• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1140313
審判番号 不服2004-7082  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-08 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 平成10年特許願第374724号「ディスクファイリングシステム、ディスクファイリング管理装置及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月14日出願公開、特開2000-195229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成10年12月28日の特許出願であって、その請求項1乃至6に係る発明は、平成16年1月6日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
データの書き込みが可能であり、書き込まれたデータに関する管理情報の書き込みが可能な管理情報領域を有するディスク媒体の管理情報をファイリングするディスクファイリングシステムにおいて、
前記ディスク媒体に対してデータ及び管理情報の書き込みを行なう記録装置と、
該記録装置に挿入されているディスク媒体の前記管理情報領域の内容を前記記録装置から読み出す管理情報読み出し手段と、前記記録装置に挿入されているディスク媒体に個々のディスク媒体を識別するための識別情報が記録されているか否かを判断する判断手段と、該判断手段が前記記録装置に挿入されているディスク媒体には識別情報が記録されていないと判断した場合に、個々のディスク媒体に一意に付与されるべき識別情報を発生する識別情報発生手段と、該識別情報発生手段が発生した識別情報と関連付けて前記管理情報読み出し手段が読み出した管理情報をデータベース化して記憶するデータベース記憶手段と、前記識別情報発生手段が発生した識別情報を前記記録装置に装入されているディスク媒体の管理情報領域に記録させる管理情報記録手段とを有する管理装置と
を接続してなることを特徴とするディスクファイリングシステム。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用例及びその記載

