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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1140334
審判番号 不服2002-17132  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-05 
確定日 2006-07-21 
事件の表示 平成11年特許願第224826号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月15日出願公開、特開2000- 42213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年7月9日に出願した特願平10-211860号の一部を平成11年8月9日に新たな特許出願としたものであって、平成14年8月14日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月5日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年9月5日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、図柄変動信号により、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に確定表示する可変表示ゲームを行う遊技機であって、効果音は複数種が記憶してあると共に、その1つの効果音は2以上の予め決められた図柄に対応させてあり、前記可変表示ゲームにおいて、前記図柄表示部に停止表示する図柄に対応する効果音を発声することを特徴とする遊技機。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である効果音に対応する図柄について「予め決められた」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物の記載内容
原査定の備考に示され本願出願前に頒布された刊行物である特開平8―173592号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、次のことが記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、機械的に駆動されるリールや液晶(LCD)、発光ダイオード(LED)、陰極線管(CRT)等の電気的表示手段により、複数の図柄(シンボル)を可変表示する可変表示部を備えたスロットマシン、弾球遊技機、ポーカーゲーム機等の遊技機に関する。
【0002】
【従来の技術】 例えば、スロットマシンにおいては、可変表示部として、外周に複数のシンボルを配列したリールをステッピングモータ等の駆動手段で回転駆動する回転リール式の表示機構が用いられている。遊技時には、これらのリールの回転が停止した時に所定の入賞ライン上に位置するシンボルの組合せによって入賞の有無が決められ、入賞の場合はその入賞の種類に応じた数のコインやメダルが払い出される。」、
「【0004】 詳細には、スロットマシンの場合、遊技者が操作レバー或いはスタートボタンを操作すると、制御装置が可変表示部のリールを回転駆動すると同時に乱数値をサンプリングし、そのサンプリング値が入賞に該当するか否かを、予め定めた入賞テーブルを参照して判定し、その判定結果により、リール停止時に表示窓に表示するシンボル(停止シンボル)を決定して、遊技者の停止操作に応じて或いは所定時間経過後にリールの回転を停止制御することが知られている。
【0005】 また、パチンコ機等の弾球遊技機においては、上記の操作レバーやスタートボタンの操作の代わりに、始動口と呼ばれる入賞領域に遊技球が入ったとき、制御装置が可変表示部を作動させると同時に乱数値をサンプリングし、このサンプリング値と入賞テーブルとに基づき入賞か否かの判定を行って停止シンボルを決定し、所定時間経過後に可変表示を停止制御することが知られている。」、
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来の遊技機においては、可変表示の停止後に発生する音は、例えば大当たりが発生したときはファンファーレ音等が鳴り響いたりして、変化が大きく興趣があるのに対し、遊技者が最も注目する可変表示の停止時に発生する音は、図柄列毎に入賞ライン上に停止する図柄の組合せがどのようなものであっても、同じ音であり、単に図柄列の停止タイミングと同期するものにすぎず、興趣に乏しかった。また、可変表示中に発生する音についても、同じ音がずっと鳴り響くか或いは単一のメロディが繰り返されるばかりで、やはり興趣に乏しかった。
