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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1140387
審判番号 不服2004-24051  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-25 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 特願2000-151142「レーザ露光装置及び写真処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月30日出願公開、特開2001-330897〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年5月23日の出願であって、平成16年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年11月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年2月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「3原色の波長光のレーザビームをそれぞれ発生する各レーザビーム発生部と、各レーザビーム発生部からのレーザビームに対して、画像濃度に対する光変調レベルが対応して記憶された所定ビットを有するγ特性テーブルメモリと、γ特性テーブルメモリからの光変調レベルデータに基づいて光変調を施す光変調部とを備え、光変調された後のレーザビームを感光材に導いて感光面を露光するレーザ露光装置において、
上記各レーザビーム発生部と感光材との間に介設され、光量抑制が制御可能な光量抑制手段と、
上記所定ビット以下の光変調レベルで光変調されたレーザビームで飽和するγ特性を有する上記感光材への露光を、上記γ特性テーブルメモリの光変調レベルを所定ビットまで用いた拡大γ特性として設定するための、感光材の種類に応じた、各拡大γ特性及び抑制量を記憶する記憶部と、
感光材を収納するマガジンに設けられた、収納された感光材の種類を認識するための構造から該感光材の種類を検出する感光材種類検出手段と、
感光材の種類の検出結果に基づいて光量抑制手段による光量抑制の要否が判断され、該光量抑制が必要と判断されたときには、記憶部に記憶された複数の光量抑制量の中の前記感光材の種類の検出結果に対応する光量抑制量が設定されるとともに、この光量抑制量が設定された状態で前記記憶部に記憶された複数の拡大γ特性の中の前記感光材の種類の検出結果に対応する拡大γ特性でγ特性テーブルメモリが更新される一方、前記光量抑制が必要でないと判断されたときには、前記記憶部に記憶された感光材の種類の検出結果に対応する光量抑制量の設定と、前記記憶部に記憶された感光材の種類の検出結果に対応する拡大γ特性でのγ特性テーブルメモリの更新とがスキップされるような、前記拡大γ特性によるγ特性テーブルメモリの更新と、前記光量抑制手段による光量抑制量の設定との動作タイミングの制御下で、前記感光材の種類の検出結果から対応する記憶部の拡大γ特性でγ特性テーブルメモリを更新し、かつ前記光量抑制手段による光量抑制量を設定する制御手段とを備えたことを特徴とするレーザ露光装置。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成17年12月6日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された、特開2000-33732号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2000-19661号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平5-176144号公報(以下、「引用例3」という。)及び特許第2684454号公報(以下、「引用例4」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例
引用例1には、
「本発明は画像記録方法及び装置に係り、特に、記録材料に露光記録すべき画像を表す入力画像データを、記録材料に前記画像を露光記録させるための出力画像信号に変換し、該出力画像信号を用いて露光記録部により記録材料に画像を露光記録させる画像記録方法、及び該画像記録方法を適用可能な画像記録装置に関する。」(段落【0001】)、

「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のキャリブレーションとしては、或る露光量値に変換される濃度値が測定濃度値と基準濃度値の偏差分だけシフトするように、変換条件を前記偏差分だけシフトさせる補正が大多数であり、特に記録材料の露光量-発色濃度特性が大きく変動した等の場合に、この変動を精度良く吸収することができず、所望の階調の記録画像が得られないことがあった。また、記録画像の高濃度部を露光記録する際の露光量が過大となることにより、記録画像の高濃度部に画像のにじみ等が視認されることもあった。」(段落【0005】)、

「【0038】レーザプリンタ部18はR、G、Bのレーザ光源を備えており、画像処理部16から入力された記録用画像データに応じて変調したレーザ光を印画紙等の記録材料に照射して、走査露光によって記録材料に画像を記録する。また、プロセッサ部20は、レーザプリンタ部18で走査露光によって画像が記録された記録材料に対し、発色現像、漂白定着、水洗、乾燥の各処理を施す。これにより、記録材料上に画像が形成される。」

