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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1140540
審判番号 不服2002-23023  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-28 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 平成11年特許願第 96928号「遊技機等用の電子制御基板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月17日出願公開、特開2000-288207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一、手続きの経緯
本願は、平成11年4月2日の出願であって、平成13年12月12日付で拒絶理由が通知され、これに対し、平成14年2月12日付で手続補正がなされ、平成14年7月24日付で最後の拒絶理由が通知され、これに対し、平成14年9月27日付で手続補正がなされ、平成14年10月24日付で、前記平成14年9月27日付の手続補正の却下の決定と同時に拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年11月28日付で審判請求がなされるとともに、平成14年12月20日付で手続補正がなされたものである。

第二、平成14年12月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年12月20日付の手続き補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「遊技機で展開されるゲーム内容の電子制御に必要なハード部及びソフト部を備えた回路基板を組合せ形態に構成されたケース体内にセットしてケース単位で1つに取扱い得るようにした電子制御基板であって、
前記回路基板(66)の所定部位に固定接続された接続部(65)に、社名や番号等の表記部(81)を有するゲーム内容制御用の電子デバイス(64)を着脱交換可能に接続固定する一方、前記ケース体(69)を透明合成樹脂材により所定の形状・サイズに成形し、前記ケース体(69)を構成するカバー部材(68)の一部を前記回路基板(66)上の前記電子デバイス(64)と対応する位置で内面側へ直方体形状をなすように成形された凹み成形部(80)とし、この凹み成形部(80)の底部によって前記電子デバイス(64)をケース体(69)の外側から視認し得るための透視窓(79)を形成し、この透視窓(79)の内側部に、前記凹み成形部(80)の前記電子デバイス(64)の表面と対向する対向面からなり前記電子デバイス(64)が前記接続部(65)から回路基板(66)と直交する方向へ脱着されるのを阻止するための着脱制止部(82)と前記電子デバイス(64)が前記接続部(65)から回路基板(66)と平行な方向へ移動されるのを阻止するための側面形状が前記電子デバイス(64)側となる辺を斜辺とする台形状に形成されて前記凹み成形部(80)の長手方向両端部における前記対向面から突出した短かな板片の制止脚部からなる移動制止部(83)とを有して前記電子デバイス(64)の不正着脱移動を阻止する制止部(84)を前記接続部(65)上の電子デバイス(64)と位置対応するようにして且つ対応する電子デバイス(64)からは僅かの距離をおいて近接配置されるように形成し、前記ケース体(69)外側からの不正操作による前記電子デバイス(64)の着脱交換を阻止し得るようにしたことを特徴とする遊技機等用の電子制御基板。」と補正された。

上記補正は
補正前(平成14年9月27日付の手続補正は既に却下されているので、平成14年2月12日付手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ケース体(69)」を、「透明合成樹脂材により所定の形状・サイズに成形」するように限定し、また「透視窓(79)」を、「ケース体(69)を構成するカバー部材(68)の一部を回路基板(66)上の電子デバイス(64)と対応する位置で内面側へ直方体形状をなすように成形された凹み成形部(80)とし、この凹み成形部(80)の底部によって前記電子デバイス(64)をケース体(69)の外側から視認し得るための」ものに限定し、さらに「着脱制止部(82)と移動制止部(83)とを有する制止部(84)」を、「凹み成形部(80)の電子デバイス(64)の表面と対向する対向面からなる着脱制止部(82)と側面形状が電子デバイス(64)側となる辺を斜辺とする台形状に形成されて凹み成形部(80)の長手方向両端部における対向面から突出した短かな板片の制止脚部からなる移動制止部(83)とを有する制止部(84)」に限定するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(あ)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び周知の刊行物に記載された発明
刊行物1;特開平11-9797号公報
刊行物2;特開平11-76563号公報
周知の刊行物ア;実公昭54-27570号公報
周知の刊行物イ;実願昭52-151992号(実開昭54-7696
6号)のマイクロフィルム

