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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23B
管理番号 1140454
審判番号 不服2002-20750  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-24 
確定日 2006-07-13 
事件の表示 平成11年特許願第359578号「魚卵の包装方法および包装体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-169718〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年12月17日の出願であって、平成14年9月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月25日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月25日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年11月25日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「魚卵を内部に入れた容器と脱酸素剤とをガスバリア性の高いフィルム材からなる密封容器内に前記魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにして入れ、密封容器内の空気を窒素ガス、二酸化炭素ガス、エタノールガスの単体もしくは混合体に置換し、その後密封容器を密封して内部の残存酸素量を極微量に抑えることを特徴とする魚卵の包装方法。」と、及び請求項3は、「魚卵を内部に入れた容器と、脱酸素剤と、前記魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにしてこれらの魚卵、容器および脱酸素剤を密封するとともに内部の空気を窒素ガス、二酸化炭素ガス、エタノールガスの単体もしくは混合体に置換されたガスバリア性の高いフィルム材からなる密封容器とからなり、密封容器内の残存酸素量が極微量に抑えられていることを特徴とする魚卵の包装体。」と補正された。
上記補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記魚卵の一部をフイルムに密着させるように」を「前記魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるように」という限定を付加するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平3-72842号公報(以下、「引用例1」という。)には、「酸素非透過性樹脂製の容器本体、該容器本体にシールされた酸素非透過性樹脂製の上蓋、該容器内に収容された魚卵、該魚卵と該容器本体及び該上蓋との間に全面にわたって介在する吸湿吸水性のシート状物及び該容器内に収容された脱酸素剤からなることを特徴とする魚卵包装体。」(特許請求の範囲の請求項1)、及び「包装体を密封後12時間以内に包装体内部の雰囲気中の酸素濃度を0.1%以下とすることが好ましい。酸素濃度が0.1%を超える場合には、魚卵の酸化が起り、食味が低下し、さらに品質の劣化、腐敗等が起り易くなる。」(3頁左下欄19行〜右下欄4行)と記載されている。
同じく特開昭59ー227272号公報(以下、「引用例2」という。)には、「1)魚卵類を塩水漬、味付液漬した食品加工処理後の魚卵類の充填包装工程において、包装容器の内箱となる多数の孔を有する包装容器を、水切り用バケット容器内に整列して並べ、該包装容器内に漬液を含む魚卵を流し込むようにして充填すると同時に水切りを行ない、この包装容器をガスバリア性の高いプラスチックフィルム、外装容器により被覆して密封包装することを特徴とする魚卵類の包装物製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、「2)包装容器を、脱酸素剤の装填、又は真空吸引あるいは不活性ガス充填しながら外装容器により被覆する特許請求の範囲第1項記載の魚卵類の包装物製造方法。」(特許請求の範囲第2項)、及び「本発明は、イクラ、カズノコ、キャビア、その他魚卵類の食品製造後における容器への食品充填包装方法に関し、魚卵類食品包装加工々程の省力化及び充填包装時における魚卵類食品の加工損傷の防止と、食品の品質及び保存性の向上を目的とするものである。」(1頁左下欄末行〜右下欄5行)と記載されている。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、後者の「酸素非透過性」は前者の「ガスバリア性」に該当し、後者における「包装体内部の雰囲気中の酸素濃度を0.1%以下とする」とは、前者の「内部の残存酸素量を極微量に抑える」ことに他ならないから、両者は、魚卵を内部に入れた容器と脱酸素剤とを密封した容器であって、密封容器内の残存酸素量が極微量に抑えられていることを特徴とする魚卵の包装体の点で一致し、(a)前者は、魚卵を入れた容器と脱酸素剤とをガスバリア性の高いフィルム材でもって密封包装しているのに対して、後者は、ガスバリア性の高い合成樹脂でもって形成された容器本体の開口部をガスバリア性の高いフィルム材の上蓋でもってシールして密封包装している点、(b)前者は、「魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにしている」のに対し、後者ではそうでない点、及び(c)「内部の空気を窒素ガス、二酸化炭素ガス、エタノールガスの単体もしくは混合体で置換している」のに対し、後者ではそうでない点で相違している。
上記相違点について検討する。
相違点(a)について