「【0041】図4に示すように、各レーザ光源210R、210G、210BのLD(図4では符号「210」を付して示す)は、LDドライバ232を介してプリンタ制御部230の入出力ポート230Eに各々接続されている。レーザ光源210R、210G、210Bはプリンタ制御部230によって作動が制御される。
【0042】レーザ光源210R、210G、210Bのレーザ光射出側には、各々コリメータレンズ212、光変調器としての音響光学光変調素子(AOM)214が順に配置されている。3個のAOM214は互いに同一の構成であり、入射されたレーザ光が音響光学媒質を透過するように配置されていると共に、AOMドライバ234(図4参照)に接続されている。AOMドライバ234は入出力ポート230Eに接続されている。
【0043】プリンタ制御部230は、記録材料に画像を露光記録させるためのアナログの変調信号を出力する。この変調信号はAOMドライバ234に入力され、AOMドライバ234は、入力された変調信号に応じて、AOM214を駆動するための高周波の駆動信号を発生させ、該駆動信号をAOM214に入力する。AOMドライバ100から高周波の駆動信号が入力されると、AOM214の音響光学媒質内を前記駆動信号に応じた超音波が伝搬し、音響光学媒質を透過するレーザ光に音響光学効果が作用して回折が生じる。これにより、前記駆動信号の振幅に応じた強度のレーザ光がAOM214から回折光として射出される。
・・・。
【0049】図4に示すように、プリンタ制御部230は、CPU230A、ROM230B、RAM230C、記憶内容を書換え可能な不揮発性の記憶手段(例えばEEPROM、バックアップ電源に接続されたRAM等)230D、及び入出力ポート230Eを備えており、これらがバスを介して互いに接続されて構成されている。入出力ポート230Eは、通信制御部228を介して画像処理部16と接続されている。また、入出力ポート230Eには記録用画像データ(本発明に係る入力画像データ)を記憶するためのフレームメモリ248が接続されている。
【0050】プリンタ制御部230は、通信制御部228を介して画像処理部16から記録用画像データ(記録材料に記録すべき画像の各画素毎のR、G、B濃度を表す画像データ)が転送されると、転送された記録用画像データを一旦フレームメモリ230に格納した後に、図5に示すように、記録用画像データ(画像データPS)を変調信号MQに変換し、AOMドライバ234へ供給する。これにより、露光記録部206による記録材料への画像の露光記録が行われることになる。
【0051】記憶手段230Dには、記憶手段230Dを、画像データPSを変調信号MQに変換するプリンタルックアップテーブル(プリンタLUT)として機能させるための変換データが、レーザプリンタ部18で画像が露光記録される記録材料の種類に対応して複数種記憶されている。本実施形態では、例えばマガジン252に付与された収容している記録材料の種類毎に異なるマークを読み取る等によって、レーザプリンタ部18にセットされている記録材料、すなわち画像が露光記録される記録材料の種類を検知し、前記複数種のプリンタLUTの中から検知した記録材料の種類に対応するプリンタLUTを選択し、選択したプリンタLUTを用いて記録用画像データから変調信号MQへの変換を行う。なお、上記処理は本発明の画像記録制御手段に対応している。
【0052】プリンタLUTは、画像データPSが表す濃度値を記録材料への露光量の対数値を表す対数露光量データPDに変換するためのPS-PDルックアップテーブル(以下「PS-PD LUT」という:図5及び図6参照)と、対数露光量データPSを変調信号MQに変換するためのキャリブレーションルックアップテーブル(以下「キャリブLUT」という)と、を統合し、上記2種類のルックアップテーブルによる変換が1回の変換で実現されるように変換特性が定められている。記憶手段230Dには、PS-PD LUTの変換特性を表すPS-PD データ、及びキャリブLUTの変換特性を規定するパラメータ(線形補間係数α,β:詳細は後述)が記録材料の種類毎に各々記憶されており、プリンタLUTの作成(すなわちPS-PD LUTとキャリブLUTの統合)は、後述するキャリブレーション演算処理で行われる。
【0053】なお、PS-PD LUTは本発明に係る画像データ変換条件に対応していると共に、キャリブLUTは本発明に係る露光量データ変換条件に対応しており、これらを統合したプリンタLUTによって記録用画像データから変調信号MQへの変換を行うことは請求項10の発明に対応している。また、記録材料の種類を検知し、検知した種類に対応するプリンタLUTを用いて記録用画像データから変調信号MQへの変換を行うことは、請求項5の発明に対応している。
【0054】上記のPS-PD LUTの変換特性は以下のようにして定められている。すなわち記録材料への対数露光量 LogEと、記録材料のC,M,Y各色の発色濃度には、例として図7に示すような関係がある(対数露光量-発色濃度特性)。この対数露光量-発色濃度特性は記録材料の種類毎に相違している。なお、記憶手段230Dには、プリンタLUTの変換データと別に、上記の対数露光量-発色濃度特性を表す特性データが、記録材料の種類毎に各々記憶されている。
【0055】一方、画像データが表す画像の濃度は、所望の階調の記録画像(記録材料上に形成された画像)の濃度とは必ずしも一致しておらず、R,G,B濃度が同一(すなち色相がグレー)という条件下での画像データの値に対し、記録画像上で実現すべき目標階調を明度指数L*で表したとすると、例として図8に示すような階調特性となる。従って、この階調特性から、例として図9に示すように、画像データの値と、目標階調の記録画像を得るための記録画像(記録材料)上でのC,M,Y各色の目標濃度との関係(目標階調特性)を求めることができる。
【0056】特定種の記録材料に対応するPS-PD LUTの変換特性は、上記の目標階調特性を表す目標階調データ、及び特定種の記録材料の対数露光量-発色濃度特性を表す特性データから、例として図10に示すように、画像データPSが表す濃度値を対数露光量データPDが表す記録材料への露光量の対数値と対応付けることを、画像データPSの全数値範囲(例えば画像データが8ビットであれば0〜255)に亘って行うことで得ることができる。そして上記処理を各種記録材料について各々行うことで、記録材料の種類毎に、記録材料の対数露光量-発色濃度特性に応じたPS-PD LUTを各々得ることができる。
【0057】前述のように、本実施形態では画像を露光記録する記録材料の種類に対応するPS-PD LUTを用いて画像データPSから対数露光量データPDへの変換を行うので、画像データPSが表す画像を、目標階調の記録画像として記録材料に露光記録するための記録材料への露光量の対数値を精度良く表す対数露光量データPDを得ることができる。なお、PS-PD LUTの変換特性を表すPS-PD データを記憶手段230Dに記憶する代わりに、目標階調データ及び特性データに分けて記憶しておき、プリンタLUTの作成及びキャリブレーション時に、両者を統合してPS-PD LUTの変換特性を求めるようにしてもよい。」(段落【0041】〜【0057】)、

