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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1140637 |
審判番号 | 不服2003-4203 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-05-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-14 |
確定日 | 2006-07-26 |
事件の表示 | 平成11年特許願第345417号「印字装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月16日出願公開、特開2000-135823〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年10月13日に出願された特願平4-300302号の一部を平成9年7月25日に特願平9-215775号として新たな特許出願にしたものの一部をさらに平成11年12月3日に新たな特許出願にしたものであって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成18年3月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】片面に剥離テープを備えた印字テープの印字面に印字を行なう印字機構と、該印字後の印字テープを、略鉛直状態で搬送し、剥離テープが剥離可能に張り合わされた状態で切断する切断機構を備えた印字装置であって、前記切断機構は、前記搬送される印字テープのテープ面と対向する位置に配置された固定刃と、該固定刃の一端に回転の軸を備え該固定刃に対して回転移動する可動刃とを備えており、前記可動刃は、前記固定刃方向への回転移動に伴って該固定刃と次第に重なり合うことにより、前記搬送された印字テープを、該印字テープの幅方向一端から他端へ向かって、かつ前記移動刃が前記固定刃と共に前記印字テープを挟み込むことにより剪断し、前記固定刃は、前記搬送される印字テープ側に、移動してきた前記可動刃の刃先と重なり合う端部を有し、前記可動刃を、前記固定刃よりも前記印字テープの搬送下流側に設けた印字装置。」 2.当審の拒絶理由 当審において平成18年1月19日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願請求項1,2に係る発明は、本願出願前に頒布された、特開平4-62163号公報(以下、「引用文献1」という。)及び特開平3-87275号公報(以下、「引用文献2」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、請求項3に係る発明は、引用文献1,2に更に特開平4-99669号公報(以下、「引用文献3」という。)を組合せて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用文献の記載事項 引用文献1には、次の記載がある。 (a)この発明は、所望の画情報が印字されたラベル等を得ることができる印字装置に関する。(公報第1頁右下欄第9行から第10行) (b)被印字テープ排出口41の内側には、第2図に示すように、カッタガイド部材42が設けられている。カッタガイド部材42の被印字テープ排出口41と対向する箇所には被印字テープガイド口43が設けられている。カッタガイド部材42にはカッタ44が矢印C,D方向に摺動自在に取り付けられている。(公報第3頁右上欄第19行から左下欄第6行) (c)装置本体1内のメモリ部に一時的に記憶されたデータに対応する印字が終了したら、・・・カッタ44がカッタガイド部材42の被印字テープガイド口43の部分において被印字テープ61が切断される。そして、この切断された被印字テープ61の剥離テープ64を剥離すると、粘着剤63が露出し、所望の画情報が印字されたラベルが得られることになる。(公報第5頁左上欄第6行から第20行) (d)この印字装置では、インクテープ65のほかに、ベーステープ62の裏面に粘着剤63及び剥離テープ64がこの順で設けられた被印字テープ61を備えているので、被印字テープ61のベーステープ62の表面にインクテープ65を重ね合わせて印字を行うことにより、・・・印字後の被印字テープ61から剥離テープ64を剥離すると、裏面に接着剤63を備えたベーステープ62からなるラベル等が得られ、したがって所望の画情報が印字されたラベル等を容易にかつ見映え良く得ることができる。(公報第8行から20行) 引用文献2には、次の記載がある。 (e)このカッター27は、前記記録紙22の下方に位置するカット受刃28と、その記録紙22の上方に位置するカット切刃29とにより構成されている。前記カット刃28は固定的に設けられており、前記カット切刃29は一端の支点Aを中心に回動自在に設けられている。そして、このカット切刃29は、前記カット受刃28に対して離反した状態から回動することによりそのカット受刃28にはさみのように噛み合う位置に配置されている。(公報第3頁右下欄第8行から17行) 4.対比・判断 本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1の「剥離テープ64」「被印字テープ61」「ベーステープ62の表面」「サーマル印字ヘッド31」「印字装置」はそれぞれ、本願発明の「剥離テープ」「印字テープ」「印字面」「印字機構」「印字装置」に相当し、同様に「カッタガイド部材42」及び「カッタ44」は「切断機構」に相当する。また、第1図をみると、引用文献1の印字後の被印字テープ61は、略鉛直状態で搬送されている。 上記により、両者は、 「片面に剥離テープを備えた印字テープの印字面に印字を行なう印字機構と、該印字後の印字テープを、略鉛直状態で搬送し、剥離テープが剥離可能に張り合わされた状態で切断する切断機構を備えた印字装置。」 という点で一致し、 前者は、切断機構が、「搬送される印字テープのテープ面と対向する位置に配置された固定刃と、該固定刃の一端に回転の軸を備え該固定刃に対して回転移動する可動刃とを備えており、前記可動刃は、前記固定刃方向への回転移動に伴って該固定刃と次第に重なり合うことにより、前記搬送された印字テープを、該印字テープの幅方向一端から他端へ向かって、かつ前記移動刃が前記固定刃と共に前記印字テープを挟み込むことにより剪断し、前記固定刃は、前記搬送される印字テープ側に、移動してきた前記可動刃の刃先と重なり合う端部を有し、前記可動刃を、前記固定刃よりも前記印字テープの搬送下流側に設けた」 を構成にしているのに対して、 後者は、上記切断機構とは異なる切断機構を採用している点(以下、相違点という。)で で相違しているものと認める。 上記相違点について検討する。 引用文献2には、長尺状の記録紙の切断機構が記載されており、固定的に設けられたカット受刃28と、支点Aを中心に回動自在に設けられたカット切刃29により、はさみのように噛み合うカット機構であって、カット切刃29がカット受刃28よりも記録紙22の搬送下流側に設けられている切断機構が記載されている。 引用文献1に記載された発明の切断機構に替えて、引用文献2に記載されるような固定刃と支点を中心に回動自在な可動刃からなる切断機構を採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。 また、平成18年3月27日付け手続補正により、可動刃に関して「固定刃の一端に回転軸を備え該固定刃に対して回転移動する」という要件を追加しているが、固定刃と可動刃からなる切断機構において、固定刃の一端に回転軸を設けることは、従来より周知(例えば、実願昭59-188552号(実開昭61-102543号)のマイクロフィルム、実願昭60-200359号(実開昭60-200359号(実開昭62-106792号)のマイクロフィルム等)である。 そして、本件発明の要件として記載された「前記可動刃は、前記固定刃方向への回転移動に伴って該固定刃と次第に重なり合うことにより、前記搬送された印字テープを、該印字テープの幅方向一端から他端へ向かって、かつ前記移動刃が前記固定刃と共に前記印字テープを挟み込むことにより剪断」は、固定刃と回動自在な可動刃からなる切断機構における切断作用の一例を具体的に記載したに過ぎないものであり、この切断作用については、引用文献2には具体的に記載されていないものの、上記周知例として挙げた実願昭59-188552号(実開昭61-102543号)のマイクロフィルムにも記載されるように、当業者にとっては従来より周知の事項にすぎない。 以上のとおりであるので、本件発明は、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたのもである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用文献に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2乃至3に係る発明について、検討するまでもなく、当審において平成17年6月10日付けで通知した拒絶の理由により、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-18 |
結審通知日 | 2006-05-23 |
審決日 | 2006-06-05 |
出願番号 | 特願平11-345417 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
宮崎 敏長 豊永 茂弘 |
発明の名称 | 印字装置 |
代理人 | 下出 隆史 |
代理人 | 五十嵐 孝雄 |