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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04D
管理番号 1140713
審判番号 不服2005-5626  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-31 
確定日 2006-07-28 
事件の表示 平成 7年特許願第247378号「軒樋の曲り継手」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月31日出願公開、特開平 9- 88263〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成7年9月26日の出願であって、平成17年2月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、その後、当審において、同日付手続補正が却下されるとともに、平成18年2月13日付で拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月17日付で意見書が提出されたものである。

2.本願発明について
平成17年3月31日付手続補正は、当審において平成18年2月13日付で却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】 相衝合する軒樋のそれぞれに嵌合してそれら両軒樋を接続するものであり、
継手本体の前壁上部に前耳受部と前耳嵌合部を屈曲形成してなるとともに、後壁上部にも後耳受部と後耳嵌合部を屈曲形成してなり、
上記前耳受部及び前耳嵌合部を軒樋の前耳に嵌合可能とするとともに、上記後耳受部及び後耳嵌合部を軒樋の後耳に嵌合可能としてなる軒樋の曲り継手において、
継手本体の後壁上部における継手延在方向に沿う、曲り中央部を除く両端部のそれぞれにのみ前記後耳受部及び後耳嵌合部を設けてなることを特徴とする軒樋の曲り継手。」

(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された実願平1-144349号(実開平3-82738号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(あ)「本考案は曲り樋、特に、気温の変化に伴う軒樋の伸縮に追随し得るように曲り樋本体の両端部近傍の内面にパッキングを周設してなる曲り樋に係るものである。」(明細書1頁10〜13行)、
(い)「本考案を図面に示す実施例に基づき詳細に説明すれば、第1図は本考案の曲り樋の一実施例を示す斜視図、第2図は同上一部拡大斜視図を示すもので、図中、1は樋状体をL字面に曲成してなる曲り樋本体であり、2は示す曲り樋本体1の両端部近傍の内面に周設されたパッキングであり、3は曲り樋本体1の建屋側の外壁面に形成された係止具であって、建屋の軒先Aに固定された取付金具Bのフックaに係止すべく上記外壁面に下方にスリット状の係止孔bを有する筒体cを一体に形成してなるものである。尚、図中、4は曲り樋本体1に接続された軒樋であり、5は軒樋の固定の用に供される軒樋取付金具であり、また上記係止具3は建屋側の外壁面とともに屋外側の外壁面に合わせて形成しても差しつかえない。」(同4頁7行〜5頁2行)、
(う)図面には「相衝合する軒樋4のそれぞれに嵌合してそれら両軒樋4を接続するものであり、建屋から離れた側の壁上部の全周に亘って、壁上端を外側に突出する水平な突縁、及び、突縁から上方に垂直に立ち上がる立ち上がり縁を設け、突縁及び立ち上がり縁の長手方向両端のみは、立ち上がり縁の上端から水平に突片を突設し、突片の先端に垂下片を設けて軒樋接続部としてなるとともに、同様に、建屋側の壁上部の全周に亘って、壁上端を外側に突出する水平な突縁及び突縁から上方に垂直に立ち上がる立ち上がり縁を設け、突縁及び立ち上がり縁の長手方向両端のみは、立ち上がり縁の上端から水平に突片を突設し、突片の先端に垂下片を設けて軒樋接続部としてなる曲り樋本体1の、上記建屋から離れた側の軒樋接続部を、軒樋の建屋から離れた側の耳に嵌合可能とするとともに、上記建屋側の軒樋接続部を、軒樋の建屋側の耳に嵌合可能としてなる曲り樋において、曲り樋本体1の建屋側の外壁に、突起状屈曲形成する筒体cを一体に設けてなる軒樋の曲り樋」が記載されている。
したがって、引用例には、
「相衝合する軒樋4のそれぞれに嵌合してそれら両軒樋4を接続するものであり、曲り樋本体1の建屋から離れた側の壁上部の全周に亘って、壁上端を外側に突出する水平な突縁、及び、突縁から上方に垂直に立ち上がる立ち上がり縁を設け、突縁及び立ち上がり縁の長手方向両端のみは、立ち上がり縁の上端から水平に突片を突設し、突片の先端に垂下片を設けて軒樋接続部としてなるとともに、同様に、建屋側の壁上部の全周に亘って、壁上端を外側に突出する水平な突縁及び突縁から上方に垂直に立ち上がる立ち上がり縁を設け、突縁及び立ち上がり縁の長手方向両端のみは、立ち上がり縁の上端から水平に突片を突設し、突片の先端に垂下片を設けて軒樋接続部としてなり、上記建屋から離れた側の軒樋接続部を軒樋の建屋から離れた側の耳に嵌合可能とするとともに、上記建屋側の軒樋接続部を軒樋の建屋側の耳に嵌合可能としてなる曲り樋において、曲り樋本体1の建屋側の外壁に、突起状屈曲形成する筒体cを一体に設けてなる軒樋の曲り樋」の発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「曲り樋」、「建屋から離れた側の」、「壁上端を外側に突出する水平な突縁及び突縁から上方に垂直に立ち上がる立ち上がり縁」、「建屋側の」及び「長手方向」は、それぞれ本願発明の「継手」又は「曲り継手」、「前」、「耳受け部」、「後」及び「継手延在方向」に相当する。
また、引用例記載の発明の「立ち上がり縁の上端から水平に突片を突設し、突片の先端に垂下片を設け」てなる部分は、本願発明の「耳嵌合部」に相当する。
さらに、引用例記載の発明は、耳受部が、継手本体の壁上部の継手延在方向両端部に亘って連続して設けられ、かつ、耳嵌合部が、壁上部における継手延在方向に沿う両端部のそれぞれにのみ設けられ、両端部を除いた部分には設けられていない。このことは、「継手本体の後壁上部における継手延在方向に沿う、曲り中央部を除く両端部のそれぞれにのみ後耳受部及び後耳嵌合部を設けてなること」を意味する。
なお、本願発明の「継手本体の後壁上部における継手延在方向に沿う、曲り中央部を除く両端部のそれぞれにのみ前記後耳受部及び後耳嵌合部を設けてなる」という構成は、除かれた曲り中央部が、後耳受部と後耳嵌合部の両方とも設けないもの(前者)のみでなく、例えば、後耳受部又は後耳嵌合部のどちらか一方のみ設け、かつ、他方を設けないもの(後者)も含んでおり、引用例記載の発明は、この後者の場合に相当する。
そうすると、引用例記載の発明は、本願発明の構成の全てを具備しているから、本願発明は、引用例記載の発明である。