「【0081】また、PS-PD LUTの変換特性の調整は、以下のようにして行うようにしてもよい。すなわち、図18(B)に示すPS-PD LUT修正処理では、ステップ341において、記録材料の特性データに基づいて、記録材料の対数露光量-発色濃度特性において、対数露光量の増加に対して発色濃度の変化が飽和するときの濃度(飽和濃度Dmax :図18(A)参照)を算出する。次のステップ343では、飽和濃度Dmax を基準としてシャドー部濃度DSDを決定する(例えばDSD=Dmax -C)。ステップ345では、シャドー部濃度DSDに基づいて対数露光量の最大値 LogEmax を算出する。この最大値 LogEmax は、図18(A)に示すように、対数露光量-発色濃度特性の特性曲線上のシャドー部に相当する範囲内で、発色濃度がシャドー部濃度DSDに一致するときの対数露光量を最大値 LogEmax として設定することで算出することができる。
【0082】そして、次のステップ346では、上記で算出した対数露光量の最大値 LogEmax に基づいて、例として図18(C)に実線で示すように、PS-PD LUTによる変換後の対数露光量データPDにおける露光量の最大値が最大値 LogEmax に一致するように変換特性を調整した後に、更にPS-PD LUTの変換特性を表す特性曲線が滑らかな曲線となるように平滑化を行う。上記処理によっても、PS-PDLUTを用いた変換によって得られる対数露光量データPDが表す対数露光量が、最大値 LogEmax 以下に制限されるので、記録材料への露光量が過大となることを防止することができる。なお、上述したPS-PD LUTの調整は請求項8の発明に対応している。」(段落【0081】、【0082】)、