(1)引用例1(特開平10-50031号公報)
一方、原査定で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-50031号公報(以下、「引用例1」という。)は、データを記録媒体に記録する際のデータ記録方法に関するもので、図面とともに次の技術事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。
i)「〔発明の属する技術分野〕
本発明は、映像、音声、およびコンピユータデータを磁気テープ記録媒体に記録する際のデータ記録方法に関する。」(段落[0001])
ii)「〔従来の技術〕
現在、映像、音声を含むマルチメディア情報を蓄積する媒体として、磁気テープを用いたディジタル ビデオ カセット(DVC)がある。このDVCをコンピュータと接続し、現存のハードディスク、フロッピーディスクなどと同様に、コンピュータ用蓄積媒体として利用することが検討されている。
現行のDVC用記録カセットには、メモリー イン カセット(MIC)と呼ばれるメモリを内蔵することができる。MICには記録カセットの識別番号(カセットID)、カセットのテープ長など、カセットおよびテープの管理情報が記録される。加えてMICにはテープ上の補助記録領域に記録されている、ビデオ信号のタイプなどが記録される。
図2にMICに情報を記録および再生する記録再生装置の従来例を示す。図2において1Bは記録再生装置、3はカセット、20はデータ入力器、21は磁気テープ、22はデータ出力器、23はテープ管理情報取り出し器、24はMIC、25はインターフェースを示す。以降同一番号がついたものは同一の構成および機能をもつものとする。
以上のように構成された記録再生装置について、以下、その動作を述べる。
記録再生装置1に未使用のカセット(以下未使用カセット)を入力した場合、テープ管理情報取り出し器23においてそのカセットの識別子であるカセットIDが生成され、カセットIDがMIC24に記録される。また記録再生装置1に入力するカセット3が使用済みカセット、つまりすでにデータが記録されているカセット(以下既存カセット)である場合にはそのカセットが未使用カセット時に書き込まれたカセットIDがテープ管理情報取り出し器23において読み出される。
外部機器よりインターフェース25に伝送されるデータはデータ入力器20に入力する。データ入力器20より入力した入力データはテープ管理情報取り出し器23、およびカセット3内の磁気テープ21に送られる。テープ管理情報取り出し器23では入力データのビデオ信号タイプなどの補助情報が取り出され、MIC24および磁気テープ21に送られる。
テープ管理情報取り出し器23で取り出された補助情報はMIC24および磁気テープ21内の補助記録領域に記録される。
磁気テープ21内のデータを再生する場合にはMIC24よりカセットID、ビデオ信号タイプなどの補助情報が読み出され、読み出された情報に従って磁気テープよりデータが再生される。再生されたデータはデータ出力器22に送られ、インターフェース25より外部へ出力する。」(段落[0002]〜[0008])
iii)「〔発明が解決しようとする課題〕
上記MIC24ではカセットID、ビデオ信号タイプなどカセット、およびテープの管理情報を記録しているにすぎない。つまり、DVCをコンピュータ用のファイルストリーマとして使用する場合、記録されている個々のファイルの管理情報を記録する用途には用いられていない。
本発明は、DVCに記録するファイルデータの管理情報をPC上で管理する記録再生方法を得ることを目的とする。
本発明によれば、PCのハードディスク上などにテープ内に記録するファイルの個々の管理情報も記録し、テープ、およびカセットの管理情報を記録したMICと組み合わせてファイルデータの管理を行い、テープ内に記録されているファイルのアクセスが従来に比べ容易になる。
また上記の方法では、カセット内のデータを他のPC/デッキ上で変更すると、通常使用しているPC/デッキに戻したときPC/デッキに内の管理情報とカセット内の実際のデータ内容の対応が崩れるという課題を持つ。本発明は上記課題の解決もあわせて目的とする。」(段落[0009]〜[0012])
iv)「〔課題を解決するための手段〕
この課題を解決するために本第1の発明は、記録媒体(テープ)に付加された個別化情報記憶媒体(MIC)上に、前記テープを他のテープと区別するための個別化情報を記憶し、内容情報記憶手段(PC/デッキ上のハードディスク)上に前記テープ中のデータ内容に関する内容情報を記憶し、前期テープの再生時に、前記個別化情報により特定された前記テープの前記内容情報を取得し、取得された前記内容情報に基づいて前記テープ中のデータを再生することを特徴とする記録再生方法である。」(段落[0013])
v)「〔発明の実施の形態〕
(実施の形態1)
以下本発明の実施の形態について、図1、図3および図4を用いて説明する。
図1は本発明の実施例におけるブロツク図を示し、図1において1は記録再生装置、3はカセット、2はMIC、5はデータ入力器、6はデータ出力器、10はパーソナルコンピュータ(PC)、11はハードディスク、12、15はカセット情報獲得器、13、16はカセット情報生成器、14はカセット情報比較器、8、15はファイル管理情報獲得器、9、16はファイル管理情報生成器、17はCPU、18はメモリ、7、19はインターフェースを示す。以降同一番号がついたものは同一の構成および機能をもつものとする。
以上のように構成された記録再生装置について、以下、その動作を述べる。
記録再生装置1に未使用カセットを入力した場合、カセット情報獲得器12から得られた情報あるいはテープの再生信号から未使用であることが判断でき、カセット情報生成器13においてそのカセットの識別子であるカセットIDが生成され、カセットIDがMIC 2に記録される。
また記録再生装置に入力するカセット3が既存カセットである場合にはそのカセットのMIC 2からカセットIDがカセット情報獲得器12において読み出される。
外部機器よりインターフェース7を通じて伝送されるデータはデータ入力器5に入力する。データ入力器5より入力した入力データはファイル管理情報生成器9およびカセット3に送られる。テープ管理情報生成器9では入力データのビデオ信号タイプなどの補助情報が取り出され、名づけられたファイル名などの新たに付加された補助情報とともに、MIC 2上に記憶される。補助情報は同時にカセット3およびPC10に送られ、ハードディスク11およびメモリ18の記録領域に記録される。ハードディスク11が更新された時点の日時がメモリ18に記憶されるとともにハードディスク11とMIC 2に更新記録される。 また、補助情報は、カセット取り出し時にカセット3内の磁気テープ21中の補助記録領域に記録される。カセットが取り出された時点の日時がテープ中の補助記録領域とMIC 2、ハードディスク11に記録される。
磁気テープ21内のデータを再生する場合にはMIC 2よりカセットID、日時情報などの識別情報が読み出される。読み出された識別情報をハードディスク11上の対応する識別情報と比較する。カセットIDなどからハードディスク11上に管理情報が記録されたカセットと同一のカセットであると判断されたときは、管理情報の更新日時を比較する。更新日時が同じである場合には、ハードディスク11の補助情報を読みだしてメモリ18上に記憶し、記憶した補助情報を用いてカセット3中のファイルを管理する。補助情報に従って磁気テープ21よりデータが再生される。」(段落[0017]〜[0023])
vi)「ハードディスク11の補助情報の更新日時の方がMIC 2より新しい場合は、管理情報、識別情報のMIC 2書き込み時またはテープ21への書き込み時にPC 10と記録再生装置1の通信が何らかの理由で正常に動作しなかった場合、MIC 2書き込み時に記録再生装置1が何らかの理由で正常に動作しなかった場合等が考えられる。
ハードディスク11の補助情報の更新日時の方が古い場合には、テープ21上の管理情報を読みだしてメモリ18上に記憶し、さらにユーザがテープ21の補助情報によりハードディスク上の管理情報を上書きすると選定した場合にはメモリ18上に記憶した補助情報を用いてハードディスク11上に上書きする。
ハードディスク11の補助情報の更新日時の方がMIC 2より古い場合は、他のPCに接続された記録装置上で管理情報、識別情報が書かれた場合等が考えられる。
メモリ18上に記憶した補助情報を用いてテープ21上のファイルを管理する。補助情報に従って磁気テープ21よりデータが再生される。再生されたデータはデータ出力器6に送られ、インターフェース7より外部へ出力する。
以上の動作により、カセット3(テープ21)上、ハードディスク11上、MIC 2の管理情報、識別情報を最新の形で共有することができる。」(段落[0027]〜[0031])

