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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 H01R |
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管理番号 | 1140526 |
審判番号 | 無効2005-80307 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-05-10 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-10-27 |
確定日 | 2006-07-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3463997号発明「6極プラグ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3463997号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許第3463997号に係る出願は、平成13年9月19日に、特願平6-280368号(平成6年11月15日特許出願)の一部を新たな特許出願としたものであり、平成15年8月22日に特許権の設定登録がなされた。 2.これに対し、平成17年10月27日に、菊井 俊一(以下、「請求人」という。)により、本件無効審判の請求がなされ、同年11月18 日付けで、その請求書の副本を特許権者であるSMK 株式会社(以下、「被請求人」という。)に送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からはなんらの応答もなされなかった。 第2 請求人の主張 請求人は、「本件特許発明1及び2についての特許を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その無効とする理由として、審判請求書において、概略、下記のように主張している。 記 本件特許発明1及び2は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に違反して特許されたものである。 したがって、本件特許発明1及び2についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。 〈証拠方法〉 (1)甲第1号証 本件特許公報 (2)甲第2号証 特開平4-118879号公報 (3)甲第3号証 特開平3-266382号公報 (4)甲第4号証 米国特許第3193636号明細書 (5)甲第5号証 実願平4-49482号(実開平6-5161号)のCD-ROM 第3 当審の判断 1.本件特許発明 本件特許発明1及び2は、登録時の明細書及び図面(以下、「本件明細書」という。)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 チップ(21)と、第1の中リング(23)と、第2の中リング(25)と、スリーブ(27)とを夫々の間に絶縁カラー(22)(24)(28)を挟んで棒状に一体成形した4極プラグと、第1の接点リング(29)と第2の接点リング(30)を配置したホルダー(26)とからなり、第1の接点リング(29)の環と第2の接点リング(30)の環は、前記4極プラグと同軸になるようにホルダー(26)の内面の前方と後方に配置したことを特徴とする6極プラグ。 【請求項2】 第1の接点リング(29)の環と第2の接点リング(30)の環は、外径寸法を異ならせて配置したことを特徴とする請求項1記載の6極プラグ。」 2.各甲号証に記載された発明 甲第2号証及び甲第4号証には、それぞれ、次のような発明が記載されているものと認められる。 (1)甲第2号証発明 甲第2号証である特開平4-118879号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。 「作用 本発明は上記した構成によって、単体のジャック、プラグにて6極の接続を可能にし、小型化、組立性、コスト、強度、外観のいずれの面においてもきわめて有利である。 ・・・中略・・・ 図中10は機器本体であり、接続ジャック3はプリント配線基板9に半田付けされ、前記機器本体10より口金2が突出するよう配置固定されている。接続ジャック3には音声信号用のバネ性を有する接点11a、llb、llcとそれらの接点とは別に制御信号用第1の接続部分としての口金2、また第3の接続部分としてのバネ性を有するサイド端子6が一体形成されている。