【0010】 従って、本発明の目的は、少なくとも可変表示の停止時あるいは可変表示の間に発生する音に関して興趣が増した遊技機を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】 本発明の第1の態様は、少なくとも1本の入賞ラインと、該入賞ライン上を横切るように移動・停止可能な図柄列を構成する複数の図柄を可変表示する可変表示部と、該図柄列の移動及び停止に対応して音を発生する音発生手段とを備えた遊技機であって、移動中の図柄列を停止する際には、音発生手段から入賞ライン上に停止した図柄毎に異なる音を発生するように構成される。
【0012】 上記の遊技機においては、図柄列の停止時に発生する音は、例えば図柄の種類毎に音色、音程、音の長さ及びオクターブのうちの少なくとも一つが異なるように定められる。」、
「【0016】
【作用】 第1の態様の遊技機においては、可変表示部の図柄列が入賞ライン上を横切るように移動することにより図柄の可変表示が行われ、全ての図柄列が停止した時に入賞ライン上に位置する図柄組合せに応じて、所定の遊技価値が遊技者に付与される。この可変表示動作では、音発生手段から図柄列の移動及び停止に対応した音が発生するが、図柄列の移動が停止する際には、入賞ライン上に位置する図柄毎に異なる音が発生する。これにより、遊技者は、入賞ライン上に停止した図柄を音で識別できるので、その図柄の組合せが入賞か否かを目で見るだけでなく或いは目で見なくても、耳で聞いて認識することができ、遊技の興趣が高められる。
【0017】 上記のように図柄列の停止時に発生する音は、図柄の種類毎に音色、音程、音の長さ及びオクターブのうちの少なくとも一つを異ならせることにより、遊技者にとって入賞ライン上に停止した図柄の種類が容易に判別できるものとなる。」、
「【0021】
【効果】 上記のように、本発明によれば、可変表示が停止した時に発生する音が、図柄列毎に入賞ライン上に停止する図柄に応じて定められるので、遊技者は、最も注目する可変表示の停止時に入賞ライン上に停止した図柄を音で識別することができ、遊技の興趣が増大する。」、
「【0023】
【実施例】 図1は、実施例のスロットマシンの外観を示す正面斜視図である。このスロットマシン1の本体中央部には、各々の外周面に複数種類の図柄(以下、シンボルという)から成るシンボル列が描かれた3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成している。各リール2,3,4のシンボルは、本体1の正面の表示窓5,6,7を通して、それぞれ3個ずつ観察できるようになっている。」、
「【0029】 この実施例では、遊技者がコイン投入口8からコインを投入した後、正面の左端部に設置されたスタートレバー11を操作することにより、3つのリール2,3,4が一斉に回転する。そして、これらの回転が一定の速さに達した時、各リールに対応して設けられた停止ボタン12,13,14の操作が有効化されるので、遊技者はこれらのボタンを押圧操作することで、対応するリールの回転を停止させることができる。このとき、上記のように有効化されている入賞ライン上で停止したシンボルの組合せが入賞組合せに該当していれば、その入賞の種類に応じた枚数のコインが受皿17に払い出される。」、
「【0039】 スタートレバー11は、遊技者が回動操作した時にCPU21からリールを始動するスタート信号を発生するために、レバーの操作に連動してオン又はオフとなるスタートスイッチ11Sを含んでいる。」、
「【0043】 図4において、CPU21は、初めにコインBETがなされたかどうかを判別する(ステップST1)。この判別は、コイン投入口8にコインが投入され、コインセンサ8Sからの検出信号入力があった場合、或いはBETスイッチ9からの入力があった場合に“YES”となる。その場合、次にスタートレバー操作によりスタートスイッチ11Sからの入力(スタート信号)があるか否かを判別する(ST2)。この判別が“YES”の場合、CPU21は、I/Oポート23を介してリール駆動部32,33,34に駆動信号を送って全リール2,3,4を回転駆動する(ST3)
各リール2,3,4上には、例えば図5に示すような21個のシンボル(その種類は、図6(a)に示す7種類)が配列されてシンボル列を構成している。各シンボルには“0〜20”のコードナンバーが付され、データ・テーブルとしてROM24内に格納されている。各リール2,3,4は、図において矢印方向に(下から上へ)回転駆動される。」、
「【0049】 その後、停止ボタン12〜14のうちのいずれかが押されかどうかを判定し(ST7)、スイッチ・オンのときその停止ボタンに対応するリールの停止制御を実行し(ST8)、リール停止音を発生する(ST9)。
