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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1140778
審判番号 不服2005-7118  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-21 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 平成 8年特許願第507941号「極低温用蓄冷材、それを用いた極低温用蓄冷器とその製造方法、および冷凍機」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月29日国際公開、WO96/06315〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成7年8月22日の特許出願であって(優先権主張が基づく先の出願の出願日:平成6年8月23日及び平成6年12月22日)、原審において平成16年9月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成16年11月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年3月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月21日付けで審判請求がなされるとともに、平成17年5月23日付けで手続補正がなされ、平成17年6月15日付けで上記審判請求書を補正対象とする手続補正がなされ、その後、特許法第162条による審査がなされ、平成17年7月8日付けで特許庁長官への報告がなされたものである。






第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年5月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の各請求項に係る発明
補正後の請求項1ないし9に係る発明は、平成17年5月23日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】 磁性蓄冷材粒体を具備する極低温用蓄冷材であって、
前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子個々の投影像の周囲長をL、前記投影像の実面積をAとしたとき、前記磁性蓄冷材粒体はL2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記磁性蓄冷材粒子の比率が5%以下となるように形状分級され、かつ前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子のうち、前記磁性蓄冷材粒体に5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する前記磁性蓄冷材粒子の比率が1重量%以下である極低温用蓄冷材。
【請求項2】 請求項1記載の極低温用蓄冷材において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が短径に対する長径の比が5以下である極低温用蓄冷材。
【請求項3】 請求項1または請求項2記載の極低温用蓄冷材において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が0.01〜3.0mmの範囲の粒径を有する極低温用蓄冷材。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の極低温用蓄冷材において、
前記磁性蓄冷材粒体は、RMz(RはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を、MはNi、Co、Cu、Ag、AlおよびRuから選ばれる少なくとも1種の金属元素を示し、zは0.001〜9.0の範囲の数である)、またはARh(AはSm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示す)で表される希土類元素を含む金属間化合物からなる極低温用蓄冷材。
【請求項5】 蓄冷容器と、
前記蓄冷容器に充填された磁性蓄冷材粒体からなり、前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子個々の投影像の周囲長をL、前記投影像の実面積をAとしたとき、前記磁性蓄冷材粒体はL2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記磁性蓄冷材粒子の比率が5%以下となるように形状分級され、かつ前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子のうち、前記磁性蓄冷材粒体に5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する前記磁性蓄冷材粒子の比率が1重量%以下である極低温用蓄冷材と
を具備する極低温用蓄冷器。
【請求項6】 請求項5記載の極低温用蓄冷器において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が短径に対する長径の比が5以下である極低温用蓄冷器。
【請求項7】 請求項5または請求項6記載の極低温用蓄冷器において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が0.01〜3.0mmの範囲の粒径を有する極低温用蓄冷器。
【請求項8】 請求項5ないし請求項7のいずれか1項記載の極低温用蓄冷器において、
前記磁性蓄冷材粒体は、RMz(RはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を、MはNi、Co、Cu、Ag、AlおよびRuから選ばれる少なくとも1種の金属元素を示し、zは0.001〜9.0の範囲の数である)、またはARh(AはSm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示す)で表される希土類元素を含む金属間化合物からなる極低温用蓄冷器。
【請求項9】 請求項5ないし請求項8のいずれか1項記載の極低温用蓄冷器を具備する冷凍機。」

上記補正は、補正前の請求項1及び5に記載されている「極低温用蓄冷材粒体」を、「形状分級され」と限定し、補正前の請求項9及び10を削除し、補正前の請求項11を繰り上げ補正後の請求項9とするものであって、これらの補正は特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同項第2号の特許請求の範囲の減縮、及び同項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正後発明1」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