食品を密封包装するとき、食品を入れた容器をその開口部をシールすることなく、別の包装材料でもって容器の全周囲を包み込むようにして密封包装することは当業者の慣用手段であることから、引用例1に記載の「容器の開口部をガスバリア性の高い上蓋でもってシールして密封する」手段に代えて、魚卵を入れた容器と脱酸素剤とをガスバリア性の高いフィルム材でもって密封包装することは当業者が容易になし得ることである。
相違点(b)について
一般に魚卵を容器に収納包装する場合には、包装された容器内部の魚卵が良く観察できるようにするため、或いは収納された魚卵が移動して偏らないようにするため、魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにすることは、当該技術分野では普通に実施されていることである(必要ならば、例えば特開昭59-227272号公報の第4図の「ロ」、「ハ」を参照。)から、本願補正発明において、魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにして密封包装することは、当業者にとって格別困難なことではない。
相違点(c)について
魚卵は酸素により変退色することは当該技術分野では周知の事項であり(必要ならば、例えば特開平3-151824号公報の1頁右下欄1行を参照。)、しかも、包装体内の魚卵の酸素による酸化を防止するために、包装容器内に脱酸素剤を入れると共に、包装容器内に不活性ガスを充填することが引用例2に記載されていることから、魚卵の酸素のよる退色の防止、すなわち酸素による酸化防止のために、脱酸素剤に加え、密封容器内の空気を不活性ガスとして周知のものである窒素ガスや二酸化炭素ガスに置換することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願補正発明に係る効果は、引用例1及び2から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(なお、請求人は、平成17年1月15日付で「無着色タラコの退色防止に関する実験報告書」を提出し、「包装方法1:ガス置換・脱酸素剤なしの従来品の包装方法」、「包装方法2:脱酸素剤を用いないガス置換包装のみを施した製品の包装方法」、及び「包装方法3:脱酸素剤とガス置換包装を施した製品(本願発明品)の包装方法」の3種類の包装方法で、それぞれの包装体の内容物の色の経時変化を調査すると、本願補正発明である「包装方法3」によれば、無着色のタラコの色は初期において赤く、しかも4日経過後においてもまだ充分に赤く商品価値のあるものであり、充分な退色防止機能が発揮されていることがわかる、と主張している。
しかし、先に説示したように、魚卵の退色を防止するには酸素による酸化を防止することが重要であることに照らし、酸素による酸化防止の手段として知られている手段を全く施していない「包装方法1」、及び一つの手段だけ実施している「包装方法2」に比べて、脱酸素剤及びガス置換という二つの手段を実施している「包装方法3」の場合に良好な効果が奏されることは当然のことである。したがって、上記「報告書」に係る結果を根拠にして、本願補正発明の進歩性を肯認することはできないので、上記請求人の主張は採用できない。)

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2、5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、特許法159条1項で準用する特許法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年11月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年6月3日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「魚卵を内部に入れた容器と、脱酸素剤と、前記魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにしてこれらの魚卵、容器および脱酸素剤を密封するとともに内部の空気を窒素ガス、二酸化炭素ガス、エタノールガスの単体もしくは混合体に置換されたガスバリア性の高いフィルム材からなる密封容器とからなり、密封容器内の残存酸素量が極微量に抑えられていることを特徴とする魚卵の包装体。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明に係る「魚卵の一部をフイルムの内面に密着させるようにして入れ」の「内面」という特定事項がないものに相当するところ、本願補正発明とは、技術的思想として格別相違するところはないといえる。
そうすると、本願発明は、前記「2.(3)」において本願補正発明に関し検討したのと同じ理由により、引用例1及び2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-25 
結審通知日 2005-05-31 
審決日 2005-06-16 
出願番号 特願平11-359578
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23B)
P 1 8・ 575- Z (A23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子平田 和男  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 河野 直樹
鈴木 恵理子
発明の名称 魚卵の包装方法および包装体  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中尾 俊輔  

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