柄表示装置6及び特別図柄表示装置3が表示する図柄の変動時間を短縮するので、図柄の組み合せからみた大当りになる確率は変化していないのであるが、単位時間当りにみた大当りになる確率が向上する。従って、大当りが短時間に集中して発生することも可能であって、大当りが連続して発生する期待感を高め、興趣に富んだパチンコ遊技が可能となる。」(段落【0091】)、
「・・・、本発明を図面の実施例・・・、所謂第1種パチンコ機・・・、本発明は、第2種パチンコ機や第3種パチンコ機に適用することも可能である。例えば、第2種の場合は、図柄表示装置により作動する普通電動役物を、第2種始動口に設定し、第2種役物における当り或は外れの判定を、別の図柄表示装置で行うようにすればよい。また、第3種の場合は、普通図柄表示装置により作動する普通電動役物を、権利口となる特定入賞口に設定し、該特定入賞口に入賞した打球により、他の図柄表示装置を作動させ、その表示装置が表示する図柄により、権利の発生及び消滅を行うようにすればよい。」(段落【0093】)、
「【発明の効果】
・・・本発明は、・・・、特別図柄表示装置が表示する図柄の組み合せ態様が所定の態様となったとき、特別図柄表示装置・・・が可変表示を停止するのに要する変動時間を変更するようにしたので、大当りを短時間に集中して発生させることが可能になり、短時間で多大な利益を獲得する可能性があり、興趣に富んだパチンコ機を提供する。また、遊技者と遊技店の利益バランスを図ることも容易であって、健全なパチンコ遊技が可能である。」(段落【0094】)、
との記載が認められ、
また、上記摘記事項より、特別図柄表示装置3の特別図柄左、特別図柄中、特別図柄右は、「0〜9」及び[ACHLPU]の16種類の図柄を各々表示可能であって、夫々左図柄用乱数(0-15)、中図柄用乱数(0-15)、右図柄用乱数(0-15)に対応する図柄を表示する。これらの図柄用乱数は割込信号によってリセットされるまでの間、右、中、左の順に「1」づつ加算処理を繰り返すこと、および、図柄が変動表示を開始してから8秒又は1.3秒経過後の乱数の値に対応する図柄を停止図柄とし、0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄左が停止し、この特別図柄左の停止から0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄右が停止し、特別図柄右が停止してから所定の時間経過後に、特別図柄中が停止する。この所定の時間は、特別図柄左が表示する図柄(以下、図柄左という)と特別図柄右が表示する図柄(以下、図柄右という)とが一致する場合と、不一致の場合とで異なり、図柄左と図柄右とが不一致の場合は、上記と同様に0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄中が停止するが、左図柄左と図柄右とが一致する場合は、5.3秒に決定図柄に一致するまでの所要時間を加えた後、特別図柄中が停止する。この場合は特別図柄中が1図柄の変換に要する時間を320m秒に変更してあることなどから、特別図柄表示装置3は、「特別図柄左・特別図柄中・特別図柄右をそれぞれの乱数の値に対応する停止図柄となるような変動方式で所定の時間変動表示させる」ものと認められ、
また、上記摘記事項および図5・6等より、特別始動口である普通電動役物5への入球は最大4個まで記憶可能であって、この記憶は例えば中央役物4に設ける特別始動記憶表示灯により可視表示され、記憶がある場合、および、S83で始動記憶の有無を判定する。始動記憶のある場合は、S84において始動記憶を「1」減算処理して、S85へ進むこと等から、MPUには「特別図柄表示装置3の変動中に検出スイッチ25が検出した入球を最大4個まで記憶可能である特別始動記憶手段」を備えているものと認められ、 また、上記摘記事項および図5・6等より、特別始動口である普通電動役物5への入球が記憶可能であって、記憶がある場合には、図柄の変動表示が停止した後、再び変動表示を開始すること、および、S83で始動記憶の有無を判定する。始動記憶のある場合は、S84において始動記憶を「1」減算処理して、S85へ進むこと等から、MPUには「始動記憶がある場合には始動記憶を「1」減算処理して再び変動表示を開始させる減算処理始動手段」を備えているものと認められ、
また、上記摘記事項および図5・6等より、変動入賞装置8は、通常の状態では遊技者に不利な第1状態にあるが、特定条件が成立すると、ゲート板9cが前方に傾動して、遊技者に有利な第2状態に変換すること、および、停止した図柄の組み合せ態様が所定の態様のときは、変動入賞装置8(大入賞口)が29.5秒間遊技者に有利な第2状態に変換するため、大入賞口ソレノイドを29.5秒間励磁してゲート板9cを回動させて開口部9bに球を取り込むことから、MPUには「変動入賞装置8を29.5秒間開放させて遊技者に有利なゲート板9cが前方に傾動する第2状態に変換する第2状態変換手段」を備えているものと認められ、