ここで、引用例1はデータ記録再生方法に関するものとなっているが、発明の詳細な説明及び図面をみると、記録再生装置とパーソナルコンピュータ(PC)からなるデータ記録再生システムが記載されていることは明らかである。

以上の摘記事項及び図面の記載を参酌すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。

「データの書き込みが可能であり、書き込まれたデータのファイル名等の補助情報の書き込みが可能なメモリー イン カセット(MIC)2を有するカセット3(磁気テープ21)の補助情報をファイリングするカセット(磁気テープ)記録再生システムにおいて、
未使用のカセット3(磁気テープ21)を入力した場合、カセット情報生成器13によりそのカセットの識別子であるカセットIDを生成し、ファイル管理情報生成器9によりファイル名等の補助情報を生成してMIC 2及びカセット3(磁気テープ21)に対してデータ及び補助情報の記録を行う記録再生装置1と、
前記記録再生装置1に挿入されているカセット3(磁気テープ21)の前記補助情報の内容を前記記録再生装置1から読み出すファイル管理情報獲得器15と、前記記録再生装置1に挿入されているカセット3(磁気テープ21)に個々のカセット3(磁気テープ21)を識別するためのカセット識別子であるカセットIDをハードディスク11上の対応する識別情報と比較するカセット情報比較器14とを備え、ハードディスク11の補助情報の更新日時の方が古い場合には、テープ21上の管理情報を読み出してメモリ18上に記憶し、さらにユーザがテープ21の補助情報によりハードディスク上の管理情報を上書きすると選定した場合にはメモリ18上に記憶した補助情報を用いてハードディスク11上に上書きするパーソナルコンピュータ(PC)10と
を接続してなるデータ記録再生システム。」