特開平11-9797号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ機、スロットマシーン等の遊技機を制御するための制御装置に関するものである。」、
「【0004】本発明の目的は、上記従来の制御装置の問題点を解消し、特定の制御素子に表示された識別情報を容易にチェックすることができ、特定の制御素子が不正に取り替えられた場合に、その事態を速やかに発見することができ、遊技機が不正遊技者にとって都合良く作動する事態を未然に防止することができる不正行為防止性能の高い遊技機用制御装置を提供することにある。」、
「【0008】図1は、遊技機の一種であるパチンコ機の裏面を示したものであり、パチンコ機1の裏側に付設された機構板2の中央よりやや下側には、本発明に係る制御装置3が取り付けられている。制御装置3は、金属製のシャーシ4を機構板2の裏面に当接させた状態で、シャーシ4の上部、下部等が、機構板2に取り付けられた金具(図示せず)に係着されており、機構板2に対して着脱自在になっている。なお、機構板2は、パチンコ機1の裏面側の片側縁に開閉自在に蝶着されており、制御装置3の他に、遊技球タンク5、遊技球払出装置6、裏カバー7等が、取り付けられている。
【0009】また、図2〜図5は、制御装置3を示したものであり、制御装置3は、基板8、金属製のシャーシ4、透明な合成樹脂製の上カバー9および下カバー10等によって形成されている。基板8の表面には、パチンコ機1の作動内容を制御するための各種の情報が記録されたROM11やCPU等の種々の制御素子が設置されており、各コーナー際には、ネジ孔30,30・・が穿設されている。そして、ROM11の外面には、ROM11の型式、パチンコ機1の機種名、製造者、シリアルナンバー(すなわち、機台固有の連続したナンバー)、製造年月日等の識別情報を示すバーコード12が付されている。
【0010】上カバー9は、箱状に形成されており、平板部16の中央よりやや左側であってROM11の前方に相当する部位に四角柱状の凹状部17が形成されている。そして、凹状部17の最も内側に位置した対峙面18は、上カバー9を基板8に装着した場合にROM11の外面と平行に対峙する(当接する)ようになっている。・・・」、
「【0014】制御装置3は、下カバー10の表側にシャーシ4が配置され、シャーシ4の表側に基板8が配置された状態で、基板8の各コーナー際のネジ孔30,30・・とシャーシ4の各基板取付部22,22・・と下カバー10の各ネジ止めタブ28,28・・とが螺着されることによって、シャーシ4と下カバー10と基板8とが一体的に組み立てられている。さらに、その下カバー10に、上カバー9が、各上固着翼13,13を各下固着翼26,26に重ね合わせ、各係合片21,21を各係合凹部31,31に係合させた状態で、左側の最上方のネジ保持部14を左側の最上方の取付タブ27に、右側の最下方のネジ保持部14を右側の最下方の取付タブに、それぞれ、各ネジ保持部14内の木ネジによって螺着することによって、合着されている。そして、基板8が、上カバー9によって、基板8表面との間に隙間が形成されることなく覆われた状態になっている。」、
「【0016】・・・基板8が、上カバー9によって、基板8表面との間に大きな隙間が形成されることなく覆われているため、基板8とシャーシ4と下カバー10との螺着部分の内の上カバー9の外側に露出している部分の螺着が不正に解除された場合でも、上カバー9と基板8表面との間に隙間が形成されない。それゆえ、上カバー9と基板8表面との隙間から制御素子が不正に取り替えられたり、改造されたりする事態を未然に防止することができる。かかる不正防止効果は、上カバー9と基板8表面との間の隙間が小さくなるほど、より確実なものとなる。
【0017】制御装置3は、上記の如く構成されており、ROM11の外面に識別情報を示すバーコード12が付されているとともに、透明な上カバー9に、ROM11の外面と平行に対峙する対峙面18を有する凹状部17が設けられているため、ペンタイプのバーコードリーダ等を凹状部17に挿入して対峙面18の上からバーコード12を読みとることによって、基板8上のROM11が正規のものであるか否かを、上カバー6を取り外したりすることなくきわめて容易にチェックすることができ、ROM11が不正に取り替えられた場合には、その事態を速やかに発見することができる。このため、制御装置3によれば、ROM11が不正に取り替えられる事態を未然に防止することが可能となる。・・・」、
「【0020】たとえば、カバー部材に設ける凹状部は、四角柱状に限定されず、円柱状や球面状に変更することができる。また、凹状部は、蓋体を設けなくても良いし、片開き式の蓋体以外のスライド式の蓋体等を設けることも可能である。加えて、凹状部は、カバーを制御基板に装着した場合に対峙面が特定の制御素子(ROM等)の外面に当接するものである必要はなく、カバーを制御基板に装着した場合に対峙面が特定の制御素子(ROM等)の外面と所定距離を隔てて平行に対峙するものであっても良い。」。

