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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A43B
管理番号 1140614
審判番号 不服2006-4644  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-13 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 平成11年特許願第290213号「高齢者等用履物」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月17日出願公開、特開2001-104010号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年10月12日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年1月16日付け、及び平成18年4月12日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「靴紐による緊締開閉部と該緊締開閉部に沿って設けられた一対のスライドファスナーによる緊締開閉部とを有する高齢者等用履物であって、
左右の甲被の各々の前方部に紐通し孔を設け、開口部に後端部を有しそれらの前端部の間隔が足の巾の一番広いところとなる切り込みを甲の左右に設け、それぞれの切り込みにスライドファスナーを取付けたことを特徴とする高齢者等用履物。」

II.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、実公昭31-13655号公報(以下「引用例」という)には、「2条チヤツク附短靴」について、次の事項が図面とともに記載されている。
1.(1ページ左欄4行〜右欄12行)
「本案は、前面中央部を紐1で結合する短靴aの結び紐1部の両側に結び紐1部に並列状に2条のチヤツク2,3を装着した2条チヤツク附短靴である。
本案は上記の如くであるからチヤツクの摘み2’3’を摘んでチヤツク2,3の結合を分離させ靴aの前部bを摘み起せば靴の中に容易に足が差込まる然して摘み2’,3’を引張つてチヤツク2,3を結合させればよいので従来の如く靴を履く度毎に一一結び紐1を解いたり結んだりする必要がなく靴の脱ぎ履きが迅速簡便に行はれる。
本案に於て結び紐1とチヤツクの両者を併用したことはチヤツクだけでは靴の脱着は簡便に行はれるが足の膨張や靴下の厚薄等により幾分靴を緩めたり締めたりせねばならぬ場合の加減が出来ないからである。即ち靴の脱着はチヤツクの結合分離によつて行い、靴を足に適合させて締めたり緩めたりする必要のある場合には結び紐1によつて加減するものである。
又本案に於て2条のチヤツクを結び紐1に並列させて設けたことは1条のチヤツクの場合よりも大幅に展開されるので靴べらを使用することなく靴の脱着が容易に行はれることと、結び紐1部を中心に両側にチヤツクを並列して設くるので釣合いが取れ体裁が良好である。」

2.図面には、結び紐1を中心に両側に並列状に2条のチヤツク2,3を装着した2条チヤツク附短靴が示されている。この短靴は、爪先部と、左右の甲被とを有しており、左右の甲被の前面中央部側端部には、結び紐1を通すための紐通し孔が設けられている。また、甲被には、履口に後端部を有し前方に延びるチヤツク2,3が設けられていることが示されており、チヤツク2,3を開いたとき摘み起こされる甲被の部分である前部bが示されている。

上記記載事項について検討すると、引用例記載の短靴は、「前面中央部を紐1で結合する」ものであり、前面中央部に結び紐1を解いたり結んだりして開閉する部分である結び紐1部を備えたものである。また、引用例記載の短靴は、「結び紐1部の両側に結び紐1部に並列状に2条のチヤツク2,3を装着」しているので、結び紐1部に沿ってチヤツクの結合分離により開閉する一対の開閉部を備えていると言える。そして、この開閉部は、後端部が履口にあり、前方に延びた切り込みにチヤツクが取り付けられて構成されていると言える。

上記記載事項及び図示内容から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると言える。
「結び紐1部と結び紐1部に並列状に装着された2条のチヤツク2,3による開閉部とを有する2条チヤツク附短靴であって、左右の甲被の各々の前面中央部側端部に紐通し孔を設け、履口に後端部を有し前方に延びた切り込みを甲被の左右に設け、それぞれの切り込みにチヤツク2,3を取付けた2条チヤツク附短靴。」

III.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「結び紐1部」は、本願発明の「靴紐による緊締開閉部」に相当し、以下同様に、「並列状に装着された」は「沿って設けられた」に、「2条のチヤツク2,3による開閉部」は「一対のスライドファスナーによる緊締開閉部」に、「左右の甲被の各々の前面中央部側端部に紐通し孔を設け」は「左右の甲被の各々の前方部に紐通し孔を設け」に、「履口」は「開口部」に、「チヤツク2,3」は「スライドファスナー」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「切り込み」は、本願発明の「切り込み」に対応する。
また、引用発明の「2条チヤツク附短靴」と、本願発明の「高齢者等用履物」とは、「履物」という概念で共通している。
そこで、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
(一致点)
「靴紐による緊締開閉部と該緊締開閉部に沿って設けられた一対のスライドファスナーによる緊締開閉部とを有する履物であって、
左右の甲被の各々の前方部に紐通し孔を設け、開口部に後端部を有する切り込みを甲の左右に設け、それぞれの切り込みにスライドファスナーを取付けた履物。」

そして、両者は、次の相違点で相違する。
相違点a.
本願発明の履物は、高齢者等用履物であるのに対し、引用発明の履物は、高齢者等用履物であるか明らかでない点。

相違点b.
本願発明の切り込みは、その前端部の間隔が足の巾の一番広いところとなっているのに対し、引用発明の切り込みは、その前端部の間隔が足の巾の一番広いところとなっているか明らかでない点。

IV.判断
上記相違点について検討する。
相違点a.について
例えば、原査定の拒絶の理由で引用した登録実用新案第3040271号公報や、登録実用新案第3026280号公報等に示すように、スライドファスナーにより着脱が容易な、この種の履物を高齢者等用とすることは周知であるので、引用発明の履物を高齢者等用履物とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

相違点b.について
そもそも短靴の編み上げ部(結び紐1部)は、足への装着に当たって、開口部が狭いと、足の巾の広い部分がつかえるため、足巾の一番広いところが靴の開口部から装着位置まで通過することを可能とすべく、靴ひもを解いて巾を広げるために設けられたものであることは、周知の技術事項である。
したがって、引用発明において、装着時靴ひもを解くことに代えて、チヤツクで切り込みを開くことにより靴の巾を広げるように構成するにあたり、足巾の一番広いところが開口部から装着位置まで通過することを可能とすべく、切り込みの先端部の間隔を靴の足の巾の一番広いところとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

V.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-01 
結審通知日 2006-06-01 
審決日 2006-06-13 
出願番号 特願平11-290213
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A43B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 晋  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 川本 真裕
中村 則夫
発明の名称 高齢者等用履物  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  

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