【0050】 ここで、遊技者が投入したコインが1枚の場合には、有効化入賞ラインはL1 のみであるから、この入賞ラインL1 上に停止したシンボルの停止音は、例えば図6(a)に示すテーブルから読み出して発生させる。」、
「【0055】 このようにステップ7〜10が繰り返されて全リールが停止した時、ST6の入賞判定結果に基づき、停止ボタンの操作タイミングに応じて生成されたシンボル組合せが上記の「イルカ-イルカ-イルカ」ならば、各リール停止時に発生する停止音は順に「ミ」、「ミ」、「ミ」となるので、遊技者はシンボルを見ていなくても入賞したことが分かる。
【0056】 一方、停止ボタンの操作タイミングがまずくて、入賞判定結果が入賞であるにもかかわらず上記の入賞態様のシンボルが入賞ライン上に一列に並ばなかった場合、例えば3つのリールが図2に示すように止まった場合には、各リール停止時に発生する停止音は順に「ミ」、「ミ」、「レ」となるので、遊技者はシンボルを見ていなくても外れたことが分かる。」、
「【0059】 上記実施例では、模式図として図6(a)に示したテーブルに基づいて各シンボルに対応するシンボル通過音および停止音を発生するようにしたので、それらの音は、同じシンボルであれば同一の音程であるが、図6(b)に示すように、同一の音程であってもシンボルの種類によってオクターブを異ならせるようにしてもよい。これにより、遊技者はリール停止時に停止シンボルを見ていなくても、停止シンボルの組合せが「入賞」なのか「外れ」なのかが分かる。
【0060】 上記第1実施例においては、図6(a)に示すテーブルに基づいて各シンボルに対応するシンボル通過音および停止音を発生するようにしたので、それらの音は、同じシンボルであれば同一の音程であるが、別の実施例として、同じシンボルは同じ音程であっても各リール毎にオクターブが異なるようにしてもよい。
【0061】 更に別の実施例として、全てのシンボルが同一音程、同一オクターブであっても、シンボルの種類毎に音色(汽笛、クラクション、様々な楽器の音など)を変えることにより、上記実施例と同様の効果を奏することができる。
【0062】 また、全シンボルについてオクターブ、音色、音程が同一であっても、シンボル毎に音の長さを変えるようにしてもよい。
【0063】 本発明は、上記実施例のようなリール駆動による機械的な可変表示に限らず、液晶、LED、CRT等の電気的表示手段によりシンボル列の移動、停止を行う遊技機でもよい。
【0064】 また、実施例のようにリール停止ボタンのない遊技機でもよい。その場合には、入賞判定結果に基づいて入賞ライン上に停止すべきシンボル組合せが決定されて所定時間後に停止制御されるので、自動的に停止音も決定される。」。

上記記載によれば、刊行物1には、
「各々の外周面に複数種類の図柄、すなわちシンボルから成るシンボル列が描かれた3個のリール2,3,4を備え、スタートレバー11の操作により、リール2,3,4が回転し、停止ボタン12,13,14を操作することによって、対応するリールの回転を停止する可変表示を行う遊技機であって、
シンボルと発生音のデータを対応させたテーブルから読み出して、シンボルに対応する停止音を発生するようにし、停止した図柄毎に異なる音を発生するように、例えば図柄の種類毎に音色、音程、音の長さ及びオクターブのうちの少なくとも一つが異なるように構成されている遊技機。」の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「シンボル」は、本願補正発明の「図柄」に相当し、以下同様に、「各々の外周面に複数種類の図柄から成るシンボル列が描かれた3個のリール」は「可変表示可能な図柄表示部」に、「スタートレバー11」は「図柄変動信号」に、「回転を停止」は「確定表示」に、「シンボルと発生音のデータを対応させたテーブル」は「効果音が複数種記憶」に、「停止音」は「効果音」に、「発生」は「発声」にそれぞれ相当し、
また、刊行物1記載の発明において、「【0064】 また、実施例のようにリール停止ボタンのない遊技機でもよい。その場合には、入賞判定結果に基づいて入賞ライン上に停止すべきシンボル組合せが決定されて所定時間後に停止制御されるので、自動的に停止音も決定される。」と記載されていることから、停止ボタンに変えて所定時間後に停止する構成を採用することも可能であるので、両者は、