そして「四角柱状の凹状部17」について、図面、特に制御装置の説明図である【図2】乃至【図4】を参照すると「凹状部17」は上カバー9の一部に成形された直方体形状であると認められるから、上記の記載事項とを併せると、
引用刊行物1には、
「パチンコ機1の作動内容を制御するための各種の情報が記録されたROM11やCPU等の種々の制御素子が設置された基板8を下カバー10と一体的に組み立て、さらにその下カバー10に基板8を覆って上カバー9を合着した、機構板2に対して着脱自在な制御装置3であって、
前記基板8の表面に、型式、パチンコ機1の機種名、製造者、シリアルナンバー、製造年月日等の識別情報を示すバーコード12が外面に付されている、パチンコ機1の作動内容を制御するROM11を設置する一方、前記上カバー9および下カバー10を透明な合成樹脂製とし、前記上カバー9の一部に、ROM11の外面と所定距離を隔てて平行に対峙する対峙面18を有する直方体形状の凹状部17を設け、この凹状部17の最も内側にROM11の外面に付されているバーコード12を読みとり得る対峙面18を形成し、上カバー9と基板8表面との隙間から前記ROM11が不正に取り替えられる事態を未然に防止することができるパチンコ機等の遊技機用制御装置。」の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。

特開平11-76563号公報(以下、「引用刊行物2」という)には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遊技機(パチンコ機等)の遊技内容を制御する制御基板を格納する制御箱であって、不正行為を阻止する制御箱に関する。」、
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・ある不正行為者は、制御箱に穿設の放熱用空気孔55から針金を挿入して「ROM54」を取り外し、表カバー体50を変形させて制御基板52との間に、より大きな隙間58aを作って、前記取り外したROM54を排出し、その後、前記と反対の操作によって、不正ROMと交換することを行っている。そこで、本発明はかかる不正行為を防止する制御箱を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1の遊技機の制御箱は、表カバー体に「ROM」直上面に対応する位置に突出部を形成することによって、ROMを抜くとき突出部に当って、抜くことができない。・・・」、
「【0008】図2は制御箱1の部品分解図であって、この制御箱1は箱状の表カバー体10と裏カバー体11、制御素子(図示略)を取付の制御基板12とその制御基板を固定するシャーシ13とで構成する。・・・
【0009】また、図3(A)は制御箱1の一部を切り欠いた斜視図であって、表カバー体10には、制御基板12に設置の「ROM101」の直上面に対応する位置に突出部100が形成してある。尚、その突出部100は、制御箱1を組み立てたとき(図3(B)の断面図を参照)、「ROM101」に接触する状態であってもよいが、放熱を考慮して、ROM101を抜くことが不可能な隙間とするのが望ましい。このように、ROM101の直上面に突出部100を形成すると、直上に隙間がない状態において、ソケットからピンを抜いてROM101を取り外すことはできない。
【0010】前記のように、表カバー体10に突出部100を形成すると、ROM101は抜くことができず、不正ROMとの交換が不可能となる。尚、このように突出部100を形成すると、空気孔102aをROM101の直上部に形成して放熱を行うこともでき、係る空気孔102aから針金等を介しても引き抜くことは不可能である。又、図3(C)に示すように、前記突出部100を更に延設したスカート部100aをROM101の周囲に設けることによって、さらに、ROM101の取外しを困難とする。尚、この場合、放熱用の空気孔102a、102bを突出部100、スカート部100aに設けてもROM101の取外しができないし、放熱作用を併せて行うことができる。」、
「【0015】(第4の実施の形態)本実施の形態は簡便に構成できるものであって、表カバー体10に、ROM101の直上位置に空気孔を形成せず、ROM101の直上位置とは異なる位置、即ち、空気孔から挿入して傾斜状の針金ではうまくROM101を抜くことができない位置とする(図示略)。このような位置に空気孔を形成することは簡便であり、且つ、不正行為に対して有効な手段である。」、
「【0017】
【発明の効果】本発明によれば、表カバー体に突出部を形成したり、空気孔を凹部の底部以外の側面に形成したり、複数の表カバー体を介して各々に穿設する空気孔を連通しない位置に設けたり、ROMの直上面に対応する部分を除く位置に空気孔を形成したりすることによって、ROM等の引き抜くことが困難となって不正防止を図ることができる。」。

