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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22C
管理番号 1140633
審判番号 不服2002-16471  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2006-07-26 
事件の表示 平成7年特許願第168941号「高い金含有量の歯科合金」拒絶査定不服審判事件〔平成8年3月12日出願公開、特開平8-67931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年7月4日(優先日:1994年7月5日 オーストリア)の出願であって、平成14年5月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年8月29日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたところ、当審より平成17年8月22日付けで拒絶理由が通知され、平成17年11月22日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1及び2に係る発明は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】 金の91%から99.4%までと;チタンおよびタンタルから選択される少くとも1つの金属の0.5%から3%までと;銀の0%から5%までと;イリジウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニオブおよびレニウムから選択される少くとも1つの金属の0%から1%までとから成ることを特徴とし、与えられる%が重量%である高い金含有量の歯科合金。」

3.引用刊行物とその主な記載事項
当審の拒絶理由において引用された引用例は、次の引用例1乃至5であり、その引用例1及び2の主な記載事項は、次のとおりである。

(1)引用例1:特開平2-190429号公報
(1a)「88wt%以上の金と、所定の色相および彩度の箔を得るのに十分な量のプラチナまたはパラジウムと、所定の明度の箔を得るのに十分な量の非貴金属とを含んで成る、金属・セラミックス歯科修復材用金属箔。」(特許請求項の範囲の請求項1)
(1b)「プラチナまたはパラジウムを0.5〜7wt%含有する請求項1記載の箔。」(特許請求項の範囲の請求項3)
(1c)「前記非貴金属を0.1〜5wt%含有する請求項1記載の箔。」(特許請求項の範囲の請求項6)
(1d)「〔産業上の利用分野〕本発明は、金属・セラミックス歯科修復用の改良された金属箔に関し、特に色特性およびセラミックスとの結合性を向上させた金属箔に関する。」(第2頁左上欄第1〜4行)
(1e)「従来から、歯科修復材の基材として金色の金属を用いると美感的により好ましい色が得られることが知られている。」(第2頁左下欄第11〜13行)
(1f)「本発明の目的の一つは、セラミックスと一緒に用いたときに美感上より好ましくかつ正確な色を有する、金属・セラミックス歯科修復材の内部基材用金属箔を提供することである。」(第2頁右下欄第14〜17行)
(1g)「非貴金属は、結合剤なしに、セラミックスと箔との科学的結合を高める。」(第3頁左上欄末行〜同頁右上欄第2行)
(1h)「セラミックス・ペーストを硬化する金属・セラミックス修復材の焼成中に、箔表面の非貴金属が酸化する。非貴金属の酸化物はセラミックスとも反応し、それによってセラミックスと金属基材との化学的結合が促進されるので、金属・セラミックス修復材の品質を著しく向上させる。明度調整効果およびセラミックスと金属基材との化学結合向上効果を得るには、0.1wt%以上の非貴金属が必要である。非貴金属の量が5wt%より多いと、箔は暗くなり過ぎ、また耐熱性も低下する。・・・適当な非貴金属としては、インジウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、銅等があり、これらは容易に酸化物となり、毒性がなく、人間の口内の化学的および物理的な環境に対する耐性を有するものである。」(第3頁右下欄第13行〜第4頁左上欄第8行)
(1i)第1表には、本発明に用いるのに適した合金の例として、金が92〜97.75wt%含む合金が開示されている。
(1j)「ここに開示した合金は歯科修復用の箔として用いた場合について説明したが、歯科修復用の鋳造基材として用いることもできる。」(第4頁左下欄第19行〜同頁右下欄第2行)

