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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08K
管理番号 1140539
審判番号 不服2002-20227  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-17 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 平成 7年特許願第 39944号「安定化有機材料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月13日出願公開、特開平 8- 41245〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1].手続きの経緯、本願発明
本願は、平成7年2月28日にした特許出願(優先日 平成6年5月25日 日本)であって、平成14年6月13日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対する意見書及び手続補正書が平成14年8月19日に提出されたが、平成14年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成14年10月17日に審判請求がなされたものである。

[2].原査定の理由
原審における拒絶査定の理由とされた平成14年6月13日付けの拒絶理由通知書に記載された理由1及び2は、概略次のようなものである。

理由1:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1〜5、引用文献1
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開昭55-151058号公報

[3].合議体の判断
[3-1].本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月19日付けで補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「有機材料(有機イソシアネート、ポリイソシアネートおよびポリウレタンを除く)および、一般式(I)

(式中、R1は炭素数1から8のアルキル、炭素数5から8のシクロアルキル、炭素数6から12のアルキルシクロアルキル、炭素数7から12のアリールアルキルまたはフェニルを表し、R2はメチル基を表す。R3は水素または炭素数1から8のアルキルを表す。Xは直接結合または-CH(R4)-を表し、ここにR4は水素または炭素数1から8のアルキルを表す)で示される有機リン化合物を含有してなり、有機材料の100重量部に対して有機リン化合物が0.01〜2重量部の範囲である安定化有機材料組成物。」

[3-2].引例1の記載事項
原審の拒絶理由に引用された引用文献1(特開昭55-151058号公報)には以下の点が記載されている。
(ア)「次の一般式(I)で表わされるホスフアイト化合物の少なくとも一種を含有してなる安定化ポリフエニンオキサイド系樹脂組成物。

(式中、Xは硫黄原子、メチレンまたは炭化水素置換メチレン基を示し、R1,R2,R3及びR4は各々水素原子、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアルキル基を示し、Rは水素原子、アルキル、アリールアルキル、エーテル結合を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、シクロアルキルアリール基または多価アルコール及び多価フエノール残基またはこれらの水酸基がホスフアイトエステルで置換されている基を示す。)」(特許請求の範囲)

(イ)「本発明は安定化されたポリフエニンオキサイド系樹脂組成物に関し、特にポリフエニンオキサイドが熱、大気雰囲気下に各種の影響を受けて劣化するのを防止するに優れた効果を呈する安定剤を配合したポリフエニンオキサイド系樹脂組成物に関する。」(第1頁右下欄第6〜11行)

(ウ)「多価フエノール及び多価アルコール残基としては例えば・・・、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第3ブチルフエノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフエノール)、・・・などの残基があげられる。」(第3頁左上欄第5行〜同頁左下欄第17行)

(エ)「また、本発明のホスフアイト化合物を製造するために使用する

で表わされる代表的なビスフエノール化合物としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフエノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフエノール)、・・・などがあげられる。」(第3頁左下欄第18行〜第4頁左上欄第8行)

(オ)「次に一般式(I)で表わされる代表的なホスフアイト化合物を第1表に示す。
第1表
-中略-

」(第4頁左上欄第9行〜第5頁左下欄No.23の構造式)

(カ)「これらホスフアイト化合物の添加量はポリフエニレンオキサイド系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であり特に0.05〜3重量部が好ましい。」(第5頁左下欄下から6〜3行)

[3-3].理由1(特許法第29条第1項第3号違反)について
引用文献1には、
「次の一般式(I)で表わされるホスフアイト化合物の少なくとも一種を含有してなる安定化ポリフエニンオキサイド系樹脂組成物。

(-記号の説明省略-)」(摘示記載(ア))
が記載されており、「これらホスフアイト化合物の添加量はポリフエニレンオキサイド系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であり特に0.05〜3重量部が好ましい」(摘示記載(カ))との記載も認められる。
この「ポリフエニンオキサイド系樹脂組成物」が有機イソシアネート、ポリイソシアネートおよびポリウレタン以外の有機材料組成物であることは自明であるから、本願発明と引用文献1に記載された発明とは、共に、「有機材料(有機イソシアネート、ポリイソシアネートおよびポリウレタンを除く)および有機リン化合物を含有してなる安定化有機材料組成物」である点で一致しており、安定化有機材料組成物に対する有機リン化合物の添加量範囲についても重複している。
そこで、本願発明と引用文献1に記載された発明においてそれぞれ用いられる有機リン化合物(以下、それぞれ、「本願化合物」及び「引用化合物」という。)を以下に対比する。
本願化合物は、フェノールの6位、4位及び3位がそれぞれR1、R2及びR3基で置換され2位で-X-を介して互いに結合したビスフェノールにおける二つの水酸基及び同様の構造を有する他のビスフェノールの水酸基の内の一つが、ともに一つのリン原子と結合した構造を有しており、「R1は炭素数1から8のアルキル、炭素数5から8のシクロアルキル、炭素数6から12のアルキルシクロアルキル、炭素数7から12のアリールアルキルまたはフェニルを表し、R2はメチル基を表す。R3は水素または炭素数1から8のアルキルを表す。Xは直接結合または-CH(R4)-を表し、ここにR4は水素または炭素数1から8のアルキルを表す」とされている。
これに対して引用化合物は、それぞれ置換基R1、R2及び置換基R3、R4を有するフェノールが2位で-X-を介して互いに結合したビスフェノールの二つの水酸基及び他の置換基Rが、ともに一つのリン原子と結合した構造を有しており、「Xは硫黄原子、メチレンまたは炭化水素置換メチレン基を示し、R1,R2,R3及びR4は各々水素原子、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアルキル基を示し、Rは水素原子、アルキル、アリールアルキル、エーテル結合を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、シクロアルキルアリール基または多価アルコール及び多価フエノール残基またはこれらの水酸基がホスフアイトエステルで置換されている基を示す」(摘示記載(ア))とされている。また、引用文献1には、置換基Rが多価フエノール残基である場合について、「多価フエノール・・・残基としては例えば・・・、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第3ブチルフエノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフエノール)、・・・などの残基があげられる」(摘示記載(ウ))と記載されており、更に、引用化合物を製造するために使用する