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、図柄変動信号により、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に確定表示する可変表示ゲームを行う遊技機であって、効果音は複数種が記憶してあり、前記可変表示ゲームにおいて、前記図柄表示部に停止表示する図柄に対応する効果音を発声することを特徴とする遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]本願補正発明は、「その1つの効果音は2以上の予め決められた図柄に対応させてあ」るのに対し、刊行物1記載の発明は、停止した図柄毎に異なる音を発生するように構成され、2以上の図柄には対応させていない点。

(4)判断
[相違点]について
図柄を推定するための効果音を設定するに際して、図柄の種類が音程の数より多い場合には、刊行物1記載の発明では図柄の種類毎に音色、音程、音の長さ及びオクターブのうちの少なくとも一つを異ならせるような工夫をしているが、そのような工夫をせずに、簡略化して「ドレミファソラシ」の音程のみにより音を節約して構成し、異なる図柄による重複も許容するものとすれば、本願補正発明に想到するのであり、当業者が容易になし得たことである。したがって、相違点に係る本願補正発明の構成は、刊行物1記載の発明から当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年9月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年6月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、図柄変動信号により、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に確定表示する可変表示ゲームを行う遊技機であって、効果音は複数種が記憶してあると共に、その1つの効果音は2以上の図柄に対応させてあり、前記可変表示ゲームにおいて、前記図柄表示部に停止表示する図柄に対応する効果音を発声することを特徴とする遊技機。」

(1)刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された特開平9-299548号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に、次のことが記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)などの制御装置を用いて遊技態様を制御する遊技機に関し、特に複数の図柄(シンボル)を可変表示する可変表示部として、機械的に回転駆動されるリールから成る機械的表示手段あるいは液晶、LED、CRTなどの電気的表示手段を備えたスロットマシン、パチンコ機などの弾球遊技機、ポーカーゲーム機などの遊技機に関する。」、
「【0005】 このようなスロットマシンにおいては、遊技者に与えられる入賞態様として、 マル1(当審注:フォントがないのでこのように記載した。)所定の入賞図柄がそろった後、所定回数(例えば30回)以内の一連のゲームで遊技者が大量のコインを獲得できるビッグボーナスゲーム(以下「B・Bゲーム」という)、 マル2(当審注:フォントがないのでこのように記載した。)所定図柄がそろった後、もう1回ゲームを行うことのできるシングルボーナスゲーム(以下「S・Bゲーム」という)、及び マル3(当審注:フォントがないのでこのように記載した。)このS・Bゲームが高確率で発生することにより、長いゲーム回数の内に遊技者が獲得するコインが漸増する「S・B高確率ゲーム状態」がある。」、
「【0008】 従って、本発明の目的は、シンボル停止動作の際に「スベリ」を音で強調することにより、ストップボタン等の停止手段が作動してから実際に所定のシンボルが停止位置に来るまでの時間経過や、遊技状態の変化(例えば、B・Bゲームの内部当りの発生)を遊技者が聴覚的に容易に認識できる遊技機を提供することである。」、
「【0015】
【実施例】 図1は、実施例のスロットマシンの外観を示す正面斜視図である。このスロットマシン1の本体中央部には、各々の外周面に複数種類の図柄(以下、シンボルという)からなるシンボル列が描かれた3個のリール2,3,4が回転自在に設置され、可変表示部を形成している。各リール2、3,4のシンボルは、スロットマシン1の表示窓5,6,7を通じてそれぞれ3個ずつ観察できるようになっている。これらの表示窓5,6,7の下方右側には、遊技者が遊技媒体であるコイン、メダル、あるいはトークンといわれる代用貨幣(以下、遊技媒体をコインとして説明する)を入れるための投入口8が設けられている。