そして、これらの記載と図面、特に制御箱の断面図である【図3】(C)に示された「表カバー体10の一部に成形された窪み部によって形成された突出部100」及び「突出部100を制御基板12側へ、ROM101の周囲に隙間を介して更に延設したスカート部100a」の記載事項とを併せると、
引用刊行物2には、
「遊技機の遊技内容を制御する制御基板を格納する制御箱1であって、
制御箱1を構成する表カバー体10には、制御基板12に設置のROM101の直上面に対応する位置に隙間を介して、窪み部によって形成された突出部100を形成することによって、ROMをソケットから抜くとき突出部100に当って抜くことができず、前記突出部100を制御基板12側へ、ROM101の周囲に隙間を介して更に延設したスカート部100aを設けることによって、さらにROM101の取外しを困難とする、不正ROMと交換する不正行為を阻止する遊技機の制御箱1。」の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。

本願出願前に頒布された実公昭54-27570号公報(以下、「周知刊行物ア」という)の、
公報第1頁第1欄第25行乃至第29行には、「本考案はケース内に設置したプリント配線板上の電気部品のうち、ケースに加わる振動や衝撃等によつて電気的接続の外れるおそれのある比較的大きな電気部品が振動や衝撃によつて外れないよう保護する電気部品保護装置に関するもので、・・・」と、
公報第1頁第2欄第2行乃至第31行には、「図において、1は合成樹脂からなるケースで、略皿状の上下ケース2,3を相互に結合してつくつたものである。・・・5は・・・プリント配線板で、その上面には種々の電気部品を取付けており、その電気部品の中には振動や衝撃によつて外れるおそれのある比較的大きな電気部品7、例えばトランスがある。8は上記電気部品7と対向するように上ケース2内面に一体に設けた2対の保持片で、この2対の保持片8は枠状となるように配置してある。各保持片8の先端は上記枠の内側向に傾斜した斜面9になつている。・・・したがつて電気部品7としてはその上端周縁が枠状保持片8の斜面9に接触し、斜面9により包囲固定されることになる。
上記構成において、ケース1に振動や衝撃等の外力が加わつても、電気部品7はプリント配線板5と保持片8との間で上下両端が固定されているので、揺れ動くことなく確実に固定され、プリント配線板5から外れるおそれがなく、外力に対して有効に保護される。・・・また保持片8の先端を斜面9にしているので、電気部品自体の寸法バラツキ、電気部品と保持片との相対位置バラツキをある程度吸収でき、大変実用的である。」と、それぞれ記載されている。
そして、これらの記載を併せると、
周知刊行物アには、
「ケース1内に設置したプリント配線板5上の電気部品7が振動や衝撃によつて外れないよう保護し、また電気部品自体の寸法バラツキ、電気部品と保持片との相対位置バラツキをある程度吸収できる電気部品保護装置であって、
上記電気部品7と対向するように上ケース2内面に枠状となるように一体に設けた枠状保持片8の、各保持片8の先端は上記枠の内側向に傾斜した斜面9に形成され、電気部品7の上端周縁が枠状保持片8の斜面9に接触し、斜面9により包囲固定されることになる、電気部品保護装置。」の発明(以下、「周知発明ア」という)が記載されていると認められる。