(2)引用例2:特開昭53-4720号公報
(2a)「現在歯科の人工歯の分野において、所定の温度で金属と陶材とを焼付ける高カラツト貴金属系合金は非常に多くの種類のものが開発され、焼付用合金として使用されている。また、一部やゝ低カラツトの貴金属系合金も研究され、実用化されつゝあるが、十分なものとは云えない憾みがある。歯科への応用は、特に口腔内のきびしい条件のもとに、そのすべてを満足させるものでなければならない。
この発明の金合金は、これらの必要条件中、耐食性、強度、靱性、硬度等の条件を充たすと同時に、低カラツトであつても、焼付条件の中で最も必要とされる酸化膜を、薄くてしかも微密にすることが出来、陶材との溶着力をより強め、陶材焼付時の高温において変色や変形が少なく、酸化膜形成に要する時間を短縮することが出来、さらに、金の一部を多量の銀およびパラジウムに置換しても、溶着力が低下しない等の特性を備えた経済的な合金であると共に、非常に画期的な合金である。」(第1頁左欄末行〜第2頁左上欄第4行)
(2b)「従来の陶材焼付用合金は、高カラツトの金を主成分として耐食性を高め、白金、パラジウム、銀を含有し、これに鉄、インジウム 、錫等を微量添加することによつて、陶材と合金の溶着力を高め、また、微量のインジウムの添加によつて硬度を増していることを特徴としている。これらの合金の成分例を第1表に掲げた。
第1表において、現在市販されているものは、大部分が第1グループに入る高カラツトの貴金属を含有するものであり、これらはすべて金-白金-パラジウム-銀の金属元素を基盤とする合金であつて、微量の鉄、錫、インジウムを含有することによって、陶材との親和性をもたせたものである。」(第2頁左上欄第5行〜右上欄第7行)
(2c)「溶着力の第1条件は、合金と陶材の熱膨脹収縮率が近似であり、第2条件は焼付の際、合金成分の一部が陶材中に拡散滲透することである。合金成分中85%前後の量を占める、金、白金、パラジウムなどの元素が第1条件を満たし、鉄、錫、インジウム等の元素が第2条件を促進させる作用を有する。」(第2頁左下欄第8〜14行)
(2d)「陶材と合金の溶着力に必要である合金成分として、従来の錫、インジウム、鉄の効果を上回るタンタル、チタン、銅、アルミニウムを配合した場合、焼付時に拡散、滲透が活発に行われ、強力な溶着力を示すことを確認した。本発明者は、さきにタンタル、チタンを添加することについて研究し、その成果を発表したがこれら成分に新たに銅、アルミニウムを添加して一層強力な溶着力を得ることに成功した。」(第3頁右上欄第2〜11行)
(2e)「この発明の合金は、金、銀、パラジウム、白金を基としているが、金、銀、パラジウム成分比が重要である。パラジウムの場合、金に対する比率が増加した場合には、陶材との溶着力を減ずる。また、金の代りに銀量を増加させると、焼付時に金属体の変形を招く。」(第3頁右上欄第13〜左下欄第4行)
(2f)「イリジウム、ニッケル、タンタルおよびチタンは、合金の硬度を高めると同時に、一部溶解時の脱酸効果作用を有する。」(第3頁左下欄末行〜右下欄第3行)

(3)西独国特許第2302837号明細書
(4)西独国特許第2357552号明細書
(5)特開平1-132728号公報

4.当審の判断
引用例1の上記(1a)には、「88wt%以上の金と、所定の色相および彩度の箔を得るのに十分な量のプラチナまたはパラジウムと、所定の明度の箔を得るのに十分な量の非貴金属とを含んで成る、金属・セラミックス歯科修復材用金属箔」と記載されているが、この「金属・セラミックス歯科修復材用金属箔」は、金をベースにプラチナまたはパラジウムと非貴金属とを含むものであるから、「高い金含有量の歯科合金」であるといえる。また、この「歯科合金」は、上記(1b)の「プラチナまたはパラジウムを0.5〜7wt%含有する請求項1記載の箔」という記載によれば、プラチナ(「白金」と同義)またはパラジウムを「0.5〜7wt%」含有するものであり、上記(1c)の「前記非貴金属を0.1〜5wt%含有する請求項1記載の箔」という記載によれば、非貴金属を「0.1〜5wt%」含有するものであるから、以上の記載事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、「金の88%以上と;非貴金属の0.1%から5%までと;白金またはパラジウムから選択される少なくとも一つの金属の0.5〜7%までとから成る、与えられる%が重量%である高い金含有量の歯科合金。」という発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願発明1と引用例1発明とを対比すると、本願発明1の「チタンおよびタンタル」は、明細書の段落【0012】の記載によれば「非貴金属」に相当するから、本願発明1において「イリジウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニオブおよびレニウムから選択される少くとも1つの金属の0%から1%まで」という選択成分の中から「白金またはパラジウムの1%まで」を選択し、「銀が0%」を選択した場合には、両者は、「金と、非貴金属を0.5%から3%までと、白金またはパラジウムから選択される少なくとも一つの金属を0.5%から1%までとから成る、与えられる%が重量%である高い金含有量の歯科合金」という点で一致し、次の点で相違しているといえる。

