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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1140726
審判番号 不服2003-87  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-06 
確定日 2006-07-25 
事件の表示 平成 9年特許願第529915号「無線電話」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月28日国際公開、WO97/31469、平成12年 5月23日国内公表、特表2000-506324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1997年2月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、1996年2月26日及び1996年4月25日、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)を国際出願日とする出願であって、平成14年9月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月6日に審判請求がなされるとともに、同年2月5日に手続補正がなされたものの、当審における平成17年5月25日付け補正の却下の決定において、平成15年2月5日付けの手続補正が却下されるとともに、平成17年6月7日付けで拒絶の理由が通知され、さらに、同年12月13日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年12月13日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「1組のキーと、
この1組のキーをカバーする第1位置とこの1組のキーをカバーしない第2位置との間で移動可能なカバー部分と、
いずれの位置においても上記カバー部分によりカバーされない更に別のキーと、
上記1組のキーや上記更に別のキーの操作に対応して所定の機能を実行する処理手段と、
を備え、
該処理手段は、上記カバー部分が上記第1位置にあるときは上記更に別のキーの操作によって第1機能を実行し、上記カバー部分が上記第2位置にあるときは上記1組のキーのいずれかのキーの操作によって前記第1機能を実行するように構成される、
ことを特徴とする携帯用電話。」

3.引用発明及び周知技術
(1)これに対して、当審の拒絶の理由に引用した特開平6-252823号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0018】
【実施例】実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、2は携帯電話機本体、4は受話部、6は表示部、8はスイッチ部、10は送話部、14はカバーである。8aはスイッチ部における着呼キー、8bは再呼の為のメモリキー、8cは応答保留の為の終話キーである。この3キーは、スイッチ部8の最上段に配置されている。10aは送話部におけるマイクロホンへ通じる音道の入口である音孔である。
【0019】カバー14は、閉じるとスイッチ部8の最上段のキー8a,8b,8c以外を覆う形状となっている。また、本体2に対してカバー14を回動可能に取付けているヒンジ部14aは中央部は本体下端部の送話部10の一部であり、カバー14を閉じても音孔10aは露出する。
【0020】次に動作について説明する。カバー14は、収納時は閉じているが、閉じてもスイッチ部の着呼キー8a、再呼キー8b、終話キー8c及び送話部音孔10aは露出しているため、ポケット等に収納時に着信しても終話キー8cを即座に押すことができ、応答保留操作ができる。また、狭い場所や、目立ちたくない場合等、カバーを開けずにそのまま着呼キーを押し、受話操作を行うことができる。更に、発呼して相手が話中の場合、使用者が収納状態でくりかえし再呼操作を行うこともできる。
【0021】カバー14を開けるとその他のスイッチも露出し、通常の操作を行うことができる。また、カバー14はマイクロホン10に対する集音板としても機能する。」(第3頁左欄、段落18〜21)

(イ)「【0026】
【発明の効果】以上のように、この発明請求項1、請求項2、請求項3の携帯電話機構造によればカバー14をスイッチ部の全体を覆わないで、特定のキーをカバーを閉じても露出するようにしたので、カバーを閉じたままで通常の着呼、発呼等のキー操作を行うことができる効果がある。」(第3頁右欄、段落26)

以上の記載を考慮すると、上記引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「カバーを開けると露出するスイッチと、
閉じるとスイッチ部の最上段のキー以外を覆う形状となっているカバーと、
カバーが閉じていても露出しているスイッチ部の特定のキーと
を備え、キーの操作に応じて、着呼、発呼等を行うことができ、
カバーを開けずにそのまま特定のキー(着呼キー)を押し、受話操作を行うことができる携帯電話機。」