本願出願前に頒布された実願昭52-151992号(実開昭54-76966号)のマイクロフィルム(以下、「周知刊行物イ」という)の、
明細書第1頁第12行乃至第13行には、「本考案は、抵抗器等の電気部品の保持構造に関するものである。」と、
明細書第3頁第3行乃至第4頁第4行には、「このボデイ5の下端開口部にはプリント基板6が固設されている。このプリント基板6の所定の位置には、・・・抵抗器7が、・・・搭載されている。また、プリント基板6において抵抗器7が取付けられている位置と対向する前記ボデイ5の上面壁51には、・・・上面壁51と前記抵抗器7との間には金属製のホルダー9が介装されている。
すなわち、このホルダー9は・・・横断面形状がほぼコ字状に形成されており、その下端部91は外方に向つて幾分広がるように形成されている。そして、このホルダー9は上面壁51と抵抗器7との間に介装された状態において、・・・かつ下端部91の内壁は前記抵抗器7をプリント基板6側へ押圧するごとく前記抵抗器7の上端部に接触している。」と、
明細書第4頁第18行乃至第5頁第2行には、「前記電気部品はホルダーにて上方から強固に押えつけられているので、従来のごとくプリント基板上を動いたり、あるいはプリント基板から脱落したりすることはなく、したがつて耐震性の向上をはかれるという効果を有する。」と、それぞれ記載されている。
そして、これらの記載を併せると、
周知刊行物イには、
「プリント基板6に搭載された抵抗器7が脱落したりすることのない電気部品の保持構造であって、
ボデイ5の上面壁51と前記抵抗器7との間には横断面形状がほぼコ字状に形成されたホルダー9が介装され、その下端部91は外方に向つて幾分広がるように形成され、
当該下端部91の内壁は前記抵抗器7をプリント基板6側へ押圧するごとく前記抵抗器7の上端部に接触している、電気部品の保持構造。」の発明(以下、「周知発明イ」という)が記載されていると認められる。

(い)本願補正発明と引用発明1との比較・検討
引用発明1の「パチンコ機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、「作動内容を制御するための各種の情報が記録されたROM11やCPU等の種々の制御素子が設置された基板8」は「ゲーム内容の電子制御に必要なハード部及びソフト部を備えた回路基板」に、「制御装置3」は「電子制御基板」に、「ROM11」は「電子デバイス(64)」に、「透明な合成樹脂製とし」は「透明合成樹脂材により成形し」に、「上カバー9」は「カバー部材(68)」に、「直方体形状の凹状部17」は「直方体形状をなすように成形された凹み成形部(80)」に、「上カバー9と基板8表面との隙間からROM11が不正に取り替えられる事態を未然に防止する」は「ケース体(69)外側からの不正操作による電子デバイス(64)の着脱交換を阻止し得る」に、「パチンコ機等の遊技機用制御装置」は「遊技機等用の電子制御基板」に、それぞれ相当する。そして、引用発明1の「下カバー10に基板8を覆って上カバー9を合着」という技術事項は、本願補正発明の「回路基板を組合せ形態に構成されたケース体内にセット」という技術事項に相当し、以下同様に、「機構板2に対して着脱自在な制御装置3」という技術事項は「ケース単位で1つに取扱い得るようにした電子制御基板」という技術事項に、「凹状部17の最も内側にROM11の外面に付されているバーコード12を読みとり得る対峙面18を形成」という技術事項は「凹み成形部(80)の底部によって電子デバイス(64)をケース体(69)の外側から視認し得るための透視窓(79)を形成」という技術事項に、それぞれ相当する。また、「回路基板の所定部位に固定接続された接続部に、社名や番号等の表記部を有するゲーム内容制御用の電子デバイスを着脱交換可能に接続固定」すること及び「ケース体を所定の形状・サイズに成形」することはゲーム機の制御装置において周知の技術であるから、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点
遊技機で展開されるゲーム内容の電子制御に必要なハード部及びソフト部を備えた回路基板を組合せ形態に構成されたケース体内にセットしてケース単位で1つに取扱い得るようにした電子制御基板であって、
前記回路基板の所定部位に固定接続された接続部に、社名や番号等の表記部を有するゲーム内容制御用の電子デバイスを着脱交換可能に接続固定する一方、前記ケース体を透明合成樹脂材により所定の形状・サイズに成形し、前記ケース体を構成するカバー部材の一部を前記回路基板上の前記電子デバイスと対応する位置で内面側へ直方体形状をなすように成形された凹み成形部とし、この凹み成形部の底部によって前記電子デバイスをケース体の外側から視認し得るための透視窓を形成し、前記ケース体外側からの不正操作による前記電子デバイスの着脱交換を阻止し得るようにしたことを特徴とする遊技機等用の電子制御基板。