また、上記摘記事項および図8・12等より、特別図柄表示装置3の特別図柄左、特別図柄中、特別図柄右は、16種類の図柄を各々表示可能であって、夫々左図柄用乱数(0-15)、中図柄用乱数(0-15)、右図柄用乱数(0-15)に対応する図柄を表示し、これらの図柄用乱数は割込信号によってリセットされるまでの間、右、中、左の順に「1」づつ加算処理を繰り返すこと、変動時間短縮フラグがセットされていない場合は約8秒、セットされている場合は約1.3秒以上経過すると、特別図柄表示装置3は特別図柄左、特別図柄右、特別図柄中の順に変動表示を停止すること、S21-A-27では、停止している特別図柄左、中、右の全てが一致しているか否かを判定し、一致している場合はS21-A-28へ進んで、停止している特別図柄左、中、右が「777」か否かを判定し、一致している場合はS21-A-29へ進み、変動時間短縮フラグをセットし、「777」でない場合はS-A-30へ進み、変動時間短縮フラグをクリアすること、および、図柄が変動表示を開始してから8秒又は1.3秒経過後の乱数の値に対応する図柄を停止図柄とし、0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄左が停止し、この特別図柄左の停止から0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄右が停止し、特別図柄右が停止してから所定の時間経過後に、特別図柄中が停止する。この所定の時間は、特別図柄左が表示する図柄(以下、図柄左という)と特別図柄右が表示する図柄(以下、図柄右という)とが一致する場合と、不一致の場合とで異なり、図柄左と図柄右とが不一致の場合は、上記と同様に0.5秒に決定図柄に一致するまでの所要時間が経過した後、特別図柄中が停止するが、左図柄左と図柄右とが一致する場合は、5.3秒に決定図柄に一致するまでの所要時間を加えた後、特別図柄中が停止する。この場合は特別図柄中が1図柄の変換に要する時間を320m秒に変更してあることなどから、また、前記変動方式には、A〔8秒+0.5秒+所要時間、8秒+5.3秒+所要時間〕とB〔1.3秒+0.5秒+所要時間、1.3秒+5.3秒+所要時間〕の2種類があると認められるから、MPUには「特別図柄の変動時間を、「777」でないときの変動時間よりも短縮させ、且つその変動時間を特別図柄の前記変動方式の種類によって変更させる変動表示制御手段を備え」ていると認められる。これらの記載によれば、引用例1には、

「打球の入球を検出する検出スイッチ25と、該検出スイッチ25がオンすると特別図柄左・特別図柄中・特別図柄右をそれぞれの乱数の値に対応する停止図柄となるような変動方式で所定の時間変動表示させる特別図柄表示装置3と、該特別図柄表示装置3の変動中に検出スイッチ25が検出した入球を最大4個まで記憶可能である特別始動記憶手段と、前記特別図柄表示装置3の図柄の変動表示が停止した後に、該特別図柄表示装置3に前記特別始動記憶手段の始動記憶がある場合には始動記憶を「1」減算処理して再び変動表示を開始させる減算処理始動手段と、前記特別図柄表示装置3の変動表示後の停止した図柄の組み合せ態様が所定の態様のときは変動入賞装置8を29.5秒間開放させて遊技者に有利なゲート板9cが前方に傾動する第2状態に変換する第2状態変換手段とを備えたパチンコ機2において、特別図柄の組み合せが「777」のときには、、前記特別図柄表示装置3の特別図柄の変動時間を、「777」でないときの変動時間よりも短縮させ、且つその変動時間を特別図柄の前記変動方式の種類によって変更させる変動表示制御手段を備えたパチンコ機2。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「打球の入球を検出する」、「検出スイッチ25」、「オンすると」、「特別図柄左・特別図柄中・特別図柄右」、「それぞれの乱数の値に対応する停止図柄となるような」、「変動方式」、「所定の時間変動表示させる」、「特別図柄表示装置3」、「入球を最大4個まで記憶可能である」、「特別始動記憶手段」、「図柄の変動表示が停止した後」、「始動記憶がある場合には始動記憶を「1」減算処理して」、「再び変動表示を開始させる」、「減算処理始動手段」、「変動表示後」、「停止した図柄の組み合せ態様が所定の態様のときは」、「変動入賞装置8」、「29.5秒間」、「ゲート板9cが前方に傾動する第2状態に変換する」、「第2状態変換手段」、「パチンコ機2」、「変更させる」および「変動表示制御手段」は、本願補正発明の「遊技球を検出する」、「図柄始動手段(14)」、「遊技球を検出することを条件に」、「複数個の図柄」、「所定の」、「図柄変動パターン」、「所定時間変動させる」、「図柄表示手段(21)」、「遊技球の保留球数を設定上限個数値内で記憶する」、「保留球数記憶手段(37)」、「変動終了後」、「保留記憶分の」、「図柄変動を引き続き行わせる」、「保留球数消化手段(38)」、「変動後」、「停止図柄が所定図柄の組み合わせを表示することを条件に」、「開閉式入賞手段(15)」、「所定時間」、「利益状態を発生させる」、「利益状態発生手段(36)」、「弾球遊技機」、「変化させる」および「図柄変動時間制御手段(40)」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「特別図柄の組み合せが「777」のとき、「777」でないとき」と、本願発明の「保留球数記憶手段(37)に遊技球の検出の記憶がない場合と記憶がある場合」は、「遊技条件が有る場合と無い場合」で共通する。したがって、両者は、