(2)引用例2(特開平9-265763号公報)
また、原査定で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-265763号公報(以下、「引用例2」という。)は、情報記録装置に関するもので、図面とともに次の技術事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。
i)「〔発明の属する技術分野〕
本発明は可搬メディアをグル-プにして1つの高性能な大容量デバイスとして扱うことができる情報記録装置に関する。」(段落[0001])
ii)「〔従来の技術〕
従来から複数の光ディスクを組み合わせて1つの情報格納単位として扱うことによって、より大容量な情報管理環境を提供することがなされてきている。
例えば、Epoch Data Serverでは、複数枚の光(磁気)ディスクをグルーピングして1つのファイルシステムを構成することができる。(「Epoch Data Server&Epoch Back up製品説明パンフレット」。丸紅エレクトロニクス株式会社。95年2月)このようなシステムでは、ファイル管理情報を光(磁気)ディスクには格納せず、常にハードディスクに格納するようにしている。」(段落[0002])
iii)「本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の可搬メディアをグル-プにして1つの高性能な大容量デバイスとして提供することができる情報記憶装置を提供することにある。」(段落[0009])
iv)「〔発明の実施の形態〕
以下図面を参照して本発明の一実施の形態に係る情報記憶装置について説明する。まず、本発明における情報記憶装置のハードウェア構成を図1を用いて説明する。
この装置は、本装置を制御するCPU(Central Processing Unit)1と、装置の外部とのデータ転送を制御するデータ転送デバイス2、光ディスクのデータを読み書きするための光ディスクドライブ3、複数枚の光ディスクを格納して機械的に光ディスクを光ディスクドライブ3に出し入れするための光ディスクオートチェンジャー4、高速のメモリアクセス性能を提供する半導体メモリ5、データを一時的に格納するハードディスク6が含まれている。
また、図11では、本発明による情報記憶装置で使われるユニットの概念をあらわしている。即ち、本発明で用いるユニットとは、1枚以上の光ディスクを組み合わせることにより、論理上1つの情報記憶単位として扱うことために用いる名称である。
次に、図2を参照して本発明における情報記憶装置のソフトウェアモジュール構成を概念的に説明する。情報記憶装置には、装置内でのデータ転送や装置外部とのデータ送受信全体を制御するデータ入出力制御部11が存在する。
また、装置内にある半導体メモリ5、ハードディスク6、そして光ディスクといったデバイスに対するデータ入出力を制御するために、それぞれ半導体メモリデータ入出力部12、ハードディスクデータ入出力部13、光ディスクデータ入出力部14がある。
また、15は装置の状態など一般的な運用を管理するための運用管理部がある。この運用管理部15には、装置内の光ディスクにより構成される各情報記憶ユニットの状態を管理するユニット管理部16、装置内にある光ディスクの状態を管理する光ディスク管理部17、装置内で発生するあらゆるエラー状態を管理するエラー状態管理部18、光ディスクオートチャンジャの動作を制御する光ディスクオートチェンジャ制御部19、そして各ユニット内でのデータを最適化して配置する処理を管理するための、データ最適化配置管理部20がある。
・・・(中略)・・・
また、光ディスク管理部17には、装置内に格納されている光ディスクを管理するために光ディスク管理テーブル17aがある。
さらに、ユニット毎のデータ最適化配置に関する情報を管理するために、データ最適化配置管理部20には、最適化配置情報管理テーブル20aがある。」(段落[0026]〜[0034])
v)「次に、上記のように構成された本発明の第1の実施の形態の動作について説明する。まず、光ディスクを装置に収納する際の処理の流れについて、特にデータ最適化配置情報の扱いに注目しつつ図8を用いて説明する。
まず、光ディスクの収納処理がスタートすると、運用管理部は装置に取り込まれた光ディスクのそれぞれの面からデータ管理情報を読みだす(ステップS1)。図12に示すように、このデータは、例えば光ディスクの先頭からというように、予め決められた領域開始オフセットから予め定められたデータサイズで記録されている。このデータ管理情報には、その光ディスク面の識別子、光ディスクが属する情報記憶ユニットの識別子、ユニットを構成する光ディスク枚数、ユニットのデータサイズ、この光ディスク面が情報記憶ユニットの何面目として位置付けられているか、この光ディスク面に格納されているデータの最適化配置を管理するための情報が格納されている光ディスク面の識別子を示す値などが含まれる。このようにしてデータ管理情報を読みだすと、運用管理部15は光ディスク管理部17とユニット管理部16に対してそれぞれがもつ管理テーブルを更新するように通知する(ステップS2)。」(段落[0035]〜[0036])
vi)「次に本発明による情報記憶装置から光ディスクを返却する(取り出す)際の処理の流れを図9のフロ-チャ-トを参照して概念的に説明する。まず、光ディスクの返却処理が始まると、運用管理部15は、返却対象となっている光ディスクが属するユニット識別子を光ディスク管理テーブル17aから得る(ステップS11)。そして、データ入出力制御部11は、すでに半導体メモリ5そしてハードディスク6上に既にキャッシュされているデータのうち、その光ディスクが属するユニットに関するデータを全て光ディスクにコピーすることをそれぞれのデバイスに関連するデータ入出力部12〜14に指示する。
本実施の形態では、半導体メモリデバイス、ハードディスク、そして光ディスクとがデバイスアクセス性能の良い順で階層記憶を形成しているので、まず半導体メモリデバイスに格納されている関連データをハードディスク6にコピーし、その完了後ハードディスク6上の関連するデータを光ディスクにコピーする(ステップS12)。また、ユニット管理部16はユニット管理テーブル16aからそのユニットに関するデータ最適化配置情報のハードディスク6上の格納場所と、その情報を書き込むべき光ディスク(最適配置情報管理用ディスク)の識別子を得る(ステップS13)。
そして、ユニット管理部16は、その管理用光ディスクを光ディスクドライブ3に装填するように光ディスクオートチャンジャ制御部19に指示し、装填後、データ最適化配置情報をハードディスク6からその光ディスクにコピーするようデータ入出力制御部11に要求する(ステップS14)。
このようにしてハードディスクから光ディスクにデータ最適化配置情報を転送する。その転送終了後、ハードディスクデータ入出力部13は、HD内のその領域を解放するために、HD内領域管理テーブル13aを更新する(ステップS15)。最後に、運用管理部は返却対象となっている光ディスクを光ディスクドライブ13から取り出して、さらにオートチェンジャ4から返却する処理を光ディスクオートチェンジャ制御部19を介して実行する。
このように、光ディスクの返却時には、それまでその光ディスク内のデータの配置を管理していたデータ最適化配置管理情報をハードディスク6から特定の光ディスクにコピー後、ハードディスク6から削除する。」(段落[0041]〜[0045])
vii)「次に、格納済みの光ディスク上のデータを変更する際に生じるデータ最適化配置情報の更新処理について、図10のフロ-チャ-トを参照して説明する。階層記憶管理のステージングアウト処理などによって、光ディスク上のデータの更新処理が発生すると、光ディスク管理部17は、光ディスク管理テーブル17aを参照することで、指定された光ディスクが属するユニット識別子を得る(ステップS21)。
つづいて、データ入出力制御部11は、データ最適化配置管理部20に対して、データの格納先情報を問い合わせる(ステップS22)。データ最適化配置管理部20は、図16に示したような最適化配置情報管理テーブル20aからデータの格納先となるべき光ディスクの識別子とその光ディスク内のデータ格納位置を候補として算出する(ステップS23)。
このとき、候補を算出するにあたり、データ最適化配置管理部20は、同一ユニットについてその時にデータ書き込み優先度が最も高い光ディスクの識別子をユニット管理テーブル16aから求めて、その光ディスクでの空きデータ領域を求める。これらの候補値を使用し、データ入出力制御部11は、データをハードディスクから光ディスクにコピーする(ステップS24)。」(段落[0046]〜[0048])

