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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1140560
審判番号 不服2003-22640  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-20 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 平成10年特許願第 53226号「粘着性材料の転写装置および転写方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-251729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成10年3月5日の出願であって、本願の請求項1〜4に係る発明は、平成15年1月21日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項2】粘着性材料を所定厚さに塗布する塗布部と、粘着性材料が転写される導電性ボールまたはバンプ付き電子部品を吸着する吸着ツールと、この吸着ツールを上下動させる上下動手段と、転写時に吸着ツールを粘着性材料に対して相対的に振動を付与する振動付与手段とを備えたことを特徴とする粘着性材料の転写装置。」

2.引用例の記載内容

(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平8-330312号公報(以下「引用例1」という。)には、図1〜図9とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0012】図2および図5はフラックスの貯溜部が移送手段の移動範囲外へ後退した状態を示しており、また図3および図4は移動範囲内に前進した状態を示している。また図6は本発明の一実施例のバンプ付電子部品の製造装置の半田ボールの下面にフラックスを塗布中の要部断面図、図7は同半田ボールを基板の電極に搭載中の要部断面図、図8は同ヘッドと第1の光源の正面図、図9は同ヘッドと発光部および受光部の正面図である。」(第3頁段落【0012】)

(イ)「【0019】図2において、テーブル1の上方には長尺のフレーム24が架設されている。フレーム24には送りねじ25とガイドレール26が平行に配設されている。27は送りねじ25を回転させるモータである。ヘッド21には、送りねじ25に螺合するナット28が結合されている。したがってモータ27が駆動して送りねじ25が回転すると、ナット28は送りねじ25に沿ってX方向へ水平移動し、ヘッド21もガイドレール26に沿ってX方向へ水平移動する。
【0020】フレーム24の両側端部は、ガイドレール29、30上にスライド自在に設置されている。このガイドレール29、30は上記ガイドレール26と直交している。またガイドレール29と平行に送りねじ31が配設されている。フレーム24の下面にはこの送りねじ31が螺合するナット(図示せず)が設けられている。したがってモータ32が駆動して送りねじ31が回転すると、フレーム24およびこれに結合されたヘッド21はガイドレール29、30に沿ってY方向に水平移動する。」(第4頁段落【0019】〜【0020】)

(ウ)「【0023】・・・すなわち、ヘッド21を容器7の上方で上下動作させて、その下面に真空吸着された半田ボール5をフラックス9に着水させ、その下面にフラックス9を付着させるが(図6(a)(b)を参照)、フラックス9は粘性が大きいため、半田ボール5をフラックス9に着水させると、その粘性のために半田ボール5は吸着孔22から落下することがある。・・・」(第4頁段落【0023】)

(エ)「【0027】ピックアップミスがなく、すべての吸着孔22に半田ボール5が正しく真空吸着して保持されているときは、ヘッド21は回収部19の上方へ移動する。これと前後して、図4および図5を参照しながら説明したように、フラックスの塗布部6の容器7はガイドレール11上をスライドしてフラックス9の液面の平滑がスキージ18a、18bにより行われ、容器7は図3および図4に示す位置、すなわち回収部19上で停止する。そこでヘッド21は上下動作を行って、その下面に真空吸着された半田ボール5の下面にフラックス9を付着させる。図6(a)(b)は、その動作を示している。」(第5頁段落【0027】)

(2)同じく、特開平5-220433号公報(以下「引用例3」という。)には、図1〜図6とともに、次の事項が記載されている。

(オ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従来の接着剤塗布装置では基板34に接着剤を塗布する際、ヘッド37が高速で上昇,移動するため、塗出した接着剤が糸曵き現象によりヒゲ状に塗布され、塗布精度が悪化する。また基板電極部に接着剤がかかり半田付不良を発生する原因となっている。接着剤についても糸曵きを改善するため粘度特性が検討されているが、塗布タクトの高速化に伴い、糸曵きの発生率は増える方向にある。
【0006】本発明はこのような課題を解決するもので、基板上に接着剤を塗布するときの塗布条件や、塗布タクトに影響されることなく常に糸曵きが起らない安定した接着剤の塗布を行なう接着剤の塗布装置を提供することを目的とするものである。」(第2頁段落【0005】〜【0006】)