一方、接続プラグ6には前記接続ジャック3の接点11a、llb、llcに対向する音声信号用接続端子4a、4b、4cとそれらの接続端子とは別に、前記接続ジャックの制御信号用第1の接点l1dに対向する接点4dと第2の接点としての口金2と対向するリング状のバネ性を有する接続端子A1がプラグ4の根本周囲に一体形成されており、接続端子A1は第3図のように、断面が楕円の筒状で、長径方向にはスリット1bを設け、短径方向には対の対向した接点用凸部1aが設けられており、接続ジャック3の口金2と係合すると、2点鎖線のようにたわみ、安定した接触を得られるように構成されている。第3の接点としてのサイド端子6に対向する円筒状の接続端子B5は、接続端子A1と絶縁するためのスペーサー7を間にはさみ、外周を覆うように構成されている。」(第2頁左下欄3行〜同右下欄18行) 上記の記載及び特に第1図、第2図を参酌すると、接続プラグ4の音声信号用接続端子4a、4b、4c及び接続ジャック3の制御信号用第1の接点l1dに対向する接点4dは、それぞれ第1の接続端子4a、第2の接続端子4b、第3の接続端子4c及び第4の接続端子4dと称することができ、それぞれの間に絶縁カラーを挟んで4極プラグが棒状に一体成形されている。 そして、第1図及び第2図において、プラグ本体8のうち、スペーサー7の外周側に位置する部分は、プラグ本体8を抜き差しする際にこれを保持するためのホルダーということができ、その内面に位置するスペーサー7には、その最前部外面に円筒状の円筒状接続端子B5が、そしてその最前部内面に、円筒状接続端子B5の直径より小径のリング状の接続端子A1が、両者の環が同軸になるように配置されているのは明白であり、接続プラグ4は、第1の接続端子4a、第2の接続端子4b、第3の接続端子4c、第4の接続端子4d、円筒状接続端子B5及びリング状接続端子A1を備えた6極プラグということができる。 したがって、以上を総合すると、甲第2号証には、次のような発明(以下、甲第2号証発明」という。)が記載されているものと認められる。 「第1の接続端子(4a)、第2の接続端子(4b)、第3の接続端子(4c)及び第4の接続端子(4d)とを夫々の間に絶縁カラーを挟んで棒状に一体成形した4極プラグと、円筒状接続端子B(5)とこの円筒状接続端子B(5)より小径のリング状接続端子A(1)を配置したホルダー内面に位置するスペーサー(7)とからなり、円筒状接続端子B(5)の環とリング状接続端子A(1)の環は、同軸となるようにスペーサー(7)の最前部外面と最前部内面にそれぞれ配置した6極プラグ。」 (3)甲第4号証に記載された発明 甲第4号証である米国特許第3193636号明細書には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「Referring now・・・of the bore12.」(第3欄16〜31行) 『本発明をより完全に理解するため、添附した図面のうち、第1図及び第2図を参照すると、円筒形コネクタ10は、例えば硬質ゴム等の絶縁材料で形成された円筒形受け入れ部材(receptacle)11で構成されている。円錐形の穴12がこの受け入れ部材11内に形成されており、この中に、基本的に裁頭円錐形状のプラグ13が挿入され、着座する。円錐形の穴12に延びて、一つ、またはそれ以上のフィンガータイプの接点要素が設けられ、図示では、これらのうち3つの接点要素が、番号14,15及び16で示されている。これらの接点要素14,15,16には、それぞれリング状のベース14a、15a、16aが形成されており、これらは開口12を形成している円錐面内にモールドされるか、あるいは他の方法により円錐面に固定されており、これらのベース14a、15a、16aの径はそれぞれ、開口12の径の増加に対する分だけ大きくなっている。』 (『 』内は、当審により訳を示す。以下同様。) (b)「The outermost・・・contact elements.」(第4欄19〜27行) 『接点リング32及び33の最外径は、好ましくは接点要素16の最内径よりも小さくし、また接点リング32の最外径も、好ましくは接点リング33の最内径よりも小さくして、プラグを受け入れ部材に挿入する際の抵抗が、対となる接点要素同士の実際の連結に必要な抵抗を超えて増加することを避けている。』 (c)「In the embodiment・・・conical shape.」(第7欄12〜14行) 『上記実施例において、プラグと受け入れ部材(receptacle)は円錐形状でなく円筒形状に形成してもよい。』 上記各記載及び各図によれば、接点要素14,15,16は、同軸となるように、円筒形受け入れ部材(receptacle)11内面の前方と後方に配置し、しかもそれらの環の外径寸法を異ならせていることは明白である。 したがって、以上の記載及び各図面を総合すると、甲第4号証には、次のような発明(以下、甲第4号証発明」という。)が記載されているものと認められる。 