「請求項8記載の発明は、請求項1の発明において、露光量データが表す露光量の最大値が、露光量の増加に対して記録材料の発色濃度の変化が飽和するときの濃度値から所定値を減算した濃度値に対応する露光量に制限され、かつ画像データ変換条件の変換特性曲線が滑らかとなるように画像データ変換条件を調整するので、上記効果に加え、記録材料への露光量が過大となることを防止することができる、という効果を有する。」(段落【0094】)
が記載され、これらの記載によれば、引用例1には、
「210R、210G、210Bのレーザ光源と、各々に、コリメータレンズ212、光変調器としての音響光学光変調素子(AOM)214が順に配置され、画像処理部16から入力された記録用画像データに応じて変調したレーザ光を印画紙等の記録材料に走査露光する画像記録装置において、
記録材料への露光量が過大となることを防止しつつ、画像データPSが表す濃度値を対数露光量データPDが表す記録材料への露光量の対数値と対応付けることを、画像データPSの全数値範囲(例えば画像データが8ビットであれば0〜255)に亘って行うために、画像データPSが表す濃度値を記録材料への露光量の対数値を表す対数露光量データPDに変換するための画像データ変換条件に対応するPS-PDルックアップテーブル(PS-PD LUT)の変換特性を表すPS-PD データ、及び記録材料への対数露光量 LogEと記録材料のC,M,Y各色の発色濃度との関係を表す特性データ(対数露光量-発色濃度特性データ)を記録材料の種類毎に、各々、記憶する記憶手段230Dと、
マガジン252に付与された収容している記録材料の種類毎に異なるマークを読み取り、記録材料の種類を検知する手段と、
検知した記録材料の種類に対応するPS-PD LUTの変換特性の調整については、発色濃度がシャドー部濃度DSDに一致するときの対数露光量を最大値 LogEmax を算出し、次にPS-PD LUTによる変換後の対数露光量データPDにおける露光量の最大値が最大値 LogEmax に一致するように調整することで、露光量の増加に対して記録材料の発色濃度の変化が飽和するときの濃度値から所定値を減算した濃度値に対応する露光量に制限されるように、前記所定値に対応する制限露光量を算出し、画像データ変換条件を調整するCPU230Aとを備えたことを特徴とする画像記録装置」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

引用例2には、
「本発明は、画像データに応じて感光材料としての印画紙を露光することにより、印画紙に画像を記録する画像記録装置に関するものであり、特に、装置の稼働前等においてセットアップを行うために必要な濃度計を備えた画像記録装置に関するものである。なお、上記のセットアップとは、プリント濃度の所定値(基準値)からのずれを予め補正しておく処理のことを言う。」(段落【0001】)、

「メモリ4には、図3の第1象限に示す画像データとCRT電圧との関係がルックアップテーブル(以下、LUTと略称する)として記憶されている。CRT電圧は、0〜255の各画像データごとに設定されており、画像データの値が小さくなるほど大きい値となっている。」(段落【0044】)、

「次に、制御部5は、各段階において、濃度計3が測定したパターンプリントの測定濃度値が、メモリ4に記憶されている基準パターンプリントの測定濃度値と等しくなるように、各画像データに対応したCRT電圧を変更すると共に、メモリ4に記憶されているLUTを更新する。」(段落【0054】)、
が記載されている。

引用例3には、
「本発明は、画像露光装置に関し、詳しくは、感光材料の階調表現濃度範囲に対応する露光量範囲に対して入力信号レベルに対応した光出力特性曲線の線形領域が比較的に狭い半導体レーザを用いて、前記感光材料の感度変動に対しても安定した画像を露光する画像露光装置に関する。」(段落【0001】)、

