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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1140522
審判番号 不服2004-19931  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-27 
確定日 2006-07-26 
事件の表示 平成 5年特許願第518710号「コンセンサスヒトインターフェロンを含有する医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年10月28日国際公開、WO93/21229、平成 7年 6月29日国内公表、特表平 7-505894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成5年4月14日(優先権主張 1992年4月15日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「治療上有効量のコンセンサスヒト白血球インターフェロンを含む抗ウィルス剤であって、α-インターフェロンの投与に起因して発現する1つ以上の副作用を軽減または除去し、かつ1つ以上の用量制限毒性を呈さない、ことを特徴とする抗ウィルス剤。 」

2 引用刊行物について
これに対して、原査定の拒絶の理由には、本願の出願の日前に頒布された刊行物である、"A Comparison of Interferon-Con1 with Natural Recombinant Interferons-α : Antivaral, Antiproliferative, and Natural Killer-Inducing Activities", Journal of Interferon Research, Feb. 1992, Vol.12, pp.55-59 (以下、「刊行物1」という。)が引用されている。

刊行物1には、組み換えコンセンサスヒトインターフェロンの抗ウィルス活性、抗増殖活性及びナチュラルキラー活性を他のタイプIインターフェロンであるインターフェロンα2a及びインターフェロンα2bと比較したことが記載されている(p.55アブストラクト)。加えて同刊行物には、公知の8種の白血球インターフェロン遺伝子の塩基配列の間で頻度の高いアミノ酸を選択して人工的に作られた、インターフェロン-Con1について、天然のインターフェロンのどのサブタイプと比較しても、10倍高い抗ウィルス活性を有するとの報告がすでにあったところ(p.55左欄1段落目)、実際にインターフェロン-Con1の抗ウィルス活性をインターフェロンα2a及びインターフェロンα2bと比較する試験を行い、インターフェロン-Con1はこれらインターフェロンの10倍の活性を有すると確認したことが記載されている(p.56右欄〜p.57左欄の「抗ウィルス活性」の項)。
また、刊行物1には、IFN-Con1について第2相臨床試験が行われていることが記載されている(p.59左欄)。

3 判断
(1)上記刊行物1の記載から、コンセンサスヒト白血球インターフェロンの一種であるインターフェロン-Con1を抗ウィルス剤とすることが当業者にとって容易であるか否かを検討するに、医薬品の開発においては、有効成分の候補となる物質のうちin vitro系の試験で活性が確認されたものについて、in vivo試験を行うという手法が通常とられている。そうすると、刊行物1に記載されたように、インターフェロン-Con1の抗ウィルス活性がin vitro系で確認されていた状況において、当業者であれば、インターフェロン-Con1を有効成分とする抗ウィルス剤の実用化に向けて、in vivo試験で抗ウィルス剤としての効果を確認してみることはきわめて自然な考え方であるといえる。
また、上記のとおり、刊行物1において、インターフェロン-Con1を用いた第2相臨床試験が行われていると記載されていることからみて、インターフェロン-Con1について、少なくとも、用量制限毒性を示さない用量がすでに臨床的に決定されていたことが理解できる。そして、臨床投与にあたり、重篤な副作用が起こらないような投与濃度や投与量を検討することは、当業者が当然行うことであって、本願明細書の記載を検討しても、投与濃度や投与量を決定することに格別の困難性があったということはできないし、本願発明が当業者の予測をこえる格別顕著な効果を奏するものであるということもできない。
したがって、インターフェロン-Con1について、そのin vivoでの抗ウィルス効果、副作用や毒性を確認し、抗ウィルス剤とすることは、刊行物1の記載から当業者が容易に想到し得たことである。

(2)請求人は、審判請求書において、刊行物1の記載に関し「しかしながら、当該記載の内実は、組換えIFN-Con1は、低濃度でも、毒性副作用の問題を心配せずに臨床現場で有効に応用できるであろう、との著者らの単なる予測に止まるものでしかありません。事実、引例1には、著者らが示したこれらの予測を裏付ける in vivo データは、全く記載されておりません。また、当然のことながら、引例1には、臨床投与の際に用いる組換えIFN-Con1の具体的な濃度や、実際に軽減または解消される副作用の種類などの詳細に関する知見についても、何ら言及も示唆もされておりません。
さらに、引例1では、『IFN-α-サブタイプの間では、抗ウィルス活性で330倍もの開きが認められる(引例1の第58頁左欄第2〜3行目を御参照願います)』ことや、『IFN-αの各クラスが in vivo で奏する多様な生物学的作用は未だもって不明である(引例1の第58頁左欄第5〜6行目を御参照願います)』こと、についても言及されております。引例1でのこのような認識事項は、引例1で報告された一連の in vitro データが、必ずしも、IFN-αが in vivo で奏する作用効果を予測する上での直接的な根拠にはなりえない、ことを明確に指し示すものに他なりません。言い換えるならば、組換えIFN-Con1の in vivo での抗ウィルス活性の的確な予測を阻む(引例1で言及されている前掲の)不確定要素が存在する以上は、たとえ当業者であっても、引例1で示された不十分な知見( in vitro データ)に頼る限りでは、たとえ当業者であっても、相応の試行錯誤を経ない限りは、本願発明の再現には到底おぼつかないと思料するところであります。」と述べ、本願発明が引例1すなわち刊行物1から容易に発明をすることができたものでない旨主張している。

請求人の上記主張は、in vitroの結果からはin vivoでの結果が不確定であるということに基づくものであると認められる。しかしながら、IFN-Con1が、低濃度でも、毒性副作用の問題を心配せずに臨床現場で有効に応用できるであろう、との刊行物1における予測は、IFN-Con1の特異的抗ウィルス活性、すなわち、タンパクの一定重量当たりの抗ウィルス活性を定量的に求めた結果に裏付けられたものであるから、抗ウィルス剤として効果がどれほどであるか確認できることを期待してin vivo試験にすすむことを当業者に強く動機づけるものであるといえ、単にin vitroの結果に基づく予測では、in vivo試験の結果が不確定であるということだけでは、刊行物1の記載に基づきIFN-Con1を抗ウィルス剤とすることに対する阻害要因とはならない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

4 むすび
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-24 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-16 
出願番号 特願平5-518710
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 俊生  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 横尾 俊一
齋藤 恵
発明の名称 コンセンサスヒトインターフェロンを含有する医薬組成物  
代理人 西谷 俊男  
代理人 古川 安航  
代理人 角田 嘉宏  

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