2.引用刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物1:特開平3-174486号公報
には、図面と共に次のa.〜g.の記載がある。
a.「(産業上の利用分野)
本発明は冷凍機等に使用される蓄冷材およびその製造方法に係り、特に機械的強度および化学的安定性に優れ、運転中に作用する熱衝撃や振動に対する耐性が良好であり、微粉化して冷却媒体の通気を困難にするおそれが少ない極低温用蓄冷材およびその製造方法に関する。」(第2頁右上欄10〜16行)(下線は当審が付した。以下、同じ。)

b.「(発明が解決しようとする課題)
しかしながら従来のプラズマスプレー法によって調製した蓄冷材の粒子は、本来希土類元素とNiなどの金属とが化合して形成された脆い金属間化合物である上に、粒子表面にクラックの発生源となる微細な凹凸を有し、・・・粒子の強度が小さい。そのため冷凍機の運転時に作用する熱衝撃や振動および冷却ガスの流れ等によって微粉化し易いという致命的な欠点がある。微粉化した蓄冷材は、蓄冷部の目詰りを生じて、作動流体であるHeガスの通過抵抗を増大せしめる一方、Heガスに同伴されてコンプレッサ内に侵入し、部品を摩耗させる等の問題を生じる。」(第3頁右上欄4〜17行)

c.「(課題を解決するための手段と作用)
本願発明者等は以上の観点から冷凍機の性能低下および蓄冷材の微粉化の原因となる多くの要因、例えば原料種類、蓄冷材粒体の平均粒径、短径に対する長径の比等の影響について実験研究を繰り返したところ、希土類元素を主体にした原料金属溶湯を急冷凝固し、生成した粒体の平均粒径および短径に対する長径の比(以下、アスペクト比という。)を適正な範囲に設定したときに、従来に比べて機械的強度および化学的安定性に優れた蓄冷材を得た。また特に冷凍機の蓄冷効率を高めるためには蓄冷部を流通する冷却媒体の通過抵抗を増大させることなく、蓄冷材の充填密度を最大にする必要がある。そのためには各蓄冷材粒子の真球度を高めて最密充填ができるように形成するとともに、粒子の表面粗さを可及的に微小化し、粒子相互の接触面積を低減する必要があることに、本願発明者らは思い至った。本発明は上記知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明に係る蓄冷材は、Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選択された少なくとも1種の希土類元素を含有する磁性粒体であり、かつ粒径が0.01mm以上3mm以下の磁性粒体の全粒体に対する割合が70重量%以上であり、かつ短径に対する長径の比が5以下である磁性粒体の全粒体に対する割合が70重量%以上である磁性粒体から成ることを特徴とする。特に粒子の表面粗さを最大高さ(Rmax)基準で10μm以下にするとよい。」(第3頁右下欄17行〜第4頁右上欄6行)

d.「磁性粒体の粒径は粒体の強度、冷凍機の冷却機能および伝熱特性に大きな影響を及ぼすファクターであり、その粒径が0.01mm未満となると、蓄冷部に充填する際の密度が高くなり過ぎて、冷却媒体であるHeガスの通過抵抗が急激に増大する上に、流通するHeガスに同伴されてコンプレッサ内に侵入して構成部品等を早期に摩耗させてしまう。
一方、粒径が3mmを超える場合には、粒体の結晶組織に偏析を生じて脆くなるとともに磁性粒体と冷却媒体であるHeガスとの間の熱伝達性が著しく低下してしまうおそれがあるからである。したがって平均粒径は0.01mm以上3mm以下に設定されるが、より好ましくは0.1mm以上2mm以下が適当である。また冷却機能および強度を実用上充分に発揮させるためには、上記粒径の粒子が少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上必要である。」(第5頁左上欄5行〜右上欄2行)

e.「また本願発明において磁性粒体の短径に対する長径の比(アスペクト比)は5以下好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、なお-層好ましくは1.3以下に設定される。磁性粒体のアスペクト比は、粒体の強度および蓄冷部に充填する際の充填密度に大きな影響を及ぼすものであり、アスペクト比が5を超える場合には、機械的作用によって変形破壊を起こし易くなるとともに、蓄冷部に高密度で充填することが困難となり、蓄冷効率が低下するからである。
ここで溶湯急冷法によって調製した磁性粒体の粒径のばらつきおよび短径に対する長径の比のばらつきは、従来のプラズマスプレー法の場合と比較して大きく減少するため、上記範囲外の磁性粒体の割合が少ない。またばらつきが生じた場合においても、それらを適宜分級して使用することも容易である。この場合、蓄冷部に充填する全磁性粒体のうち、アスペクト比が上記範囲内の磁性粒体の割合を70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることにより、充分に実用に耐える蓄冷材とすることができる。」(第5頁右上欄3行〜左下欄3行)

