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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C |
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管理番号 | 1140661 |
審判番号 | 不服2004-24838 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-02-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-12-03 |
確定日 | 2006-07-26 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 60178号「ノジュラ腐食に耐える被覆及び被覆を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月16日出願公開、特開平 8- 43568〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年3月20日の出願(パリ条約による優先権主張1994年3月21日、米国)であって、平成16年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年12月3日に審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成16年1月29日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「水冷型核分裂炉において核分裂性物質の収納に使用されている間にノジュラ腐食に耐える被覆であって、該被覆は、内面域と、外面域とを含んでおり、ジルコニウム基合金マトリクスの断面と、該マトリクス内に設けられる析出物の形成に十分な濃度の合金元素とを備えており、高々20重量ppmの窒素を含有しているノジュラ腐食に耐える被覆。」 3.引用刊行物に記載された発明 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-35749号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「耐食性のすぐれた原子炉燃料被覆管用Zr合金」の発明に関して、以下の事項が記載されている。 <記載事項1> 「〔従来の技術〕 従来、一般に、原子力発電プラントの原子炉に加圧水型(PWR)のものがあり、かつこの原子炉の燃料被覆管にはZr合金が用いられ」(第1ページ右下欄第3〜6行) <記載事項2> 「〔問題点を解決するための手段〕 そこで、本発明者等は、上述のような観点から、原子炉の燃料被覆管として用いた場合に、よりすぐれた耐食性を示すZr合金を開発すべく、特に上記の従来Zr合金に着目し研究を行なった結果、相対的にSn含有量を低くした状態で、不可避不純物としての窒素の含有量を60ppm以下にすると、一段と耐食性が向上し、原子炉の燃料被覆管に用いた場合に、長期に亘る使用が可能となるという知見を得たのである。 したがって、この発明は、上記に知見にもとづいてなされたものであって、 Sn:0.2〜1.15%、 Fe:0.18〜0.24%、 Cr:0.07〜0.13% を含有し、残りがZrと不可避不純物からなり、かつ不可避不純物としての窒素含有量を60ppm以下とした組成を有する原子炉用燃料被覆管用Zr合金に特徴を有するものである。」(第2ページ左上欄第1〜19行) <記載事項3> 「また、不可避不純物としての窒素の含有量が60ppmを超えると、Sn、Fe,およびCr成分の含有量を上記の通り限定しても耐食性向上効果は現れないことから、窒素含有量を60ppm以下と定めた。」(第2ページ右上欄第11〜15行) そして、原子炉の燃料被覆管は核分裂性物質の収納に使用されることは明らかであり、また、燃料被覆管は、管状部材であるので、内面域と、外面域とを含んでいることも明らかである。 さらに、燃料被覆管は、Zr合金から構成されているので、ジルコニウム基合金マトリクスの断面を備えていることも明らかである。 したがって、上記記載事項1乃至3に基づけば、引用刊行物1には 「加圧水型原子炉において核分裂性物質の収納に使用され耐食性が向上した燃料被覆管であって、該燃料被覆管は、内面域と、外面域とを含んでおり、ジルコニウム基合金マトリクスの断面と、該マトリクス内にSn:0.2〜1.15%、Fe:0.18〜0.24%、Cr:0.07〜0.13%を含有し、窒素含有量が60ppm以下と定めた燃料被覆管」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 4.対比 本願発明と引用発明とを比較すると、 引用発明の「加圧水型原子炉」は本願発明の「水冷型核分裂炉」に相当し、以下同様に、「使用され」は「使用されている間」に、「燃料被覆管」は「被覆」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「耐食性が向上した」と本願発明の「ノジュラ腐食に耐える」とは、腐食に耐える点で一致する。 