(2)周知例として提示する特開平7-321889号公報(以下「周知例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ウ)「【0002】
【従来の技術】移動通信端末特に、携帯電話は、雑誌「日経トレンディ(日経ホーム出版社)」1993年6月号(通巻70号)の76から78ページに示される様に多種の機能を持ち、キー操作に関しては、図2のフローチャートに示す様なエニーアンサー機能をもち、着信し呼び出しベルが鳴っている時に、電源、終了以外のどのキーを押しても通話に入れる様になっている。しかし上記機能は受信時の使い勝手を向上させたものであるが、送信時の使い勝手向上が検討されていない。」(第2頁左欄、段落2)

つまり、着信時に、電源、終了以外のどのキーを押しても通話に入れる点は周知慣用技術である。

4.対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、
a.引用発明の「カバーを開けると露出するスイッチ」は、本願発明の「1組のキー」に相当する。

b.引用発明における「閉じるとスイッチ部の最上段のキー以外を覆う形状となっているカバー」は、本願発明の「この1組のキーをカバーする第1位置とこの1組のキーをカバーしない第2位置との間で移動可能なカバー部分」に相当する。

c.引用発明の「スイッチ部の最上段のキー」である「カバーが閉じていても露出しているスイッチ部の特定のキー」は、本願発明の「いずれの位置においても上記カバー部分によりカバーされない更に別のキー」に相当する。

d.引用発明においても「キーの操作に応じて、着呼、発呼等を行うことができ」ることから、当然に、着呼、発呼等を行うための処理手段を備えているものと認められ、また、「着呼、発呼等」は、本願発明の「所定の機能」に一致し、引用発明の上記「キーの操作に応じて、着呼、発呼等を行うことができ」は、本願発明の「上記1組のキーや上記更に別のキーの操作に対応して所定の機能を実行する処理手段」に相当するものと認められる。

e.引用発明の「カバーを開けずにそのまま特定のキー(着呼キー)を押し、受話操作を行うことができる」における「カバーを開けずに」、「特定のキー(着呼キー)」、「受話操作」は、それぞれ、本願発明の「カバー部分が上記第1位置にあるとき」、「更に別のキー」、「第1機能を実行」に相当し、引用発明の「カバーを開けずにそのまま着呼キーを押し、受話操作を行うことができる」は、本願発明の「該処理手段は、上記カバー部分が上記第1位置にあるときは上記更に別のキーの操作によって第1機能を実行し」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、 次の点で一致し、
「1組のキーと、
この1組のキーをカバーする第1位置とこの1組のキーをカバーしない第2位置との間で移動可能なカバー部分と、
いずれの位置においても上記カバー部分によりカバーされない更に別のキーと、
上記1組のキーや上記更に別のキーの操作に対応して所定の機能を実行する処理手段と、
を備え、
該処理手段は、上記カバー部分が上記第1位置にあるときは上記更に別のキーの操作によって第1機能を実行する携帯用電話。」

また、次の点で相違する。
本願発明は「上記カバー部分が上記第2位置にあるときは上記1組のキーのいずれかのキーの操作によって前記第1機能を実行する」のに対し、引用発明には、その点についての記載がない点。

しかし、上記相違点について検討すると、 携帯電話において、着信時に、電源、終了以外のどのキーを押しても通話に入れるように、複数のキーに同一機能を割り付けることは上記周知例に記載されたように周知慣用技術であり、引用発明において、カバーが開いてスイッチが露出している場合において、該周知慣用技術を採用し、どのキーを押しても通話に入れるように構成することには、格別の阻害要因は認められず、さらに、一般的な機器の操作において、同一機能のキーを複数の箇所に設けることも常套手段であるから、引用発明において「上記カバー部分が上記第2位置にあるときは上記1組のキーのいずれかのキーの操作によって前記第1機能を実行する」ことは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-23 
結審通知日 2006-02-27 
審決日 2006-03-13 
出願番号 特願平9-529915
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二吉村 博之山田 洋一  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 宮下 誠
小林 紀和
発明の名称 無線電話  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 今城 俊夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 村社 厚夫  
代理人 中村 稔  
代理人 川守田 光紀  

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