【0016】 表示窓5,6,7の下方には、押ボタン操作により1回のゲームに3枚までのコインを賭けられるBETスイッチ9、遊技者が獲得したコインのクレジット/払い出し(PLAY CREDIT/PAY OUT)を押ボタン操作により切り換えるクレジット/精算切換スイッチ10、レバー操作によりリール2,3,4の回転を開始するためのスタートレバー(スイッチ)11、及び、遊技者の操作に応じて各リール2,3,4の回転を停止するために、各リールに対して配置されたストップボタン12,13,14が設けられている。」、
「【0020】 本実施例においては、遊技者がコイン投入口8にコインを投入した後、正面左端に設置されたスタートレバー11の操作により、3つのリール2,3,4が一斉に回転する。そして、これらの回転が一定速度に達したとき、各リールに対応して設けられたストップボタン12,13,14の操作が有効化されるので、遊技者はこれらのボタンを指圧操作することによって、対応するリールの回転を停止することができる。このとき、上記のように有効化されている入賞ライン上で停止したシンボルの組合せが所定の入賞組合せに該当していれば、その入賞の種類に応じた枚数のコインが受皿17に払い出される。」、
「【0022】 各リール2,3,4上には、図2に示すような複数種類のシンボルが21個配置されて、シンボル列を構成している。各シンボルには、“1〜21”のコードナンバーが付され、データテーブルとして後述のROM32(図3)に格納されている。各リール2,3,4は、シンボル列が図の矢印方向に移動するように回転駆動される。
【0023】 なお、図2において、コードナンバー1の3個の“7”のように、斜線は「赤色」を表し、コードナンバー6の左側の“7”のように、網状の線は「青色」を表す。従って、図2のシンボル列において、“7”は、赤、青、白、リボン付きの4種類がある。そして、“赤7-赤7-赤7”がそろうとB・Bゲームの発生、“リボン付き7-任意の7-リボン付き7”がそろうとS・Bゲームの発生、というように所定のシンボル組合せによって入賞態様が定められている。」、
「【0037】 判定結果が外れの場合、CPU31は、遊技者が停止手段の一例のストップボタン12,13,14を操作した時にボタン動作信号発生回路50から送出されるボタン操作受付信号を受け、CPU91に、本発明における第1の音出力信号の具体例である「ストップボタン受付音出力要求信号」を送る。そして、ボタン操作受付信号を受けた後、CPU31はリール2,3,4を何コマ滑らせて停止させるかを決定し、モータ駆動回路44に制御信号を送り、滑らせるコマ数に応じた時間だけ待機して、その後CPU91に、本発明における第2の音出力信号の具体例である「リール停止音出力要求信号」を送る。
【0038】 一方、判定結果が入賞態様を発生させるものである場合、CPU31は、遊技者が停止手段の一例のストップボタン12,13,14を操作した時にボタン動作信号発生回路50から送出されるボタン操作受付信号を受け、CPU91に、本発明における第3の音出力信号の具体例である「入賞時ストップボタン受付音出力要求信号」を送る。そして、ボタン操作受付信号を受けた後、CPU31はリール2,3,4を何コマ滑らせて停止させるかを決定し、モータ駆動回路44に制御信号を送り、滑らせるコマ数に応じた時間だけ待機して、その後CPU91に、本発明における第4の音出力信号の具体例である「入賞時リール停止音出力要求信号」を送る。」、
「【0052】 図6〜図8では、入賞状態にならない場合を説明したが、入賞状態になった場合も、CPU31とCPU91の基本的動作は同じである。すなわち、CPU31が送るストップボタン受付音出力要求信号及びリール停止音出力要求信号を、それぞれ入賞状態になった場合の信号に置き換えればよい。これに応じて、CPU91が出力するストップボタン受付音及びリール停止音も、それぞれ入賞状態になった場合の音に置き換えればよい。非入賞時ストップボタン受付音、非入賞時リール停止音、入賞時ストップボタン受付音、入賞時リール停止音はそれぞれ異なるように構成する。
【0053】 以上のように、本実施例においては、ストップボタン操作時に1回、実際に停止した時に1回それぞれ違う音が発生するので、遊技者にとって聴覚による「スベリ」時間の認識がしやすく、また、入賞時と入賞でない時とで発生する音が異なるので、「スベリ」の種類も聴覚的に認識しやすい。また、聴覚と併用すれば、視覚的にも「スベリ」時間が認識しやすくなる。」。

上記記載によれば、刊行物2には、
「複数の図柄を可変表示する可変表示部を設け、スタートレバー(スイッチ)11の操作により、複数種類のシンボルが配置された3つのリール2,3,4が一斉に回転し、ストップボタン12,13,14を指圧操作することによって、対応するリールの回転を停止する可変表示ゲームを行う遊技機であって、
非入賞時リール停止音と入賞時リール停止音は異なるように構成されており、