「遊技球を検出する図柄始動手段と、該図柄始動手段が遊技球を検出することを条件に複数個の図柄を所定の図柄変動パターンで所定時間変動させる図柄表示手段と、該図柄表示手段の変動中に図柄始動手段が検出した遊技球の保留球数を設定上限個数値内で記憶する保留球数記憶手段と、前記図柄表示手段の変動終了後に、該図柄表示手段に前記保留球数記憶手段の保留記憶分の図柄変動を引き続き行わせる保留球数消化手段と、前記図柄表示手段の変動後の停止図柄が所定図柄の組み合わせを表示することを条件に開閉式入賞手段を所定時間開放させて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた弾球遊技機において、遊技条件が有る場合に、前記図柄表示手段の図柄の変動時間を、遊技条件が無い場合の変動時間よりも短縮させ、且つその変動時間を図柄の前記変動パターンの種類によって変化させる図柄変動時間制御手段を備えた弾球遊技機。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点、図柄表示手段の図柄の変動時間を変化させる遊技条件の有無において、本願補正発明では、「保留球数記憶手段(37)に遊技球の検出の記憶がないかあるか」であるのに対して、引用例1発明では「特別図柄の組み合せが「777」であるか否か」である点、

(4)判断
上記相違点について検討すると、一般的に、始動記憶の数に応じたリーチ変動の時間短縮を細分化したり、始動入賞記憶カウンタの値ごとに可変表示時間を異ならせることが周知(例えば、特開平10-33772号公報(段落【0047】等)、特開平10-80542号公報(段落【0042】等)参照)であり、図柄表示手段の図柄の変動時間を変化させるのに、変化させる遊技条件を引用例1発明のように「「777」の特別図柄の組み合せ」に着目するか、本願補正発明のように「遊技球の検出の記憶」に着目するかは、どのような制御時点をとらえて遊技条件とするかの違いであり、引用例1発明に始動記憶に着目している前記周知のものを適用して本願補正発明のように構成することに格別の創意工夫を要したとはいえず当業者なら容易に想到できることである。さらに、遊技球の検出の記憶に着目する際に、検出の記憶がない場合に遊技者に有利な短縮変動をさせることは、見方を変えれば遊技店にとっては不利となるものである。しかし、このような遊技店に不利となる図柄の短縮変動を遊技者の興趣を向上させる手段として導入する発想は、広く知られており(一例として、特開平8-238364号公報(段落【0051】、【0054】等)参照)、検出の記憶のない場合という遊技条件に格別の臨界的意義を持つものでなく当業者ならば容易に推考できるものである。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年3月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年7月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「遊技球を検出する図柄始動手段(14)(16)と、該図柄始動手段(14)(16)が遊技球を検出することを条件に1個又は複数個の図柄を所定の図柄変動パターンで所定時間変動させる図柄表示手段(21)(24)と、該図柄表示手段(21)(24)の変動中に図柄始動手段(14)(16)が検出した遊技球の保留球数を設定上限個数値内で記憶する保留球数記憶手段(31)(37)と、前記図柄表示手段(21)(24)の変動終了後に、該図柄表示手段(21)(24)に前記保留球数記憶手段(31)(37)の保留記憶分の図柄変動を引き続き行わせる保留球数消化手段(32)(38)と、前記図柄表示手段(21)(24)の変動後の停止図柄が所定図柄又は所定図柄の組み合わせを表示することを条件に開閉式入賞手段(14)(15)を所定時間開放させて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(30)(36)とを備えた弾球遊技機において、前記保留球数記憶手段(31)(37)に遊技球の検出の記憶がない場合に、前記変動パターンを条件に前記図柄表示手段(21)(24)の変動時間を短縮させる図柄変動時間制御手段(33)(40)を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-11 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-06-07 
出願番号 特願平11-151773
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 藤田 年彦
林 晴男
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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