相違点:
(イ)本願発明1は、「金が91%から99.4%まで」であるのに対し、引用例1発明は、「金が88%以上」である点
(ロ)本願発明1は、非貴金属が「チタンおよびタンタルから選択される少なくとも1つの金属」であるのに対し、引用例1発明は、「非貴金属」が特定されていない点。

次に、上記相違点について検討する。
(1)相違点(イ)について
引用例1発明の「歯科合金」において、その白金またはパラジウムから選択される少なくとも一つの金属の含有量が最少の「0.5重量%」であって非貴金属の含有量も最少の「0.1重量%」の場合には残部「金」の最大含有量は「99.4重量%」であるから、引用例1発明も、その金の含有量が「88〜99.4重量%」の範囲内の歯科合金であるといえる。そして、引用例1の上記(1i)の第1表には、金が「92〜97.75重量%」の範囲で含まれる数種類の合金例も示されているから、本願発明1は、金の含有量の点で引用例1発明と実質的な差異はないというべきである。
仮に、本願発明1が金の含有量として「91%から99.4%まで」の範囲を積極的に選択したものであるとしても、引用例1の上記(1e)に「歯科修復材の基材として金色の金属を用いると美感的により好ましい色が得られることが知られている。」と記載されているように、金の含有量が多ければ歯科合金として好ましいことも周知の事項であり、そして、引用例1には金92%以上の具体的な歯科合金例も記載されているのであるから、引用例1発明の「金が88%以上」の範囲を「金が91%から99.4%まで」と規制することは、当業者であれば容易に想到することができたといえる。
(2)相違点(ロ)について
本願発明1の「チタンおよびタンタル」は、本願明細書の段落【0012】の「非貴金属であるチタンおよびタンタルは、著しく生物学的に適合性のある歯科材料であることが判明した。」という記載によれば、「生物学的な適合性」が判明したために選択した材料であるといえるところ、引用例1発明の「非貴金属」は、具体的な材料がインジウム、鉄、アルミニウム等であるが、これら材料も、引用例1の上記(1h)の「適当な非貴金属としては、インジウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、銅等があり、これらは容易に酸化物となり、毒性がなく、人間の口内の化学的および物理的な環境に対する耐性を有するものである。」という記載によれば、「生物学的な適合性」を有する材料であるから、本願発明1の非貴金属である「チタンおよびタンタル」と、この「生物学的な適合性」を有する点で共通している。また、本願発明1が選択した「チタンおよびタンタル」の合金成分についても、引用例2の上記(2d)に「陶材と合金の溶着力に必要である合金成分として、従来の錫、インジウム、鉄の効果を上回るタンタル、チタン、銅、アルミニウムを配合した場合、焼付時に拡散、滲透が活発に行われ、強力な溶着力を示すことを確認した。」と記載されているように、「チタンやタンタル」が引用例1発明の上記インジウム、鉄等の「非貴金属」と比べて陶材と金合金との溶着力等の効果が上回る優れた歯科合金成分であることも周知の事項であるから、この歯科合金成分としてより優れた周知の「チタンおよびタンタル」を引用例1発明のインジウム、鉄等の「非貴金属」に替えて選択することは上記引用例2の周知事項に基づいて当業者が容易に想到することができたというべきである。
審判請求人は、意見書において、引用例2は、金含有量が最大55%の「金合金」に関するものであるから、引用例1と組み合わせることができないと主張している。
しかしながら、引用例2に記載された「チタンおよびタンタル」も、前示のとおり、低カラット金合金とはいえ「歯科合金成分」として使用されているのであるから「生物学的な適合性」を有することは明らかであり、そして、この「生物学的な適合性」の有無は、その金含有量の多寡と直接的な関係はないといえる。
したがって、引用例2の金の含有量の違いを前提とする審判請求人の上記主張は、採用することができない。
また、審判請求人は、意見書において、引用例1は、「金属・セラミックス歯科修復材用金属箔」という「金属箔」に関するものであり、本願発明1のような「バルク物質」ではなく、箔とバルク物質とは、その反応や機械的性質が異なるから、本願発明1と同じ用途には用いられないと主張している。
しかしながら、本願発明1は、「歯科合金」に係るものであって、「バルク物質」と特定されているものではないから、審判請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基いたものではない。
したがって、審判請求人の上記主張も採用することができない。

5 むすび
したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-01 
結審通知日 2006-03-03 
審決日 2006-03-14 
出願番号 特願平7-168941
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 平塚 義三
高木 康晴
発明の名称 高い金含有量の歯科合金  
代理人 浅村 肇  
代理人 吉田 裕  
代理人 浅村 皓  
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