「これらの階調データDi に対応する露光量データEi はLUT(ルック アップテーブル)などのメモリに記憶しておくのが好ましい。」(段落【0023】)、

「このため、本発明の第1の態様においては、変動幅±0.3(logE)と本来規格として定められたダイナミックレンジ1.5(logE)とを合わせた全露光量範囲2.1(logE)に亘ってLDのパルス幅変調が可能なように構成される。すなわち、露光量のステップを階調ステップよりも多くして、本来のダイナミックレンジ1.5logEに対応する露光量ステップに加え、この最小ステップより小さい側に0.3logEと逆に最大ステップより大きい側に0.3logEとに対応する露光量ステップにわたる拡大されたダイナミックレンジに対するパルス幅変調が可能である。具体的な一例としては、後述する予め設定された方法に従って、感光材料の感度特性曲線fo からの感度の変動量データが露光制御手段30に入力されると、LUTにメモリされている256の階調ステップに対応する露光量データ(発光時間データ)を読み出し、これらのデータに変動量データ(発光時間の変動量データ)を加算もしくは減算し、こうして得られた256ステップの補正露光量データ(発光時間データ)を再び前記LUTにメモリする。」(段落【0027】)
が記載されている。

引用例4には、
「本発明は、例えばレーザービームを走査して感光材料上に画像を描画するレーザーイメージャに用いる濃度設定方法に関するものである。」(2欄10行〜12行)、

「本発明に係る濃度設定方法においては、レーザー制御手段によって変調制御を行って光源から発生されるレーザービームを、前記レーザー制御手段とは別に設けた光量調整用のフィルタ手段を介して感光材料に照射し、前記レーザー制御手段によって制御変調される前記光源からの前記レーザービームの強度を最大にした状態で、前記レーザービームの強度を前記フィルタ手段によって変更しながら走査し、前記感光材料上の複数部分を前記レーザービームの光強度を異ならせてそれぞれ露光した後に、前記感光材料を現像して前記複数部分のそれぞれの濃度を測定することによって、前記レーザービームの前記感光材料上の光強度と前記感光材料の濃度との関係を求め、該関係を利用して前記フィルタ手段による前記感光材料上の濃度を設定することを特徴とする。」(3欄36行〜50行)、

「記録対象等の都合によって画像の最大濃度値の変化する場合には、パルスモータ制御装置17からパルスを出射してパルスモータ14を駆動回転すると、プーリ15を介して円筒3及び偏光ビームスプリッタ4が回転され、偏光ビームスプリッタ4を透過するレーザービームの強度を光学的に変化させることができ、結果的に現像後の画像の最大濃度値が変化することになる。この画像の最大濃度値と、偏光ビームスプリッタ4の回転角度の対応関係は一般に比例しないので、以下に述べるように測定をして得たものを利用する。」(5欄15行〜24行)、

「以上説明したように本発明に係る濃度設定方法は、所定の光強度で光源から発生されるレーザービームをフィルタ手段によって光強度を変更しながら感光材料上で走査することにより、感光材料上の複数部分をレーザービームの光強度を異ならせてそれぞれ露光し、更に現像して各部分の濃度を測定することによって、レーザービームの強度と感光材料の濃度との関係を得ており、この得られた関係を利用することにより感光材料の濃度を自在に測定可能とする簡単な操作で実施でき、再測定も容易に行える。」(6欄25行〜34行)
が記載されている。