3.対 比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。

引用例1に記載された発明が対象とする「カセット(磁気テープ)記録再生システム」は、記録媒体である磁気テープのファイル名等の補助情報の管理を行うものであるから、磁気テープ(記録媒体)に関する「ファイリングシステム」ということができ、その意味で本願発明と共通する。
引用例1に記載された発明における「補助情報」は、ファイル名等の「管理情報」と言えるものである。
引用例1に記載された発明における「カセット(磁気テープ)」は、データの記録媒体であり、その限りで本願発明における「ディスク」と共通する。また、引用例1に記載された発明における「メモリー イン カセット(MIC)」は、カセットに内蔵されるものであり、カセット(記録媒体)におけるファイル名等の補助情報(管理情報)の書き込みが可能な領域(管理情報領域)と言えるものである。
引用例1に記載された発明におけるパーソナルコンピュータ内の「ファイル管理情報獲得器」は、本願発明における「管理情報読み出し手段」に相当する。
引用例1に記載された発明におけるパーソナルコンピュータ内の「カセット情報比較器」は、カセット識別子であるカセットID(記録媒体を識別するための識別情報)をハードディスク上の対応する識別情報と比較し、同一のカセットかどうかを判断するものであり、識別情報を判断するという意味に限って本願発明における「判断手段」と共通する。
引用例1に記載された発明におけるパーソナルコンピュータ内の「ハードディスク」は、カセット(記録媒体)におけるファイル名等の補助情報(管理情報)をMIC(管理情報領域)から読み出し、記録するものであるから、その意味に限って本願発明における「(データベース)記憶手段」と共通する。
引用例1に記載された発明における「パーソナルコンピュータ(PC)」は、カセット(記録媒体)におけるファイル名等の補助情報(管理情報)をMIC(管理領域)から読み出し、ハードディスク(記憶手段)上に記録し、メモリ上に記憶した補助情報(管理情報)を用いてカセット(記録媒体)中のファイルを管理するものであり、記録媒体中のファイルを管理するという意味に限り本願発明における「管理装置」と共通する。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
データの書き込みが可能であり、書き込まれたデータに関する管理情報の書き込みが可能な管理情報領域を有する記録媒体の管理情報をファイリングする記録媒体ファイリングシステムにおいて、
前記記録媒体に対してデータ及び管理情報の書き込みを行なう記録装置と、
該記録装置に挿入されている記録媒体の前記管理情報領域の内容を前記記録装置から読み出す管理情報読み出し手段と、前記記録装置に挿入されている記録媒体に個々の記録媒体を識別するための識別情報を判断する判断手段と、識別情報と関連付けて前記管理情報読み出し手段が読み出した管理情報を記憶する記憶手段と、前記識別情報を前記記録装置に装入されているディスク媒体の管理情報領域に記録させる管理情報記録手段とを有する管理装置と
を接続してなる記録媒体ファイリングシステム。

そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a) データ及びデータに関する管理情報が書き込まれる記録媒体に関し、本願発明においては、「ディスク」であるのに対し、引用例1に記載された発明においては「カセット(磁気テープ)」である点(以下、「相違点a」という。)。
(b) 管理装置の「判断手段」に関し、本願発明においては、記録装置に挿入されているディスク媒体(記録媒体)を識別するための識別情報が記録されているか否かを判断するものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、記録装置に挿入されているカセット(記録媒体)がハードディスク(記憶手段)上にカセットID(識別情報)が記録されたカセット(記録媒体)と同一のカセットか否かを判断するものである点(以下、「相違点b」という。)。
(c) 本願発明は、記録装置に挿入されているディスク媒体には識別情報が記録されていないと判断した場合に、個々のディスク媒体に一意に付与されるべき識別情報を発生する「識別情報発生手段」を管理装置に備えるものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、パーソナルコンピュータ(管理装置)にこのような識別情報発生手段を備えるものではない点(以下、「相違点c」という。)。
(d) 管理装置の「記憶手段」に関し、本願発明においては、記録媒体を識別する識別情報と関連付けて管理情報をデータベース化して記憶するものであるのに対し、引用例1に記載された発明においては、データベース化することについては特に示されていない点(以下、「相違点d」という。)。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点aについて)
データの書き込みが可能な領域及びデータに関する管理情報の書き込みが可能な管理領域(UTOC領域)を有する記録媒体としてミニディスク(MD)は本願出願前にごく普通のものであるから、引用例1に記載された発明においても、記録媒体としてカセット(磁気テープ)に替えてごく周知のディスク媒体を用いることは当業者が必要に応じて適宜なし得た事項といわざるを得ない。

(相違点b、cについて)
引用例1に記載された発明は、未使用のカセット(記録媒体)が記録再生装置に挿入された場合、そのカセット(記録媒体)の識別子であるカセットID(識別情報)が生成され、カセットID(識別情報)をMIC(記録媒体の管理情報領域)に記録するものである。
また、ディスクを記録再生装置に装着したとき、該ディスク固有の識別コードであるディスクID(識別情報)が登録されているか否かを判断し、登録されていない場合には、ディスクID(識別情報)を発生し登録することは特開平6-259938号公報(特に、段落[0087]〜[0091]、及び、図22等を参照。)にもみられるように本願出願前に周知の技術である(なお、記録媒体を装置に装着する際、それが装置に初めて投入もしくは再生されるものであるか否かを記録媒体に記録されている特有のIDを検出することにより行い、記録媒体が装置に初めて投入もしくは再生されるものであるときは、記録媒体に記録されている固有の識別情報とIDを装置のメモリに記録することも特開平10-105575号公報(特に、段落[0016]〜[0019])に示されているところである。)。
してみれば、引用例1に記載された発明においても、記録媒体が未使用であるか否かに拘わらず、上記周知技術のように、記録媒体に識別情報が記録されているか否かを判断し、記録媒体に識別子であるID(識別情報)が記録されていない場合、パーソナルコンピュータ(管理装置)により識別情報を生成する(識別情報発生手段を設ける)ことは、当業者が容易に想到できたものというべきである。

(相違点dについて)
引用例2には、複数枚の光ディスクの識別子(識別情報)とその管理情報を管理テーブルとして関連付けて、即ちデータベース化してハードディスク内に記録することが記載されているから、引用例1に記載された発明においても、記録媒体を識別する識別情報と関連付けて管理情報を単にデータベース化して記憶手段としてのハードディスクに記憶させることは当業者が適宜容易に想到できたものである。

そして、上記各相違点についての判断を総合しても、本願発明の奏する効果は引用例1、2から当業者が十分に予測できたものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1、引用例2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-19 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-07 
出願番号 特願平10-374724
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 江畠 博
山澤 宏
発明の名称 ディスクファイリングシステム、ディスクファイリング管理装置及び記録媒体  
代理人 河野 登夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