前記可変表示ゲームにおいて、非入賞時と入賞時に対応するリール停止音を発生する遊技機。」の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)対比
そこで、本願発明と刊行物2記載の発明とを比較すると、刊行物2記載の発明の「スタートレバー(スイッチ)11の操作」は、本願発明の「図柄変動信号」に相当し、以下同様に、「複数種類のシンボルが配置された3つのリール2,3,4が一斉に回転」は「図柄表示部の図柄が変動を開始」に、「リールの回転を停止」は「確定表示」に、「リール停止音」は「効果音」に、「発生」は「発声」にそれぞれ相当するから、両者は、
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、図柄変動信号により、図柄表示部の図柄が変動を開始し、確定表示する可変表示ゲームを行う遊技機であって、効果音は複数種が記憶してあり、前記可変表示ゲームにおいて、効果音を発声することを特徴とする遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明は「所定時間後に確定表示する可変表示ゲームを行う遊技機」であるのに対し、刊行物2記載の発明では遊技者の操作に応じて停止するためにストップボタンが設けられている遊技機である点。
[相違点2]本願発明は、1つの効果音は2以上の図柄に対応させてあり、可変表示ゲームにおいて、図柄表示部に停止表示する図柄に対応する効果音を発声するのに対し、刊行物2記載の発明は、非入賞時効果音と入賞時効果音を異なるように構成して、可変表示ゲームにおいて、非入賞時と入賞時に対応する効果音を発声する点。

(3)判断
[相違点1]について
本願発明と同一技術分野に属する遊技機において、所定時間後に確定表示させることは、例えば原査定の備考に示された特開平8―173592号公報の段落【0004】【0005】に記載されているように従来周知の技術であって、遊技者のストップボタンの操作を介在させずに所定時間後に停止させることは、特開平8―173592号公報の段落【0064】に記載されているように当業者が適宜採用し得る設計的事項にすぎない。したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、刊行物2記載の発明に従来周知の技術を採用したものであるから、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
[相違点2]について
刊行物2記載の発明は、本願発明の実施例のように効果音が個々の図柄に対応するものではないが、効果音は非入賞と入賞に対応し、非入賞の図柄の組合せと入賞の図柄の組合せはそれぞれ複数存在するので、刊行物2記載の発明も、効果音は2以上の図柄に対応するものと言うことができる。また、本願発明の「図柄に対応」を個々の図柄に対応と解釈し得るとしても、効果音を個々の図柄に対応させる構成は、例えば、特開平8―173592号公報の段落【0059】、実願昭61-204032号(実開昭63-106484号)のマイクロフィルム16頁14行目〜18頁11行目、特開平7―68029号公報4頁右欄28行目〜5頁左欄11行目にも示されるように周知であって、刊行物2記載の発明の効果音として採用できないとする理由も見当たらないから、相違点2に係る本願発明の構成は、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、同じ効果音であっても、異なる図柄を停止表示して、従来にない面白みを発揮するという本願発明の作用効果について、刊行物2記載の発明においては入賞の効果音によっては複数の入賞態様のいずれかが判らない構成であり、異なる図柄の組み合わせが同じ効果音に対応することとなり、本願発明の作用効果が格別のものとは認められない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-21 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-06-01 
出願番号 特願平11-224826
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗小林 英司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 川島 陵司
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 犬飼 達彦  

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