相違点
本願補正発明では、透視窓の内側部に、凹み成形部の電子デバイスの表面と対向する対向面からなり前記電子デバイスが接続部から回路基板と直交する方向へ脱着されるのを阻止するための着脱制止部と前記電子デバイスが前記接続部から回路基板と平行な方向へ移動されるのを阻止するための側面形状が前記電子デバイス側となる辺を斜辺とする台形状に形成されて前記凹み成形部の長手方向両端部における前記対向面から突出した短かな板片の制止脚部からなる移動制止部とを有して前記電子デバイスの不正着脱移動を阻止する制止部を前記接続部上の電子デバイスと位置対応するようにして且つ対応する電子デバイスからは僅かの距離をおいて近接配置されるように形成したのに対し、引用発明1では、透視窓(対峙面18)を電子デバイス(ROM11)の外面と所定距離を隔てて平行に設けた点

そこで、上記相違点について検討する。
引用発明2には、凹み成形部(窪み部)の電子デバイス(ROM101)の表面と対向する対向面からなり前記電子デバイスが接続部(ソケット)から回路基板(制御基板12)と直交する方向へ脱着されるのを阻止するための着脱制止部(突出部100)と前記電子デバイスが前記接続部から回路基板と平行な方向へ移動されるのを阻止するための移動制止部(スカート部100a)とを有して前記電子デバイスの不正着脱移動を阻止する部材を前記接続部上の電子デバイスと位置対応するようにして且つ対応する電子デバイスからは距離をおいて配置されるように形成した技術が記載されている。ところで、「電子デバイス側を斜めの脚部とする、回路基板上の電子デバイスの着脱阻止部材」は、例えば「周知発明アにおける枠状保持片8」及び「周知発明イにおける下端部91」に示すように、電気部品の取付保護の分野においては周知・慣用の技術である。そして、電子デバイスの着脱交換を阻止するためには電子デバイスと阻止部材との距離を僅かにすればするほど効果が大きいことは明らかな事項であるから、それらの部材を僅かの距離をおいて近接配置することは当業者が容易になし得ることである。また、阻止部材の具体的な形状及び配置位置は当業者が適宜決定できる設計上の事項である。したがって、引用発明1に示された「透視窓(対峙面18)」に対して引用発明2に示された「着脱制止部及び移動制止部(突出部100及びスカート部100a)」を適用する際に、上記の周知・慣用の技術を採用して、上記の相違点に係る発明を特定する事項とすることは、引用発明1及び2並びに周知発明ア及びイが「回路基板上の電気部品の着脱を阻止する技術」において共通するから、当業者が容易になし得ることである。