4.対比・判断
本願発明と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「記録材料への露光量が過大となることを防止しつつ、画像データPSが表す濃度値を対数露光量データPDが表す記録材料への露光量の対数値と対応付けることを、画像データPSの全数値範囲(例えば画像データが8ビットであれば0〜255)に亘って行う」が、本願発明の「所定ビット以下の光変調レベルで光変調されたレーザビームで飽和するγ特性を有する上記感光材への露光を、上記γ特性テーブルの光変調レベルを所定ビットまで用いた拡大γ特性として設定する」に相当することは自明であり、さらに、
引用例1発明の「レーザ光源」、「光変調器214」、「記録材料」、「画像記録装置」、「PS-PD LUTの変換特性」、「検知した記録材料の種類に対応するPS-PD LUTの変換特性」、「制限露光量」、「記憶手段230D」、「マーク」、「記録材料の種類を検知する手段」、「CPU230A」は、各々、本願発明の「レーザビーム発生部」、「光変調部」、「感光材」、「レーザ露光装置」、「γ特性」、「拡大γ特性」、「抑制量」、「記憶部」、「収納された感光材の種類を認識するための構造」、「感光材種類検出手段」、「制御手段」に相当するから、両者は、
「3原色の波長光のレーザビームをそれぞれ発生する各レーザビーム発生部と、各レーザビーム発生部からのレーザビームに対して、γ特性テーブルの光変調レベルデータに基づいて光変調を施す光変調部とを備え、光変調された後のレーザビームを感光材に導いて感光面を露光するレーザ露光装置において、
上記所定ビット以下の光変調レベルで光変調されたレーザビームで飽和するγ特性を有する上記感光材への露光を、上記γ特性テーブルメモリの光変調レベルを所定ビットまで用いた拡大γ特性として設定するための記憶部と、感光材を収納するマガジンに設けられた、収納された感光材の種類を認識するための構造から該感光材の種類を検出する感光材種類検出手段と、感光材の種類の検出結果に基づいて光量抑制量を設定する制御手段とを備えたことを特徴とするレーザ露光装置。」である点で一致し、
γ特性テーブルについて、本願発明が「画像濃度に対する光変調レベルが対応して記憶された所定ビットを有するγ特性テーブルメモリ」を備えているのに対し、引用例1発明は「画像データPSが表す濃度値を記録材料への露光量の対数値を表す対数露光量データPDに変換するための画像データ変換条件に対応するPS-PDルックアップテーブル(PS-PD LUT)の変換特性を表すPS-PD データ、及び記録材料への対数露光量 LogEと記録材料のC,M,Y各色の発色濃度との関係を表す特性データ(対数露光量-発色濃度特性)を記録材料の種類毎に、各々、記憶する記憶手段230D」を備えている点(相違点1)、
本願発明が「上記各レーザビーム発生部と感光材との間に介設され、光量抑制が制御可能な光量抑制手段」を備えているのに対し、引用例1発明はそのような構成を備えていない点(相違点2)、
記憶部について、本願発明が「感光材の種類に応じた、各拡大γ特性及び抑制量を記憶する記憶部」を備えているのに対し、引用例1発明はそのような構成を備えていない点(相違点3)、
制御手段について、本願発明が「感光材の種類の検出結果に基づいて光量抑制手段による光量抑制の要否が判断され、該光量抑制が必要と判断されたときには、複数の光量抑制量の中の前記感光材の種類の検出結果に対応する光量抑制量が設定されるとともにγ特性テーブルメモリが更新され、前記光量抑制が必要でないと判断されたときには、記憶部に記憶された感光材の種類の検出結果に対応する光量抑制量の設定とγ特性テーブルメモリの更新とがスキップされるような、前記拡大γ特性によるγ特性テーブルメモリの更新と、前記光量抑制手段による光量抑制量の設定との動作タイミングの制御下で、前記感光材の種類の検出結果から対応する記憶部の拡大γ特性でγ特性テーブルメモリを更新し、かつ前記光量抑制手段による光量抑制量を設定する制御手段」を備えているのに対し、引用例1発明は「検知した記録材料の種類に対応するPS-PD LUTの変換特性の調整については、露光量の増加に対して記録材料の発色濃度の変化が飽和するときの濃度値から所定値を減算した濃度値に対応する露光量に制限されるように、前記所定値に対応する制限露光量を算出し、画像データ変換条件を調整するCPU230A」という構成を備えている点(相違点4)
の4点で相違する。