f.「また磁性粒体の表面粗さは、機械的強度、冷却特性、冷却媒体の通過抵抗、蓄冷効率等に大きな影響を及ぼす要因であり、一般にJIS B0601で規定する凹凸の最大高さRmaxで10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下に設定することが望ましい。なお、これらの表面粗さは走査トンネル顕微鏡(STM粗さ計)によって測定することができる。表面粗さが10μmRmaxを超えると、粒体破壊の出発点となるマイクロクラックが発生し易くなるとともに、冷却媒体の通過抵抗が上昇しコンプレッサの負荷が増大したり、特に充填された磁性粒体同士の接触面積が増大し、磁性粒体間における冷熱の移動が大きくなり蓄冷効率が低下してしまうからである。
また磁性粒体の機械的強度に影響を与える長さ10μm以上の微小欠陥を有する磁性粒子の割合は、全体の30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下に設定することが実用上望ましい。」(第5頁左下欄19行〜右下欄18行)

g.「回転円板法(以下RDP法という。)による粒体製造装置は、例えば第2図で示すようにHeガス雰囲気の冷却チャンバ9内に配設した円板状回転体10と、とりべ11から供給された金属溶湯12を一時的に貯留し、さらに円板状回転体10の走行面に噴出させる注湯ノズル13とを備えて構成される。円板状回転体10は金属溶湯12が付着凝固することを防止するために、溶湯に対して比較的にぬれ性が低いセラミックスや金属材料で形成される。
注湯ノズル13から円板状回転体10の走行面に噴射された金属溶湯12は、円板状回転体10の運動力によって微細に分散され、冷却チャンバ9内を飛翔する間に、自らの表面張力によって球状化し、さらにHeガス等の雰囲気ガスによって冷却されて凝固し球状の磁性粒体14となる。形成された磁性粒体14は冷却チャンバ9の底部に配設された粒体回収容器15に回収される。」(第6頁左上欄13行〜右上欄10行)

h.したがって、刊行物1には、
「磁性蓄冷材粒体からなる極低温用蓄冷材であって、
この磁性粒体の平均粒径は0.1mm以上2mm以下の粒子が90%以上必要とされ、
また磁性粒体の表面粗さは、機械的強度に大きな影響を及ぼす要因であり、表面粗さが最大高さRmaxで10μmを超えると粒体破壊の出発点となるマイクロクラックが発生し易くなるので、JIS B0601で規定する凹凸の最大高さRmaxで10μm以下とすることが望ましく、このような磁性粒体の機械的強度に影響を与える長さ10μm以上の微小欠陥を有する磁性粒子の割合は、全体の30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下に設定し、
さらに磁性粒体の短径に対する長径の比(アスペクト比)は、粒体の強度に大きな影響を及ぼすものであり、アスペクト比が5を超える場合には機械的作用によって変形破壊を起こし易くなるので、アスペクト比は5以下に設定され、アスペクト比にばらつきが生じた場合においては、磁性粒体を適宜分級し、蓄冷部に充填する全磁性粒体のうち、アスペクト比が上記範囲内の磁性粒体の割合を70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とした極低温用蓄冷材。」
なる発明が記載されている。



3.対比・一致点・相違点
本願補正後発明1と、刊行物1に記載された発明とを対比する。
《一致点》
両発明は、
「磁性蓄冷材粒体を具備する極低温用蓄冷材。」
で一致する。

《相違点》
そして、両発明は下記A、Bの2点で相違する。
相違点A:本願補正後発明1では、「前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子個々の投影像の周囲長をL、前記投影像の実面積をAとしたとき、前記磁性蓄冷材粒体はL2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記磁性蓄冷材粒子の比率が5%以下となるように形状分級され、」としている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、このような形状分級がなされていない。

相違点B:本願補正後発明1では、「前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子のうち、前記磁性蓄冷材粒体に5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する前記磁性蓄冷材粒子の比率が1重量%以下である」としている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、このような記載が同刊行物にない。