(カ)「【0008】また、電子回路基板上の定められた位置に接着剤を塗布し、接着剤により電子部品を回路基板に仮止めし、その後半田付けを行なう電子部品実装装置にあって、接着剤吐出ニードル部に超音波振動素子を備え、吐出する接着剤の粘度を低下させながら接着剤を塗布するようにしたものである。
【0009】また、電子回路基板上の定められた位置に接着剤を塗布し、接着剤により電子部品を回路基板に仮止めし、その後半田付けを行なう電子部品実装装置にあって、電子回路基板保持部に超音波振動素子を備え、吐出する接着剤の粘度を低下させながら接着剤を塗布するようにしたものである。
【0010】また、電子回路基板上の定められた位置に接着剤を塗布し、接着剤により電子部品を回路基板に仮止めし、その後半田付けを行なう電子部品実装装置にあって、接着剤吐出ニードル部近傍に超音波ホーンを備え、超音波ホーンから放射される超音波により、吐出する接着剤の粘度を低下させながら接着剤を塗布するようにしたものである。
【0011】
【作用】本発明の方法および装置によれば、ノズル部に設けた超音波素子が接着剤の吐出時に振動し、あらかじめ接着剤が吐出されノズル先端部にたまった状態となる。塗布装置のヘッドは下降しノズル先端と基板は瞬時接触する。つぎにヘッドは上昇し、基板に転写された接着剤は離れてゆくノズルとの間で糸状に延伸される。このとき印加された超音波振動のエネルギーにより接着剤の見かけ粘度が低下し曵糸性が低減され塗布精度が向上することとなる。」(第2〜3頁段落【0008】〜【0011】)

以上のとおり、引用例1のバンプ付き電子部品の製造装置は、上記(ウ)の記載から「粘着性材料の転写装置」を有しており、該転写装置はフラックス9を半田ボール5に「転写」するものであることが把握される。そして、上記(エ)の記載から上記「フラックスを所定厚さに塗布する塗布部」を備えているものである。また、上記(ウ)(エ)には、ヘッド21を上下動させる手段、すなわち「上下動手段」が記載されている。

そうすると、上記記載事項(ア)〜(エ)及び図1〜9の記載を総合すると、引用例1には、
「フラックス9を所定厚さに塗布する塗布部6と、フラックス9が転写される半田ボール5またはバンプ付き電子部品を吸着するヘッド21と、このヘッド21を上下動させる上下動手段を備えたフラックスの転写装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対 比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「フラックス」、「半田ボール」、「ヘッド」は、それぞれ、本願発明の「粘着性材料」、「導電性ボール」、「吸着ツール」に相当するものである。

したがって、両者は、
[一致点]
「粘着性材料を所定厚さに塗布する塗布部と、粘着性材料が転写される導電性ボールまたはバンプ付き電子部品を吸着する吸着ツールと、この吸着ツールを上下動させる上下動手段とを備えた粘着性材料の転写装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「転写時にヘッド21をフラックスに対して相対的に振動を付与する振動付与手段」を備えているのに対して、引用発明はそのような手段を備えていない点。

4.当審の判断

そこで、上記相違点について以下に検討する。
上記引用例1の記載事項(ウ)には「フラックス9は粘性が大きいため、半田ボール5をフラックス9に着水させると、その粘性のために半田ボール5は吸着孔22から落下することがある。」ことが記載されており、上記のような粘着性材料の転写装置では粘着性材料の粘性によって導電性ボールが塗布部に引きずられ、吸着ツールから外れることが示唆されている。してみると、上記導電性ボールに粘着性材料を転写した後の粘性の影響に着目することは、当業者であれば容易なことである。
そして、上記引用例3には、電子部品回路を「粘着性材料」である接着剤で基板に固定し、実装するための接着剤塗布装置において、接着剤の粘度特性に起因する糸曳きの問題(上記(オ)の記載事項)を解決するために超音波振動素子(本願発明でいう「振動付与手段」)によって吐出する接着剤の粘度を低下させながら接着剤を塗布する(上記(カ)の記載事項)ことが記載されている。
してみると、電子部品の実装に関する技術分野として共通の分野に属し、粘着性材料の粘着力を低下させる必要がある点で共通の課題を有する、引用例3に記載された技術事項を引用発明に適用して本願発明のようにすることは、当業者が容易に想到できることである。
さらに、上記相違点に基づく本願発明の作用効果をみても上記引用発明及び引用例3に記載された技術事項から予測されないようなものは認められない。

5.むすび

したがって、本願発明(請求項2に係る発明)は、上記引用発明及び引用例3に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2006-05-24 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2006-06-12 
出願番号 特願平10-53226
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 平瀬 知明
川上 益喜
発明の名称 粘着性材料の転写装置および転写方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 永野 大介  

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