そして、効果の点においても、本願補正発明が格別の効果を有するとは認められない。

よって、本願補正発明は、引用発明1及び2並びに周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、審判請求人は、審判請求書において、制止部の構成が引用刊行物2(特開平11-76563号公報)に記載されたものとは明らかに相違する旨を主張するが、引用刊行物2の段落番号【0010】及び【0017】(前記「第二、(2)(あ)」参照)には、
空気孔の有無にかかわらず、ROMの取外しができないこと、およびROMの直上面に対応する位置には空気孔を形成しないことが記載され、
また「電子デバイス側を斜めの脚部とする、回路基板上の電子デバイスの着脱阻止部材」は、例えば上記の「周知発明ア」及び「周知発明イ」に示すように、周知・慣用の技術であるから、審判請求人の主張は採用できない。

(う)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三、本願発明について
平成14年12月20日付の手続補正は上記のとおり却下され、また、上記「第一、手続きの経緯」に示すように、平成14年9月27日付の手続補正は既に却下されているので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年2月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明のうちの請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「遊技機で展開されるゲーム内容の電子制御に必要なハード部及びソフト部を備えた回路基板を組合せ形態に構成されたケース体内にセットしてケース単位で1つに取扱い得るようにした電子制御基板であって、
前記回路基板(66)の所定部位に固定接続された接続部(65)に、社名や番号等の表記部(81)を有するゲーム内容制御用の電子デバイス(64)を着脱交換可能に接続固定する一方、前記ケース体(69)の所定部位に、前記電子デバイス(64)をケース体(69)の外側から視認し得るための透視窓(79)を形成し、この透視窓(79)の内側部に、前記電子デバイス(64)が前記接続部(65)から回路基板(66)と直交する方向へ脱着されるのを阻止するための着脱制止部(82)と前記電子デバイス(64)が前記接続部(65)から回路基板(66)と平行な方向へ移動されるのを阻止するための移動制止部(83)とを有して前記電子デバイス(64)の不正着脱移動を阻止する制止部(84)を前記接続部(65)上の電子デバイス(64)と位置対応するようにして且つ対応する電子デバイス(64)からは僅かの距離をおいて近接配置されるように形成し、前記ケース体(69)外側からの不正操作による前記電子デバイス(64)の着脱交換を阻止し得るようにしたことを特徴とする遊技機等用の電子制御基板。」(以下、「本願発明」という。)

引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び周知の刊行物に記載された発明とそれらの記載事項は前記「第二、(2)(あ)」に記載したとおりである。

本願発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明は、本願発明における「ケース体(69)」を、「透明合成樹脂材により所定の形状・サイズに成形」するように限定し、また「透視窓(79)」を、「ケース体(69)を構成するカバー部材(68)の一部を回路基板(66)上の電子デバイス(64)と対応する位置で内面側へ直方体形状をなすように成形された凹み成形部(80)とし、この凹み成形部(80)の底部によって前記電子デバイス(64)をケース体(69)の外側から視認し得るための」ものに限定し、さらに「着脱制止部(82)と移動制止部(83)とを有する制止部(84)」を、「凹み成形部(80)の電子デバイス(64)の表面と対向する対向面からなる着脱制止部(82)と側面形状が前記電子デバイス(64)側となる辺を斜辺とする台形状に形成されて前記凹み成形部(80)の長手方向両端部における前記対向面から突出した短かな板片の制止脚部からなる移動制止部(83)とを有する制止部(84)」に限定するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二、(2)(い)」に記載したとおり、引用発明1及び2並びに周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び2並びに周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、効果の点においても、本願発明が格別の効果を有するとは認められない。

(う)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2並びに周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-24 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2006-06-14 
出願番号 特願平11-96928
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光井海田 隆澤田 真治  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 辻野 安人
川島 陵司
発明の名称 遊技機等用の電子制御基板  
代理人 恩田 博宣  

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