で表わされる代表的なビスフエノール化合物として、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフエノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフエノール)等が例示(摘示記載(エ))されている。
そして、引用化合物が、上記ビスフェノール化合物及び置換基Rをもたらす多価フェノールとしてともに2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)を用い、これをリン源の化合物とともに反応させて製造される場合、フェノールの6位及び4位がそれぞれt-ブチル基及びメチル基で置換され2位でメチレン基を介して互いに結合したビスフェノールにおける二つの水酸基及び同様の構造を有する他のビスフェノールの水酸基の内の一つが、ともに一つのリン原子と結合した構造となり、これは、本願化合物においてR1をt-ブチル基、R3を水素、Xをメチレン基としたものに相当する。
そうすると、本願化合物と引用化合物とは一致するものというほかはなく、本願発明と引用文献1に記載された発明とは同一の発明である。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
[3-4].理由2(特許法第29条第2項違反)について
上記のとおり、引用文献1には本願発明と同一の発明が記載されているが、引用文献1には、本願化合物と一致する化合物そのものが具体的に示されていない点で、本願発明と引用文献1に記載された発明とが相違するとの解釈もあり得る。
そこで、この点について以下に検討する。
引用文献1には、引用化合物の具体例として、

で表される化合物(摘示記載(オ);以下、「No.23化合物」という。)が挙げられており、この化合物は、本願化合物におけるR2をエチル基としたものに該当する。
しかしながら上記のように、引用文献1には、引用化合物において原料となるビスフェノール化合物及び置換基Rをもたらす多価フェノールとして、いずれも、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等が例示(摘示記載(ウ)、(エ))されており、本願化合物の構造式中、R2にあたるフェノールの4位の置換基がメチル基であるビスフェノールも、エチル基であるビスフェノールも、ともに用い得ることが示されているのであるから、No.23化合物において、全てのフェノールの4位の置換基をエチル基から本願化合物のようにメチル基に換えることは、当業者が容易に想到し得たものというほかはない。
そもそも引用文献1には、引用化合物におけるフェノールの置換基R1,R2,R3及びR4は各々水素原子、アルキル基等であること(摘示記載(ア))が記載されているのであり、典型的なアルキル基であるメチル基とエチル基をこれらの置換基とすることは当業者がまず想定することであって、これらを相互に換えてみることもごく自然に試みることというべきである。 これに対して審判請求人は、平成14年8月19日付けの意見書に添付して実験成績証明書を提出し、本願化合物(R2がメチル基)と引用文献1に記載されたNo.23化合物(R2がエチル基)をそれぞれ添加した直鎖低密度ポリエチレンの加熱混練後のトルク測定値からみて、本願化合物の方がNo.23化合物より有機材料加工時の熱安定性に優れている旨主張しているが、本願明細書の実施例の記載をみても、R2をメチル基としたRun No.3とt-ブチル基としたRun No.2とでは、Run No.2の方が良好な加工安定性を示しており、R1やXの種類にかかわらず、単にR2をメチル基に限定したことのみによって、特段の作用効果が生ずるものとは到底認められない。
なお、審判請求人が審判請求書に添付して提出した実験成績証明書には、「文献1、No.23の化合物」として「2-[2-(4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジエチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスフォシン-6-イル)オキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル]-6-t-ブチル-4-メチルフェノール」なる化合物について実験した結果が記載されているが、この化合物は、メチル基とエチル基をともに含んでいるところから、No.23化合物とは異なる化合物であり、このようなものを用いた実験結果は、本願化合物と引用文献1に記載されたNo.23化合物との効果の相違を示すものとはいえない。
したがって、本願発明は引例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4].むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3項に該当し、また、特許法第29条第2項の規定に違反するので、特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-29 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2006-06-13 
出願番号 特願平7-39944
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08K)
P 1 8・ 121- Z (C08K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 保  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 船岡 嘉彦
福井 美穂
発明の名称 安定化有機材料組成物  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  
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