さらに、引用発明の「該マトリクス内にSn:0.2〜1.15%、Fe:0.18〜0.24%、Cr:0.07〜0.13%を含有し」と、本願発明の「該マトリクス内に設けられる析出物の形成に十分な濃度の合金元素とを備えており」とは、該マトリクス内に合金元素とを備えておりという点で一致する。 また、引用発明の「窒素含有量が60ppm以下と定めた」と本願発明の「高々20重量ppmの窒素を含有している」とは、含有量の上限値が定められた窒素を含有しているという上位概念で一致する。 したがって、両者は、 「水冷型核分裂炉において核分裂性物質の収納に使用されている間に腐食に耐える被覆であって、該被覆は、内面域と、外面域とを含んでおり、ジルコニウム基合金マトリクスの断面と、該マトリクス内に合金元素とを備えており、含有量の上限値が定められた窒素を含有している腐食に耐える被覆。」の点で一致するが、以下の点で相違する。 [相違点1] 被覆が耐える腐食が、本願発明は、ノジュラ腐食であるのに対して、引用発明は、腐食の種類が限定されていない点。 [相違点2] 合金元素が、本願発明は、マトリクス内に設けられる析出物の形成に十分な濃度であるのに対して、引用発明は、析出物と濃度との関係が規定されていない点。 [相違点3] 本願発明は、高々20重量ppmの窒素を含有しているのに対して、引用発明は、窒素含有量が60ppm以下である点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1] 原子炉内で被覆(燃料被覆管)にノジュラ腐食が生じることは、本願の優先日前において周知事項であり(例えば、特開平2-159336号公報参照)、本願発明は、被覆が受ける腐食の類類を周知のノジュラ腐食と限定したに過ぎないので、相違点1に係る本願発明の構成要件は、格別なものとはいえない。 [相違点2] 本願の特許請求の範囲の請求項3には、「【請求項3】 前記マトリクスは、次のような濃度範囲内に存在する合金元素、即ち、約0.05重量%〜0.09重量%の鉄と、約0.03重量%〜0.05重量%のクロムと、約0.02重量%〜0.04重量%のニッケルとを有している改質ジルカロイ2である請求項2に記載の被覆。」と記載されている。 また、本願明細書の段落【0015】の記載からみて、合金元素の濃度がこの濃度範囲、及びこの濃度範囲より高い場合には、本願発明のように、ジルコニウム基合金マトリクス内に析出物が形成されることは明らかである。 一方、引用発明の合金元素の濃度は、Sn:0.2〜1.15%、Fe:0.18〜0.24%、Cr:0.07〜0.13%であり、鉄、クロムについて、本願の請求項3に記載したそれぞれの濃度範囲、鉄:約0.05重量%〜0.09重量%、クロム:約0.03重量%〜0.05重量%よりいずれも高いので、引用発明においても、ジルコニウム基合金マトリクス内に析出物が形成されるといえる。 してみると、相違点2は、実質的な相違点ではない。 [相違点3] 引用刊行物には、「不可避不純物としての窒素の含有量を60ppm以下にすると、一段と耐食性が向上し」なる記載(記載事項2)がなされており、かつ、その下限値が記載されていないので、上記記載からみて、原子炉で使用される本願発明の被覆(燃料被覆管)の耐食性を更に向上させるために、窒素の含有量は、できるだけ少ない方がよいことは当業者にとって明らかである。 してみると、引用刊行物には、窒素の含有量を60ppm以下とすることが記載されている以上、さらに耐食性を向上させるために、窒素の含有量をさらに少なくすること、すなわち本願発明のように20ppm以下とすることは、引用刊行物の記載に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。 なお、本願発明のようなジルコニウム基合金マトリクスを備えた被覆(燃料被覆管)において、耐ノジュラ腐食性に悪影響を及ぼす窒素の含有量を20ppm以下とすることは、優先日前に頒布された特開平2-159336号公報(第2ページ右下欄第18行〜第3ページ左上欄第7行)に記載されている事項でもある。 そして、本願発明の効果は、引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-23 |
結審通知日 | 2006-02-28 |
審決日 | 2006-03-13 |
出願番号 | 特願平7-60178 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G21C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今浦 陽恵 |
特許庁審判長 |
江塚 政弘 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 上野 信 |
発明の名称 | ノジュラ腐食に耐える被覆及び被覆を製造する方法 |
代理人 | 小倉 博 |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 伊藤 信和 |
代理人 | 松本 研一 |