次に、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
引用例1には、「PS-PDルックアップテーブルの変換特性を表すPS-PD データ」が記憶手段230Dに記憶されている旨の記載があるものの、前記記憶手段はPS-PDルックアップテーブルを記憶するテーブルメモリであるとは認められない。しかしながら、本願発明と同様の画像記録装置であると認められる引用例2、引用例3には、ルックアップテーブルを更新可能に記憶するテーブルメモリが示されているから、この相違点に係る本願発明の構成は、引用例1の記憶手段を所定ビットを有するテーブルメモリとすることにより当業者が容易に想到しえたものと認められる。

[相違点2について]
本願発明と同じ技術分野のものである引用例4には、光源から発生されるレーザービームを、前記レーザー制御手段とは別に設けた光量調整用のフィルタ手段を介して感光材料に照射すること、そして具体的には、前記フィルタ手段として偏光ビームスプリッタを用い、前記フィルタ手段をパルスモータ制御装置からのパルスにてパルスモータを駆動回転することが記載されており、これを引用例1発明に適用することにより、本願発明のこの相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になしえたものと認められる。

[相違点3について]
本願発明の「拡大γ特性」、「抑制量」に対応する引用例1発明の「検知した記録材料の種類に対応するPS-PD LUTの変換特性」、「制限露光量」については、記録材料の種類毎に、記憶手段230Dに記憶された、PS-PD LUTの変換特性を表すPS-PD データや対数露光量-発色濃度特性データから、各々、算出されることが示されているから、前記算出により求められた「検知した記録材料の種類に対応するPS-PD LUTの変換特性」、「制限露光量」を記憶手段に記憶し、本願発明のように構成することは、当業者が必要に応じて適宜なしえたものと認められる。

[相違点4について]
まず、本願発明の光量抑制の要否の判断について検討すると、本願発明ではその要否の判断がどのように行われるのかという点に関する具体的な記載は何らなく、単に前記要否の判断結果に応じて光量抑制量の設定とγ特性テーブルメモリの更新が実行又はスキップされるという点を表しているにとどまるものであるところ、引用例1発明では記録材料の種類が異なることを検知した場合に、制限露光量の算出と画像データ変換条件の調整が行われることが記載されているし、また、[相違点1について]で検討したように、γ特性テーブルを記憶するためのテーブルメモリを備えることは当業者が容易に想到しえたものと認められるから、前記した本願発明の光量抑制量の設定とγ特性テーブルメモリの更新が、前記要否の判断結果に応じて実行又はスキップされるように構成することは当業者が容易になしえたものと認められる。
次に、光量抑制手段による光量抑制量の設定との動作タイミングの制御下における制御について検討すると、引用例4には、レーザービームの強度と感光材料の濃度との関係を、光量調整用のフィルタ手段によってその光強度を変更しながらレーザービームを感光材料上で走査させた後に求める旨の記載(6欄25行〜34行を参照)があり、前記「光量調整用のフィルタ手段によってその光強度を変更しながらレーザービームを感光材料上で走査させた後」は、本願発明の「光量抑制手段による光量抑制量の設定との動作タイミングの制御下で、」と同様の状況下であると認められるから、引用例4に示される技術思想を引用例1発明に適用することにより、光変調器において行われていた検知した記録材料の種類に対応する露光量の制限を本願発明のように光量抑制手段において行われるように制御することも当業者が必要に応じて適宜なしえたものと認められる。
結局、引用例1発明のCPU230Aにより前記テーブルメモリの更新及び光量抑制手段による光量抑制量の設定を行うように制御することは、引用例1〜4に基づいて当業者が容易に想到しえたものと認められるから、この相違点は格別なものとは認められない。

また、前記各相違点を総合的に検討しても奏される効果は当業者が当然予測できる範囲内のものと認められる。
そして、本願発明の奏する効果も、引用例1〜4に記載の各技術事項が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-22 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-06 
出願番号 特願2000-151142(P2000-151142)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 青木 和夫
辻 徹二
発明の名称 レーザ露光装置及び写真処理装置  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  

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