「リング状のベース(14a、15a、16a)がそれぞれ形成された3つの接点要素(14,15,16)を同軸となるように、円筒形受け入れ部材(11)内面の前方、中間及び後方に配置し、3つの接点要素(14,15,16)の環の外形寸法を異ならせた円筒形コネクタ。」 3.本件特許発明1について (1)本件特許発明1と甲第2号証発明との対比 本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比すると、甲第2号証発明の「第1の接続端子4a」は、その機能や形状からみて、本件特許発明1の「チップ(21)」に相当し、以下同様に、「第2の接続端子(4b)」は「第1の中リング(23)」に、「第3の接続端子(4c)」は「第2の中リング(25)」に、「第4の接続端子(4d)」は「スリーブ(27)」、「円筒状接続端子B(5)」は「第1の接点リング(29)」に、そして「リング状接続端子A(1)」は「第2の接点リング(30)」に、それぞれ相当する。 また、甲第2号証発明においても、第1の接点リングと第2の接点リングの環は、スペーサー(7)を介して、ホルダーの内側に配置されているといえる。 したがって、本件特許発明1と甲第2号証発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 〈一致点〉 「チップと、第1の中リングと、第2の中リングと、スリーブとをそれぞれの間に絶縁カラーを挟んで棒状に一体成形した4極プラグと、第1の接点リングと第2の接点リングを配置したホルダーとからなり、第1の接点リングの環と第2の接点リングの環は、前記4極プラグと同軸になるようにホルダーの内側に配置した6極プラグ。」 〈相違点〉 第1の接点リングの環と第2の接点リングの環に関して、本件特許発明1においては、「ホルダー(26)の内面の前方と後方に配置」されているのに対して、甲第2号証発明においては、甲第2号証の各記載事項及び特に第1図、第2図を参酌すると、「円筒状接続端子B(5)」及び「リング状接続端子A(1)」は、「ホルダ内面に位置するスペーサー(7)」に配置されているものの、それぞれ、当該スペーサー(7)の最前部外面と最前部内面に配置されている点。 (2)相違点についての検討及び判断 そこで、相違点について検討する。 甲第2号証の記載事項によれば、甲第2号証発明も、6極プラグの小型化、組立性、コスト、強度、外観の改善を課題にしているものであり、各電気的接続部の形状や配置を種々変更してみようとすることは、当業者が適宜なし得ることである。 そして、甲第5号証発明には、リング状の接点要素を同軸となるように、円筒形受け入れ部材の内面の前方、中間及び後方に配置し、それらの環の外形寸法を異ならせることが示されているのであるから、甲第2号証発明にこれを適用し、「円筒状接続端子B(5)」の環と「リング状接続端子A(1)」の環をホルダーの内面の前方と後方に配置して、本件特許発明1の相違点1に係る構成とすることは、これを妨げる特段の事情も見当たらず、当業者が容易に想到し得ることである。 本件特許発明1を全体構成でみても、甲第2号証発明及び甲第5号証発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとは解されない。 したがって、本件特許発明1は、当業者が甲第2号証発明及び甲第5号証発明に基いて容易に発明をすることができたものである。 4.本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2と甲第2号証発明とを対比すると、甲第2号証発明においても、リング状接続端子A(1)の環は円筒状接続端子B(5)の環より小径であるから、両者の環は外径寸法を異ならせているものといえる。 したがって、両者の一致点、相違点は、上記3.(1)で検討したとおりであり、上記3.(2)で検討したとおり、本件特許発明2も、当業者が甲第2号証発明及び甲第5号証発明に基いて容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明1及び2は、その特許出願前に当業者が日本国内に頒布された刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-25 |
結審通知日 | 2006-05-29 |
審決日 | 2006-06-12 |
出願番号 | 特願2001-285793(P2001-285793) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Z
(H01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松縄 正登 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
増沢 誠一 川本 真裕 |
登録日 | 2003-08-22 |
登録番号 | 特許第3463997号(P3463997) |
発明の名称 | 6極プラグ |