4.判断
《相違点Aについての検討》
刊行物1に記載された発明では、粒体の表面粗さ(表面の凹凸)が粒体の機械的強度に悪影響を与える粗さ(凹凸)である磁性粒子の割合を、一定割合以下(30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下)としている。(以下、このように一定割合以下とすることを、「表面凹凸に基づく不良磁性粒子の削減」という。)
そして、刊行物1に記載された発明では、この「表面凹凸に基づく不良磁性粒子の削減」において、粒体の機械的強度に悪影響を与える粗さ(凹凸)を「最大高さRmax で10μm以上」としている。しかるに、表面の凹凸の程度を評価する手法として、投影像の周囲長の2乗と実面積の比に基づく形状因子を用いることは周知技術である。そうすると、上記悪影響を与える粗さ(凹凸)を、「最大高さRmax で10μm以上」とすることに換えて、この形状因子による評価の手法により決定することは当業者であれば容易である。
しかも、この手法の採用にあたり、形状因子の式を(周囲長)2/4π(実面積)とするとともに、粒体の機械的強度に悪影響を与える形状因子の数値及び悪影響を与える形状因子を持つ磁性粒体が許容される割合を実験等により具体的に決定することは当業者であれば容易である。
(もし、上記周知技術に対する文献が必要であれば、
・特開平6-229723号公報
「【0024】・・・次に、測定材料、すなわち、ラット肝臓細胞試料Rおよび検体細胞試料Sを含む組織切片をスライド62上に置き且つそこに固定し、・・・」、「【0027】通常、顕微鏡スライド62を顕微鏡12の載物台上に置いた後に、対物レンズ64の焦点をそこに合わせる。対物レンズ64からの光の一部分は・・・対物レンズ64からカメラモジュール14まで送り、像を表示するNTSCシグナルを生じ且つそのシグナルを像処理装置28に与える。像処理装置28はカメラ装置14から受像した像をディジタル化し且つそのディジタル化された像を・・・細胞試料の視界を表示する像モニター30に与えられる。ディジタル化された像視界は、更に、その分析のためのシステムバス34を通って計算機32に与えられる。」、「【0037】パラメーター分野172は、6種類のクラスの細胞対象それぞれに関するフィルター規定を含む。各細胞対象クラスに関するフィルターは、そのクラス呼称より下に挙げられた4種類の細胞対象属性それぞれに指定された一定範囲の値を含む。各クラスの4種類の属性は、光学的実体の平方マイクロメーターでの面積、光学的実体の形状、そのピコグラムでのDNA質量およびその光学的実体の密度である。数値範囲での形状因子は、光学的実体の周囲長さの二乗をその実体の面積で割ることによって決定される。したがって、円形の形状値は4πであり、その値は測定された対象物の「丸みが少ない」ほど大きくなり、当該技術分野において周知である。」
・特開平2-82374号公報
「本発明は多孔質体の空隙率測定方法に関する。
・・・従来、画像解析においては、白と黒の2値化画像として画像を処理するため、白地の断面に黒色の対象物として空隙が存在する場合は空隙の面積を測定することができる。多孔質体は気孔を含んでいるので、多孔質体を所定の面で切断すると平面が表われている箇所と窪んでいる箇所が出現する。平面が表われている箇所を断面領域と称し、窪んでいる箇所を空隙領域と称する。」(第1頁右下欄3〜13行)、
「・・・領域の形状因子による判別
各領域の形状に着目すると、断面領域では滑らかな曲線の輪郭になっており、空隙領域・・・では凹凸が急激な輪郭になっているため、次の形状因子1あるいは2を定義し、それらの値によって判別する。
形状因子1=周囲長/(外接図形の周囲長)
あるいは
形状因子2=4π×面積/(周囲長)2
断面および空隙の各領域を判別するときの判定基準は次のように代表的な数枚の画像から実験的に設定されている。」(第4頁右上欄20行〜左下欄11行)、
等を参照。)