3.補正却下の決定について
当審における、平成17年3月31日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定について検討する。

請求人は、平成18年4月17日付の意見書において、補正却下の決定の理由に対して、概ね次のように主張している。
(ア)引用例における曲り樋は、所謂、シールパッキング方式の接続方式が前提のものであるのに対し、本願補正発明における軒樋の曲り継手は、所謂、接着方式の接続方式が前提のものであるから接続方式が基本的に全く相違している。
(イ)引用例における曲り樋は、建屋側の後壁上部の接続両端部を除いた部分にも、接続両端部から連続して垂直な立ち上がり壁が形成されているのに対し、本願補正発明における軒樋の曲り継手は、両端部を除いた曲り中央部には、引用例における「垂直な立ち上がり壁」が全く存在していない「継手本体の後壁上部における継手延在方向に沿う、曲り中央部を除く両端部のそれぞれにのみ前記後耳受部及び後耳嵌合部を設けてなる」という構成であるから、両者は全く相違している。
したがって、上記(ア)、(イ)から、本願補正発明は引用例記載の発明ではない。

[(ア)について]
本願補正発明は、接続方式についてのものを構成要件としていないから、(ア)の点は本願補正発明の構成要件から離れた主張である。
[(イ)について]
本願補正発明の「継手本体の後壁上部における継手延在方向に沿う、曲り中央部を除く両端部のそれぞれにのみ前記後耳受部及び後耳嵌合部を設けてなる」という構成は、両端部を除いた曲り中央部に、後耳受部と後耳嵌合部の両方とも設けないもの(前者)のみでなく、例えば、後耳受部又は後耳嵌合部のどちらか一方のみ設け、かつ、他方を設けないもの(後者)も含んでいる。引用例記載の発明は、継手本体の後壁上部における継手延在方向に沿う全周に亘って連続して後耳受部を設け、かつ、両端部を除いた曲り中央部にのみ後耳嵌合部を設けないものなのであるから、前記の後者のものに相当し、本願補正発明に含まれている。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとした本件補正についての補正却下の決定は妥当なものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-25 
結審通知日 2006-05-31 
審決日 2006-06-16 
出願番号 特願平7-247378
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 純住田 秀弘  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 小山 清二
青山 敏
発明の名称 軒樋の曲り継手  

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