また、刊行物1に記載された発明では、上記「表面凹凸に基づく不良磁性粒子の削減」において、粒体の機械的強度に悪影響を与える粗さ(凹凸)である磁性粒子(すなわち.不良の磁性粒子)の割合を一定割合以下とするにあたり、どのような手段により一定割合以下を実現するのかについては具体的な記載が同刊行物になされていない。
しかし、刊行物1に記載された発明においても、短径に対する長径の比により不良磁性粒子の削減を行なう場合には、アスペクト比が5以下の磁性粒体(優良な磁性粒体)の割合を70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることを実現する手段として、「分級」を用いている。(特に、上記2.(1)h.後半参照。)
そうすると、「分級」を、上記「表面凹凸に基づく不良磁性粒子の削減」において、不良の磁性粒子を排除する手段として用いることは当業者であれば容易である。
したがって、上記周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点Aにおける本願補正後発明1の構成に到達することは当業者であれば容易である。


《相違点Bについての検討》
刊行物1に記載された発明では、磁性粒体を適宜分級し、アスペクト比が5以下の磁性粒体(優良な磁性粒体)の割合を70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上としている。このようにすることにより機械的作用によって変形破壊を起こし難く(機械的強度を強く)している。
刊行物1に記載された発明では、分級後に、アスペクト比が5以下の磁性粒体(優良な磁性粒体)の割合が、上記パーセントの範囲内であるかどうかを「調べる」ことについて同刊行物に記載がないが、このように調べることは必要であり、そのためにアスペクト比を測定することは当然想定される。アスペクト比の測定をするのであれば、それにより間接的に機械的強度を測定することになるかもしれない。
しかし、アスペクト比を測定するのに併せて、機械的強度をより確実に実現するために、この強度を直接的に測定することは当業者であれば容易に想到される事項である。
また、粒体の機械的強度試験として、圧縮による強度試験を行うことは周知の技術であるから、上記の強度測定にあたり、圧縮力を加える強度試験を行うようにすることは当業者であれば容易である。
しかも、どの程度の大きさの圧縮力を加え、その時に破壊する粒子の比率を何%以下にするのか、その具体的数値は、実験等により当業者が容易に決定することができる。
(もし、粒体の圧縮強度試験の周知文献が必要であれば、
・特開平3-226645号公報
「・・・本発明にかかる粒状物の圧縮試験装置は、粒状物試料の粒径を測定する粒径測定手段と、試料に試験荷重を加えることができる可変形負荷手段と、該負荷手段によって試料表面に押し付けられる加圧平面圧子と、該加圧平面圧子により圧縮される試料の変位量を検出する変位量検出手段とを備えてなることを特徴としている。・・・第1図は本発明の1実施例の構成を示す図で、この粒状物の圧縮試験装置1は、枠体2内に光学的粒径測定装置3と負荷装置4が設けられており、試料台6のステージ7上に載置された粒状物試料8に対して粒径測定および圧縮荷重の負荷が行なわれるようになっている。」(第1頁右下欄16行〜第2頁左上欄19行)、「試料がセラミックス等のぜい性材料で圧縮荷重の増加によって崩壊した場合は、第4図に示すような特性曲線となり、圧縮変位が急激に増加した時点での圧縮荷重が崩壊荷重として記録されることを示す。」(第3頁左上欄7〜11行)
・特開平5-295063号公報
「【0084】製造したポリマー粒子を電子顕微鏡(3500倍)により観察し、粒子の形状を観察した。また、ポリマー粒子の機械的強度は、株式会社島津製作所製の粉体微小圧縮試験機PCT-200を用い、試験機の顕微鏡下で、粒子1個を支持台の上に乗せ、粒子上部から該粒子に荷重をかけ、該粒子が破壊したときの荷重値から、粒子の強度を求めた。各サンプルについて、各々3個の粒子を測定し、それらの平均値を粒子の機械的強度として、表に示した。」
等を参照。)
したがって、この周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点Bにおける本願補正後発明1の構成に到達することは当業者であれば容易である。


《発明の効果についての検討》
本願補正後発明1の効果は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に推測できた程度のものである。



5.まとめ
以上のように、本願補正後発明1は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本願の補正後の請求項2ないし9に係る各発明については検討するまでもなく、上記平成17年5月23日付けの手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。





第3 本願発明についての検討

1.本願発明
平成17年5月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成16年11月12日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】 磁性蓄冷材粒体を具備する極低温用蓄冷材であって、
前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子個々の投影像の周囲長をL、前記投影像の実面積をAとしたとき、前記磁性蓄冷材粒体はL2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記磁性蓄冷材粒子の比率が5%以下であり、かつ前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子のうち、前記磁性蓄冷材粒体に5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する前記磁性蓄冷材粒子の比率が1重量%以下である極低温用蓄冷材。
【請求項2】 請求項1記載の極低温用蓄冷材において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が短径に対する長径の比が5以下である極低温用蓄冷材。
【請求項3】 請求項1または請求項2記載の極低温用蓄冷材において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が0.01〜3.0mmの範囲の粒径を有する極低温用蓄冷材。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の極低温用蓄冷材において、
前記磁性蓄冷材粒体は、RMz(RはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を、MはNi、Co、Cu、Ag、AlおよびRuから選ばれる少なくとも1種の金属元素を示し、zは0.001〜9.0の範囲の数である)、またはARh(AはSm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示す)で表される希土類元素を含む金属間化合物からなる極低温用蓄冷材。
【請求項5】 蓄冷容器と、
前記蓄冷容器に充填された磁性蓄冷材粒体からなり、前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子個々の投影像の周囲長をL、前記投影像の実面積をAとしたとき、前記磁性蓄冷材粒体はL2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記磁性蓄冷材粒子の比率が5%以下であり、かつ前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子のうち、前記磁性蓄冷材粒体に5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する前記磁性蓄冷材粒子の比率が1重量%以下である極低温用蓄冷材と
を具備する極低温用蓄冷器。
【請求項6】 請求項5記載の極低温用蓄冷器において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が短径に対する長径の比が5以下である極低温用蓄冷器。
【請求項7】 請求項5または請求項6記載の極低温用蓄冷器において、
前記磁性蓄冷材粒体は、前記磁性蓄冷材粒子の70重量%以上が0.01〜3.0mmの範囲の粒径を有する極低温用蓄冷器。
【請求項8】 請求項5ないし請求項7のいずれか1項記載の極低温用蓄冷器において、
前記磁性蓄冷材粒体は、RMz(RはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を、MはNi、Co、Cu、Ag、AlおよびRuから選ばれる少なくとも1種の金属元素を示し、zは0.001〜9.0の範囲の数である)、またはARh(AはSm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示す)で表される希土類元素を含む金属間化合物からなる極低温用蓄冷器。
【請求項9】 磁性蓄冷材粒体を作製する工程と、
前記磁性蓄冷材粒体から一定量の磁性蓄冷材粒子を抽出し、これら抽出した磁性蓄冷材粒子の集団に5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する粒子の比率を測定する工程と、
前記5MPaの圧縮力を加えたときに破壊する粒子の比率が1重量%以下の前記磁性蓄冷材粒体を、蓄冷容器に充填して蓄冷器を作製する工程と
を具備する極低温用蓄冷器の製造方法。
【請求項10】 請求項9記載の極低温用蓄冷器の製造方法において、
前記磁性蓄冷材粒体を構成する磁性蓄冷材粒子個々の投影像の周囲長をL、前記投影像の実面積をAとしたとき、前記磁性蓄冷材粒体はL2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記磁性蓄冷材粒子の比率が5%以下である極低温用蓄冷器の製造方法。
【請求項11】 請求項5ないし請求項8のいずれか1項記載の極低温用蓄冷器を具備する冷凍機。」


2.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物1:特開平3-174486号公報
に記載された発明は、上記、第2、2.(1)に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)における「磁性蓄冷材粒体」を、「形状分級され」と具体的に限定したものが、本願補正後発明1である。
そうすると、本願発明1を限定、減縮したものに相当する本願補正後発明1が、上記第2、3.ないし5.に記載したとおり、上記の刊行物1に記載された発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由により、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の請求項2ないし11に係る各発明については検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-05 
出願番号 特願平8-507941
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25B)
P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 佐野 遵
会田 博行
発明の名称 極低温用蓄冷材、それを用いた極低温用蓄冷器とその製造方法、および冷凍機  
代理人 須山 佐一  

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